第一話
友人からストーリーの提供を受けて作ってみました。
ガラス瓶を磨きながら、平島 亮太郎は早く片付けてしまおうと、磨き終えた瓶を棚に戻す。彼の所属する生物部の部室は図鑑や虫の標本、薬品の入れ物で足の踏み場も無いくらいだった、強い日差にガラスが煌めき、積もってい埃が点々と浮かび上がった。明日から夏休み、しばらく来ない予定だからか綺麗にしておかないといけない、
「そろそろ帰ろうか」殆ど片付けた頃、入り口から声をかけられた。亮太郎は振り返り「あれ、部長、外の片付けもう終わったんですか」「あぁ、君も手伝ってくれたし」部長はハンカチで汗を拭いながら椅子に腰掛けた。肩まで伸ばしているさらさらした髪、色が白い肌はさっきまで炎天下、片付けをしたせいか、少し赤みがさしている、優美な輪郭の顔には理知的な瞳がある。相変わらず綺麗な人だと亮太郎は思い、今日は片付けに来たのが二人だけで大変だったが、この眺めを一人占め出来るのは役得だなと、ぼーっとしていたら「顔に何か付いてるか?」「いや、いや何でもないです。」部長は伸びをしてから「そろそろ鍵かけて帰ろうか、今日は助かったよ」
もう夏の気長な太陽も西に傾いていたが、昼間と変わらない蒸し暑さの中を家に向かって歩きながら、亮太郎は今日の晩御飯はどうしようかと考えた。この春から両親は妹を連れて海外に仕事に行ってしまっている、県立高校に入学が決まっていた亮太郎だけ残っていた。
そういえば、駅の方のスーパーで安売りがあったのを亮太郎は思い出した、朝眠い目に飛び込んで来た色とりどりの広告の紙面が目に浮かぶ。
電柱がある角を曲がれば、もうすぐスーパーというところでふと突風が吹いたというより大気そのものが歪んだような感覚、強い目眩で思わず目を閉じてうずくまった。カバンも投げ出してしまった。
緩やかに起伏する大地は緑色、薄い黄緑の四角い畑に覆われている、そののどかな景色を踏み潰すように疾走する黒い影、近づいて見た者に嫌悪感を抱かせるだろう見た目をしていた、巨大な虫の殻を被った牛のような姿だった。それを追う人影がまるで長い鉄の板のような剣をなんとか怪物に突き刺そうとしている。金色の髪が風に流れる、人形のような整った顔立ちも険しい表情で彼女の中の闘争心が現れているようだ。
亮太郎は畑の真ん中で目を覚ました、見渡す限りの畑・・「ここはどこだ?」