押し問答 2
返答に窮してカペルは黙り込む。
トゥアナとの会話が脳裏に蘇った。
「条件を飲むならあっちは自治区扱いにするしかないだろう」
「絶対に無理よ。太子さまが許さない。だからといって戦闘だけはダメ。長い時間をかけて交流していくしかない」
「トップはモントルー派の方がいいだろう」
「それ以外の人だと反発が出ます。モントルー派なら、ラベル派を無視できないし、モントルーを粗略にもしない。そのかわり、妨害工作はきっとすごいわ」
「やってみるよ」
お姫様、どうやらこいつは自治区とかそういう問題じゃないんだ。
あんたの身の上一つを何より心配してるんだ。この土地を心から大事に思い心配するように。
剣幕と言うよりも真剣さに押されていた。彼の言うことは、太子のにこやかな言葉の裏やロトの言う難しい事情よりもよくわかる。腑に落ちた。肉親の情にも満ちている。
そして真剣なだけに、下心を答えにくい。
「名誉にかけて何もしていないと言ったそうだな。誓えるか?」
情報ダダモレじゃん。
ギアズだな。
じろっと睨んだので、びくっとしてギアズはちぎれるほど頭を横にふった
美しいと言うのはそれだけで迫力だ。
詰め寄られたカペルはたじたじとなっている。
「誓えるか?」
「うぅ…」
「トゥアナの名誉は守られていると誓えるか?」
「な…何も…」
部屋にいる全員がカペルを凝視している。
「頑張れー」
後ろで下を向いたアギーレが小声で声援を送った。
「負けるなー」
カペルは唇を噛んで言い放った。
「全く何もしていないと言うわけじゃない!」
「はぁ~?」
口をあんぐり開けてサウォークが思わず後ろから叫んだ。
「おまえ~、この場を治めたいのか喧嘩したいのか何なんだ!」
「やっぱり、要はやっちゃったんだろ?」
「何っ!?」
アギーレがからかい、ガタンと椅子を鳴らしてベルガが立ち上がった。
「やっちゃったとは!?」
サウォークは耳を押さえた。
「あ~うるせえ、何なのこれ」
「ちがう!それは名誉にかけてやってない」
「じゃあ何をした!」
アギーレがからかう。
「せいぜい手を握ったとか笑ってもらったとかそんなとこだろ?」
「ちがう!」
「違う?どう違う?」
何と答えていいかわからない。返答に窮した。
あの柔らかい手の甲の感触、そして真っ赤になった頬、ぷっくりした可愛い唇の感触を思い出す。
正直に行こう。この無骨な男の言う通り。
「あんたはトゥアナがいいのか、どうかと言ったな。ああ、おれはトゥアナだ。彼女は都へ連れて帰る。気持ちは変わらない絶対、トゥアナがいい!」




