回廊にて 1
なんとなくファンタジーっぽいものが書きたくなって書いたもの
魔法とか一切出てこない。ただのラブコメ
斜めに流れる夕陽が城の長い回廊に落ちていた。
直線状の滝にも似て、石畳の床、窓枠の影の上を横切っている。
光の粒子が浮遊し、視界を遮る霧の奥から軍靴の音が響き渡って、将校姿の軍人たちがサーベルを揺らして回廊を慌ただしく行進して来た。
大理石に踵の音を響かせ足早に歩きながら、副官のロトは若い指揮官に向かって性急に囁いていた。
「あれだけ不安を煽るような言動は慎んでと言ったのに!カペル、突然どうしたんです」
「聞こえない」
若い指揮官は耳を両手で抑えて、うるさそうに頭を振った。
「カペル、わかっていますね。無血開城したとは言え、ここはまだ敵地のど真ん中なんですよ」
「あーきーこえない!」
「子供じみた真似はおやめなさい。部下が見てます」
前日、ラベル公の軍が城内から敗北を認め、講和条約が結ばれて降伏をした。
明け渡されたばかりの城内には、老人や女子供ばかりが目に付いた。
青ざめた顔、凍り付いた表情で、侵入者を見つめている人々だったが、どこかほっとした解放感があり、笑顔も見えた。
老人が少年をかたく抱きしめて囁いた。
「内戦は終わったのだ。領主様は戦死なされた」
「あれは誰?」
「太子さまのご使者だよ。都から来たんだ」
「ふうん、遠いね」
城に入る軍人たちの表情は険しい。
まだ終わっていないし、始まってもいない。
それでも生きるか死ぬかといった緊張は、周囲を警戒する兵士たちからも消えていた。