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ナラトロジーと自由間接話法について

作者: 佐久 満

 小説を書く上で、視点をどうするかという問題はさけて通ることはできません。そして、三人称で書く場合によくいわれるのが自由間接話法です。しかし、実際にどういうものか検索しても、日本語の詳しい情報はなかなか見つかりません。それどころか創作方法の書籍ですら、自由間接話法に触れた物は見かけません。ユリシーズで有名にもかかわらず。


 結論からいうと、日本語には英語と同じ自由間接話法は存在しません。英語における不定詞が日本語には存在しないため、英語の表現をそのまま日本語にすることができないからです。

 しかし、ここからがややこしいのですが、同様の表現ができないかというと、そうでもないのです。学術的な説明は専門書に譲るとして、日本語でも自由間接話法を使って人物の心理描写をすることは可能です。というより、すでに多くの作品で使用されています。日本語では、直接話法を間接話法に混在させることができるため、同様の表現が可能なのです。詳しい説明は『ナラトロジー入門―プロップからジュネットまでの物語論』(橋本陽介著、水声社)を読んでください。ナラトロジーの入門書ですが、後半に自由間接話法の説明が出てきます。非常にわかりやすいです。英語の原文と日本語を併記してあり、比較することができます。ナラトロジーについても、わかりやすい説明がしてあります。おそらく、日本語で書かれた本では一番わかりやすいのではないでしょうか。ナラトロジーの知識も、小説を書くのに必須です。基本用語をおさえておくだけでも、書くのに役に立つでしょう。プロップからソシュール、バルトを経てジュネットに至る歴史が詳しく書かれているので、『物語のディスクール』を読むよりも、おそらくずっとわかりやすいと思います。


 こうした知識をふまえておくと、書くときの迷いがなくなります。常にこれでいいのだろうか、と不安を抱えて書くよりも、自信をもって書くほうがよい作品ができるのではないでしょうか。

 なんだ本の宣伝かよ、といわれそうですが、他にも参考文献をあげます。結局本の宣伝ですが。

 『物語のナラトロジー―言語と文体の分析』(前田彰著、彩流社)も読んでおきたい本です。こちらはぐっとレベルがあがって初学者向きではありません。しかし、シュタンツェルの理論が書かれているので参考になります。語りのタイプ分類がでてきます。日本文学と海外文学の違いがわかるでしょう。特に三人称で書く場合、「全知の語り手」の説明は視点との関係で有用です。

 後は定番ですがブースの『フィクションの修辞学』を読めば、基礎知識は手に入ります。


 小説の視点にはいろいろ制約がありますが、他のサイトにも書かれています。ここではナラトロジーと自由間接話法に絞って書きました。視点の混乱は初心者が一番苦心するところだと思うので。




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