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……ある日のネット、掲示板の風景……
【銀河連合】柏木ティ連大臣フェルフェリアさんと結婚part5
1名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
http://www.jiji.**.**~
(週刊時事:時を診る 特別掲載)桐山せつな 201*年**月**日
○独占スクープ! フェルさん、柏木大臣と結婚! マジかよぉぉぉぉぉ!!
本誌が**月**日に、フェルさんの愛称で国民に親しまれているフェルフェリア・ヤーマ・ナァカァラさんの独占インタビューを掲載したのも束の間、**日にアジア信用共同主権会議で公表された、衝撃のフェルフェリアさんの役職。そして、その後の魚釣島事件に**日の銀河連合加盟発表。
それはもうこの日本という国が、まるで絶叫アトラクションにでも乗っているような事件が立て続けに発生し、本誌記者のみんなも連日徹夜で、病院送りになった者も数知れず……という感じだが、今回、私は政府の高官から得た情報で、また本誌記者を病院送りにしなければならないような事件を入手してしまった……
それはなんと! フェルフェリアさんが柏木大臣と結婚し、日本国籍を取得しているという情報を入手。
「ははは、さすがにそれはフカしてるんじゃないのォ?」と、以前フェルフェリアさんから頂いたメールアドレスに「冗談でしょ?」とメールをポポポと打って確認した所、アッサリと『はいケッコンしましたデすよ』というフェルさん語の返事が……
本当にその時は、よくありがちな“ほっぺをつねる”という行為をしてしまった……
そして、もうなりふり構わずこの原稿を執筆。デスクに持って走った。
今回、その情報ソースは、写真のメール文面しかないのだが、なんでも**日にヤルバーンホームページで発表されるという事だそうなので、読者各位におかれては、事の真偽は**日にヤルバーンのホームページで確認していただきたい。
※無料部分ここまで
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4名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
あ~よく寝た。変な夢だったなぁ……フェルさんが柏木の野郎と結婚だなんて……
って、ゲェェェェェェェェェェ!!
5名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
うそだぁぁぁ!うそだといってくれぇぇぇぇぇ!
6名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
柏木とフェルさんの熱い夜の流出画像ください。
7名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
>>6
氏ね
8名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
絶 対 自 保 党 に な ん か 入 れ て や ん ね ぇ
9名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
>>8
んじゃ民生で。
オマエは今日から和牛預託商法者の仲間入り。リスクはゼロ。
10名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
。・゜・(ノД`)・゜・。
11名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
(;´Д⊂)
12名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
ウワァァ━━━━━。゜(゜´Д`゜)゜。━━━━━ン!!!!
13名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
演る番HP確認した……マジだった……
14名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
柏木殺す……頃すじゃなくて殺すぅぅぅぅぅぅ!!!
15名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
俺はキャプテン派、なので勝ち組。ざまぁwwww
16名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
>>15
あんなエロケバラミアのどこがいいのか……あ、あれ? か、体が……
17名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
>>16
お前のレスをマジで演る番の質問コーナーへ投稿しました。さようなら。
18名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
>>16
さようなら
19名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
>>16
(TωT)ノ~~~ バイバイ
20名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
ってか、この桐山せつな……なんか最近飛ばしてるな。
どこからこんな情報仕入れてくるんだ?
21名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
桐山せつな (きりやま~)は、ルポライター。元週刊時事編集。……関西造形芸術大学 文学部卒業。
柏木真人 (かしわぎまさと)は、ゲームデザイナー・ビジネスコンサルタント・前内閣官房参与・現内閣府ティエルクマスカ特命担当大臣……関西造形芸術大学 芸術プランニング部卒業。
(Netwikiより)
どうよ……
22名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
マジかよ、同じ大学の同期?
23名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
でも学部違うじゃん……ハッ!……まさか!
24名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
おまいら考え杉。桐山はあれで顔広いからな、そこんとこだろ。
案外週刊時事が政府のプロパに使われてるのかもよ。
25名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
って!……いまえら! いますぐtれれびみろ! んhknhk!!!
26名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
>>26
落ち着け、どしたん。
27名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
フェルさん、衆議院に出馬とか言ってるぞ!!!!!!!
28名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!??
29名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
え? 柏木じゃないの? 2日前に噂立ってたじゃん。
それが正式に発表になっただけじゃないのか?
って……テロップ出た……マジデスカ!!!!!
30名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
(」゜ロ゜)」おぉ(。ロ。)おぉΣ(゜ロ゜」)」おぉ「(。ロ。「)おぉ~
31名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
エエエェェェェェェェェェェ(゜Д゜)ェェェェェェェェェェエエエエ
32名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
(゜Д゜;≡;゜д゜) えっぇっえっ?!
33名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
日本名は柏木迦具夜って……ああ、フェルさん……本当に人妻に……
俺、並行世界の嫁でいいや……
34名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
んなどころじゃないだろ! 自保党、何考えてんだよ……
サプライズどころの騒ぎじゃないだろこりゃ……
35名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
あ、中継入るぞ……
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………………………………
『自保党本部前です……えー、先ほど記者クラブに入った情報で、自由保守党は、イゼイラ星間共和国、及びティエルクマスカ銀河共和連合議員のフェルフェリア・ヤーマ……失礼、カシワギ・ナァカァラさんを、次の衆院選挙、比例代表区近畿ブロックへの登録を行ったと発表がありました。詳細はまだわかっておりませんが、えー、このあと7時より、自由保守党、春日 功幹事長が記者会見を行うという予定になっております……あ、ちょっと、待って下さい、フェルフェリアさんですね。今、フェルフェリアさんを乗せた車が自保党本部の地下駐車場へ入っていくようです』
『前田さん、前田さん?』
『……はい?』
『えー、先ほどのフェルフェリアさんが、柏木大臣と入籍したというニュースが飛び込んできましたが、今回の出馬はそれと何か関係があるのでしょうか?』
『……はい、その点はまったくまだわかっておりません。ただ、先ほど自由保守党の島田幸治政調会長にインタビューしましたところ『柏木大臣と、フェルフェリアさんの入籍話は以前からあった。おそらく、その関係で日本国籍の取得が当初の予定より早まったため、二藤部総理は今後のティエルクマスカ関係のために出馬を要請したのではないか?』と話していました』
『わかりました。ありがとうございます』
『はい、また何か情報が入り次第お伝えしたいと思います。自保党本部前でした』
NHKのニュースは、かような特番が入り、いつもの19:00を待たずして番組に入る。
他の民法はそのあたりは可哀想なものだ。ゴールデンタイムに入るので、いつのもプログラムで番組を流す。しかし、画面を縮小して、下部に自保党本部の映像を小さく出し、テロップで状況を流している……
……二藤部が解散を表明した後のある日……
現在、解散を決定する臨時国会がまだ召集されていない。
辞表の取りまとめは既に行われている。しかし、この解散国会がまだ行われていないのは、予想以上にティ連側の動きが早いため、まぁいってみれば各お役所の役人がてんてこまいになってしまっているからである。
今「バンザーイ」をやられたら、お役人の皆さんが困ってしまうという話。
なので、解散国会はちょっと遅れて行われる予定。
なんせ異例尽くめな今の日本政治……例外があまりに多すぎるのだ。
辞表を提出しても、閣僚のみなさん、次の政権での引継ぎが終わるまではまだ大臣だ。
各官庁から上がってくる書類を認可しなきゃならないので、自分の選挙活動もおぼつかない。
日本では、今までにいろんな選挙前後の出来事があった。
かの、米百俵で有名になった政治家の、郵政問題でもめた解散選挙が今思えば発端だったか?
その頃から、政治、選挙がショーになった。
いかに投票率を上げるか? そして投票率が高かったか?
そんな事も、後に「選挙の値打ち」として語られる時代になった。
ご多分にもれず、今回も自保党はサプライズをぶちかます。
とはいえ、別にサプライズをやろうと思ってやっているわけではないが、結果的にそうなってしまう。
自保党は、ヤルバーン自治体と協議し、更にもちろん柏木夫妻とも話し合い、柏木とフェルの入籍と、フェルの比例代表区候補を正式に公表する事にした。
かの解散表明後、突如入ったこのニュースに、各マスコミ、それはもう
「はぁあぁぁああぁぁぁああぁ!?」
となる。
もう記者のみんなは『二藤部ぇぇ! アンタ何をやらかすんじゃ!』ってなもんだろう。
フェルの入籍スクープを第一報で発信したのは、週刊時事の桐山せつな……つまり玲奈だ。
玲奈さん、後に会社から物凄い金額の報奨金をもらったそうで、家の残りのローンを完済できたとかなんとか。週刊時事史上、最高の部数が飛ぶように売れたという話。売り切れ店が続出したそうで、週刊誌としては異例の増刷を行ったという事だそうな……玲奈は今後、柏木に足を向けて寝れない……
『……はい、ニュースの途中ですが、フェルフェリア・カシワギ・ナァカァラさん比例名簿登録についての記者会見が行われるようです。自保党本部から中継です』
ニュースは、自保党本部記者会見場へ中継を変える。
画面下部には【自保党本部・中継】と小さく表示されている……
………………
記者会見場に入るは、自保党幹事長の春日功。
背筋を伸ばして、コワモテなニコニコ顔で、記者達に笑顔を振りまく。そして演壇へ。
春日は小声で「はいどうぞ」というと、進行係が「フェルの立候補に関する説明を行う」と一声かける。
今回の記者会見は、なんだかんだいって自保党という一政党の会見だ。首相官邸記者会見のような形式ばった感じではない。
自保党ロゴと、マスコットが交互に組み合わされたバックボードを背景に、春日が、巷で有名な独特の声色と丁寧な口調で説明を始める……
「えー、本日はかような報告で、記者の皆様にお集まりいただき、大変感謝いたします。もう、すでにいろんな報道、や、我が党が、記者クラブの方々へ既にお伝えいたしましたとおり……今回我が党公認で立候補いたします……ティエルクマスカ担当特命大臣をなされている柏木真人氏の、奥方様であります……フェルフェリア・カシワギ・ナァカァラさん。戸籍名は柏木迦具夜さんですね、この方ヘ……我が党の比例区近畿ブロック代表枠から、立候補者名簿に登録させていただけないかと、お願いを申し上げ、快く了承を頂きました……この事をまずご報告させていただきます……現状、我が党から国民の皆様へ、ご報告できる情報は以上です。何かご質問がありましたらどうぞ」
春日はいつもの調子で、上目遣いで言葉を節々で切るような丁寧な口調で、とりあえずの報告を記者達に行う。
そして質問を催促すると、もうそれは槍を掲げるがごとく記者達から手が上がる。
「はいあなた、どうぞ」
「えー、朝晴新聞の山口と申します、あのですね、フェルフェリアさんが立候補するということですけども、国籍などの方はクリアしてるのですか?」
春日はウンウン頷いて
「ええ、それは問題ありません。現在彼の方は、柏木先生と入籍なされて、一般帰化申請に基づく日本国籍をもっておられます。従いまして何の問題もございません……はい、あなた」
「産業新聞の大竹です。あのー、一つ疑問に思うのですが、確かイゼイラでは、多重国籍を連合の憲章か何かで公に認めていましたよね。そのあたりは現状どんな感じなのですか?」
「はい、いい質問ですね……仰るとおり現在フェルフェリアさんは、イゼイラ共和国と我が国の多重国籍者であります。しかしながら……先般報道にもありましたとおり、ティエルクマスカ連合で、日本国は既に『加盟みなし国』として登録され、既に加盟したという前提で話が進んでおります……これは我が党よりも法務省の方へ確認していただきたいのですが、彼女は、かようなティエルクマスカ連合憲章との、法の摺り合わせの意味も含めまして、諸々の国籍に関する法制を考慮した結果、二重国籍状態を維持してもよいという法務省からの見解も含めまして、合法的な立候補が可能であると、そういう判断を頂いております……はいあなた」
「毎朝新聞の下崎と申します、えっと、では、フェルフェリアさんのティ連と、イゼイラの議員資格についてはどうなっていますか? 確か、ヤルバーン自治体の資料では、終生議員ということだったと思いますが……他国の国家議会議員が日本の議会へ立候補するということは可能なのでしょうか?」
「はい、その点もフェルフェリアさんご自身が、既に解決なされております……彼女は、既にティエルクマスカ議会と、イゼイラ議会に『休職届』を提出しておりまして、既に両国の議員資格を停止している状態です……もう既にご存知かとは思いますが、フェルフェリアさんは辞職することがかないません。従って、かような形で、ご処理なさっていると聞いております」
やはり記者達は、フェルの国籍、ティ連とイゼイラの議員資格について矛盾がないかを色々と質問してくる。
しかしまぁ、法務省が良いと判断しているのなら、それ以上突っ込む意味もない。
「はいどうぞ、あなた」
「朝晴放送ニュースパワーの西川と申します。幹事長、先日は番組出演ありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそ」
春日はニっとした笑顔でその言葉に応じる。
「えっとですね、先ほど、この自保党本部にフェルフェリアさんを乗せた車が入っていったように思いますが、フェルフェリアさんご自身の記者会見というものはあるのでしょうか? もう一つ、なぜフェルフェリアさんを立候補させようかと思った理由ですね、それをお聞かせ下さい。巷ではサプライズとか、そんな感じで見ているところがどうもあるようですので、何か有意義なと言いましょうか、理由があればお願いいたします」
春日は嫌な顔ひとつせずウンウンと頷く。
もしこれが三島なら、進行係に『質問は一人一つだろ? じゃぁどっちかに絞って』とかイヤミの一発も言っているだろう。
「まず、記者会見ですね。まぁ今後のことはどうなるかわかりません、が、今日に限って言えば、それを行う予定はありません。理由はまぁ、現段階ではまだ名簿に載せるということだけですのでね……あと、今後彼女は、日本国の法令に従って頂く立場の方になり……ティエルクマスカの、所謂マスコミ禁止法も適用外になりますので、記者会見や、何らかの番組出演なども、可能な状況になりますから、その点は我が党広報を通じてご相談、ご依頼して頂ければよろしいかと思います……」
春日は、フェルが今後、ティエルクマスカ憲章に則り、日本で生活してく限りは日本の法令を遵守する立場になるので、マスコミの取材も普通に可能になると話す。
そして、連合の主権国家法優先規定に則って、営利活動目的のマスコミに関しても、日本国内に限ってのみ可能であるという話だそうなので、心配いらないのではないか? と話す。
そして、今後は自保党としても公示前までは、フェルにテレビ番組への出演なども依頼してみたいと話す。
「ただ、我が党としましても、フェルフェリアさんは現在イゼイラ共和国では法的に一般市民ではありますが、また、みなさんも既に御存知の通りの『かぐや姫』のモデルになった人物の御子孫でもあり、かつ、旧イゼイラ大皇国の帝位継承者で、休職中とはいえ、『旧皇終生議員資格者』という、イゼイラ貴族制度を代替する制度の、資格者ということでもありますので、相応の敬意を持った対応をさせて頂いております。従いましてマスコミ各社におかれましても、日本国民のモラルとして、その点を勘案した対応をお願いいたしたく思います……あと、何でしたっけ? あ、立候補させようという理由ですね?……はい、これも先のお話に関わりますが……」
彼は、これも現在各省庁で進んでいる連合憲章と、ティ連議会制度の共通化への試金石として、フェルに立候補をお願いしたと語る。
つまり、他国の元議員が、別の国で議員を行うという事がティ連では常識であり、今後日本もそういった制度や慣習を取り入れていかなければならないので、そういったところも総裁、つまり二藤部がフェルに相談した理由だと話す。
するとニュースパワーの西川はこういうことを言う。
「では、もしそういったティ連との中立性を考えるなら、自保党公認の無所属でも良かったと思うのですが如何ですか? やはりそういった面、国民はサプライズという目で見ていると思うのですが」
「あのですね……彼女は今回初めて、右も左もわからない日本国議会への出馬となるわけです。そして、我が政権与党の自保党は、ヤルバーン事件の折より、フェルフェリアさんには、現在までの国交、そして連合加盟と大変お世話になっている方で、今回も彼女自身が今後の我が国と、連合の架け橋になるためにと、そういう崇高な理念の基に、我が党の要請を快く承諾していただいたわけです。ならば、当然我が党が最後まで責任をもってお世話するのは当然のことでしょう? 違いますか?」
春日は西川へ畳み掛けるように、かの口調で淡々と話す。
「それを単にサプライズとか、バーゲンセールの目玉商品じゃないんですから……そういった視点で見るという事は、それは彼女を冒涜することになりますよ? それ以上に、あなたのいう『国民』というものが、イゼイラ共和国の国民を冒涜している事と同じ意味になりますよ、今後我が国は日本国という、主権を持ちながら、世界初の銀河連合国家の一員としてやっていくわけです。そして、この件に関しては、イゼイラ共和国も、日本国に対し、数々、不明な点などなど、それは真摯な協力をして頂いております。それをサプライズという言葉で表現することは、如何様な意味を連合加盟国へ発信することになるか、そういう点をお分かりになっていますか?」
「あの、しかしですね……」
「はい、ではあなた」
春日は、ちょっと眉間にシワを寄せて西川の反論を無視し、次の記者へ質問を回す……
この記者会見を見るお茶の間のみなさん。
ネットで西川の行動へ即座に反応が返る。
【銀河連合】柏木ティ連大臣フェルフェリアさんと結婚part20
100名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
なるほど、ティ連でマスコミ禁止法が出来た理由がよくわかった。
そりゃ出来もするわwww
101名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
安心のNパワクオリティwww
102名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
西川、マスコミ禁止法の正当性を自分で証明してどうすんだよwww
103名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
こりゃ、主権国家法優先規定だっけか? マスコミ関連の法は適用除外になるかもなwww
104名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
後の西川事件である。
105名前:名無しさん@未知との遭遇 201*/**/**(*)~
西川が日本のマスコミを潰した……英雄じゃんwwwwww
そんな会話がなされていたり。
しかしまぁ、このサプライスという話。ほんとのところは……あったりするので、西川記者もかわいそうなものだ。
他の記者も、本当はそれを聞きたくてウズウズしているのだが、相手は『畳み掛けの』の春日だ。
あえて聞かないのにこの始末……何事も「考えてもの言え」の見本みたいなものだろう。
西川記者、他の記者から死線を浴びせられてオロオロしているようである……恐らく担当外されるかもしれない……
………………………………
自保党の会議室で、その映像を観るフェル。
自分が日本の議会選挙に立候補しただけで、こんなに大騒ぎになるのかと、真剣な顔でテレビ画面をみつめる。
これは責任重大だと感じ入る。
イゼイラや、ティ連加盟国では、こんな事まず時事バンクにアップすらされないだろう。まぁもしアップされるとすれば、『フェルという大物が何かした』というだけの話で、仮にフェルがダストール議会議員になったとしても、多少話題にはなるだろうが、『話題』程度のことで、こんなに国を挙げて大騒ぎになるような事はないだろう。
フェルは隣にいる清水議員に思わず尋ねてしまう。
『シミズセンセイ……』
「え? は、はい、何でしょう」
『私がかような、ニホン国として話題性のあるフリュであることは、自分でも重々承知しておりますが……でも、ここまで大騒ぎになるような事なのでしょうカ?』
すると清水は、自分も親がそういった類の、日本では有名な議員の二世であるだけに、やはり同じような目にあったことがあると話す。
「……しかし、フェルフェリア先生の場合は、いかんせん『異星の方』『外国貴族出身者』『外国人議員資格所有者』『超巨大国家の議員』『日本初の合法二重国籍者』『異種族婚姻者』おまけに、今日本でも有名な柏木先生の奥さんですからね……もう私もいろんな所謂『サプライズ』を知っていますけど、今回のフェルフェリア先生の場合は、日本どころか世界的に異例ずくめですから、そこのところは仕方がないですよ……はは、この話題で、柏木先生の立候補の話、マスコミさんも、もうどうでも良くなっちゃったみたいですしね」
『フ~ム、そんなモノなのですカ……確かに、言われてみればソウですね……』
いかんともしがたいが、やっぱりフェルはそこのところ、どうしても自分の尺度で見てしまう。
「もう議員の間じゃ、『政界のヤルバーン事件』なんて、そんな事いってる人もいますよ」
『え? あ、ナルホド、ウフフフ』
そんな雑談をしていると、清水がフェルにある提案をしてきた。
「あ、そうだフェルフェリア先生」
『ハイ、何でしょう?』
「先生はもう、ほぼ当確間違いナシでしょうから、そういうところでご相談なのですけど」
『ハイ』
「もし当選なさったら、私達の作る『新清風会』に入りませんか?」
『シンセイフウカイ? 何ですか? それは』
「若手の議員で作る政策勉強会ですよ……まぁ所謂、派閥の一種ですけどね」
『ハバツ、ハバツ……』フェルはその言葉をVMCモニターで検索すると……『ア、ソウイウ事ですか。フーむ、マァ、特にお断りする理由もアリマセンが……』
でも、とフェルは……
『マサトサンも一緒ではダメですか? ヤルバーンの事前調査ですト、マサトサンも当選確実だというポジティプコードが出ていますが』
「まぁ柏木先生も当確間違いないでしょうけど……それはちょっと無理ですね」
『エ? どうしてですカ?』
「はは、やはりそのあたりはまだお分かりになりませんか。えっとですね、柏木先生はわが党の重鎮で吉高派という派閥の親分さん、吉高先生の後継という形で出馬しています。ですんで、柏木先生は吉高派という派閥へ入る事に、イヤでもなってしまうんですよ」
『フムフム……』
「で、フェルフェリア先生ぐらいの方になれば、そりゃいろんな派閥から誘いが来るでしょう。大きな声では言えませんが、あなたの立場を、派閥の勢力拡大に利用しようとか、そんな議員も正直言っています」
『ナルホドナルホド……マァ、イゼイラ議会にも、そういった感じで政党同士のやり取りはありますからネ……』
フェルは、同じような事は、形を変えて、どこの国家の議会でもあると話す。別に珍しい事ではないと……他国の議員がスカウトされて、別の国の議員になるのも、それに似たような感じだと。
ただ、フェルは旧皇終生議員なので、そういった派閥や政党に属する事をイゼイラ議会では禁止されていたので、イマイチピンとこないとも話す。
「ええ、で、私達の会派は、新人議員が多くいますし、派閥なんて大層なものではなくて、所謂勉強会、政策研究会みたいな感じの組織ですから、新清風会に入っておいた方が良いのではと、そんな感じです。どうですか?」
『ワカリマした。一度マサトサンと相談してみますネ』
「ええ、そうなさってくだささい。多分、柏木先生も私の言っている事、わかっていただけると思いますよ」
『ハイです。お誘いありがとうござまス』
ペコリと礼をするフェル。
なるほど、やはりニホンでも、イゼイラのような政策集団のやりとりみたいなものがあるのかと思う。
これはなかなか興味深いと。
ただこれが政策集団だけなら良いが、『利権集団』の一面もあるのが、悲しいかな事実である。
フェルに『利権集団』という概念を理解できるかどうか、これもフェルとして今後の調査対象でもあり、勉強課題となるのだろう。
しかし、これでもフェルとてベテランのイゼイラ議員だ。
『新人』といわれる事に、ちょっとクスクス笑ってしまう。
(私が新人議員サンですか、ウフフフ、マァ、確かにソウかもしれませんね、ウフフフ)
心の中でクスクス笑うフェル。
……と、そんな話をしていると、愛するダンナ様が会議室に入ってくる。
「いやぁ~……大変だなこりゃ……あー、まだフラッシュの残像が残ってるわ……」
目を瞬かせてやれやれだという柏木。
本部ビルへ入る前に、もうマスコミからもみくちゃの質問攻めにあったという話。
「何時頃からフェルさんとお付き合いしていたか」「プロポーズの言葉は何だ」「フェルさんの政界入りを見越した結婚か?」などなど、政治部から芸能レポーターまで入り乱れての質問合戦だと。
それを聞く会議室の議員は爆笑。
「で、何てお答えになったのですか? 柏木先生」
「無視ですよ無視無視。付き合ってらんないですわ清水先生……貴方の気持ち、良く解りました」
みんなして「今さら何言ってるんだ」と笑う。
フェルも口に手を当ててクスクスと。
『ウフフフ、だったらキグルミを使えばいいのに』
「いや、そうもいかんでしょ。キグルミ使ったら使ったで、そんな変装でここ入ってこようとしたら、関係者向けの質問浴びせられるだけだし……」
『ナラ、光学遮蔽迷彩使えばいいじゃナイですか』
「あ、そっか……そんなのもあったな……忘れてた……」
とまぁ、こんな雑談で場を和ます柏木とフェル。
「あ、それでさフェル」
『ハイ?』
「党員登録とか、その手の手続、俺もだけど、終わったそうだから」
『ソウですか、では私も晴れてジホトウの候補者サンですね』
そういうとフェルは立ち上がって、会議室の議員に
『デハ、みなさま、暫くの間、お世話になるでス。よろしくお願いいたしまス』
とティエルクマスカ敬礼で、深々と礼。
会議室からは拍手が起こる。あとは公示日を待つばかり。
しかしその間でも、テレビ番組の出演とか、そんな仕事がたくさん待っている。
公示日以降は、候補者個人がテレビ番組に出演したり、また局が特定の政党や候補者を取材、出演させることが禁止になってしまうので、選挙運動期間中もさることながら、こういう公示前までの日も、そりゃ忙しいのだ。
おまけに柏木は次の政権まで……ってか、当選したあとも、この大臣だろう。
もう今やイゼイラでも刻々と状況が動いている。正直自分の選挙活動なんてできるのか?と、
それぐらいもう、柏木の人生でこれ以上ないぐらい忙しい日が待っているのだろうと……いやはや、大変である。
「で、フェルさ、多分、選挙期間中なんだけど、俺達大阪で生活することになるかも。相談なしで悪かったけど、仮住まいの家とか、もう借りたから」
『ヘ、オオサカですか?』
「ああ、俺が小選挙区だろ。なんで、選挙事務所とか、支持者さんの集会に出なきゃなんないとか、そんな感じでさ……あまりそういうことはナシでって、三島先生に条件付けたんだけどなぁ……」
『ナルホドなるほど。ウフフ、仕方ないですよマサトサン。支持者サマあッテの選挙です。そこは疎かにしてはいけませんヨ』
「フェルは比例区だもんなぁ……気楽でいいよなぁ……」
『何を言っているデスかマサトサン。私も他の候補者サマの応援なんかにも行かなきゃなんないみたいデスよっ。『キャクヨセパンダ』サンです。もうこうなったら、最強の『キャクヨセパンダ』サンになってやるですヨ。自保党立候補者サン。全員当選させてやるでス』
フンムという表情で、両手を腰に当てるフェル。
会議室の諸氏から「女将さんたのんまっせ」と声が飛ぶ。
今回の選挙、このフェル立候補の一件があって、巷の下馬評でも圧倒的に自保党が優勢で、単独過半数も夢ではないという感じである……
……………………………
……日本とヤルバーン、そしてイゼイラとティエルクマスカ。
日本の銀河連合加盟は、それぞれの世界でも、大きな変化を見せつつあった。
ヤルバーンでは、その組織や人員に大きな変化があった。
……ポルは、フェルの衆議院選挙出馬が決まってから、調査局の局長に昇進した。つまりフェルの後任である。キグルミシステムや、その博識さが評価された。
そしてリビリィは、なんと自治局の局長になった……つまりシエの後任だ。
これはシエの推薦もあっての事だそうな。フリンゼのフェルを、友人として心の支えになり、いつも守ってきた、その活動が評価された。
ジェルデアは防衛事務次官、河本との会話のとおり、主任のままではあるが、日本との連合憲章調整専属官として頑張っている。
ヘルゼンも部長職のままではあるものの、彼女も日本国官公庁専属折衝官として、霞ヶ関とヤルバーンを行ったりきたりだ……そんな途中でちょっと時間を空けて、長谷部と会っていたり……
オルカスも局長職のままだが、今後活発化が予想されるヤルバーンへの入境。そして将来的なティ連各国への日本からの渡航など、そういった入国関連の法整備に頑張っている……ちなみに未だ彼氏ナシ。三十路美人でも良いという方はどうぞという感じ。
そして、『カグヤの帰還』作戦臨床被験者であり、イゼイラ軍臨時総佐であるニルファは……
「このニホンに滞在できるのも、もうそんなに長くないのですね……」
『そうだな……ニルファ、この国が気に入ったのか?』
「ええ大変に……サイヴァル、このあいだ、私、“ウミ”へ遊びに連れて行ってもらいましたのよ」
『ウミ?……ああ、海洋の事か?』
「はい。ファーダ・カシワギのお仲間達と一緒に」
『ははは、そうか、楽しかったかい?』
「はい、とても……ミズギなんか何十周期ぶりに着たかしら? ウフフフ」
『おー、私も見たかったな、その姿は、ははは』
「あらあら……では、あとで映像データを送りますわよ。堪能なさってくださいね」
『ああ、そうさせてもらおうかな?』
ニルファは今、件のゼルシミュレーションルームで、サイヴァルと話していた。
まぁ、要は家内とデートというヤツだ。
サイヴァルとニルファ、折を見てはそんな感じで、お互い仮想造成ではあるものの、こうやって会っていた。
そして、二人して日本の報道番組を視聴している。
『やっとここまで来たんだなぁ……』
ニュースを見て感慨深げに話すサイヴァル。
「私は例の病でしたのでよく存じませんが、資料を見せていただく限り、ここまでくるのに相当な紆余曲折があったようですわね」
『ああ……しかし彼が……』サイヴァルは画面に写る、マスコミのフラッシュから逃げるように自保党本部へ入っていく柏木を指差して……『ケラー・カシワギがいたからここまで来れた』
「それと、フリンゼとの出会い……ですわね」
『ああ、そうだな……ところでニルファ、二人から式の話などは聞いていないのか?』
「いえ、まったく……」
『そうか……ふむ、あ、いや、マリヘイルからその事を聞いておいてくれと頼まれてな……彼女、また何か企んでいるみたいだが、はは』
「ウフフ、なるほど。でも……今でもこの状況ですから、まだ少し先ではないかしら?」
『みたいだなぁ……』
サイヴァルは、マリヘイルがまた何か各国の首脳とコソコソやっているとか、そんな事を笑いながら話す。
詳細を教えろといっても、教えてくれないらしい。なんでも「さぷらいず」だと地球語で言っているという……ってか、自分もその『各国首脳』の一人じゃないかと笑って話す。
まぁ友人なので、一番後で聞かせて驚かせてやろうと思っているのだろうと。
「ああ、そういえばサイヴァル」
『ん?』
「あのシエにも、どうやらデルンサンが出来たみたいですよ」
……その言葉に……サイヴァルは顔をゆっっっくりとニルファに向けて……
『は?』
と一言。
「いえ、ですから、シエにもいい人ができたと……」
『え?……あ……い、いやいやいやいや、ちょ、ちょっとまて。それは聞き捨てならないぞニルファ……その情報は確定なのか?』
「え? ええ……この間、例の『ウオツリジケン』で休暇をもらったそうなのですが、オキナワケンというニホン国の自治体で、お相手のデルンさんを一日中引き連れまわして遊んでいたと……あれは確実に『セルメント・テスタール』ではないかと、カグヤの乗員が言っていましたけど」
『セ……セルメント・テスタールだと?……シエがぁ?……本当なのか?……ハハ……』
……セルメント・テスタールとは、ダストール人が……まぁ好いたデルン相手に行う求愛行動の事だ。
ダストール人女性は、リアッサのように普通にコクって相手をゲットする、まぁよくある行動の他、長いこと一緒にいるのに、フリュの行動行為、身持ちに気づかす、なっかなか相手が言い出してくれない『朴念仁相手』には、その相手を外に連れまわして……それこそ一日中相手から離れずに、市中引き回しの上、遊び呆けるという、そういう求愛習慣がある……なんせ一日中、朝から寝る前まで耐久レースのように連れまわされるのだ。その荒行の如きデートにきちんと応えてくれれば……機を見てフリュの方から告白するというのが一般的に言われている事らしい……
「ええ、お相手のデルンさん、シエに見事お付き合いしたそうですわよ」
『本当か!……シエのセルメント・テスタール……考えただけでも過酷そうだが……それに耐えるとは……相手はどんな方なのだ?』
「ええ、ケラー・タガワですわ。以前にも会議に出席していた方とかで」
『タガワ……タガワ……はぁはぁ、あのフィブニー飛行型機動兵器部隊の! あ、なるほどなぁ……』
サイヴァルは手を顎に当てて、フムフムと納得する。
相手が軍人……自衛隊員なら、セルメント・テスタールにも耐えるかと。
『しかし……それは色々問題があるかもしれんなぁ……』
「え? どうしてですか?」
『まず、テスタールやった後のシエの告白に「ウン」と言ってくれるかだ……いかんせん相手がニホン人だ。ダストールの習慣のことなぞ知るまいし……そんなデルンにテスタールなんぞやったら、嫌がらせと思われるかもしれん……イゼイラ人でも、ダストール人と付き合っているデルンは、アレをやられたらかなわんから、ダストール人フリュの気持ちを良く観察するのだ……で、もしその、ケラー・タガワがシエの告白を断ったら……大変な事になるぞ……あ~……考えただけでもゾっとする……どうせシエの事だ。その場では堂々と振る舞うが、影でオイオイと泣きぬれて、ガッカリして、憔悴しきった後の行動……震えが来るぞ……その反動がフリンゼとファーダ・カシワギに……いやいやいやいや……』
サイヴァルがおどけて身震いしながら話すと、横でニルファがコロコロと笑っている。
『あと……それと……これは真面目な話だが……ロッショ家がどういう反応をするかだな……』
「ロッショ家……あのダストール三大派閥ですわね。シエはロッショ家の長女だということは知っておりますけど、それが何か?」
『ああ、ニルファは例の病で知らないだろうが……彼女はダストールの総統候補なのだよ……』
「ええええっ! そ、そうなのですか!!」
『ああ、で、シエは三大派閥以外の有力派閥から……まぁ、その、なんだ……シエのあの容姿だしな……シエに婿養子をとか、逆に嫁にくれとか、そんな話もそりゃ頻繁に出ていてな……シエはそれが嫌で、家出同然で防衛総省に入隊したのだよ……防衛総省に入ってしまえば、いくらロッショ家でも手が出せんからな……』
ニルファは口を尖らせてその話を頷いて聞く。
「ロッショ家当主はどう思っていらっしゃるんです?」
『まぁ、当主もシエの性格や、能力は良く知っているから、半ば家公認の家出みたいなものだそうだ……そりゃそうだろう。下手にシエを政略ミィアールさせてしまっては、ロッショ家の実権が乗っ取られる可能性もある。嫁に行くのならいいが、婿養子の場合はちょっとな……相手も色々考えての事だろうし……あと……』
「あと?」
『シエには、随分と歳の離れた弟がいてな。その弟が家を継げば、シエ自身のゴタゴタも関係なくなる。で、その弟が配偶者を取れば、普通にロッショ家もやっていける……まぁ、そういう考えも彼女にあるのだろうと思うよ……』
……ダストール人の文化習慣では、その家の家長は、基本出生順で決まることになっている。
地球の場合、特に日本では『長男』が家を継ぐという感じの習慣が、古い家訓を守っているような家柄では、まぁ一般的によく言われるところである。
しかしダストール人の場合、男女関係なく出生の一番早い者が家系を継ぐ習慣がある。つまり、現状ロッショ家の継承者はシエなのだ。
しかしダストール人は、ティエルクマスカ世界でも、とても義理堅い種族ではあるものの、それ故に非常に保守的な種族で通っており、特に政治の世界では、女性家長は男性家長よりも、その地位が低く見られてしまうという風潮がある。
なので、必ず女性家長の政治家の家には、嫁入り話や、婿養子の話が舞い込んでくる。
嫁入り話の場合は、年下の長男を家長にするために。婿養子の場合は、その家の、政治的な権限を婿養子に……と……
他の分野でそういう事はないのだが、こと政治に関しては、そんな習慣が未だに残るというそんな種族なのだ。
なので、もし仮にシエが家長としてダストールの総統に当選し、ダストール総統になったと仮定した場合、シエ自身が総統であっても、婿養子を取ったとすると、その政治の実権は婿養子の家が握ってしまい、他の政治家達も婿養子の家に従属してしまうという事が充分にありえるのである。
しかも、シエはダストール国民に、その美貌も相まって非常に人気のある人物なのだ。
婿養子を狙う派閥は、当然家柄だけではなく、シエ自身の個人的なところでいろんな事を狙ってくるところもあるだろう。
そしてシエの能力についてこれる婿候補がどれだけいるのかという話もある。
実は……シエの防衛総省七不思議の一つ……『シエのような美人に何故デルンがいないか』とは、これが理由だったのだ。
つまり……もし彼女が仮に総統に当選した場合、総統としての実権をロッショ家に持たせるためには、彼女が『独身』であることが一番いい……という事である……
そう考えると、なんとなくシエが、今のままでは将来に希望を見出せず、お家のゴタゴタが嫌になって家を出てしまった気もわからなくはない……
総統候補としての自分を考えると、嫁入り話や婿養子の話が来ない防衛総省に逃げ込めば、時を見て防衛総省を退官して電撃立候補し、独身で総統をやればいいという考えもあるし、そして防衛総省にずっといて……弟が立候補して勝ってくれれば、普通のフリュでいられるし……そんなところもあるのだろうとサイヴァルは話す。
だからサイヴァルは、多川に対してシエの告白に「ウン」と言ってほしいと話す。
そうすれば、日本人という全然ダストールの習慣とは関係のないデルンが婿になるので、ダストール人への嫁入り話や、婿養子話も消えてなくなる。
で、シエが日本にずっと住みたいというのであればそれで良し。弟を家長に据えればいいし、もし多川がダストールまで付き合ってくれるというのなら、立候補して総統当選、そんでもって多川は総統のダンナということで丸く収まるし、まさか多川がダストールの政治実権を握ることなんてないだろうと……
何気にとんでもないことを言うサイヴァルだが、そんなところだと話す……
シエさんの家、そしてダストールの政治、なんとも複雑なようである……
しかしシエの気持ちは……要は、普通のフリュな生活がしたいだけという、以前、城崎でグチったこと……即ち、あれである……
………………………………
さて、柏木とフェルさん。
さっそく選挙の事もあって、大阪は吹田市の山田へやってきていた。
そのマンション。駅に近い3階建の新築である。
選挙期間中と、選挙後、暫くの間の仮住まいなマンションで荷物の梱包を解いていた。
部屋の間取りは3LDK。夫婦で住む分には、割と普通。
借住まいなので、それで十分である。
本当は2LDKぐらいでもいいのだが、来客の事もあるので3LDKぐらいにした。
フェルと柏木がこのマンションに来た時、
「フェルさんと柏木が来た!」ということで、一時騒然となったが、そこは両者とも日本の政治家と、イゼイラの高官である。
すぐにSPが付き、ポリスボックスが出来る。
近隣の違法駐車は徹底的に取り締まられ、当初はマンションに出入りする住人のカバンまでチェックされた。
引っ越し挨拶の品物も、公職選挙法に触れてしまってはヤバイので、万全を期して渡すことも出来ず、近所に迷惑をかけると引っ越しの挨拶をして、代わりに一緒に写真を取らせてあげたりと、そんな感じでお騒がせを詫びに行く。
いやはや、有名になるのも良し悪しといったところである。
仮住まいとはいえ、期間中はここで生活するので、相応の引っ越し荷物があっても良さそうなものだが、その荷物の数は少ない。
大きめのダンボール箱数個分だ。家具もない。
しかし……
『サテ、マサトサン。これはどこに設置しましょう』
「ああ、そうだな……あそこの部屋空くから、専用にしようか」
『ハイです……んしょっと……で、これはどうしますカ?』
「あー、それは当面の生活に一番重要だからな……ここに置こうか……」
『ハイです。では……』
「あーフェル、それは重いから俺がやるよ、フェルはこっちやってくれるかな」
『ハイハイ』
そんな感じで、あまり時間もかからず、荷物整理終了。
そして……
『デは、マサトサン。入力したデータを造成しマすよ』
「おっけー、やってくださ~い」
フェルは居間に置かれた炊飯器ぐらいの大きさの機器に手をかざすと……
部屋へ光とともに、瞬く間に出現するのは、家具、食器棚、食器、冷蔵庫、テレビ、AV機器、寝台、カーテン、ソファー等……VMC仮想造成された家具類で、殺風景な部屋が、立派なイッパシの部屋に仕上がった。
フェルが使ったのは、野外活動用のVMCシステム。つまりゼルシステムだ。
これで仮想造成された、家具電化製品類が部屋の中へ一気に配置される。
「ふぃ~……ホント便利だね。ゼルシステムは……これでまたこの部屋引き払うときは、消して霧散させればいいだけなんだから」
『デスネ、あと、あっちの部屋に設置した簡易転送機で、東京のオウチとも行ったり来たりできるデスし……あまりオオサカに来たっていう感じがしませんですヨ』
「はは、確かにそうだなぁ」
なんともまぁ……すごい家だ。
言ってみれば、未来から来た猫型ロボットの取り出す時空間接続ドアが東京と大阪間で設置されているようなものである。
この簡易転送機は、ヤルバーン等が装備する本格的な転送機と違い、任意の場所から任意の場所への転送はできない。
転送機Aと転送機Bが置かれた区間のみの転送しか出来ないので、この大阪の借家と東京、柏木宅しか転送できないのである。
しかし、こういった二つの離れた場所を、まるで繋がった場所のように簡単に移動できるため、ティエルクマスカ世界では非常に重宝されている日用品だったりするのだ。無論、フェルの私物である。
「まぁ、おかげさんで引っ越し疲れすることもなく終わったからいいけど……ありがとな、フェル」
『イエイエですマサトサン、あ、お茶でも入れましょうか?』
「ああ、一息入れよう」
二人はソファーの上に座って、しばし雑談。
「で、報告書で見たけど……フェルは明日阪大病院に行くんだって?」
『ハイです。ケラー・マカベとコウセイロウドウショウの方から依頼がありまして、なんでもハンダイと、キョウダイと、トウダイに『異星種科』とかいう医療部門を作るそうで、そこで私達の身体データをとりたいからってお話がありまして、協力に行くでスよ』
「ああ、それで俺が大阪に行くって言っても、あんまり驚かなかったのか」
『ハイですね。おまけにオウチの場所をお聞きしたら、ハンダイに近い場所じゃないですか。有難いぐらいでしたデス』
ズズズと熱い日本茶をすするフェルさん。
今まで各大学病院の医師、看護責任者等々と、ヤルバーンで定期的に打ち合わせはやっていたのだそうだ。
その日程が明日というわけだ。
「で、阪大で医療機関っていったら、阪大病院だろ? その『異星種科』ってところで何するの?」
『アア、大したことではナイです。普通の健康診断だそうデスよ』
「なるほどね。異星人さん向けの医療研究にって奴か、んじゃフェルも血を抜かれたり、血圧を測られたり、放射線や超音波で検査されたりするんだな。ハハハ」
その話を聞いて、フェルはサーーーーっと血の気が引く。
『エ……今、マサトサン、何て言ったですか?』
「え? あ、いや血液検査で血を抜かれて、放射線や超音波あてられて内蔵とか骨格検査されて、んで、腕に圧力かけて、血圧検査されたり、検尿っていって、オシッコとられたり……」
『エ、エ、エ……そそそ、そんな野蛮な行為をするのデすか???』
フェルの脳裏に今浮かぶ映像は、恐らく……
腕を切られ、体に大きな管を入れられて、血をボトル一杯に抜かれて、しかも体をベッドに縛られ、高濃度なガンマ線や超音波でも当てられて体中が沸騰し、尿管から管を突っ込まれて、尿を取られ、腕に万力のようなものをあてられて、何か変な検査をさせられたり、三角形の台座を股がされて……いや、さすがにそれはない……
『ガクガクブルブル……わ、ワタシ……断って……くるです……』
すると柏木は、ぶはははと笑い……
「フェル、多分フェルの頭の中身で今考えてることは大間違いだから心配しなくていいよ、プ、ハハハハ!」
柏木も、フェルの様子を見て、大体何を考えているか察しがついた。大笑いだ。
フェルに、日本の健康診断がどんなものかを教えてやる……
『……ソ、そうなのですか……な、なぁ~んだ……ホ……』
「んなフェル……プ……どうせ多分地球の、中世時代にあった拷問みたいなのを考えてたんだろ、ククククク」
『ア~、笑わなくったってイイじゃないですカ! ち、チキューの遅れた医学なら、そ、それぐらいの事すると思ったですヨッ、フンだ』
「ははは、ハイハイ。悪かった悪かった。俺の言い方がマズかったな、まぁでも、あの血液検査は見ててあんま気持ちのいいもんじゃないからな。そこは俺も同意するわ」
『イ、痛いデスか?』
「ん? ま、チョッチな。で、あれで検便があったら、もう健康診断行くのイヤになるしな」
『ケンベン? なんですかソレ?』
柏木はフェルの耳元で、検便の何たるかを教えてやる……するとフェルは苦虫潰したような顔になって……
『エ゛~~キタナイですぅ……ハズカシイです~~……』
「でもな、それやんないと、大腸がんとか見逃すから、この地球じゃ大事な検査なんだよ。他に、胃カメラとか、大腸内視鏡検査とか、そんなのもあるんだぞ」
柏木は、口から飲む管状のカメラとか、ケツから突っ込むカメラの話等をフェルにする。
『エ゛~~苦じぞうだし……まずまずはずがじいでず~~ぞれっで本当に拷問じゃないでずがぁ~~……そんな事、地球人サンはよくやりまズねぇ~……』
「これでもこの地球じゃ、最新の医療技術なんだけどなぁ、ははは!……でも、フェルの方も、そういうのよく観察した方がいいよ。例の『発達過程文明』の調査で、医療分野関係の基本中の基本になる事だからね」
『フムフム、ナルほどです』
実際、ケツの方はまだマシだが……胃カメラはマジで苦しい……
確かに拷問に近い。ヘタクソな医師がやれば、最悪である……
……とまぁ、次の日、フェルは阪大病院へ向かい健康診断へ行く。医療データ提供のお手伝いだ。
柏木は、今大阪に来ている春日と打ち合わせのため、某市内ホテルへ赴く。
……ホテルで春日と、党の宣伝広報部と打ち合わせをした柏木は、解散国会の日程と、公示の日程を聞かされる。
そして、公示前に、いくつかテレビ番組への出演をしてほしいと頼まれた。
「はぁ、まぁ仕方ないですよね。今度は公選の議員に立候補するわけですし」
党が出演してほしい……というよりも、出演依頼が来ているのは、例の『委員会』を称する番組と、水曜日夕方5時からやっている地方ニュース番組だ。有名なシンクタンク社長が出ている番組である。
特集をしたいという話しらしい。
で、よければ両番組ともフェルと一緒でお願いできないかという話だった。
「フェルの方は何て言っているんです? 春日さん」
「ええ、もう日本人でもあるので、日本の法は遵守しなければということで、ティ連のマスコミ法とは関係なしに出演してくれるそうです」
そう春日が言うと、柏木もコクコクと頷き
「では私も出ないわけにはいきませんよね。わかりました……でも両番組とも、実は東京でも見ていますが……」
「え!? 見ていらっしゃるんですか? 柏木先生、あれって関西ローカルと、東京ではやらない番組ですよね?」
「ええ、まぁ……PVMCG使えば簡単に見れますから」
「ああ、なるほど……いいですねぇ、そのPVMCG。私もヤルバーンに取得申請だしてみようかな」
柏木が思うのは、片方は曲者ぞろいのコメンテーター。片方は、もう相当な情報量を持つシンクタンク社長だ。
正直……自分如きがうまい具合に立ち回りできるのかな……と、イゼイラ大議会で演説かました御大は心配する……
フェルはそういう点、大丈夫だろうなとは思う。なんせ議員歴は相当なものだし、そりゃダストール人やらカイラス人のようなクセのある種族とも議会でやりあったこともあろうと思うし、と……
その後、彼は春日とサウナに入り、ちょっと内密な話をする。
内密な話というものは密室でするものである。サウナというのは、そういう点、丁度いいのだ。
その内容というのは、今後の柏木とフェルの党内での位置だ。
この二人はもう当確と判断されているので、そういう前提で話は進む……なんせフェルは比例だし、柏木は対抗馬がいない。民生も立志も、共連も、この選挙区には候補を立ててこなかった……さすがに勝てる相手ではないと思ったのだろう。
春日は、柏木には当初の通り、ティエルクマスカ担当大臣を留任で、ということだ。
そして……春日は次の選挙で当選した後、二藤部より『ティ連通商活性化担当大臣』の打診を受けているという。で、彼はそれを受けるという話。
実は、春日と二藤部は、ティエルクマスカ連合防衛総省の安全保障面で、若干の意見の相違がある。
そのあたりで、二藤部より今度新たに創設される『連合防衛総省折衝担当大臣』の打診を受けていたそうだが、諸々の政治的理由で断ったそうだ……そして、もう一つの連合関係の重要な担当大臣である『ティ連通商活性化担当大臣』の打診を受け、今後の……党内の連携も含めて受諾したという話。
まぁ、春日も当確は間違いない人気閣僚なので、そういうところである。
「……なるほど、で、私は今後とも変わらずという感じですが、内密なお話というから、もっと私自身に関わる事だと思っていましたが……」
「ええ……で、お話というのは、フェルフェリア先生の事です。一応、旦那さんである貴方と……確かティ連の『名誉特務大佐』称号ですか? それを持つ貴方という立場でお話したいのですか……」
柏木はその言葉に、少々眦を鋭くさせる。
ティ連防衛総省特務大佐の称号。これの意味するところを、彼はこの地球の政治で聞くことはないと思っていたからだ。
「これは党としての『お願い』なのですが、先生に『連合防衛総省折衝担当大臣』を兼務して頂きたいのです……もしくは、フェルフェリアさんに依頼したいのですが、どっちにしても重要な担当大臣ですから、一応お話は通しておきたいと思いまいして……」
「なるほど……それは『総理も』ご存知なのですか?」
「ええ、もちろんです。というよりも、総理からあなたにお話ししてくれと頼まれまして」
「ということは、私の『名誉大佐称号』のあり方が『連合防衛総省折衝担当大臣』の役職とマッチする……という考えから……と受け止めていいのですね?」
「はい、そう受け取ってもらって構いません。そしてフェルフェリア先生の場合は、その線でお顔が広いというところです。如何でしょうか?」
柏木は、サウナの熱で吹き出る汗を拭いながら、しばし目線を左右に移しながら考えこむ。
確かに『ティ連担当大臣』時にも、同じような事をやってきたが、連合加盟となれば専門の役職として必要なのだろうと思う。
そして、フェルなら、ヘストルやサイヴァル、マリヘイルとはツーカーであるし、他国の首脳とも友人みたいなものだろう。こちらでも大いに役に立てるのは確かだ。
「……春日先生」
「はい」
「私はフェルの意見を尊重します。彼女が「良い」といえば、私にも異存はありません……彼女には彼女の考えがあるでしょう。そして、なんだかんだいっても、私とフェルは、議員一年生となるわけですので、他のベテラン議員さん達との兼ね合いも、実際の所あるのでしょう?」
「ええ、まぁそれは確かに……」
「私がティ連担当大臣を留任というのは、『留任』ですから、まぁ、誰しも納得するでしょうが、フェルの場合は未知数ですね……なんとも言えません。フェル自身に一度聞いてみて下さいませんか?」
「わかりました。旦那さんから、そう言って頂ければ、こちらも相談しやすいです。ありがとうございます」
「いえいえ、で、フェルから断ったら、私が兼任で、という感じで、私も考えておきます」
「はい、わかりました」
政治とは、色々難しいものだ。
柏木先生も、民間大臣から、公選大臣になる……これも洗礼のようなものだろう……
…………………………
その後、柏木は帰宅の途につく。
すると駅で彼のPVMCGがピロピロと音を鳴らす。
彼のPVMCGは、ウェアラブルPCっぽく偽装しているので、ブルートゥースイヤホンのような機器を掌の中で造成して、耳にはめる……もう使い慣れたもんだ。
「はい、柏木です……ああ、フェル、うん、今駅だよ。もうすぐ帰る……ん? 買い物? ああ、わかったよ。フェルが買い忘れなんて珍しいな……で、何買ってくればいいの? って、あちょっと待って。メモるから……はいどうぞ……牡蠣、はい……ニラ、レバー、ニンニク……って、何作るのこんなの……パガムの肉がどうとか言ってたじゃんさっき……え? はぁ、はいはいわかりました……で、タオの実? は? なにそれ……あそこで売ってたって? ああわかりました……はいどうぞ、ベーシャル人参? はいはい、ササドハーブ? この三つは絶対って……何すんのフェル……売ってるか? そんなの……はぁ、売ってたの……あい、わかりました……はいはい。んじゃね」
柏木は予想する……
おそらくその聞いた事ない宇宙食材+地球食材=……戦闘食……
(おいおいフェル、何をする気だよぉ~……)
多分、家に帰ったら……フェルと夜間演習が待っているのだろうと予想する。
しかし、ちょっと食材から入るとは今までにないパターンだ……何があったんだと……
そのサマは、どこか別の世界で……大人しか入る事のできない世界で『夜想曲』とともに語られる事になるのだろう……はてさて?……
………………………………
次の日……
太陽が黄色い柏木大臣……ちょっと顔がげっそり気味。
実は昨日、フェルにあるおめでたい事が起こった。
それは、フェルが子供を作れる体になったのだ。
昨日、あの猛烈な戦闘糧食を買って来いとフェルが言った理由は、『ラムアの儀』というイゼイラ人が、かような体になったときにお祝いするためのご馳走を作る食材だったわけである。
なんでも、風呂に入っていると、イゼイラ人女性特有の生理現象が起き、急遽夕飯のメニューを変えたとかなんとか。
で、フェルもその日は、もう戦闘準備丸出しの格好で柏木と夕飯を摂り……夜間演習を、それこそ今までにない程の勢いで敢行したとか……なんでもフェルが食事に仕込ませた『通常の3倍』な『特定食材』のせいで、もう……勢いが止まらなかったとかいう話……前方向、背部方向、鎮座状態にマウントアタック……いやはや。
……このフェルに起こった生理現象。
所謂、あの『異種族間婚姻薬』と同じ効果を持つ現象である。
フェル達イゼイラ人女性は、男性と夜間演習行為を重ねる事で、ある新陳代謝が起き、その異種族間婚姻薬の成分に似た分泌液を、胸部の突起先端部から排出する。それを男性が含飲用する事で、相手のデルンは、フリュに対して、子を産ませる体になることができる。
これはイゼイラ人同士でもこの行為を行わないといけないらしいのだが、ティエルクマスカの歴史で初めて異種族間でこの行為を行った相手の異種族は、イゼイラ人フリュに、子を産ませることができたという記録が大昔に残っていた。
従って、柏木も、もうしばし後に、体細胞の生殖機能や他一部がイゼイラ化して……フェルに命の素を送り込む事ができる体になるという……
そして……それができる体になったとき……柏木はフェルと、その生の時間を同じくする体になるのである……
フェルは柏木に、まるで懇願するように、自分の生理現象を受けて欲しいと頼んだ……もしイヤでも……いつまでも一緒だと……
フェルと柏木が語った、将来を誓い合う言葉……
フェルはPVMCGの翻訳機能を外し、和音のような美しい日本語でそれを語る……
「……ネェ、マサトサン……」
「ん?」
「今日は……大事なお話があるでス……フゥ……」
「ん。なんだい?」
「ハイ……私とマサトさんの……将来のことデス……」
柏木は無言で頷き、フェルの言いたいことを察した。
「マサトサン……私と……同じ時を生きてくれますカ?……」
「……」
しばし無言になる柏木。
「嫌なら……いいのですヨ……それでも私はマサトサンを愛しマス。そして、マサトサンがオジイサンになっても、ずっと、ずっと一緒でス……マサトサンが先に逝っても、再婚はしないデス……もし、因果があるのなら、永久にマサトサンと巡り会いまス……子供を作る方法も、他にアリマス……だから……マサトサンも私を……」
柏木のしばしの無言に、何か必死で訴えるフェル。
しかし、彼はその訴えを遮るように……
「はは、フェル。何を言っているんだよ……大丈夫。一緒の時を生きようよ」
その言葉に、虚ろで潤んだ瞳が、パァっと明るくなるフェル。そして、涙を流す。
でも、その行為の結果に混じって出る涙の量が半端ない……
「じゃぁ……あの時、内緒にした……あのお薬と同じ事……今からしまスね……」
「ああ、わかった……で、何をすればいいの?」
……そして柏木は、そこに口を当ててそれを含み……飲み込む……
……彼はフェルと同じ時を歩む決断をした……
……が……
この行為、ちょっと困った事があり、イゼイラ人以外の異種族がこれをやると、2~3日後に、高熱を出してブッ倒れる事になるのだそうだ。
例外なくそうなるらしい。
まぁそれも当たり前の話で、なんだかんだいって異種族間婚姻薬と同等のモノ……すなわちウイルス性の薬品を投与するのと同じ行為をするわけだ。
柏木大臣も、まぁ、そんな感じで大臣執務室でぶっ倒れーの、介抱しにきた白木に、その正体がばれーの、白木に秘密を……まぁ知られただろうとという感じで、3日間は白木に「柏木がエボラにかかった」とか言いふらされーの、「新型インフルエンザだ」とか言いふらされーの……
何ともはやだったという話。
で、後に柏木の体に変化が現れ、体の一部……頭髪に青い毛が混じるようになり、彼もイゼイラ人と同等の寿命を持つ体になる。
今は、そんなにイゼイラ化する前と感覚的に変わらないが、恐らく彼も、その齢を経ていくたびに、周りの知った人物との、時の流れの格差を感じていくようになるのだろう。
恐らく……彼自身も、何かを感じていくのだろうと思う。
遠い将来、単純に考えれば、妹の恵美の方が先に逝く事になる。
白木や麗子、大見、美里もそうだ。
美加が50歳になっても、柏木の見た目は60歳ぐらい……この時、彼はどう思うのだろうか?
恐らく、今後かような日本人はどんどん増えてくるだろう。
柏木の周りを見ても、予備軍は……田中さんに長谷部、おそらく多川もそうなるかもしれない。そして、リアッサの彼氏である樫本だ。
……実務的な事を話せば、年金や後期高齢者保険などの制度も大改革を迫られる。
そしてそれ以上に、そうなってしまった人の『心の問題』もある。
更には、『経齢格差』といった社会問題も出てくるかもしれない……
そんな社会が来るかもしれない日本。
柏木はそれでもフェルと共に生を過ごすことを選んだ……それは彼の責任でもあり……
フェルに対する『愛』……これに他ならないものなのだ……
………………………………
そして、衆議院が解散した。
実は柏木、この解散国会が初めての国会への出席だった。
初の国会出席が、解散の万歳三唱とは、なんともな話ではあるが、取り敢えず区切りぐらいは出席しておかないと、という事だ。
柏木は、確かに大臣だが、此度はヤルバーンやティ連との折衝のこともあり、何分距離がえげつなく遠い相手で、そして速応で対応できる人物が柏木しかいないという事もあって、二藤部は各党代表にティ連担当大臣のみは、国会出席を自分の命ある時以外は免除してほしいという事で内諾を得ており、実のところ彼は国会に一度も出席したことがない。
彼に関連する質問の答弁は、二藤部や三島、井ノ崎が全てやってくれていた。
なので、解散で閉会した後は、各党の議員……いや、前議員? から、怒涛の挨拶ラッシュで大変だったという話。
しかし、次に彼がティ連担当大臣の席に……恐らく就く時は、公選の大臣だ。
公選大臣でも、このティ連担当はそういう理由で各党合意で国会出席免除が認められてはいるが、まぁ、今後は予算委員会など、全部が全部そういう訳にはいかないだろう。
で、結局件の『連合防衛総省折衝担当大臣』の話。
春日と二藤部がフェルに打診した所……丁重に断られたという話。
その理由は、まず彼女がいくらイゼイラや、ティ連の議員歴が長いとはいえ、日本の衆議院議員は一年生だと。そして、まずは色々と彼女も日本の議会というものを調査研究してみたいと。
そういう事もあって、もし次に何らかの形で内閣でも改造する時は受けてもいいが、今は遠慮しておくと……そういう話だった。
ただ、自分のパイプが必要とされる時は、遠慮なく言ってきてほしいとも言ったそうだ。
それ以前に、柏木の嫁なので、そういう点は遠慮いらないし、安保委員会でもそうしてきたではないかと。
説得に行ったつもりが諭されたと二藤部も春日も笑っていたそうだが、これで次の選挙後は、柏木が『ティエルクマスカ担当大臣 兼 連合防衛総省折衝担当大臣』の兼務決定となってしまった。
とはいえ、まぁやることは今までと同じなので、肩書が長くなっただけで、ま、いいかと。
しかし、彼の『ティ連防衛総省特務大佐』称号が、一段と重要性を増してしまったのも事実ではある……
……さて、現状『暫定大臣』状態の柏木先生。
選挙公示日も決定し、それまでは選挙運動前の期日なので、テレビ出演依頼や、講演会やら、タウンミーティング出席依頼やらなんやらワンサとやってくる。
で、彼以上にそんな依頼のやってくるのがフェルさんだ。
普通なら、ここで選挙運動を手伝ってくれる講演会の人達やらなんやらが、選挙事務所でワイワイやるところなのだろうが、柏木とフェルの共同選挙事務所、実はスタッフがみんなちょっと変わっている。
そして……そんじょそこらの選対スタッフより強力な人物……
ヤルバーン側も全面支援である。みんな『休暇』を取ってやってきている。
『……デは、ケラーとフェル局長……あ、局長は私だっけ、テヘヘ……コホン、フェル候補は、この後、日本時間16:00に阪神てれびに入って、件のにゅーす番組に出演して下さイ』
「はい、わかりました……いや、ポルさん、ホントありがとう。助かりますよ」
『ソウです、ポル。感謝しますヨ』
『イエイエ、私も楽しませて頂いていますのデ』
真っ白なポルさん。すまし顔で伊達眼鏡をクイとあげ、VMCモニターへポポポと打つ。
二人のスケジュールを管理している。
「んじゃ、私はお留守番しとくわね、柏木くん」
美里も彼の選挙活動スタッフとしてお手伝い。
「では、私はフェルフェリア様のお付きという事で」
「はい、すみません田中さん、何分フェル、初めてな事ばかりですから。田中さんがついてくれたら、鬼に金棒ですよ……でも、お仕事の方、大丈夫ですか?」
「はい、お気になさらずに。大森からの『叔父』としての頼みでも有りますので、ウフフ」
「はは、『叔父』としてですね。わかりました。よろしくお願いします」
田中さん。大森からの指示で、有給とって手伝ってくれている。フェルのサポートだ……これはもう最強のサポートスタッフである。
「では、リビリィさんとリアッサさんは、私達のテレビ出演後は、フェルのボディガードをお願いしますね」
『おう、了解だゼ、ケラー』
『アア、心配スルナ。フフ』
「で、シエさんとシャルリさんは、私と一緒に」
『あいよ、ダイジン』
『ウム、了解ダ、万事マカセテオケ』
リアッサにシエまで手伝いに来ていた。
しかし彼女達は特危自衛隊員だ。選挙活動なんてしちゃダメだろという話もある。
しかし、彼女達は出向の身であり、書類上は『予備自衛官』なのである。従ってシエは『予備一等空佐』であり、リアッサは『予備二等陸佐』として登録されている……あくまで書類上の話ではあるが。
日本では、予備自衛官は非常勤扱いなので、選挙運動をしても怒られないのだ。
そして、日本ではヤルバーン乗務員のような『外国人』が選挙運動しても法に触れない。
実はこれ、色々問題があり、かの特定国家が国策でソッチ系の議員候補を応援したりと、何かと問題点も指摘されている。
しかし、シエ達は確かに外国人ではあるが、この選挙が終われば主権を同じくする『連合国民』だ。
そういった不貞の輩共とは意味が全然違うわけで、まぁ、彼女達を見る一般人も、さほど問題視はしないだろう。
なので柏木も、そういった点を踏まえて、今度の選挙がどういう意味を持つのかという事も有権者に理解してもらうために、彼女達には『キグルミシステム』で日本人モードにはならなくていいと言っている。
「……あれぇ~ シエちゃん、柏木くんと同行なんだ。まぁた何か“スリスリ”とかやっちゃうんじゃないの? いいの? フェルちゃん」
美里が腰に手を当てて、シエへニヤニヤ顔で言う。
『エ……ン?……ナ、ナンノコトダ? ミサト。ワタシハ今マデダストール人的ニ、普通ニシテキタダケデハナイカ……カシワギノ選挙活動デマデ、ソンナコトハセンゾ、ウム……』
目を向こうに向けてそんな事を言うシエ。
ニヤニヤ顔の柏木とフェル。
『ナ、ナンダカシワギ、ソノ目ハ……フ、フェルモ……』
「イエイエ、なんでもないですよぉ……あ、そうだフェルぅ? 今日、多川さん、陣中見舞いに来るとかいってなかったっけぇ~~」
『エェ~~?、明日トカ言っていた気がしましたけどぉ~~?』
抑揚を付けて、そんな話をわざとらしく話す大臣とフェルさん
『エ! タ、タガワモ来ルノカ!?……ソ、ソウカ……ソウナノカ……』
声を上ずらせて何か焦っているシエ。
ちょっと洗面所へと、どこかに行ってしまう……メイクでも直しに行ったのか?
フェルは柏木の耳に手を当てて……
『(ムフフフ、マサトサン、やはりあの話は本当だったミタイでスネ)』
『(ああ、沖縄の話だな……こりゃ今後の展開が楽しみだな、ははは)』
大見から情報はしっかりと得ていた柏木大臣。
こりゃホンモノだと……
『デは、お二人とも、そろそろ時間ですので“ジドウシャ”の方へ』
「あ、はいわかりましたポルさん……んじゃフェル、行こうか」
柏木は、選挙が終わるまで閣僚である。
そして、フェルは日本国籍を持った日本人とはいえ、イゼイラの休職高官である。
彼らが動くと、それはものすごい数のSPも動く。
マスコミは彼らの選挙事務所に張り付き、二人が動けば壮絶なシャッター音を鳴らす。
おまけに今回は、シエ、リアッサ、シャルリ、リビリィ、田中さんのおまけ付きだ。
ちなみに田中さん、大企業OGH会長にいつも付き添う謎の秘書ということで、実はマスコミ業界でも結構知られており、彼らの間でも『変人奇人』ということで有名なのだ……本当は変人でも何でもない、ただのスーパーハイスペックな秘書さんなのに。
そんなただならぬ一行が動けば、マスコミもうねるように、ともに移動する。
どこから聞きつけてきたか、フェルやシエのファンがスマホに携帯の写真を撮りまくる。
「フェルさぁ~ん、キャーーー!」
「シエさ~ん、キャーーー!」
「フェルさぁん! 柏木と別れろーーーー!」
そんな声が飛んだり。
そんな中
「柏木死ねーーー!」
といった男性は、警官に職質されていた……
そして……
「柏木さぁ~ん!」
「柏木大臣~ キャーー」
と声をかけてくれるは……みんな熟女な方ばかり。
柏木、実は結構オバサ……いや、熟年の方に人気があったりする。
しかし、これは議員として大きなアドバンテージだ。
投票に行くのは、こういう方々がメインとなる。柏木がどう思うかは別にして、こういった熟年層に人気があるという事は、大事なことなのである。
柏木とフェルは、周囲に愛想を振りまいて車へ乗り込む。
シエ達もそんな感じ……一体誰の選挙なんだかと思わなくはない。
彼らの乗った車は、府道14号線を大鉄吹田駅方面へ向かい、左折。
479号内環状線に乗って上新庄方面へ、そしてまた14号線へ乗り淀川通りを通って天神橋筋へ。
そこをぐっと下れば、大阪府大阪市北区扇町にある、阪神テレビに到着する。
そこにもどこからか噂を聞きつけた人々が大勢集まり、その通りは人でごった返していた。
警察が規制線を張り、通行規制が行われている。
地下駐車場入口前に付くと、SPがすかさず飛び出て周りを監視。
そして……柏木がまず最初に降りる。
すると、途端に周囲を取り囲む、それはものすごい数の野次馬に、歓声と……一部、嫉妬に近い罵声を浴びせかけられたり。
中にはプラカード掲げて
【柏木爆発しろ!】
【お前にフェルさんはやらん!】
【奪還するぞ!】
やらなんやら、何を奪還するのかわからないが……
まぁ有名な柏木とはいえ、みんな良く知った政治家だ。
ここでも熟女人気が高い。彼も手を振って答える。
そして真打ち登場。
フェルが車から降りると、その歓声は何十倍にも膨れ上がり、大阪の観衆は狂乱状態になる。
そして、それで終りと思ったら、シエにリアッサに、シャルリやリビリィと続く。
もう観衆の熱狂は最高潮だ。
アッチの方では、メインの二人を差し置いて、
「キャプテン! キャプテン!」
「リビリィちゃぁ~ん!」
といったコールが飛ぶ。
シエやリビリィも、ただの護衛なのに、そんなコールを浴びせられるものだから、思わず手を振ってしまう。リビリィは頭をポリポリかいていたり。
そしてリアッサをお初に見た人々は、
「だ、だれだ? あのパリコレモデルみたいな異星人さんは……」
「いや……知らんけど、キャプテンと同じ種族さんみたいやな……」
シャルリをお初に見る人々は……
「おいおい、マジかいな……サイボーグやであの人……」
「ごっついなぁ……あの目ぇ……チラチラなんか動いてるで……しかも獣人さんやし……」
そんな会話がなされていたり。
リアッサやシャルリの知名度は、シエやリビリィに比べるとまだまだ低い。
なので、今日を境に彼女達も、ヤルバーン女性人気ランキングに載ってくるだろう。
もう全員総スマホに携帯のカメラ状態で、SNSもフル稼働といったところ……
そして、当の阪神テレビだけではなく、各社マスコミがレポーターを立てて、その様子をワイドショーで流していた。
……実は、柏木が狙ったのは、コレだったのだ。
これが今後の日本、そしてティエルクマスカとの付き合いなのだと。
なので、彼女達には『キグルミシステムは使わなくていい』と言ったのだ。
そりゃこんな選対技が使える候補者相手に、他党が対抗の候補者を立てられる訳がない。
実際、比例近畿ブロックでも、野党は全滅ではないかと噂されている。
大阪で強かった日本立志会の候補者も、さすがにこの状況、危機感を露わにしている。
これが柏木流の、本職ビジネスネゴシエイターとしての、有権者に対するプレゼンテーションなのだ。
田中さんに促され、二人は阪神テレビ正面玄関から建物内へ。
すると、阪神テレビ重役に社長が出迎えに来ていた……
腰低く挨拶する柏木とフェル。
重役は、ボランティアの護衛にすぎないシエ達にも挨拶をしているようだった……
……ヤルバーンがこの地球に飛来し、それまで特定機密だった状態のものが、全て解放され、彼らティエルクマスカ人も、日本のマスコミという公共の前に姿を堂々と現す時が来た。
柏木とフェル……
初のテレビ出演……
しかも、いきなり『夫妻』の肩書を持って……
関西の放送番組は、このニュース番組にしてもそうだが、癖のある保守系番組が多い。
はてさて、彼らはマスコミの前で何を語るのか?
選挙運動、既に真っ最中である……




