思案 1
王宮では、太子は先ほどから部屋をあっちに行ったりこっちに行ったりして考え込んでいた。
並外れた長身に軍服をまとい、後ろには金のモールがしっぽのように揺れている。
機嫌はよくないのは一目で見て取れた。
眉には皺が寄って、侍従たちが片目をつぶり片目を開けて様子をうかがっていた。
トゥアナをカペルが?
ベルガが絶対に承知しないだろうな~?するわけがない。
あの単細胞の顔だけ男が。
頭に血が昇ってわーっとなっちゃえばいい。
それでカペルが短期決戦でベルガを仕留めてくれればいいんだが。
万が一生きて逃したら泥沼可するぞ~?
「声が漏れてるけど、指摘すべきかな?」
「しっ、静かに」
腕をボクシングのようにシュッシュッと交互に出していた太子が突然止まる。
「よし!わかった」
太子は手のひらをこぶしでぽんと叩いた。
慣れていない新しい使用人はビクッとするが、年を取った侍従は眉一つ動かさない。
「ここはカペルにソミュールの領地をやるしかない。そこは自力で勝ち取ったんだからまあ、いいだろう。平民が爵位取得なんて棚ボタだけど、なかった話じゃない」
あの阿呆がラベル地区まで欲しいなんて言い出さなければいいけどな。
ラベル公の選任は難しいな~。
ソミュール地区にカペルを置くとなると、あまりぶつかるようなタイプでも困る。
ベルガとはどうせ今戦争の真っ最中だろうし、一段落したら廃位!
モントルーはぜったい、ぜったい、つぶす!!!
「だだ漏れで漏れてますね」
「あれがいつものことなんだ」
机について手紙を書こうと太子がペンを取り上げた時、ベルが鳴った。
手紙が届いて、太子はすごい勢いで引き破いて開く。
さっと目を通すと、椅子から三センチぐらい飛び上がった。
「だめ、だめ、だめ、絶対だめ!」




