思案 2
「太子さま!」
「どうなさいましたか?」
さすがの従僕も駆け寄った。
太子はぶるぶる震えていたが、手紙をやみくもに頭の上でふりまわした。
「ベルガを新ラベル公に?和平を結んだ?能天気な所があるとは思ってたけど、カペル!あのバカ!!大馬鹿!あほ間抜け、これ以上任せてたら何をしでかすかわかったものじゃない」
太子は凛々しく立ち上がった。
「もうこれは私が行くしかない!」
「ちょっと落ち着いてみては…」
「鎧を持て!かぶと!剣はどこ!出陣!出陣の喇叭吹け!」
「何を騒いでいるのですか」
量のあるグレイヘアを小さめにカールしてヘアバンドを高く額を出している老婦人が現れた。
頭の上がひつじのようにもこもこしている。
服装は恐ろしく豪奢な最高級の絹と縫い取りだ。
「母上」
当惑の体で太子は腰を下ろした。
右往左往していた従僕たちもおとなしく成り行きを見守っている。
「知らせはこちらにも届いています。陛下は、あの地区に平和がもたらされるのは喜ばしいことだと仰っていますよ」
「そんな、またまた~~~~母上!父上はほとんど寝てばっかりで何もわからないじゃありませんか」
「今回の話、あなたは何が不満なのです?たかが田舎の小娘一人にまだ執着しているわけではありますまいね」
太子の目がすばやく動いて入口の方を探った。
(夫人をスパイに使って探っていたな)
「母上は何をご存知なの?」
「ベルガ・モントルーをラベル公と認めるのには、条件があります。一度は壊れた話ですが、もう一度蒸し返しますよ。これが最後のチャンスです。あの生意気娘の妹、アウなんとかだったか、あれはロージン侯爵に嫁がせること!」
「トゥアナがまた大騒ぎしますよ」
「ベルガがそのくらい抑えられなければ、あの地区をおさめることはできないでしょ。ベルガとトゥアナ、ロージン侯爵と…えーとアウなんとか。彼らを都に呼びましょう。盛大に式を挙げねば。和平のあかしです」
じろっと横目で息子をにらむ。
「あなたが、祝福の言葉を述べるのよ」
たじろぎながら、最後の抵抗を試みた。
「ちょっと待って、母上の中ではベルガ♡トゥアナって、デフォルトみたいですけど、いや、でも、トゥアナはカペルにあげるって約束しちゃいました!」
「平民に、高貴な血の娘を嫁がせるなど、もってのほかです!」
ぴしりと鞭のように響いて皆が身をすくめた。
「他にたくさん、雑種の娘がゴロゴロいるでしょう?何をもって、トゥアナのような娘を選ぶのか。あの子の母親はカデンス一族の出、離婚してから今は実家で静かに暮らしていますが、悲しみますよ?身の程知らずにもほどがある」
しゃなりしゃなりと老婦人は優雅に去った。
皆頭を下げてとそのモコモコのひつじ頭を見送る。




