押し問答 1
ベルガは吸い付けられたようにカペルから目を離さない。
「わたしを若い若いと言うが、君もずいぶん若い。将軍」
後ろに向かって紹介するかのように手を振った。
「見ての通り、ここの民は皆率直で粗野だ。礼儀など知らない。お前たちがソミュールのような慇懃無礼な男でなくて、あれでも皆ほっとしている」
「そりゃどうも…」
「わたしは腹を割って語り合えるような相手が欲しかった」
「おれ平民だよ」
「それは関係ない。トゥアナもそう言うだろう」
「友達か?」
「そうだ。友だ」
カペルは唇をぐっと引き結んだ。
それから、言い放った。
「おれあんたと友達になる気なんてこれっぽっちもねぇ~から!」
サウォークがまた大きくため息をつくのを感じた。
小声で後ろから言う。
「またお前は~~~~!支離滅裂なんだよ。何がしたいんだ!」
カペルも前を向いたままささやき返した。
「うるさい!仲良しこよしで来たんじゃないんだよ!」
押し負けてたまるか。
ベルガは顔色を変えない。
「トゥアナか?」
じわじわと首をしめるように美青年の視線が迫ってくる。雰囲気はトゥアナにそっくりだ。
すごいイケメンにじっと見つめられると、非常に居心地が悪い。
立ち上がってもいないのに体が大きくなったように感じる。まるでこちらに迫ってくるようだ。
「トゥアナがいいのか?」
いやいやいや。
やばいやばい。
攻めてくる。攻められてる。
守りに入ったら負けだ。押し返さないと。
今はベルガは本当に立ち上がっていた。カペルは見上げるしかない。
「これだけは言っておく。あの子はこの土地の魂だ」
周囲はシンと静まり返って、ベルガの声一つ一つを聞いていた。
こぶし一つ、カペルの前に手を付いた。
「ここの領民はみな、あの子を指示する、しないのどんな誰も限らず、そのことだけは全員が知っている。司令官、あなたがあの子をどう扱うか、みなが見ているぞ」




