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ラベル・エラベット  作者: 天海 悠
回廊にて
42/162

思案 3

 



 太子は頭を下げたままでぎりぎり歯噛みをした。


「トゥアナとベルガ、これだけは避けたい」


「まあ大変なこと騒いでますね」


 年取った侍従と新入りの従僕が振り向いた。

 背後には頭の禿げあがったロージン侯爵が、ゆったりソファに腰かけている。


「いたんですか」

「いました」


 年取った侍従にささやきかけた。


「あのひと、昔からあの娘を狙ってたですからなあ。都で仲良くしてた頃は、ちょうど太子は15歳ぐらいで、トゥアナ姫は6歳だったかな。可愛かったですからね」


 新入りの従僕が戸惑った顔をした。


「え…ロリコン?」

「いえ違うですね。一応、大人になるまで待ったんですからね」


「やっとソミュールを片付けたのに!!絶対に許さない」


 太子は頭をくしゃくしゃにかき混ぜながら地団駄を踏んでいる。


「ベルガめ!大きな顔してトゥアナの旦那面するんだ。絶対にそう!いっつもそう!鼻が天まで伸びきって天狗になる。顔だけのくせに!大きな顔をして王宮にやってきて、でかい声してトゥアナの横で正論を吐くの?やだやだやだやだ、絶対やだ!耐えられない!!」


 命令によって、従僕たちが文箱をもち、太子は机にどっかり座った。


「あの地区と金山をおさえて、隣国への要所にするには、ベルガをラベル公にするのはともかく、トゥアナを嫁にされては困る。ここはカペルに頑張ってもらうしかない!」


 素早く筆を走らせる。

 後ろからロージン侯爵が忍び寄り、首を伸ばして中身を声に出して読んだ。


「やっちゃえばいい、がんばれカペル。とりあえずやってしまえばこっちのものだ。既成事実がだいじです。ていうかもう、やっちゃったんだよね?夜を二人きりで過ごしたんでしょ?やってないって言っても、やっちゃったことにしなさい!妙齢の男女が夜を一晩過ごしてなんもなかったはずがないでしょ!だよね!」


 素早く封をして送るように命じた。


「既成事実を作っちゃえば、母上も何も言えない。それでこちらに連れてこさせれば、もうこっちのものだ」


 新入りの従僕は当惑顔で古参の侍従にたずねる。


「何なんですか?この騒ぎ」

「王宮なんてこんなもんだよ。慣れろ」





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