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銀河連合日本  作者: 柗本保羽
本編
62/119

銀河連合日本 番外編 ―『プライベート』― 全年齢版 

いつも『銀河連合日本』をご愛読していただきまして、誠にありがとうございます。


 さて、先日、本作一周年を記念いたしまして、小説家になろう様姉妹サイト「ノクターン」様に、本作18禁版の、大人向け番外編を投稿させていただきました。


 で、読者の皆様から……


「本編並みの内容じゃねーか!」


 というご意見を多々頂きまして、なおかつ


「本編に、18禁描写を無くしたバージョン上げた方がいい。未成年の方にも、この作品に出てくる内容で重要なところが沢山ある」


 というアドバイスを多々頂きました。


 確かに、今作―39―でその点フォローさせて頂いたつもりでしたが、さらに突っ込んだ描写に欠けるところもあるなと自分でも思いましたので、今回、ご要望にお応えしまして、18禁描写を極力排除した『全年齢版』を投稿させていただきます。


○18禁版との相違点

*所謂、具体的な性行為描写の削除。

*性行為用語の、別の言葉への置き換え。

*性行為用語を含む会話文の変更。


 これらを行いました。

 で、所謂、医学用語、学術用語、一般的な慣用用語で使われている言葉は、そのままにしております。

(『おっぱい』『臀部』『陰部』といった言葉)


 それ以外の18禁に当たらない部分は、原文とほぼ同じ内容に保持しております。


 ということで、内容的には、丁度フェルさんと柏木が結婚した、山場の普通なラブシーンに仕上げた「つもり」でございます。


 まぁこれぐらいの描写なら、普通に一般小説にもあると思われますので、問題無いと思いますが、思う所あればご指摘下さい。随時編集させていただきます。


 それでは今後も本作ともどもよろしくお願い申し上げます。


 柗本保羽


 

 ティエルクマスカ銀河共和連合からの加盟要請を公開した後のある日。


 イゼイラの求めた『聖地認定』は、日本の法で宗教的概念が含まれるため、そのままの決定ができない。

 更には地球世界が歪んだパワーゲームに陥ることを抑止しなければならない。

 そこで奇しくも柏木の考えた策と、ティエルクマスカ連合議長 マリヘイル・ティラ・ズーサが放った全く同じ一手……それは、地球における地域国家日本国をティ連に加盟させよう。そして加盟させてしまえば、ティ連合の一主権地域として扱われるので、聖地認定をしてもらわなくても、ティ連合人が自由に日本へ行き来でき、発展過程文明であり、ナヨクァラグヤの聖地である日本を、自分たちの『希望の象徴の地』とすることができる。


 日本としても、その後の地球社会において、ヤルバーンを地球社会の一員として認めさせることができる。

 更には、日本国の国家としての主権は、連合憲章の元に保証され、かつ連合各国との主権を連合憲章に則って共通化、共有化することで、連合としての主権も享受できる。

 これには宗教的概念が一切ない国家連合への加盟だ。

 これ以上ない抜群の手だということで検討に入り、かように相成った。


 実は日本国、こういった連合国家の経験は初めてではない。

 よく日本は、古くは伝説の時代から2300年間、単一国家でやってきたと思われているが、これは厳密に言えば間違いである。

 日本も連合国家を経験してきた時代はあったのだ……それは明治時代以前の日本である。

 江戸時代を例に上げると、幕府と諸藩大名。すなわち強力な自治権を有した国家の連合主権体。

 今風に言うなら『江戸幕藩連合』ともいうべき国家体制が江戸幕府だった。

 なので、このティ連合といった各国家の主権が最優先された国家連合体への加盟も、さほど抵抗はなかった。

 

 そして、二藤部はこの『ティエルクマスカ連合加盟』の是非を国民に問うため、解散総選挙に打って出ることにした。

 さすがに戦後以降、第二の国体改変に伴う決定だ。さすがに国民の真意を問わなければならないだろう。

しかし、世論調査では9割が賛成、もしくは条件付き賛成という結果が出ている。

 実のところ各政党も賛成の方向性ではある。

 従って連合加盟の方向性は、ほぼ確定であった。あとは政策方面での戦いになる。


 柏木の補欠選挙も、結局この解散の話が出た時点でナシになり、そしてもちろん彼も立候補することになる。

 選挙区は当初の予定通り、大阪8区。

 今や『宇宙人とのファーストコンタクトの地』として、世界中で有名になった大阪府豊中市の選挙区に、その当のファーストコンタクターで、数々の目に見える実績を上げたティエルクマスカ担当大臣が立候補するのである。

 他党の候補者はもう絶望である。こんな立候補者に勝てるわけなど無い。なので各党もこの選挙区にだけは候補を立てなかった。

 対抗にもならない候補は、無所属の、聞いたこともない中小企業の社長や、立候補を趣味でやってるバカや、やたらと中朝韓を敵視した新興宗教な幸せ団体のみ。


 当初、自保党は、柏木を比例区近畿ブロックで立候補させたかったのだが、自保党の実力派閥、吉高派の猛烈な反対に会い、その吉高も自分の後継者として柏木の事を大変気に入っているということもあって二藤部もさすがに党の重鎮、ご意見番の吉高の頼みには勝てず、かような情況に相成ってしまった。


 そして何よりも柏木の奥サマがフェルだというのも大きい。

 いや、大きすぎる。


 フェルサン……実は……


 日本とイゼイラのお役所に婚姻届を出した……というか、出さされた……三島達に「とっとと籍入れろ」といわれて、入籍した……そう、晴れて人妻になったのだ。

 でも当然式はまだだったりするので、柏木の親からは早くしろと突っ込まれていたり。


 ティエルクマスカ連合では、連合加盟国内での主権国家間に住む人物との婚姻であれば、多重国籍が大いに認められている。

 そんな感じでフェルさんも、選挙後の法改正に先んじて、現行法の範囲で法務省も法解釈方面で協力してくれた結果、日本国籍を取得し、イゼイラ国民でもあり……晴れて日本国民にもなったわけである。

 日本では、日本国籍の人物と婚姻した場合、一般の普通帰化申請にくらべて大幅に帰化条件が緩和されて、日本国籍を取得できる。まぁそういうことである。


 実際ティエルクマスカでは、現在既に日本国を連合内多重国籍対象国として登録している。

 なので、結果的に、フェルは、ことティエルクマスカ連合では、日本国籍とイゼイラ国籍の保有が合法的に可能なのだ。

 そして選挙後の法改正にともなって正式に日本でも連合加盟国民に限ってのみ、多重国籍を認める方向で現在作業が進められている。

 

 というわけで、日本国民になった外国籍の方々の洗礼ともいうべき行事。

 それは……日本での戸籍名を設定しなければならないわけだ。これがなかなか面白い。


 この戸籍名、当用漢字、人名漢字、ひらがな、カタカナしか認められていない。

 そして、その範囲なら、一般常識的かつ倫理的に問題ない限り、どんな名前をつけてもいいのである。

 なので、日本に帰化した外国人サッカー選手などは、自分の名前の語呂に合わせた漢字などを当てて晴れて日本人となったりするのであるが、フェルさんもそういう事ならばということで、胸に秘めていた名前で登録することにした。


 今後、日本でフェルさんは、この名前で呼ばれる事になる。

 免許証、保険証、ビデオのレンタルカード、スマホの契約、ネットの契約。

 全てこの名前で書かれることになる。


 その名前は……


柏木迦具夜かしわぎ かぐやさ~ん」

『ア、ハイです~』


 イゼイラ名 フェルフェリア・カシワギ・ナァカァラ(ナヨクァラグヤ)こと日本名 柏木迦具夜さんは、今、大阪府吹田市にある、日本三大大学病院、阪大病院で健康診断を受けていた。

 これは阪大・京大・東大の各大学病院に新たに設立された『異星種科』という部門への臨床データ提供協力のためである。


「はい、どうもご協力ありがとうございました。データの方はヤルバーン医療局にも送っておきましたから」

『ハイです。こちらこそありがとうございましタ』


 看護師長、まぁいわゆる看護婦長さんから明細を受け取るフェルさん。

 日本が連合加盟を決めてから、こういった日本国内の医療インフラ整備には厚労省も積極的で、ヤルバーンやカグヤでやって来た新たな連合人が数々協力している。

 そんな感じで、ここの看護師長さんとも親しくなったフェル。

 

 ……しかし、フェルさん、結構この地球の健康診断に興味津々だったり。

 注射器でチューっと血液採取するときは、顔をしかめ、ポシュポシュと血圧測るときは、何やってんだとその所作を注目し、検尿時はとても恥ずかしかったり、バリウム飲まされてグルグルとX線検査させられるときは、ゲップを必至で堪え、MRIにCT撮影時は、その煩さに「なんだこりゃ」となり……


 結果、自分達の医療技術へ発展していくだろう基礎を堪能できて、非常に有意義だったという話。


 大学側も、医療用VMC機器等の扱いもヤルバーン側から指導は受けているものの、それを器用に扱えるかどうかはまた別の話で、自分達が理解できる技術と併せて研究する。これも重要なことなのである。


「で、迦具夜さ……じゃなかったフェルさん、あなたも今後大阪と東京を行ったり来たりなんですって?」

『ハイですヨ。なんせ私のダンナサマがもう選挙で大忙しで、選挙区もオトナリのトヨナカシになりますから、支持者サン達の事もありまスので、こちらにもオウチをお借りすることになったデス』

「へぇ~、大変ねぇ……で、フェルさんも駆り出されたってわけ?」

『そうデス……まさかあんなことになるなんて……デモ、まぁ今までお世話になった人達へのご恩返しの意味も有りマスし、このお仕事も意義深いことですのでお受けいたしましたですよ、ウフフフ』

「あらあら、がんばってね。応援してるから」

『ハイ、アリガトデス』


 この会話からもわかるように……フェルさんも実は日本政府……というより自保党からある重大な要請をされて、それに協力していた。

 その要請、それはある意味驚天動地、そしてイゼイラ人的に、聖地日本の高天原な神々もびっくり仰天の要請……そして、元はといえば、三島達が柏木に籍を入れることを半ば『強要』したのも、柏木にやられっぱなしの意趣返しとでもいう感じで、ちょっと彼らも策を練った会心の一撃……


 旦那様の柏木先生もさすがあとでソレを聞いた時「おいおいおい(☓20)大丈夫か?な、な、な」と心配したほどの要請。

 その内容とは……


「……で、フェルさんは、確か……比例区近畿ブロックだったわね。んじゃ自保党に入れればいいのね」

『ハイです。よろしくおねがいしますでス』

「はい、わかりました。」


 なんと……フェルさんも次の衆議院選挙に自保党比例区で立候補したのである。

 二藤部達が柏木に籍を入れさせて、日本国籍をフェルに与えたのはそういう事だったという寸法。


 これは、今まで柏木の斜め上な作戦に付き合わされて、胃が引きつりそうになった政府閣僚や官僚の柏木に対する意趣返……いや、彼のやり口を真似た、そして、柏木を比例区で出せなかった二藤部達閣僚と、官僚達会心の一策であった。

 これはもう恐らく日本憲政史上最大のサプライスであった。

 そりゃもうマスコミは騒ぐわ右翼は騒ぐわ左翼は騒ぐわネトウヨは吠えるわサヨクも叫ぶわ……小銭稼ぎの評論家も大儲けで、玲奈さんも家のローンを完済できた。この発表があった時、柏木の大阪8区への立候補の話題など、2日で吹き飛んだ。


「連合議員が日本の議員になってもいいのか!?」


 そういう批判も無きにしもあらずだったが、フェルはそこらへんも見越して、イゼイラ議会に長期休職願いを出した。

 なんせフェルはイゼイラのフリンゼである。永久議員なので死ぬまでその資格は保持される。

 なので、イゼイラ議員職権を停止させるためには、休職しかないのだ。

 で、フェルは自分もずっと日本の議員をやるわけにはいかないということなので、二藤部達に連合関係な政府の仕事が落ち着きを見せるだろうと思われる、最高で2期までという条件をつけた。

 二藤部もさすがにその時期までには自分の内閣はもうナイだろうということで、それを了承した。

 といってもフェルはイゼイラの生き神様でフリンゼ様だ。議員を休職しても、その影響力は大きい。

 そんな感じである。



 フェルさん、阪大病院を出て、トコトコと徒歩で一人帰宅する。

 もう今ではイゼイラ人やダストール人、カイラス人も珍しくはなくなった。

 先の阪大病院でも、病気というわけではないが、臨床データ協力な人や、日本で何らかの事業に参加するために必要な厚生関係書類作成のために訪れる異星人も少なくはなくなった。

 今、歩いていても、軽く5人は連合人と会い、フェルは会釈される。


 フェルは大阪モノレール阪大病院前からモノレールに乗って、山田駅までのんびりと帰る。

 そして駅に着くと、ちょっとお買い物でもと思い、駅前の商業ビルへ入る。

 ここでもヤルバーンの乗務員で、日本に定住した人がチラホラ見受けられ、子供連れのイゼイラ人親子もいた。

 可愛いフリュな子供で、指を口に加えてお菓子を親にねだっている。

 最近地球、日本で流行っている妖怪モノのおもちゃ付きの食玩のようだ。

 親も、それぐらいならということで買ってやっているようだ。


(子供か……私もあんなふうになるのかナ?……)


 思わずニンマリしてしまうフェルさん。


 なんせティ連人は裕福である。

 何かしらで金はもらえるが、そんなに使うことがない。ハイクァーンを使えば、生活には困らないからだ。

 この辺の格差が日本人との間で出ないように、政府も連合加盟後、何年か後には日本国内でのハイクァーン配給権制度を実施し、貨幣と配給権の両体制を実験的にやってみようという方針で動いている。

 特に生活保護者や年金受給者を対象に行えばいいのではないかと、選挙の争点にもなっているようだ。

 しかし、詐欺行為などの予測される犯罪行為をどうやって防ぐかなど、色々と問題もあるんだそうな。


 ……フェルはカートにかごを置いて、コロコロ押して転がす。

 最近は、かつてヤルバーン自治区といわれた自治体は、日本の連合加盟方針が固まったと見て、今後、『イゼイラ星間共和国 ヤルバーン州』と呼ばれる予定になっている。本格的なイゼイラの自治体として稼動予定だ。

 それに先んじて、いわゆるヤルバーンで生成されたイゼイラ物品、つまり『輸入品』特に食材なども日本の市場へ大量に出回るようになって一部食材ではグルメブームが起きるほどである。

 

(えっと、マサトサンはこのサーメル星産のパガムのお肉が好きでしたね……ここでも手に入るようになったですか……ウフフ、あ、ヴァズラーのお肉も売っていますね……)


 ラップに書かれた表示

【ヴァズラー(イゼイラ蟹)500g・ヤルバーン産(ハイクァーン品)560円:輸入元・イツツジ食品株式会社・東京都~】


 フェルは食品コーナーを見回して、今日の食卓を想像しながらポソポソと食材をカゴに入れていく。

 実はティ連人、こういう『買い物』の習慣が無いため、この行為が楽しくてたまらないらしい。

 以前、田中さんの件でOGHビルに行った時、柏木に言ったあの言葉である。


 そして大阪の自宅……といっても選挙が終わって落ち着くまでの仮住まいな場所だが、そこへ帰宅する。

 とはいえ、フェルと柏木は転送装置が使えるので、この大阪にいようが東京の自宅にいようがあんまり関係ないわけで、フェルなんざしょっちゅう東京の自宅へ調味料の買い置きなどを隣の部屋に行くがごとくこの大阪からバンバンすっ飛んで移動しまくっている。やはりこういうところはイゼイラ技術の勝利といったところだろうか。


 大阪の自宅は、かつて柏木の住んでいた大急電鉄山田駅の近くに借りた。3階建てのマンションである。

 部屋の間取りは3LDK。まぁ仮住まいにしては立派な方だ。無論この場所に家を借りたのは、柏木の思い出の地でもあるからだ。

 フェルも彼の思い出……幼少の地となれば興味津々で賛成してくれた。

 フェルさんがやってきたという事もあって、この場所も一時期はちょっぴり騒がしくなったが、そこは両者とも今や日本・イゼイラの高官に政治家である。

 いつのまにやら近所にポリボックスができてしまう。そんなものである。


 フェルは買ってきた食材を冷蔵庫へ丁寧に選別して収納する。

 すると、PVMCGの通信機能がピロピロと音を鳴らす。


『ハイ、フェルフェリアです』

『やぁフェル』

『あ、マサトサン』

『あれ? 今、家?』

『ハイですよ』

『んじゃ、阪大病院にはもう行ってきたんだ』

『ええ、そんなに長い時間はかからなかったです。マサトサン、もうお仕事終わったですか?』

『うん、今日の予定は終わったけど、春日さんに呼ばれて選挙の打ち合わせでね。1時間ほど帰るの遅くなるから。で、ちょっとサウナで内々の話があるとかで、お風呂入ってくるから、先に入っといてよ』

『あ、ハイ。ゴハンはどうしますか?』

『それは帰ってから頂きます。はは……新婚さんだからね、一応』

『ウフフ、わかりましタ。んじゃ用意しておきますね……今日はパガムのお肉が売ってましたヨ。カラアゲにしますからネ』

『おー、そうですか。そりゃ早く帰らないと。んじゃそろそろ時間だから』

『ハイです。がんばってね』


 典型的な新婚夫婦な生活である。

 こればかりは新婚夫婦の特権だ。有難くその様子を拝見するしか無い。

 ただ、この夫婦、可哀想なのが籍を入れたはいいが、こんな仕事な二人なので、そりゃもう仕事が忙しい。

 今日のフェルにしても、阪大病院の件があったおかげで休日のような感じだったからいいものも、明日からは早速彼女も自保党本部で打ち合わせだ。

 フェルは比例区だからまだマシだが、柏木に至っては小選挙区なので支持者の集会なんかにも行かなきゃならなので、倍忙しい。


 でも、そんな忙しい日々をフェルは、実のところ楽しんでいたりする。なぜなら、これが彼女達イゼイラ人、そしてティエルクマスカの人々が望んだ姿だからだ。


 発達の頂点を極めた彼女達の文明。しかし知的生命体としては、精神や哲学がまだその文明へ完全に追い付いていない。

 無論、その社会構成は高度で地球人など比較にもならないが……しかしそれでもである。

 その重要な目に見えない物が欠落しているために先へ進めなくなってしまったのが彼女達だ。

 だから、あれだけの科学文明を持ちながら、フェルにしてもそうだし、シエにしてもシャルリにしてもリアッサにしても、ポルにしてもリビリィにしてもゼルエにしても……この地球、この日本での生活がドンピシャで肌に合うという……だから……実は彼女達も日本国籍を事前取得申請している。おそらく選挙後に間をおかず法改正され、即座に彼女達も日本国籍が取得できるだろう。


 そんな中…… 


 微乳美人のリアッサさんと、エロ別嬪なシエさんは、多川と久留米の誘いもあって、特危自衛隊へ特別任官することになった。扱いはティ連防衛総省からの出向という形である。今後の防衛総省との連絡係も任されている。


 そんな形でリアッサさんは、特危自衛隊陸上科・二佐の階級をもらった。

 そして、フェル達の婚姻に当てられたのか、意中の隊員にアタックした。でも相手の階級は一尉。

 ダストール人気質のおかげか、そんな階級差など全然気にしないリアッサは、色々WACにアドバイスを貰って、その意中の人物にアタックをかけたそうな……今度休みの日に食事に行く約束を取り付けたという話……お相手の一尉さんも、まんざらではないという情報を得ていたりする。恐らく万事成功するだろうという周囲の予測。


 で、我らがシエさんは、無論言うまでもなく特危自衛隊航空宙間科・一佐の階級をもらった。

 あいも変わらずモデルウォークでお色気振りまくってあの調子だそうだが、旭光Ⅱ……つまりヴァズラータイプの指導教官として、多川と頑張っているそうだ。

 

 で、特危自衛隊員の一部から、ある要請……いや、請願をされた人物がいる……多川一佐だ。

 いわずもがなの理由で、彼もとうとう腹をくくったようで……

 ある特訓を特危自衛隊妻帯者部隊から施され、人間改造される予定だという話……何をされるのやら……

 「サー・イェス・サー!!」とか、やるのだろうか??……上官なのに……




 ……まぁそれはともかく……




 ……とまぁそんな事を思い出しつつ、フェルさんはダンナのお言葉に甘えて先にお風呂を頂く。

 その後にお食事の支度。


 フェルさんは、湯船にお湯を張り、頭に『♪』マークを吹出しで出しつつ、入浴。

 お風呂大好きなフェルは、湯船にどっぷりと浸かって今日一日の出来事を振り返ってみたり、瞑目してみたり。

 あいも変わらず「んん~」やら「ふぅ~」やら、響き渡るよな声で唸り倒している。


 で、湯船から出ると、スポンジにボディソープをつけて体を洗う。シャンプーで頭も洗浄。

 いつもの泡魔神フェルさんになったり。

 フェル達イゼイラ人は、人類のような頭髪ではないので、頭を洗う時、ガシガシとはやらない。なでるように洗う感じ。


 で、体にスポンジを這わせて洗っていると……


「!!?」


 フェルは……胸部の膨らみに違和感を感じる。


(エ?……ア……も、もしかして……)


 フェルは乳房に平手を当てて、押しつつクリクリと回してみる。

 その反応を感じると、ポっと頬を染める。

 それは、イゼイラ人フリュ……女性が、好いた男性と長くいれば誰しも経験する事だった……


 フェルは、その違和感を感じるあたりを、その先の部分へ押し出すように触ってみる。

 それをすると、思わず悦な声が出てしまう……

 すると……その先端から無色透明の液体がほとばしるように飛び出してきた……


(!……ああ、やっぱり……そっか………私もいよいよ……)


 フェルは頬をさらにピンクに染める。

 

 ……そう思うと、今日のフェルさん……更に体を念入りに洗い始めた。

 特に胸部と股間、臀部を入念に洗っていた。

 そして、洗面所から歯ブラシと歯磨き粉を持ってきて、口も念入りに洗っている……

 何やら夜の戦闘準備のようであるが、今日はちょっと様子が違うみたいである……

 



 ………………………………




「ただ~いま」


 柏木が帰宅する。

 いつもの光景ではあるが、東京の自宅ではないため、まだちょっと慣れない。

 

『ア、オカエリナサイです、マサトサン』

「ああフェル、ただいま」


 柏木とフェル。抱擁して軽くキスなんぞ。

 しかし……今日のフェル、何か雰囲気が違う。

 いつにも増して、やたらと良い匂いを振りまいている。

 所作一つ一つに、ソープの匂いと、イゼイラ香水が香る。


( ? )


 少し首をかしげる柏木。


『ア、マサトサン。頼んだもの買ってきて頂けました?』

「ん? あ、ああ……えっと、牡蠣と、ニラと、レバーと……って、フェル……何するんだこんな食材」


 彼はそうはいうが、大体理解していた。

 こんな食材……精がつきまくりである。まだこれにイゼイラ特産のソッチ系の食材まで買ってきてくれと頼まれていた。

 コレ食って、その後といえば……まぁ……アレしかない。

 しかし、今日のフェル、ちょっとあからさますぎるので、少々困惑している柏木。


『……ウフフ、内緒ですヨ、マサトサン。では、お料理の方は、仕上げのみですので少し待っててくださいね』

「あ、はい」

『あ、そうだ。先にお風呂へ入ってはイカガでスか?』

「え? いや、俺、サウナ入ってきたし……」

『イイからもう一度入るデす。エチケットですヨ』

「え、えちけっと?」


 口を尖らせて訴えるフェルさん。


「あ、は、はい。わかりました。ハハ、そうだね。そうするよ」


 そういうと柏木は二度風呂にはいる。

 オッサン声をあげて、熱い湯船に浸かる。

 首をコキコキやりながら、しばし湯の気持ちよさに身を溶かす。

 すると、風呂の扉の向こうから、フェルの鼻歌が聞こえてくる。何かとてもご機嫌のようだ。

 ご機嫌ということは、フェルの今日の雰囲気、何か良いことでもあったのか? と思う。


(まぁ、それなら別にいいんだけど……)


 とはいえ、あの食材……今日はまた、男として色々と頑張らないといけないと思ってしまう。

 

 で、風呂からあがる柏木。

 パンツイッチョで、頭をガシガシバスタオルで拭きつつ、リビングに出ると……


 ものすごく良い匂いの食卓が出来上がっていた。

 ってか、完全に何か祝いの食卓である。ろうそくに火を付けて、氷に浸かったシャンパンがあったり……


「!!……お、おいおいおいフェル……どうしたんだよこの食事……」

『ウフフ、まぁマサトサン。着替えて座って下さいね』

「あ、ああ……」


 そういうと柏木は何が起こるのかと訝しがりつつ、急いでジャージを羽織って、食卓の席につく。

 すると……今度はフェルも……とんでもない格好で、自分の席について座っていた。


 その姿……マッパの上から、薄いネグリジェのようなスケスケの服を着ている……

 顔を染めて、少しはにかみながら、柏木を金色目な上目遣いで見る。

 しかし……その姿、艶かしくも美しい……


「ふ、フェル……ど、どうしたの? 今日は……それに、そ、その姿は……」


 今日のフェル、なんだか柏木に徹底的な夜のアピールをしているようだ。


『今日は、ラムアの儀ですヨ』

「??? ら、らむあのぎ?」

『ハイです……実はね、マサトサン……今日、私は本物のフリュになれたでス』

「ほ、本物のフリュ……って『女性』……いや、女ってこと?」

『ウン……私ネ、さっきお風呂入っていたら……ある生理現象が起きて……子供を作れる体になったデすよ……』

「こ、子供……って、そ、そなの?」

『ハイ……』


 フェルは説明する。

 実はフェル、柏木と付き合いだして、婚約し、今に至るまで、実のところ相応な数の、いわゆる件の戦闘行為をやっている。

 そしてフェルが言うには、この行為はイゼイラ人女性にとってとても大事なことなのだという。

 イゼイラ人女性は、とある生理現象が起きないと、子供が作れないそうなのだ。

 実は柏木とフェルがナニする際、彼は避妊具を使ったことがない。

 それは、フェルがそんなもの使わなくてイイというから使っていなかった。

 それでも彼女は絶対に妊娠することはない。

 それ以前に種が違うので妊娠するわけがない。


 で、そういう事もあって、フェルは何か機会があれば柏木にその行為を態度で申し出て、いわゆるエッチをやっていた。

 無論柏木が情にかられて押し倒す事もあった。


 それは、実のところイゼイラ人女性にとってはとても大事な事で、そうやって性交渉を重ねる事で、人類で言う特殊な女性ホルモンのような物質の分泌を促していたのだそうな。

 そして、その女性ホルモンがある程度分泌、そしてある場所に蓄積されると、イゼイラ人女性は、ある生理現象が起きて、子供を作る体を得ることができる……ということなのだそうである。


 即ち、それが先ほどの、フェルの胸部からほとばしった無色透明の液体のことである。


 そして、かような生理現象が出ると、恋人同士、もしくは夫婦でお祝いをする。

 ちょっと意味は違うが、日本の女性が、来るものが来て、お赤飯炊くのと同じような感覚と思えば良い。それをお互い知り尽くした恋人同士や、夫婦でやるのだ。

 それが『ラムアの儀』というものだそうで、フェルが女性の魅力丸出しの服を着ているのも、ラムアの儀を迎える『本物の』女性として、男性に愛してもらうために、こんな格好をしているのだそう。


「なるほど、そっか……そういう事なんだ……」


 コクンとフェルは照れながら頷く。

 すると柏木は。おもむろにシャンパンを手にとって、ポンと開ける。


「じゃぁフェル、おめでとう……って事でいいのかな?」

『ハイです。ありがとデす』


 フェルのグラスにシャンパンを注ぐ柏木。

 照れまくるフェル。イゼイラ人女性にとって、これはこういうものらしい。

 で、何故にシャンパンなのかと言うと、地球での、お祝い事に飲む飲み物という事を調べていたからである。これはすぐには入手できないので、ハイクァーンで造成させた。


 そして乾杯。


 柏木はクイとシャンパンを呷ると、フェルもグラスに両手を添えて一口で飲み干す。

 するとフェルも頬をポっと染めて「フゥ」という吐息とともにグラスを置く。


「ん? あれ? フェル……アルコール回ってる?」

『ア、ウフフ……ハイ。今日はこの日が来たので、オフロから上がったとき、衛生カプセルでナノマシンの制御を切りましたデス』

「え、そうなんだ。そんな事して大丈夫か?」

『ハイ、問題ナイですよ。イゼイラ人も地球のオサケで酔えるみたいですし……私もオサケを飲んで酔うのも、随分久しぶりになりまス』


 イゼイラでも、地球の酒はハイクァーン造成されているようで、一般市民の間でも、もうかなり普及していると言う。

 人気なのはやはりワイン。その次に日本酒、ウオッカやテキーラ、マオタイ、ウイスキー系は、イゼイラ人的に少々癖があるらしく、通の飲み物なのだそうな。


「へぇ~……でもイゼイラで作られた酒みたいなのは、俺達は飲まないほうがいいって言ってたよな」

『ハイ、チキュウジンサンにとって毒性成分を含むものもありますので、オススメしません』


 そんな話をしつつ、フェルの作った豪勢なご馳走を頂く。

 でも今日の食事は少々味が濃い。フェルの味付けにしては……おそらくソッチ方面でかなり気合を入れて作ったのだろう。

 思わずクスっと笑ってしまう柏木。


 牡蠣のクリーム煮のようなものをフォークとナイフで頂く。

 そしてパガムの唐揚げに舌鼓を打つ。

 やはりフェルは料理上手だ。とてもうまい。

 上目遣いでフェルを見ると……蝋燭の光に揺れるフェルの顔、そして肌、金色の目。

 水色肌が淡く照り、羽髪が幻想的に揺れる。

 まるでファンタジー映画のワンシーンのようだ。

 

 二杯、三杯とシャンパンを呷る柏木。この程度なら、ほろよいにもならないが、気分は良い。

 選挙の打ち合わせで帰宅して、飯食ってフェルと雑談して、そして寝る。

 そんな今日を思っていただけに、今日が非日常的な幻想風景になるとは思ってもみなかった。


 柏木はフェルのグラスにシャンパンを注ごうとすると、フェルは平手でそれを制し、もういいという。


「ん? 酔った?」


 フェルは首をふる。


『コレ以上飲んだら、マサトサンと……ネ?』


 具体的には言わない。

 要するに、ちゃんとした意識のまま、柏木と愛し合いたいというのだろう。

 その言葉を聞いて、柏木もシャンパンに栓をする。彼もコレ以上は飲まないほうがいいと思った。


 しばし食事をしつつ会話を楽しむ二人。

 すると、フェルが段々とモジモジしだしてくる。

 柏木も、体がなんとなく熱くなるのを感じる。顔がジワジワと、ほてるような感覚になる。


(ありゃ、フェルさん。食事に何か入れたな……)


 おそらく、そんな方向性の食材を仕込ませたのだろう。

 もしそうなら、かなり効き目バツグンなようだ。フェルの頬がさっきから染まりっぱなしである。

 そして潤んだ瞳で、何かを訴えるように柏木の顔を凝視している。

 

 柏木も、段々とフェルのご期待に添えそうな感覚になってくる……



 そして……



 彼は食事もほどほどに席を立つと、フェルの前へ行き、平手を出して、誘う仕草を見せる……

 フェルも、そろそろ限界のようで、その手を取って立つと……そのまま腕を柏木の首へ回し、口を半開きにさせて、彼へ接吻キスを求める行為を見せる。

 もちろん彼もその行為に応じる……口を半開きにさせて、お互い……舌を出し合って絡ませる……

 キスの習慣がないイゼイラ人だが、その行為は彼女達にも今では充分、情緒を活性化させる行為であった……このキスも……イゼイラ人が地球で得た貴重な物である……


 ……深く唇を重ねあう二人……頭を右へ左へうねらせ、お互い貪るように求め合う。

 男はフリュから香るソープと香水の匂い……そしてフリュの体臭を食らうように、彼女の唇を貪る。


 しばし……そんな感じ。

 

 柏木は、腰に回した手の片方を、フェルの着衣の上から下部へと這わせ、尾てい骨あたりの尾羽根に少し触れつつ、フェルの体のラインを確認するように手を這わせる。


 その感覚に気づいたフェルは、柏木から唇を外し、少し微笑んで目線を寝室へ向けて彼を誘う。

 柏木はその意思を理解して、フェルの足を持ちあげてお姫様抱っこ。

 フェルの体重は軽いので、スっと持ち上がる。

 そして寝室へと運び、ベットの上へそっと降ろす。


 ……そしてフェルと柏木は、フェルにとって大事な『儀式』を二人で行った……


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

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 二人は今までにない格闘技を繰り広げる……

 フェルさんが食事に仕込んだ変な食材のせいもあるのだろうか? 今日はお互いいつもより過激だった。

 そして、フェルが一つ意識を飛ばした後、寝そべった状態で、息を切らせ柏木に……


「オ……コ……シ……テ……」


 起こしてくれという。


 柏木は、フェルの両脇から背中に手を回して、よいしょと彼女を起こしてやる……

 彼女は顎を柏木の肩に乗せて、彼の背中に腕を回して、しばし休息するかのように息を整えている。


 その間10分ほど……


 息を少し整えたフェルは、彼の肩を手にとって、伸ばし、彼へ視線を合わせる……

 そして微笑む。ただ、目はまだ少し虚ろ。


「はは、今日のフェルはすごいな……でも、とても可愛いし、綺麗だ……」

「ウフフ……ハァ……アリガトです。マサト……サン……フゥ……」

「フェルぅ~……食事に何か入れただろぉ……」

「エヘヘ……チョット元気のつく食材を入れましタ……ラムアの儀デハ、良く使う食材だから大丈夫デすよ……ハフ……」

「そっかぁ~? 今でもホラ……」


 柏木は視線を下に向ける。

 まぁ……柏木大臣、元気いっぱいである。


「な……俺も落ち着きません」

「いいのデス……今日は……ハァ……フゥ……」


 そうか、という感じで頷く柏木。

 彼にはよくわからないが、イゼイラ人女性にとって、今日は特別な日なのだろう。

 ここまでフェルが積極的なら、付き合ってやらなければ男が廃る……


「ネェ、マサトサン……」

「ん?」

「今日は……大事なお話があるでス……フゥ……」

「ん。なんだい?」

「ハイ……私とマサトさんの……将来のことデス……」


 柏木は無言で頷く。

 大体フェルの言いたいことを察したからだ。


「マサトサン……私と……同じ時を生きてくれますカ?……」

「……」


 しばし無言になる柏木。

 

「嫌なら……いいのですヨ……それでも私はマサトサンを愛しマス。そして、マサトサンがオジイサンになっても、ずっと、ずっと一緒でス……マサトサンが先に逝っても、再婚はしないデス……もし、因果があるのなら、永久にマサトサンと巡り会いまス……子供を作る方法も、他にアリマス……だから……マサトサンも私を……」


 柏木のしばしの無言に、何か必死で訴えるフェル。

 しかし、彼はその訴えを遮るように……


「はは、フェル。何を言っているんだよ……大丈夫。一緒の時を生きようよ」


 その言葉に、虚ろで潤んだ瞳が、パァっと明るくなるフェル。そして、涙を流す。

 でも、幸せ一杯な感覚に混じって出るのでその量が半端ない……


「じゃぁ……あの時、内緒にした……あのお薬と同じ事……今からしまスね……」

「ああ、わかった……で、何をすればいいの?」


 するとフェルは、座位になった状態で、肩から手を外し、柏木の頭に両手を添える……そして…フェルは彼の顔を、自分の胸に近づける……更に……口元をフェルの……


(え?……なんだ?)


 と思うと、フェルはもう最大級に顔を染めて、小声で……


「(マサトサン……口に含んで……)」

(!?)

「……」


 目を瞑り、柏木の頭を胸に抱え込むフェル……じっと彼の行為を待つ……

 

 

 そして……フェルの言うがままに、柏木はそれを口に含んだ……


 すると……


「!!?」

 

 柏木の口の中に勢い良く飛び込んでくる、甘酸っぱい液体。

 思わずその場所から口を離す。


「ン、ん~!?」


 口を尖らし、なんだコレと訴える柏木。

 するとフェルは、彼の口を平手で抑えて……


「吐いたらダメですヨ。ソレ、飲んで……」


 柏木はしばし目をパチクリさせたあと、コクコク頷き、その液体をゴクリと飲み込んだ……


「ウフフ、それでマサトさんも、数日後には私へ命を送り込めるようになるデス。私、マサトさんの子を作れるデすよ……」


 メチャクチャ嬉しそうな顔をするフェル。

 

 そう……この行為こそが、かの『異種族間婚姻薬』と同等の、フェル達イゼイラ人が種を問わず、子をもうけるために必須な性交渉なのだ……

 こんな行為なので、そりゃ人様に言えるわけがない。実際、イゼイラ人の文化習慣的にも、人に知られる事が相当にハズカシイ行為なのだそう。

 なので、この事を尋ねられたフェルはモジモジしていたのだ。

 実際、医学資料を見れば一目瞭然なのだが、それを資料で見るのと、人から聞くのではそのイメージが違う。人類でも、医学資料の性行為説明と、アダルトビデオの行為が違うのと同じような感じなのであろう。


 フェルさんが仰るには、この行為、当のイゼイラ人同士でもコレをやらないと子を授かることができないらしい。

 話では、ダストール人やパーミラ人も同じという話。こういう性交渉が必要なのだという。

 全然別の星で発生した種なのに、同じような生殖進化を遂げるとは、ティエルクマスカ銀河圏では、そういう生物進化が普通なのだろう。こればっかりは宇宙の神秘としかいえない。

 しかし、カイラス人やディスカール人、そしてハムール人は地球人と同じような感じだそうな。ホントに宇宙の神秘である。

 

 なぜにこんな方法になったかかという事は、彼らイゼイラの科学でも、詳しいことはわかっていないらしい。仮説では、強姦などで生まれるような子供を防止するための機能ではないかとも言われているが、定かではない。

 当初は、この生殖法は、イゼイラ人同士しかできないと考えられていたが、何千年か前に、ティエルクマスカ世界で、初の異種族間カップルが生まれた時、女性側はイゼイラ人、お相手はカイラス人だったそうだが、その時に無意識にこの方法を行ったら子ができたという記録が残っている。

 なので、元々、種としては弱かったイゼイラ人が、他の種とも交わってその種の存続をしやすいように進化したためではないか? という説もある。

 ただ、もしそうなら、ダストール人は種としては弱くはないので、説明がつかないと反論もされている。


 さて、このフェルさんの胸部から出た液体の成分。

 イゼイラ人女性は、この液体を生成する『ウイルスのう』を胸部の中に持っている。

 ある種の女性ホルモン分泌が活性化すると、この器官の細胞核を利用して、かようなウイルスが生成され、体外へ放出される。

 これはダストール人女性も、パーミラ人女性も同じような感じである。

 ただ、このウイルス……メチャクチャ感染力が弱く、この交渉の方法でしか感染しない。

 なので、この液体をコップにとって飲んでもその時にはもうウィルスは死滅してしまいダメなのである。

 かの『異種族間婚姻薬』とは、このイゼイラ人女性やダストール人女性の出すこの分泌液を人工的に改良合成したものなのだ。従ってフェルは、かのイゼイラでの会談の時、天皇陛下が所有していたアンプルを『擬似ウイルス薬』と言ったのだ。


 ……そんな説明を……こんな状態でご教示を受ける柏木。

 この時、やはりフェル達は『異星人』なんだなぁ……と改めて思う。

 もうこんな関係になって過ごしていると、羽髪も、肌の色も、金色目も、全然気にしなくなった。 それがもう普通だと思うようになった。  

 性交渉時も……具体的に言えば、その場所には男性の意欲をそそるものが、地球人のそれと同じようにある。多少地球人女性のソレと雰囲気は違うものの、地球人でもそのデザインは個人差がある。別に気にするほどのものではない。ほぼ同じようなデザインだ。宇宙の進化の意思がそういう風に作ったのだから仕方がない。

 それが何故かを考えても仕方がない。そういうものなのだと納得するしかない。

 でなければ、同じ知的生命体でも、フェルと柏木に恋愛感情が芽生えるわけがない。

 その生命の『形状』というものは、結構重要なのだ。

 まぁ……おおよその地球人は、ザムル族の女性に当たる性と、初っ端から恋愛感情は、おおよそ沸かないだろう。


 よほどの特異な人なら話は別だが……


 そういうことである……


 ……ただそれでも、そんな女性の証を持つイゼイラ人だが、唯一地球人女性と違ったのが、彼女達には『処女膜』がない。まぁこれも『ラムアの儀』の話を聞かされればそれもそうだろうと思う。戦闘行為をしなければ、一人前の女性になれないのだったら、そんな痛がるようなものを進化という意思は作ったりはすまい。


「ソれと、マサトサン……」

「ん?」

「こんな事をさせた後で、そのぉ……ナンナンデスケド……」

「ほい、何?」

「数日後に……マサトサン……大熱出して倒れちゃうかもしれないデすから……気をつけてくださいネ……ゴメンナサイデス……」

「え? なにそれ……」


 フェルが言うには、この分泌液をイゼイラ人以外の種族が飲むと、そのウィルスが対象の異種族体細胞の一部を作り変えてしまうために……高熱が出るそうなのだ。そりゃ当たり前である。なんだかんだいってウイルスを感染させるのだ。

 しかも、口に含めるぐらいの量をである。


「ありゃりゃ……そうなのか」

「ハイ、もうグデグデになっちゃうそうですから……その時は私が付きっ切りで看病するですヨ。体を少し作り変えたら、2~3日ホドで、普段どおりに戻るデス。後遺症なんかも全くないでスから、心配しなくていいですヨ。これもラムアの儀の一環デス。そして……その高熱が治ったら……マサトサンと私は、同じ時を過ごせるようになるデす」


 そっか、と頷く柏木。本当に儀式のようだ。

 フェルは、その高熱が引いた後、体のどこかに必ず目に見えた異変があるという。それを教えて欲しいと話す……それが確認できたらもう大丈夫だと。


 フェルがなんとなく申し訳なさそうにするので、柏木はフェルを優しく抱きしめてやる……そして……それ以前にまだ……あの状態のまんまだ。

 今までの話でインターバルをおけた二人は、まだその変な食材の効果が残りまくっているので、またムラムラとしてくる。

 今の状態を冷静に分析すると、相当ナニな体勢だと思うと……


「フェル……」


 そう柏木がいうと、彼もちょっと興奮しているのか、フェルを強引にクルリと正反対のほうへ向けた。


 現在の、かような状態で、そんなことをされるものだから、思わず声をだしてしまうフェル。


「アア……マ、マサトサン……何をするの?……」


 実はフェルさん、柏木とは正面戦闘しか行った事がない。背面作戦行動は……初めてだった……

 柏木は、ヒザ立ちし、フェルにもそうさせる。


 まぁ、そういう感じで、第二作戦開始という感じ……

 

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 ・

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 ……しばし、フェルも初めてなその行為を行っていると……フェルは変な言葉を口走り始めた……


「………………カ、カシワギ……イチイ……マサト……サン……ア、あ……レ?……カシワギ……サマ?……」


 その言葉に「!!!!」となる柏木。

 ちょっと戦闘を中止する柏木……かなり残酷なマサトサン。


(柏木一尉って……フェル、並行世界の俺を思い出しているのか?……まさか……そんな……)


 口をパクパクさせるフェル。後ろからフェルの顔へ耳を近づけると、そんな事を蚊の泣くような声で呟いていた……記憶が無いはずの、かの世界の記憶。そうであったはずである。


(これは……)


 するとフェルはかろうじて残ったマトモな意識を振り絞って……戦闘続行を要請する……


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 その後、今までにない究極を迎えた今日のフェルさん、もういつもの清楚でホエホエなフェルを知っている人が見たら、別人だと思ったに違いない。


 しかし……おそらく……


「な、なぁフェル……俺……まだこんなのなんだけど……どんだけ入れたのよ、その食材……」


 かすかな声で説明するフェルサン……一般的なラムアの儀で使用する……通常の3倍だという話。彗星並である……

 フェルも体がほてってどうしようもないないらしい……何でも柏木がもう38歳で、地球人的にはアラフォーなので、ちょっと頑張ってもらいたいと思ったために3倍にしたそうである……やっぱりホエホエはホエホエだったようである……


「マハトヒャン……ち、チョット入れすぎたかもれス……エヘヘヘ……」


 でも後悔はしていないフェル。こんなに愛してくれるなら10倍でも良かったと言いたげ。

 フェルは、今日ぐらいはもう何もかも開放して溶けてしまいたかったようで、ちょっとした挑戦だったのだそう。

 

 で、結局その後、なかなか戦闘力が衰えてくれない二人は、なんとかその食材の効果を消化するために………


 背面作戦……

 マウントアタック……

 急降下爆撃行為に……

 

 三回ほど行って、やっと落ち着いた……




 ………………………………




 柏木の胸で、泥のように眠るフェル。彼の胸板を枕にして、スースーと寝息を立てている。

 やっとこさ落ち着いた二人は寝るという選択を取ることができた。

 まぁ、色々やってしまったので、ちょっと寝具が生理現象で困ったことになっている。

 なので、上布団の上に毛皮をかけて寝そべっている二人……明日は洗濯が大変だと……

 だが……


(あれ……ニーラ博士に報告した方がいいのかな?……でも、経緯は話せないよなぁ……博士未成年だし……)


 でも、もしあれが並行世界の記憶の復元現象なら、とんでもない事だと……せめて祖父のジルマには話しておいたほうがいいかなと思ったりする。

 

 柏木は全然眠れない。

 食材の影響もあるのだろうか、まだ少しだけ興奮が収まらない。とはいえ、もうフェルと続けて行うほどの体力もないので、そういう感じではない。

 ただ……彼の胸板を枕に眠る彼女を見るのが楽しい。そして、愛おしい。

 フェルの頭を撫でる柏木。

 地球人年齢的には、フェルのほうがずっと年上だが、精神年齢と肉体年齢は柏木の方がずっと上である。そんな複雑な年齢差も、あと二日ほどで終わる……彼もフェルと、その生の時間を同じくする体に変わるのだ。


「しかし……フェルも俺だけじゃないだろうに……もっといい男いたんじゃないのか? フフ」


 思わず口に出してしまう。

 すると……


「私はマサトサンだけですヨ」


 目を瞑ってフェルが言う。


「あ、フェル、起きたのか……」

「ハイ、良くネました…… マサトサンは眠れないですか?」

「うん、まだちょっと興奮状態」

「ソうですか、でも寝ないと……今日に差し支えますヨ」

「大丈夫だよ。昨日は宵の口からヤっちゃったからな。ハハ……まだ……えっと、3時だ。明日は昼からだから、適当に寝るさ」

「ハイ」

「フェル、今までお互い忙しくて、こんな時間、なかなかとれなかったからな。少し話そうよ……」

「ウン……どんなお話してくれるデスカ?」

「そうだなぁ……さっきの話だけど……フェルは俺とこうなる前に、イゼイラで付き合っていた人とか、いなかったの?」

「……」


 フェルはニンマリしながら少し考える。


「正直言うと……イないです……」

「え! フェルみたいな美人さんなのに?」

「ウフフ、ありがとです。美人サンですか……」


 そういうとフェルは昔の事を思い出すように自分語りを始める……


「私も、昔は、スキだった人ぐらいはイマしたよ。でもその人は、もうケッコンして、子供がいるデス」

「……」

「私の一方的な片想いだったデス……そのヒトは、イゼイラ科学院の同期デシタ。元々オトモダチでしたので、仲は良かったデスよ……私といつも成績を争っていた、らいばるサンでもありました……でも、結局、その人は私をトモダチ以上には見てくれなかったみたいで、普通の一般市民の、私の知らないフリュサンとお付き合いしてたです」

「告白しなかったの?」

「しようと思ったこともありましたけど、そう思った時は、もう遅かったデス……結局、私をオトモダチ以上に見てくれなかったのは……私、フリンゼだから……」


 そう、フェルは今でこそ法的には一般市民だが、なんせ生き神扱いの、世が世なら女帝なのだ。

 言ってみれば、その男性の視点で見れば……例えるなら、フェルは学習院大学に通う天皇家に近い皇族が友人ということになる……いくら今では一般市民階級で、器量よしな美人でも、それ以上の関係にはなりにくいのだろう……フェルは他人には決してわからない皇族の縛りが、イゼイラではどうしてもつきまとう。


「そっか……でも、俺だって……その……フェルと親しくしたのって、あの時のたった二日か三日だぜ、俺なんかより、もっといい人いただろう……おまけに見ず知らずの異星人だ」


 ま、話のネタだ。本心で言っているわけではない。そんな事は二人共わかっている。

 あとフェルは、ティエルクマスカ人にとって、種族の違いはあんまり関係ないという。

 意外だったのが、フェルが言うには、イゼイラ人や、ダストール人、カイラス人、パーミル人、他、恐らくハムール人もそうだろうという話で……地球人全ての意匠、つまり見た目というのは、充分彼女達の恋愛対象になる意匠なのだという。むしろ美的感覚的に好感が持てる種族意匠なのだそうだ。

 地球人……いや、日本人がフェル達を見て、同じように感じる感覚を彼女達も持っていたということになる。これは意外な発見だった……


「え! そ、そうなんだ……」

「ハイです」


 へー……と思う彼。

 なんとなくシエやリアッサが、地球人、そして日本人狙いなのが理解できた。

 意外なモノだと思う。確かにそういう意識でフェル達が思うのなら、知的生命体の外見という物は、結構大事なんだなぁと思ったりする……


 もしかして、ナヨクァラグヤ帝は……本当は当時の日本に好きな人がいたのかもしれないと思ったりもする……ナヨ帝が日本に帰りたがったのは、そういうのもあるのかなとか……ま、想像にしか過ぎないが……


「……アト……たった二日じゃないでスヨ……私にとってはマサトサンが私にヴァルメを通してお話してくれたあの時からですヨ」

「あ、そうか……でも実際に話したのは二日だろ?」

「ワカッテナイでスネェマサトサンハ……ウフフ」

「え?」

「私にとって、あの二日は、何年もの価値があったデすよ……フリンゼの縛りから解放されて、初めて……私のことを知らないデルンさんと、楽しい時間を過ごせたです……私にとって、それはそれは大切な時間だったデスヨ……」


 なるほどなと彼は思う。

 まるでローマの休日ではないが、彼女にとってはそんな時間だったのだろう。

 ローマの休日は、最後は互いの立場を超えることが出来なかったが、彼女は奮起決意し、柏木の家へ押しかけ、フェルさん流突撃バカモードで、柏木をモノにした。

 自分のことを知らない貴重なデルン。

 あの時、紳士的に、しかも自分に優しく接してくれた男を離してなるものかってなところだったのだろう。

 なので、情に駆られた柏木の押し倒しにも、覚悟を決めて受け入れた。

 それで離れられない関係になるなら、自分の体ぐらい好きにしろってなもんである。

 フェルさん、渋谷襲撃事件の時といい、ホエホエで清楚だが……実は一直線なフリュだったりする。

 そう柏木は改めて思う……なんとなく自分に似ていると……


「ソレニ……マサトサン。私にウデドケイはめてくれたでしょ?」

「え、あ、ああ……あれね。あれがどうかしたのかい?」

「ヤっぱり……まだ知らないですネ、ウフフフ」

「え?」

「アの行為はね……」


 柏木がフェルに腕時計をはめてやったあの行為。柏木大臣は、今、その真実を知る……


「えっ! えええええええ! そ、そうだったのか!」

「アハハハハ、そうですよ。なので、初めて会って、いきなり『お付き合いしてください』って言ったのは、マサトサンの方なのでス。ウフフフフフフ」

「は、ハハハ……そっか、そうだったのか……ハハ。こりゃまいった……そうかぁ……そうだったのかぁ……はははは」

「アハハハハハ、ウフフフフ」


 夜中の三時にベッドの中で声を上げて笑う二人。

 あの時の想い出話になったり。


 そして今度はフェルが質問する番。


「マサトサンは……レナサマと……その……どこまでいったですか?」

「え?」


 やっぱりフェル的には興味のあるところ。

 なんせ玲奈を元カノと知ってしまったからには、尋問である。

 

「ん~……秘密」

「ア、ズルイですよ。私の初恋話もしたのだから、ちゃんと教えるでス」

「いや、フェルさ……教えても良いけど……俺はフェルの事を思って秘密にしたいんだよ」

「え?」

「ん~……何ていえばいいのかな……フェルの年齢って、地球とは比較できないけど、地球人で言えば23、4歳ってところだろ?」

「ハイ、そう考えて良いと思いまスが……」

「うん……地球人でその年齢ってのは、まぁ大体、大学卒業して、新入社員で就職して、1~2年目ってところだ……社会人としては、これからな年齢なんだよね」

「ウン」

「まぁ、フェル達には一概に当てはまらないと思うよ。フェルなんて俺よりもずっと大人だし、なんだかんだいって科学者で議員サンだし、俺なんかよりずっと立派なもんだ……でも……俺達地球人の38歳っていったら、もう社会の中核なんだよ。多川さんでも42で一佐だろ?オーちゃんでも三佐だ……それに中学行ってる娘が一人いる……だから、いってみれば、もう相応の経験ってのは、良い事から悪い事まで、みんな知っている年齢なんだよね」

「ウン」

「だから、玲奈との事を話しちゃうと……俺はフェルがどう思うか、正直怖い……」

「……」


 そう言われると、フェルも柏木のいう事はもっとだと思う。

 精神年齢的には、柏木は年の離れた兄みたいなものだ。高卒で即結婚すれば、17、8歳ぐらいの娘はいる年齢でもある。


 柏木は言う。

 フェルの初恋話を聞いても、その年齢ならそんなものだと自分は思えるから、別にそのデルンに嫉妬心もわかない。

 それよりも、そいつはこんな良い女性を友人にしか見れないなんて、節穴かとさえ思うと。


「……それでもイイです。今も、これからもずっと、そして因果でもずっと、マサトサンは私のモノです。だから、それでもマサトサンのストーリーを知りたいですヨ」

「そっか……わかった……」


 そういうと、柏木は高校時代の初恋。そして、玲奈との馴れ初め。付き合い。別れの話をした。

 特に玲奈とは、別にお互いが嫌になったり、嫌いになったりして別れたわけではなく、結果的にそうなってしまっただけの話で、別れようともいっていないと。

 そして……玲奈とは経験があるとも話した……これも言ってみれば普通の事だ。しかし、こんな事は今の女性相手に普通は話すものではない。


 しかし、フェルは多分そうだろうとは思っていた。それは、フェルの体一杯に感じた感覚は、初めてする者の技術ではないからだ。相応の経験がないと、あんなフリュの事を考えてくれる行為は無理だと。

 いくらフェルが柏木としか経験がなくても、それぐらいは体でわかる。

 

「そっか……話してくれてアリガトでス、マサトサン」

「いや、ごめんな。気を悪くしたか?」

「ウウン、聞けて嬉しいですよ。むしろ、そんなマサトサンのストーリーで、結果私を選んでくれて……それで、同じ時を過ごしてくれる決断をしてくれたデス」

「はは、そうか、ありがとな、フェル」


 フェルも、言葉に出しては言わないが、柏木と同じく「玲奈サマもバカだな」と思ったりする。

 ちょっと意地悪に「こないだの玲奈サマは、今のマサトサンを見て絶対後悔している。ザマーミロ」とこれまた思ったりして……逆にニヤついてしまったり。

 そして「もう私のモノだもんねー」という感じで、柏木に抱きついたりする。

 そして、柏木に被さるように顔を近づけて……キスをする……


「ン。おいおい、どうした?」

「……なんでもナイですよ、ウフフ」


 玲奈の話をきいての勝利宣言なのかな? と柏木は思ったり。


 そして、小一時間ほどそんな話に興じていると、さすがに睡魔が襲ってくる。


「ふぁぁ~……丁度いい感じで眠くなってきた……フェル、寝るよ」

「ハイ。私も、もう少しネるです」


 目を瞑って柏木の胸を枕にするフェル。

 柏木も、フェルの頭を抱きかかえたり。

 「おやすみ」の言葉を言う間もなく……二人はいつの間にやら眠ってしまった……



 ………………………………



 ……二日後……


 首相官邸、ティエルクマスカ担当大臣執務室。

 選挙前ではあるが、選挙の結果が決まるまでは、彼は大臣である。

 彼に関してのみで言えば、選挙もまぁ勝てるだろうし、この大臣職はほぼ間違いなく留任なので、引っ越しの準備もいらないだろう。



「おーい、柏木ぃ、例の米国とNATOから依頼のあったカグヤ見学の話なんだけどな……って、お、おい! どうした!」


 大臣執務室にノックもナシに入ってくる白木。

 自分の部屋みたいな感覚である。

 ボールペンで頭をかきつつ、書類を読みながら入室すると、柏木大臣、ソファーに寝っ転がってハァハァと息を切らしていた。


「お、おい……大丈夫かよ……」


 柏木の額に手を当てる白木……


「あ、熱っ!、こりゃ……ち、ちょっと待ってろ、人呼んでくる!」

「あ゛……シラキ……ち、ちょっとまっで……」

「え?」

「だ、だいじょうぶ……だいじょうぶだがら……」

「何言ってんだよ、大丈夫なわけないだろ! インフルエンザか? うつすなよオイ……」


 すると柏木はプルプルと首を振って……


「だいじょぶ……原因わがっでるから……フェル…フェル呼んで……」

「え? フェルフェリアさんを? なんでまた……」

「おでが『熱でた』って言ってたっていえば……わがるがら……」

「あ、ああ、わかった……ち、ちょっと待ってろ」


 白木はそういうと自分のPVMCGを操作し、フェルを呼び出す。


「あ、フェルフェリアさん? 白木です」

『ア、ケラー・シラキ。こんにちはデス、どうしましたか?』

「あ、いえ……何だかよくわかんないんですが、柏木が今、熱出してぶっ倒れて……それでアナタを呼んでくれって……」

『エ! そ、そうですか!』


 とても嬉しそうな顔をするフェル。


「え? あ、いや……」


 その表情に訝しがる白木。ダンナが病気で高熱出してブッ倒れたというのに、メチャクチャ嬉しそうなので意味がわからんと……


『ア、今すぐ転送で行きますね』

「は、はぁ……」


 と言った瞬間、柏木の執務室に設置された簡易転送ステーションから光とともにフェルが現れる。


「即行っすね……」

『スミマセン、ケラー』


 するとフェルは何やら医療機器のようなものを持ってきて、朦朧としてる柏木にピロピロと当てる。


『ウフフフ、順調デス。嬉しいな……』

「え? 一体どういうことです?」

『ア……そ、それは……その……』


 すると白木は真面目な顔で


「フェルフェリアさん……今、柏木は大事な時期です……もし変な病気とかが発覚したら、選挙に影響が出るんですよ。重篤だったら野党からネガティブキャンペーンに使われたりします。詳しく教えてもらえませんか?」

『ア……アノ……ソノ……』


 モジモジするフェル。

 白木は以前にも同じような感じの状況、そう、件の日・イ・ティ首脳会談で竹取物語事案の話し合いを

した時に見せた表情だと直感する……サヴァンの彼を舐めてはいけない。


 すると白木のスーツの裾をピコピコ引っ張る何か。


「ん? あ、柏木、どうした……」


 フェルの困った姿を見かねた柏木は、震える手でPVMCGを操作すると、愛用の雑記帳を造成し、パラパラと……あるページをめくり……そこに書いてある文字をポンポンと指さして白木に見せる。

 柏木大臣、もう喋るのもおっくうになっているようである。


 その指さした部分に書いてあるのは……『異種族間婚姻薬』……


「え! お、おま、これ飲んだのか!」


 本当は違う。フェルのおっぱい吸った……でもウンウンと頷く柏木。

 気を利かせてくれた柏木にフェルも「そそそ、ソウデス!」とフォローに回る。

 白木は、これを飲むと、どういう効果が現れるかは知っている。

 柏木とフェルの、今後の人生において大事なことだということも……


 で、フェルはこの薬を異種族が飲むと、体細胞を変質させるために、一時的に対象異種族は高熱を出すという説明をする。で、2~3日ほどで収まって、後遺症なども出ないと話す。


「あ~、そういうことですか、はぁ、なるほど……でも、確かあの時、イゼイラ人女性はその薬を使わなくても同じことができるとかなんとか……」


 そういうと、フェルは顔を真っピンクにする。

 そして柏木が白木の足をバシバシと叩く。

 白木が振り向くと……柏木は首をプルプルと振っていた。


(あぁあぁ、そういうことね……はいはい……)


 白木は理解した……恐らくその行為……イゼイラ人的に……相当スケベでエッチでイヤラシイ行為なのだろうと……


「わ・か・り・ま・し・た……んじゃ、あとはフェルフェリアさんにお任せしますよ」

『ハイ、すみませんデス。ケラー』


 で、白木のいつもの一発。

 扉の前で……


「柏木ぃ……んじゃ……医学資料で調べさせてもらうわ、ニヒヒヒヒ……」


 ドカっと玄関めがけて雑記帳を投げつける柏木。

 逃げるように退散する白木……

 

「あ゛のボゲェ~……う゛~~……」

『マサトサン、苦しいですか?』

「あ゛、いや、ぐるじくはないんだけど……体中のちがらが入んないっじゅーか、ぼーっどずるっじゅーが……ぞんながんじ……」

『そうですか、フフ、典型的な体質改変の症状デすね。ではマサトサン、今日はもうオウチに帰りましょう』

「そ、ぞだね……」


 そういうと、フェルは関係者に柏木がインフルエンザにかかったということにして、帰宅すると伝える。というより、みんな知っていた。白木が既に、柏木がインフルエンザにかかったから、しばらく休みだと知らせてくれていたらしい……やはり持つべきものは友である……しかし最初、エボラだと言いまわっていたという話。あとで絶対シバくと思った柏木大臣。


 フェルはインナースーツのパワーモードをONにして、柏木を『お姫様抱っこ』する。

 体に全然力が入らないそうだ。なんとかトイレなどにはいけるそうだが、10メートル歩くと息が上がるという。


「はは……フェルにお姫サマダッゴされるなんて、はずがじいよ……」

『ウフフ、私は嬉しいですよ。でも、マサトサンにはちょっと恥ずかしがってもらわないと、私の気が済みませン』

「え゛……なんで?」

『えっと……その……マサトサン、ラムアの儀の時、後ろから私を…………挙句にデンキ付けて、大事な所……その……モニョモニョモニョ……私、あの時、物凄くハズカシカッタんですからねっ……』

「ぞなの? でも、2回したじゃん、はは……」

『……知りませんデす……』


 頬染めて、口を尖らせてプィっと横を向くフェルさん。

 でもフェルさん……とても良かったらしい……




 そんなこんなで転送で東京の自宅へ帰宅。


 フェルは旦那をベッドに優しく一旦横たわらせると、グデグデの柏木を起こして上着を脱がせ、ネクタイを取り、カッターシャツを脱がせ、腕時計を取り、ズボンを脱がせて、パンツも脱がそうとする。


「あ、フェル、ばんづはいいよ……」


 力ない手でパンツを抑える柏木。

 でもフェルは首を振る。


『ダメですよ、マサトサン。ぱんつも汗でびっしょりじゃないデスか。ちゃんと換えないと』


 そう言って、パンツも強引に脱がしたフェル。


『今日はマサトサンは何もしなくていいですから、私がみ~んなやってあげるでス。なので、体をきちんと休めるデスよ、ネ』

「え、でも……」

『ウフフ、コレでも一応責任は感じてるでスよ……記録では、初めてティエルクマスカで異種族のカップルが性交渉をした時、お相手のカイラス人サンが今のマサトサンと同じようになって、イゼイラでは初めてのことでしたのでそれは大変な騒ぎになったそうでス。病気だとかなんだとかで……その時、お相手のイゼイラ人が、そのカイラス人のダンナサマを一生懸命介抱したそうで、まぁ今となっては当たり前の事デスが、三日後ぐらいに元気になって、その献身さから、お相手のイゼイラ人フリュは大変みんなから尊敬されたそうでス』

「ヘェ~……」

『ナノで、ラムアの儀を異種族間で行うときは、フリュはお相手のデルンがちゃんと元気になるまで、全部お世話をしなければならないのが、しきたりなのですヨ……でも、私はそんなシキタリなんか関係なく、マサトさんのお世話をしたいのでス。だから、ネ』


 フェルは素っ裸状態の柏木のおでこをなでながら、軽くキスをする。


「んじゃ、よろしくお願いじまず」

『ハイです』


 そういうことなら、好きにしてくださいと。

 しかし……何だか介護老人の気分である。複雑な気持ちの柏木。

 世のお年寄りや、重篤な疾病の人の気持ちが改めて理解できた。


 先日のフェルは、柏木の一方的な攻略でなすがママ。幸福感一杯のフェルさんだったが、今日は立場が逆転である。彼女のなすがママだ……まぁそれもいいかなと思う。彼女が好きでやっているならば、お言葉に甘えようかと……


 そしてフェルがパンツを履かせてくれて、ジャージを着せてくれる。

 まぁ柏木も体が動くのは動くので、なるべくフェルの負担にならないようにする。


 その後のフェルは……

 おかゆを炊き、体を拭いてくれて、柏木が眠るとベッドの横に椅子をおいて読書をし、ずっと彼から離れず……トイレにいく時は肩を貸し、夜寝るときは、いつもどおり彼の横で眠る。

 そしてまた着替えをしてくれて……

 別に病気ではないので、そんな感じだ。


 それが三日続いた……


 そして、その三日後……

 

 フェルは少々疲れた顔で朝を迎える。

 ムニュムニュという感じで目を擦る。すると隣に愛するダンナサマがいない。

 もう起きているようだ……隣の部屋からテレビの音がかすかに聞こえ、台所で支度する音も聞こえる。


(あ、マサトサン……起きて大丈夫なのかな?)


 フェルはベッドの布団からむくりと起き上がると、目を擦りながら居間へ出る。

 すると……


「あ、フェル、おはよう」

「あ、マサトサン、もう起きて大丈夫デすか?」


 そう言いながらフェルはPVMCGを棚から取って自分の腕にはめる。

 そして翻訳モード起動。

 フェルさん、最近は日本語もほぼマスターし、ベッドでの、彼との気持ち良い時などでは、普通にもう日本語で会話している。

 ただ、やはり発音でまだ噛んだりするときがあるそうで、それ以外のときはPVMCGでの翻訳会話だ。


「ああ、さっき熱測ったけど、もうすっかり平熱だよ……フェル、色々ありがとな」


 そういうと、手をタオルで拭きつつ、フェルに近寄り、キスをしてやる。そして、頭をナデナデ。

 フェルさん、嬉しそう。


「朝食できたよ、食べよう」


 今日はフェルの献身に報いるため、柏木が朝食を作った。

 食卓の内容は、薄いプロセスチーズとベーコンをのせたトーストにスクランブルエッグ。インスタントのポタージュスープに、和風ドレッシングのサラダ。飲み物はレモンティー。フェルの好物ばかりである。


「さて……今日から俺も平均寿命200歳か……」


 感慨深げに話す柏木。


『マァ、そうですけど、先に変異現象を確認しないと。でなければ体細胞がちゃんと機能しているかどうかワカリマせんから』

「例の『どこかに異変がでるはず』ってヤツ?」

『ハイです。何処に出るのかは個人差ガアリマス。もし見た目に出ない場合、内臓に出ている可能性がありますから……そうでスね、イッシュウカン以内に変化がない場合は言って下さいね。精密検査しまス』

「で、もし出てなかったら?」

『残念ですガ……定着に失敗して、変異細胞が免疫淘汰されてしまった可能性があるデす……そうなると、もうアノ……免疫が出来て……自然な行為ではもうムリですから、異種族間婚姻薬に頼るしか方法がなくなりますでス。こればっかりは、チキュウジンサンとの行為は初ですから、『因果』に身をゆだねるしかナイデス』


 フェル達イゼイラ人……いや、ティエルクマスカ連合の人は、よく『因果』という言葉を使う。つまり地球人でいう概念的な『神仏観』のような意味なのだろう。

 彼女達には、地球人的な宗教観がない。

 神仏といった概念的な第三者に対し、他力本願的になる宗教観がない。

 古代には実は少なからずあったそうなのだが、それもかの大異変で種族存亡の危機に立たされ、神仏などこの世にいやしないといった絶望感と、その日を必死に生きなければならない現実主義が、そういった神仏観を消し去ったのではないかという事をフェルは言っていた。


 以前、柏木は『天国』『地獄』『あの世』『死後の世界』の話をした事がある。しかしフェル達にはそれが自分達のいう『因果』の概念なのだろうという。

 フェル達イゼイラ人や、シエ、シャルリらおおよそのティエルクマスカ人の死生観というもの……自分という存在は、一人ではなく、同じ存在が因果の世界に無数にいる。そして人が死すと別の因果世界の存在に自分の『存在』が融合する。そしてそれが永遠に続いていく……より良く行きた人は、より良い因果世界の自分と結びつき、自分の無意識で望んだ通りの因果世界での生活を送れるが、そうでない人は、悪しき因果世界の自分と結びつき、不幸な生活を送り苦しむ……という考え方が、彼女達の死後の世界観なのだそうだ。

 所謂『輪廻転生』の考え方ともちょっと違う。

 どちらかというと『並行世界』の考え方だ……彼女達の、所謂地球で言う宗教観とは、そんな並行世界的な思考なのである。そう、『思想』ではなく『思考』なのだ。


 フェル達の言う『創造主』の概念にしても、所謂神仏の類ではない。実際現実にいた人物がモデルなのだ。そういった偉人で、かような人物なら因果世界でも、素晴らしい融合をしているだろうという、あくまで尊崇の念。かような人物のようになりたい。因果世界で巡り会いたいという概念であり、いわゆる万能な神様のようなものではない。なのでサイヴァルはティ連合加盟の話が出たあの時『ナヨクァラグヤ帝のお導きだ』つまり、我々はナヨ帝の意思であるより良き因果世界にいるのだ……という意味で言ったのである。だから『絶対にそうだ、そうにちがいない』とまで言い切った。


 という感じで、逆に言えば、彼女達はその考え方が種族としてあるために、並行世界の存在を驚きもせずに、むしろ『科学で証明できた』ぐらいの感覚で自然に受け止めているのだろうと思った事がある。

 それは例の『カグヤの帰還』作戦で並行世界に飛ばされた時、柏木は狼狽し、焦ったが、フェル達異星人のみなさんは、驚きはしたものの、むしろその体験を貴重で喜んでいた者もいたほどなのだ。

 ニルファにしても、あれだけの体験をしたにもかかわらずその後の精神的回復も比較的早かった。

 あれが地球人なら、ああはいかないだろう。

 さすがに病状が100周期単位のクラスの人は、そう簡単にはいかないだろうが……




 ……で、それはともかく……




「さて、今日から俺も仕事再開だ。選挙も近いしね。フェルは俺がブッ倒れた時キャンセルになった、自保党での打ち合わせだろ?」

『ハイですね。さすがにコレ以上はカスガサマにご迷惑もお掛けできませんから……でもマサトサン。もう一日ゆっくりしたほうが……』

「大丈夫だよ、無理はしないから。んじゃ、一緒にいこうか」

『ハイ』




 ……それからまた三日後……




 帰宅したフェルと柏木。

 今日は外で食事を済ませた。

 で、風呂にはいる彼……頭を洗おうと、シャンプーで髪をガシガシやる……


「ん?……んんん???……なんだこりゃ?」


 自分の抜け毛を拾う……多分自分の毛だろう……


「あれ? あれれれれ??」


 彼はシャンプーを急いで洗い流し、風呂を出る。

 そしてドライヤーをブワァ~っとかける。

 で、ブラシで頭をといてみる……


「あ!……やっぱり……これかぁ?……」


 柏木の黒い髪から……白髪ならぬ、藍色の『青髪』とでもいうべき髪が、ニョーンと生えていた……


「フェルぅ~! フェルフェル!!」

『ハイ~ なんですかぁ~?』

「ちょ、ちょっときて!」


 洗面所にフェルを呼ぶ。

 大きいカッターシャツ姿のフェルさんがトタトタやってくる。


「フェル、これ、コレ見て、これじゃないか? 地球人でこんな髪の色ないよ」


 左側の髪をかきあげて、フェルに見せる旦那様。

 フェルはジーーーーーっとそれを見ると、PVMCGでサーチ。その結果を見て……

 パァァっと顔が明るくなり……


『ワァァァァ! オメデトウですマサトサン! 間違いないでス。これですよ。ちゃんと定着しましたねネ』

「そっか……ハァ、良かった……これでフェルと同じ時を過ごせるな」

『ハイ! ウフフフフ』


 急に抱きついてくるフェルさん。今日はお祝いだ……と思ったが、食事はもう済ましてしまったので、明日お祝いだと。


 で、お祝いのプレゼントは……



 前行、適当なシーンまで戻っていただければ幸いである……あんな感じ。

 でもプレゼントといいながら、また溺れてしまうフェルさんであった……やっぱイイらしい……

 フェルさんも健全なフリュであるからして、それが普通なのだ。



 そんな柏木とフェルの……絶対に表に出る事のない、超プライベートな日々。




 今日から柏木は、もしかするといつの日か、世界最高齢者決定な人物だったりする……今のところは……おめでとさん。


 しかし……


(こりゃ……今後俺達みたいな日本人が出てきたら……社会保険制度大改革迫られるなぁ……あと予備軍は……田中さんだろ? 長谷部さんだろ? まぁ間違いなく多川さんだろ? あ、あのリアッサさんの彼氏さんだったっけか?……うわ、年金に後期高齢者保険……どうすんだ? 頭こんがらがってきたぞ……)





 ほんに……その通り……







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