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銀河連合日本  作者: 柗本保羽
本編
55/119

―34―

 紫禁城しきんじょう……


 明の時代1412年から、1912年、かの有名な西太后の時代。中国で初の文民政権『中華民国』の成立までの実に約500年もの間、中国帝政時代の中心として機能した宮殿である。

 しかし、宮殿、ないしは城というには非常に広大な72500㎡もの敷地面積を誇り、その城内は優に一つの町を内包するような、そんな施設である。

 無論言うに及ばず、ユネスコの世界遺産に指定されており、現在でも中国の象徴ともいうべき建造物といってよい。

 

 紫禁城の南側には、1989年に起こった、いまだに中国がその歴史上無き物にしたくて仕方のない『天安門事件』正確には『六四天安門事件』が発生した天安門広場を擁し、そのバックには中国共産党・中華人民共和国の父『毛沢東』の肖像画が真ん中に飾られ、その左右に『中华人民共和国万岁』『世界人民大团结万岁』の文字が躍る。


 そんな紫禁城。

 無論、中国北京を訪れる観光客にとっても、人気の観光スポットである。

 しかしこの紫禁城と天安門広場……

 ヤルバーンが飛来し、中国のガーグ勢力が中国軍部を掌握した後、いわゆる『取包含在内派』すなわちヤルバーンを中国内政に取り込もうという派閥の策略が裏目に出た。

 その後ウイグル自治区でイスラム過激派の勢力が拡大し、その連中がウィグル人を利用した……といわれているテロ活動に躍起になり、この北京の中心でも、過激派のテロ活動が頻度を増している。

 そのせいもあってか、最近では定期的に観光施設として稼働できる頻度も不安定になり、今では警備当局の厳重な警備の元、観光客はこの紫禁城を訪れなければならないという感じになってしまっている。


 恐らくそういう事もあるのだろうか、柏木達は、紫禁城へ天安門側の『午門』入口からではなく、北側の景山公園側入口である『神武門』側から入城した。


 閉館時間を過ぎた紫禁城。

 中国人民解放軍の衛士がポツポツと立ち、その目線は柏木と大見の足取りを追う。

 警護の大見的脳内では、この場所から狙撃なり、囲まれて拉致なりされたら逃げ出しようがないと思う。しかし、国家主席直々にサシで誘っておいて、まがりなりにも日本の閣僚にそんなことをするわけもないだろうとも思う。

 もし、んなことやったら……『水色のトマホーク』が黙ってはいないだろう。下手したら中国四千年の歴史。建国65年の中華人民共和国の歴史がそこで終わるかもしれない……


(お~……コワ……)


 思わずそんな妄想にふけり、口を尖らす大見。何考えてんだと吹き出しそうになる。

 その変な大見に「?」な顔の柏木。


「(なぁ柏木……)」

「(ん? 何?)」

「(パーソナルシールドをONにしておいた方がいいんんじゃないか?)」


 目線で周りを見渡して柏木に話す。

 柏木も大見のその目線を追う……


「(あぁ、そういうことね……別にいいよ。大丈夫だ、心配いらねーって)」

「(なんでそんな事が言えるんだ?)」


 柏木はこの状況にビビっているのは、むしろ中国側だろうという。

 なぜなら、たった二人の、しかも方やトーシローの鉄砲バカにこんなにも警備をつけるというのはそういう事だろうという。

 

「(……まぁ、むしろヤルバーンの秘密兵器で……ってぐらいに思っているのは、向こうさんの方じゃない?)」 

「(ああ、なるほどな……)」

「(実際今の俺たちなら、PVMCGを使えば、張主席暗殺だって簡単にやれちゃうだろ? それにここからも難なく抜け出すこともできる……はは……)」

「(確かに……言われてみりゃそれもそうか……)」 


 柏木がウェアラブルPCに偽装させて付けているPVMCGや、大見の付けているヤルバーン政府職員用PVMCG……しかも現在柏木のPVMCGは武装造成レベル4だ。対戦車携帯無反動砲までも仮想造成できる。

 大見の持つ政府職員用は武装造成レベル5まで仮想造成可能だ。

 今この二人がここで暴れれば、警備兵を一掃する事も、なんてことはないだろう。


 そんな話をしながら、思わず二人はプププっと笑ってしまう。


 ……とそのような感じで歩いていると、周りは中国らしい景色になる。

 さすがは世界遺産指定だ。まるで胡弓や二胡の音楽でも流れてきそうな美しい庭園に入る。

 紫禁城北側にある『御花園』だ。

 この中華庭園。これはフェアに見て美しいものだ。しかも今は観光客が誰一人いない。

 水辺独特の夕方の匂い。悪くはない。これで空気が良ければ言う事ないのだが……


 御花園に入り少し歩くと、休憩所のような赤い柱に囲まれたテラスのような場所が見えた。

 そこの柵の縁に座り、庭を眺めているスーツ姿の人物……


(張主席か……)


 中国側の警護係が、その手前ぐらいの場所で大見に停止するように言う……大見はそれ以上は行けないらしい。

 怪訝な顔をする大見に、柏木は平手で「大丈夫だ」と制すると、いっしょに来た通訳が柏木を誘う。

 柏木はそっと翻訳機能を起ち上げる。


 その男は柏木が見えるとスっと立ち上がり、ニコニコ笑って柏木に手を差出して歩み寄ってきた。

 

「やぁ、お待ちしておりました柏木先生」

「恐縮です。張主席閣下」


 二人は握手。今回は相手の手の握りにも力が入る。


「あちらは、護衛の方ですかな?」

「ええ、そうです。私の学生時代からの友人でもありまして」

「おお、そうですか、友人同士でこの仕事をしていらっしゃると?」

「はい、まぁ、色々ありまして」


 そう言うと張は、大見を張っている警護係を手合図で制し、大見もこちらへ来るように誘う。

 意外な顔をする大見。警護係に行って構わないと言われ、柏木に近寄る。


 柏木の後ろへ付くと、張に敬礼をする大見。張も大見に握手を求めるが、名は聞かなかった。

 これはそういうものだ。中国の警護係に柏木が名を聞いてもそいつは答えないだろう。


「お忙しいところお呼びたてして申し訳ございません先生」

「いえ、まぁ……何といますか、私とお話がしたいということでしたら、恐らくヤルバーン関連のお話だろうとは察しはつきますので……そんな感じです。こちらも大意はありません」

「そうですか、ありがとうございます先生……少し散歩がてら歩きましょうか」


 そう言って、張は紫禁城のいろんな場所を観光案内のように所々説明しながら歩き出す。

 柏木もウンウン頷いて、観光のようなものをしながら散歩……いや散歩会談というべきか……


「……そういえば、柏木先生は、以前我が国にいらっしゃったことがあるようですな?」

「お調べになりましたか?」

「相応には……観光ですか?」

「ええ、まぁそんなところです」


 さすがに『銃をアホみたいに撃ちに来ました』とは言えない。


「しかし……変わりましたね、中国も……」

「ええ、そうですな先生。丁度先生がその時いらした頃が、この国が変わる過渡期でしたな」

「はい、そんな感じでしたね。江沢民さんですか? はっきりいって日本じゃ良い感情を持たれていない方ですが……はは」


 そう柏木が言うと、張は笑いながら首を横に振る。特に何も返答はしなかったが……

 柏木も軽いジャブのつもりだ。こういう偏った知識だけは豊富なので、ついぞ口に出た。

 張は、話題を変えようという感じで……


「私は今日、半分仕事。半分プライベートであなたとお話がしたくて、お誘いいたしました」

「はい」

「私も宇宙は好きでしてね。子供の頃は色々と夢を見たものです……しかし、まさかこの歳になって本当に外星人がこの星にやってくるとは思いもよりませんでした」

「そこは同感ですね」

「当初、アジア方向へ彼らが宇宙船の舵を切ったとき、一体どこに行くのだろうと思いましたが、正直まさか日本だとは想像もつきませんでした」

「……」

「世界は色々な反応を見せましたが……やはり彼らには、我が国はあまり良いように思われてはいないようですな……」

「なぜそう思われます?」

「先生も、もう知っておられると思いますが、あの円盤捕獲事件ですよ」

「ああ、あれですか……」


 張は頭をポリポリかいて、気まずそうな顔をする。

 そして、歩みを止め……


「先生、率直なところをお伺いしたいが、彼らは我が国の事をどう思っていらっしゃるので?」

「……」


 答えに窮する質問だ。なんせ相手は国家主席である。

 するつもりはないが、目が渋くなってしまう。


「構いませんよ、正直におっしゃって頂いても。ここには我々しかいません。そして、そういう事も考えて先生をここにお呼びしたのです」

「なるほど……」


 柏木は少々指を顎に当て、考える……


「私は、ご存知の通り5千万光年彼方の、彼らの国へ参りました……」

「はい」

「彼らの『連合』は、完全な相互理解が確立し、どこかの国が盟主として君臨している訳でもなく、言論も、真の意味での自由があり、貧困という文字が存在しない。そんな国でした。そして、そのような意味で言うと……そういう彼らの価値観に反する勢力に対しては、完全な不正義と認識するような、そんな国であり、そんな国民の方々が住む所でした。そういう感じでお察しください」


 張は、コクコクと頷く。


「しかし先生。それをいうなら日本とて彼らへ完全に追いつけるような国家ではない。ましてや米国もです……確かに我が国は、彼らの理想とする社会からはかけ離れているのかもしれませんが、貴方がたの国も、彼らからそこまで評価される国だとは、私は思えないのですが」

「さぁ?……そこはどうなのですかね? 私も良くはわかりませんが……」


 実はわかっている。しかし、その内容は流石に言えない……


「……ただ、そうですね……これは貴国に限りませんが……例えばシエ局長や、護衛で来ていたサイボーグの獣人な方……中国の普通に生活していらっしゃる国民の皆さんは、あの方々と友人になれますか? ましてや結婚できますか?」

「……」

「今、日本では彼らが普通に生活しています。はは、そうですね。ハンバーガーショップでアルバイトしていらっしゃる方もいますよ。報告では、カラオケボックスで日本人と一緒に歌を歌ってる方もいたそうです。この間は、農業を研究しているイゼイラ人の方が、日本へ帰化申請を出してきたという報告も得ています」


 そして、柏木自身もそうである。


「そ、そうなのですか……」

「ええ。そのあたりではないですか? 彼らも恐らく各国の文化、風習、風俗、習慣、宗教、イデオロギーもそれなりに調査研究はしているでしょう。その結果なのでしょうね、そこにわが国の『竹取物語』の話です。そういうところではないですか?」


 なんせ日本は昔々、当時欧米では人間とさえ見られなかった黒人やすけが、織田信長の家臣になったような国である。しかも相当に民から愛されたらしい。

 ペリーが来航し、維新が起き、すぐに脱亜入欧へ転じる。

 おそらくこの地球世界で、ここまで外界の取り込みと、吸収、そして一体化が早い国民もそうはいないだろう。これが良いか悪いかは別の話として……


 張と柏木は、いつの間にか、ベンチから立ち上がって、歩みを進めていた。

 そして着いたのは『太和殿』

 中国の皇帝が登場する映像作品モノで、皇帝相手にひれ伏す演出が行われる、あの有名な広場だ。

 その上座に着いた。


「あ、ここは……はは、いつの間にかこんなところまで来ましたか」


 柏木は、その人っ子一人いない有名な場所に目を見張る。


「はい。人がいないこの場所もなかなかいいでしょう?」

「ええ、壮観ですね」


 そんな話をすると、張はまた柏木に向き直り……


「柏木先生、なるほど外星人の方々と、日本人がいかに緊密な状態であるか、よくわかりました」


 柏木は軽く頷く。


「柏木先生、例えばの話ですが……現実問題として、我が国と日本がこれ以上関係を悪化させた場合、ヤルバーン……いえ、ティエルクマスカ連合はどのような形で我が国へ対応するのでしょう?」

「悪化ですか?」

「はい」

「申し訳ありません主席閣下。私はそういった国際政治は正直良くわかりません。なぜなら……はは、まぁ成り行きでこの役職をやっているようなものですから」

「ほう……」

「まぁ、私もついこの間まで普通の一般市民でしたからね。そういった一般市民レベルのお話ならできますよ……例えば『尖閣諸島の領有権を中国が頑なに主張すれば、ヤルバーンが怒って彼らの機動兵器を繰り出して殲滅するぞ~』とか、『中国海軍なんざ海上自衛隊にかかれば赤子の手をひねるようなもんだ~』とか、そんな風にですね……はは」

「はっはっは、なるほど、ネット言論のような感じでですか?」


 柏木は手を横に上げ、おどけて話す。

 二人は、下を向いて乾いた笑い。


「はは……まぁ、しかし……彼らは日本という国に、何か絶対的な意志を持ってやってきているのは事実です。それは確実に言えます……そんなところですね。その目的が何かはわかりませんが」


 もちろんウソだ。その内容を知っている。そう、『聖地案件』だ。

 張も、彼が何かを知っているのではないかという考えは当然持っている。


「柏木先生、実際はそれが何か、貴方はご存知なのでしょう?」

「どうしてそう思われるのですか?」

「それはそうでしょう。貴方は彼らの国に行って向こうの代表と会話した人間だ……その言葉をそのまま信じろと言う方に無理がある」

「そうですか……しかし申し訳ないですが、私は存じません」

「フフ、わかりました。そういう事にしておきましょうか」


 太和殿の広場から宮殿に伸びる階段に座ろうと促されて、二人は腰を掛ける。

 次に柏木が張に疑問を問いかけた。


「主席閣下、では今度は私から質問ですが」

「何でしょう?」

「今までの主席のお話では、もうこの会談の結果は決まっているように思えますが」

「……」

「もしそうであれば、そんな会議に日本だけならまだしも、何故に彼らヤルバーンの方々もお誘いになったのです?」


 まぁ当たり前の疑問だ。ついでに言えば、『もう決まっている』話ではなく『初めから決まっている』といった方が良い。

 逆に言えば、そうであるからヤルバーン勢は、会議の出席を決めたと言ってもいい。

 結果がわかっているなら、遠慮もいらないからである。


「まぁ、率直なところを申し上げれば……彼ら外星人を実際にこの目でみたいというところでしょうか」

「ええ。それは解ります」

「……」


 そういうと張は少し黙り混む。

 何か言いたげなようだが……頭のなかで言葉を組み立てているようだ。


「柏木先生、中国という国は、今まで外国と戦争をして勝ったことがない」

「……はい」


 柏木は、大いに異論があったが、まぁそれを問うても仕方がないので話を合わせた。

 しかし、大まかなところでは間違っていない。中国に住む人々を中華民族と大きく一括りにして考えれば、確かに他の文化圏に戦争を仕掛けて彼らは勝ったことがない。

 まぁ、ひとつあると言えば元時代の中国だが、あれも正確に言えば中華圏の戦争とはいえない。

 チベットや、トルキスタンの例はあるが、あれは戦争をしたとはいえない。


「それが何故だかわかりますか?」


 柏木の偏った知識で、その答えは、実はある。

 しかし……


「いえ、専門ではありませんので」

「ふむ……」


 すると、張は、パンパンと尻を払い立ち上がる。

 柏木もスックと立ち上がる。


「わが国は、今後もわが国の主張をします」

「……」


 目で頷く柏木。


「わが国にも主張があり、その主張を国際社会に問う権利があり、またそれを現実にする手段もある」

「……」

「ただ、わが国にもいろんな意思がある……」


 そう張は言うと、その後に続く言葉は言わなかった。


「……柏木先生。それを一つお考えになってみるとよろしいでしょう」

「はぁ……」

「……柏木先生、今日は短い間ながらも有意義なお話ができた」

「そ、そうですか……」

「ええ。貴方という人物をわずかながらでも知ることができました」

「はい……」

「今日はお忙しいところを申し訳ない。では、ここでお別れと致しましょう。帰りはこちらの者に、あそこの午門から送らせます。何なら、北京市内を散策してお帰りになってもよろしいのではないですか? 警護も付けさせましょう」


 柏木はフっと笑うと


「そうですね。それもいいかもしれません」

「今日、日本政府と外星人の方々は、北京飯店で宿泊されるので、ここからなら近い」

「はい」

「では、また明日」


 そういうと張は手を差し出す。

 柏木もその手を握り返す。

 張は後ろで控える大見にも握手を求めた。

 そして、彼はもと来た神武門の方へ、警護係とともに歩いて行く。

 その後姿を見送る柏木と大見。



 柏木は午門から紫禁城を出る。

 北京市民は、もう閉館時間をとっくに過ぎているのにそんなところから出てくる

柏木と大見を訝しげに見る。しかも数人の警護係に守られているので、余計にである。


 柏木はフムと考え、大見にちょっと付き合えと話す。


「どうした柏木、どこか行くのか?」

「はは、ま、ちょっとした観光だよ」


 柏木は昔の記憶を辿って、10車線はある西城安街道路を対面へ渡るために、地下鉄天安門東站駅をくぐる。そしてかの天安門広場に出る。



「やっぱ広いなぁ~」


 大見がポツっと漏らす。


「だろ? 昔ここで民主化運動やりまくってたんだぜ? どんだけ人が集まったかってこったよ」



 中国人民大会堂を右手に見ながら、南へ下る。

 その方向へ早足でズンズンと進む柏木達に、さすがの警護係も訝しがり、彼らを止めた。

 何処に行くんだ? ってなもんである。

 柏木は通訳に


「ちょっと昔ここらへんに来たことがあってね? 懐かしいから下町の方へ行くんだと言ってくれ」


 と通訳を頼む。

 警護係も、わかったとばかりに、ピっと平手を振る……態度がでかい。


 柏木は更に南へ進み、前門大街という下町街に入る。


「うわ……やっぱ全然変わってるわ……昔の面影まったくねーや……」


 柏木は頭に手をやり、渋い顔。前門大街大通りを少しはなれたところに入る。

 あたりは騒然となる。なんせ、パリっとしたスーツを着こなしたオッサン二人が、怖そうな警備を引き連れて、こんな下町をうろついているのだ。そりゃそうもなる。


 で、昔の記憶を辿って、以前来た事のある場所へ……


「うお!……あったよ……マジかよ……」


 店の雰囲気も変わっていない。そこは……



 パチモンゲーム屋だった……

 


 一体どんなところに連れて行くんだと期待して付いてきた大見は


「なんだよお前……こんなパチモン屋探すために、こんなとこまで来たのかぁ?……」


 ハァァとなる大見。隣にいる警護係も唖然としていた。

 ハハハと柏木は笑いながら、その店に入る。


「(……ははは、相変わらずパチモンだらけだぜ。ニヒヒヒ)」

「(うわ……こりゃひでぇ……)」


 大見もなんだかんだと興味津々。

 最新型携帯ゲーム機のような……8ビットゲーム全部詰めなゲーム機。名前は【3DSP】

 ついこの間発売された第4世代機のように見える……パソコン。名前は【BS4】

 どう見ても後ろにタッチパッドの付いた携帯ゲーム機のように見える……人造人間OSの端末。しかも標準ストアアプリが付いていない。名前は【SUNY VIDA】

 

「(どうだ、すげーだろオーちゃん)」


 吹き出すのを必死で堪える大見。


 柏木はかつて、この店でフロッピーディスク版の配管工オヤジのゲームと、花札メーカーのパチモンゲームをフロッピーディスクドライブで走らせるという怪しい16ビットゲーム機を購入したという前科がある。


「(……でよ、昔な、あの配管工オヤジのゲームくれつったら、ありますよってんで、ここのニーちゃんがFD出してきた時は、どうしようかと思ったぜ)」


 そんな思い出に浸ってしまう。

 今回彼は、まがりなりにも政府の閣僚である。お忍びとはいえ、さすがにパチモンは買えない……のだが……


 店の主人も、こんな立派なスーツ着た日本人と、どう見てもヤバそうな公安部かなにかの連中が来ているので、さすがにびっくりしている模様。


 とまぁ、そんな感じで暇をつぶす。


 PVMCGの時計を見る柏木。


「そろそろみんなホテルへ戻ってる頃だな」

「ああ、ちょうどいい時間だ」


 要するに、ここから北京国家大会議場へ戻って、入れ違いになっても困るので、ホテルへみんなが戻る時間に合わせて、北京市内を『視察』していたという寸法。


「謝謝」


 そう店のニーちゃんにいうと、柏木は店を出る……結局……SUNY VIDAを買ってしまった。

 なぜに買ったかというと、何も彼が無駄に遊ぼうというわけではない。フェルにあげるためだ。

 この国の何たるかを説明するためにである……


 しかし……公安部も一国の閣僚がこんな店入ろうとするの……止めろよと……



 ……天安門広場のあたりから、今日の宿泊地である北京飯店はすぐそこである。

 紫禁城午門から歩いて行けるぐらいの距離だ。

 北京飯店といえば、中国の最高級ホテルの一つで、このホテルには歴史的な著名人も多数宿泊したことがある。

 旧ソ連のフルシチョフ首相に、アメリカのニクソン大統領。ベトナムのホー・チ・ミンに日本では、列島改造論で有名な田中角栄。錚々たる顔ぶれだ。

 とはいえ、実は日本の一般客も普通に宿泊できるので、VIP専用とか、そういった決まりはない。

 なんせ柏木も以前中国に来た時は、このホテルに泊まった。というのも、当時の中国は物価がブッチギリで安かったので、この北京飯店でさえ日本人の所得からすれば、その宿泊代は例の城崎温泉のホテルよりずっと安いぐらいだったからだ。

 今回は公費で来ているので宿泊費はわからないが、恐らく今では宿泊費も相当な価格なのだろう。


 ……ちなみに、柏木が以前中国に来た際は、タクシーを1台貸し切り、200キロ乗り回して、日本円で外国人価格でも五千円ぐらいだった……


 北京飯店の立派な玄関の階段を上り、ロビーへ入る柏木と大見。

 赤絨毯がいくつも敷かれた、王様でも出てきそうな立派なロビーに入る。するとそこで二藤部やフェル達が、ここで宿泊する会議出席国の代表や関係者と話をしていた。

 文字通りの『ロビー活動』だ。このロビー活動の語源は、こういう様から来ている。


 インドの関係者と会話しているフェル。相手の頭部を見れば一発でわかる。

 カレー宗主国への好奇心を抑えきれなかったようだ。さしずめカレー外交といったところか。

 丁度会話が終わった感じで、柏木の姿を見つけ、フェルは手を振る。


『ア、マサトサン!』


 その言葉に二藤部達も呼応する。

 手を上げて、ロビー活動を適当に切り上げ、柏木の元へ集まる。

  

「柏木先生、お帰りなさい」

「先生、ご苦労さん」


 二藤部と三島が軽く手を上げる。久留米はまだ向こうでロシア軍の幹部と米国軍関係者三人で話をしているようだ。

 シエさんは大人気である。各国軍部関係者の質問攻めに合っている……あの話口調で大丈夫かなと少し心配な柏木。

 ヴェルデオとニルファも、外務省スタッフとともに各国代表と話をしている。


『ヨぅお帰り、ダイジン』


 シャルリもやってくる……なんかシャルリは少し辟易顔。


「ど、どうしたんですか? シャルリさん……お疲れのようですが……」

『アぁ、だってさぁ……みんな来る奴来る奴、あたしの体の事聞いてくるんだよぉ……そんなに珍しいのかねぇ、この手足がさぁ……さっきだってどっかの国のお偉いさんが「カネならいくらでも出すから、その義足や義手の技術を売ってくれ」ってんだから参っちゃうヨ……』

「だから前にクラージェで言ったでしょう……で、どこの国の方なんです?」

『あ~……あの人……ホラ、奥の柱のところにいるさ……』


 ……お金持ちな、アラブ首長国のお偉いさんだった……

 身内にそういう方がいるのだろうか?


 そんな感じで、日本勢、ヤルバーン勢、ロビー活動にいそしんでいたようである。

 二藤部達も、シャルリのその話を笑顔で聞く。

 そうしていると、久留米やシエ、ヴェルデオにニルファも話を終えて、こっちに来た。

 他、スタッフも同様のようだ。


「ハハ、ではみなさん集まったようですね」


 二藤部は全員を確認すると、外務省スタッフや、ヘルゼンらヤルバーンスタッフを残して一度二藤部の部屋へ行こうと話す。残ったスタッフには、ロビー活動を続行してもらう。


 各国代表やスタッフの視線を浴びつつ、彼らは部屋へ。

 その様子からもやはり日本やヤルバーンは、相当に各国から意識されているとわかる。



 ………………



 シエが部屋の中を探査する……どうやら今回は盗聴器など仕掛けられてはいないようだ。

 まぁそれもそうだろう、中国で最も権威のあるホテル、北京飯店でそんな物を仕掛けていたのがバレたら信用問題だ。次から各国要人は、このホテルを利用しなくなってしまうだろう。


「柏木先生、ご苦労様でした。で、どうでしたか? 張主席との話は……」


 二藤部が相当な興味を持って訪ねる。三島や他のみんなも同じ。


「ええ、まぁ……率直なところを言えば、ありきたりな話だったんですけど……」


 柏木は、VMCモニターを起ち上げる。

 そう、彼もフェルの技を真似て、張との会話をPVMCGで記録していたのだ。

 どうせ向こうも無線でも使って同じことをやってるだろう。おあいこである。


 その会話を聞く皆の衆……

 意外だったのが、張が偉そぶることなく、柏木と率直に、そして気さくに話をしていることだった。




「……なるほど……こんな内容の話でしたか……」


 その録音を聞き終わり、腕を組む二藤部。


「先生も、国家主席さん相手にえらく率直に話してきたんだな……」


 三島が意外そうな顔で話す。


「まぁ……性分ですんで……はは……」


 頭をかいてしまう柏木。そりゃイゼイラ議長や、連合議長とも話をしてきたのだ。今更である。

 おまけにフリンゼ様が嫁なわけだし……


『フ~む……モット込み入ったお話をなされてくるのかと思っていましたが……』


 ヴェルデオも意外だという顔。

 話の内容だけ聞けば、そんなに重要なものでもなさそうだからだ。


『コの記録は音声だけですガ、マサトサンは、直にファーダ・シュセキと対面して、思うところはありましたか?』


 フェルもそこんところどうなんだと尋ねる。確かにそうだ。このPVMCGな録音だけでは、映像的な細かいニュアンスまでは伝わらない。


「ええ……まぁなんと言いますか、話の前半。張主席に色々尋ねられたのは、言ってみればそんな感じなのかなぁとは思うんですけど……妙に日本とヤルバーンとの関係を執拗に尋ねられているような感じはしましたね……おそらく彼ら中国も事前調査ぐらいはするでしょうから、正直今更感がありましたけど」

「ええ、確かにそういう感じはしますね」


 二藤部もその言葉に納得する。


「はい……で、そんな感じで聞いていると、その次です。『中国は戦争に勝ったことがない』って……それでその次に『言いたいことは今まで通り言うぞ』『その言いたいことを現実にする手段もある』って……ここんところがちょっとワケわかんなかったんですが……」


 確かに話の流れとしては、妙な感じではある。

 そこでシャルリが横から……


『なぁなぁ、そのチャイナ国って、本当に戦争に勝ったことがないのかい?』

『タシカニ、私達自治局ノシラベデハ、ニホン国ハ、コノ、チャイナ国ヤ、他ノ『レンゴウ国』トカイウ多国籍同盟軍ニ、60周期前ノ紛争デ敗北シタトイウ事ニナッテイルガ……チガウノカ? カシワギ』


 シエもそこんところどうなんだ? と尋ねる。


 その問いに、柏木お得意の偏った知識で……


「ええ、そういう事に一般的にはなっていますが、厳密に言えば少々異なりますけどね」


 すると、久留米もその話に補足する感じで……


「そうですね……あえていえば中華圏史とでもいえばいいでしょうか、そういう点では少々話が違ってきますが、『中華人民共和国』という国ができて、65年の歴史でみれば、確かに張主席の言っている事は、間違ってはいません」

「ええ、確かに久留米さんの言う通りです。それと更に言えば、彼らの『主観』で思っていることと、『客観的』にみた時の相違も含まないといけないですけど」


 その話を聞いて、ヴェルデオが……


『エ? ファーダ・ダイジン。では、シエ局長の言う、ニホン国はチャイナ国に、地域国家紛争で敗北したというのは間違いなのでスか?』

「いえ、まぁそういう感じで、日本じゃ認識されていますが……ちょっと説明がいりますね大使」

『フム、よろしければお教えいただけませんでしょうか?』

「はい……実はですね……」


 柏木は説明する。

 とはいえ、簡単な話である。第二次世界大戦の内、太平洋戦争が終結し、昭和天皇の玉音放送、そしてポツダム宣言を受諾したのが1945年である。そして、中華人民共和国が成立したのは、1949年の事だ。つまりそれまでの中国は、現台湾の中華民国であり、中華人民共和国は、ただの反政府共産ゲリラにすぎない。なので『中華人民共和国』が日本に勝利したわけではない。

 それ以前に、ポツダム宣言を受諾する『直前』までの期間、日本軍の中国方面部隊は、実はまだかなりの部隊が中国奥地へ快進撃を続け、戦闘を継続していた部隊もあったという。

 なので、日本が、かの戦争で負けた相手というのは『アメリカ合衆国』であり、中国に負けてなどいないのである。

 しかし、中国側は、共産党ゲリラ時代も、中華人民共和国創生の一時期と、当然勘定するであろうから、『中華人民共和国が日本に勝った』と言い張るのである。もしそれをいうのであれば、日本は『中華民国』に負けたというのが、まだマシな回答といえる。


 ……ちなみに、中国が頑なに台湾を中国の一部にしたがるのも、ここに理由がある。なぜなら以上の理由で、中国は『戦勝国』ではないからだ。客観的史実では、戦勝国は『台湾』なのである。従って、現台湾、中華民国を引き継いだ国家として、名実ともに『戦勝国』のラベルが欲しいために、台湾を頑なに中国の一部と主張するのだ……実はこれを知らない人は結構多い……


 そんなところをヴェルデオに説明する。


『ナルホド……そういう事でしたか……ではファーダ・チャンは、そのあたりも認識しているという事ですよネ』

「ええ、大使……確かに今回、私と主席二人だけの、まぁいっていればプライベートな話ではありましたけど、まさか一国の主席様から、中国共産党のアイデンティティを否定するような発言を聞くとは、少々意外でしたが……」

「ってことはよう先生。張主席は、先生に謎かけか何かしたって事かい?」

「まぁ……そうも受け取れますが……なんせ「そこんところをよく考えてみろ」ですからねぇ……」


 ふ~むと、みんな腕を組んで考え込む。

 

「大見三佐は、横で聞いていたのか?」

「ええ、二佐」

「何か思うところは?」

「はい、まぁ……ないことはないですが……」


 すると久留米はピっと人差し指をあげて


「あの、幹部学校の資料だろ?」

「ええ……二佐もそう思われましたか」

「ああ」


 自衛官二人、何か思うところがあったようだ。


「ん? オーちゃん、何かわかるの?」

「ん? いや、わかるというか……昔読んだ試験の資料を思い出してな」


 大見がそこのところを話す。

 その内容は、『中国人民解放軍』の特殊性だ。


 ……中国人民解放軍。いわゆる中国軍の事だが、この組織、他の軍隊と違って、実に変わった組織なのである。

 というのも、この人民解放軍。実はアメリカ軍や、ロシア軍のような諸外国の軍と違い、所謂『国防軍』という性質のものではない。

 中国の法律と照らし合わせても、この軍隊、国軍ではなく、『中国共産党』の私設軍隊のような形なのである。しいていえば『党軍』とでも言うべきか。

 従って、『国を守る軍隊』ではなく、『党を守る軍隊』なのだ。

 なので、普通なら国家元首の専任事項である、国権の発動たる『宣戦布告』『動員発動令』などを、中国国家元首である『国家主席』が行えるという権限が、中国の法律には明記されていない。

 では中国においてその権限は、一体どこにあるのかというと……実はこのところも明確には記載されていない。ただ唯一それと理解できるのは、『中央軍事委員会が全ての人民解放軍武力を領導する』といったような記載がされており、その理屈でいえば、宣戦布告などの開戦権は中央軍事委員会にあると言う理解ができるというのが、防衛関係者の一般的な認識である……


「そ、そうなのか! それは知らんかった……」


 驚く柏木。二藤部や三島も同じく。

 確かに政治家とはいえ、そんな中国の法律の内容までは普通は知らないだろう。


「ああ、俺たち幹部自衛官なら、まぁ試験やらなんやらで、そのあたりの事は良く目にするからな」


 その話を聞いて、余計に考え込む皆の衆。


「う~む、これは今ここで考えても仕方ありませんね」


 二藤部もさすがにちょっとお手上げだ。


「そうだなぁ……ここんところは新見君や白木君の専門だな。帰ったら分析してもらいましょうや、総理」

「そうですね……しかし、柏木先生……」

「はい、何でしょう総理」

「会って正解でしたね」

「ええ、それは確かに」


 ウンウン頷く二藤部。


 ということで、この謎かけは帰国して、新見達専門家を加えて討議してみようという事になる……




 ………………………………




 中国某所。

 柏木との会談というか、散歩というか……を終えた張徳懐。

 煙草を一つふかしつつ、外交部長の李白鴎と話す。


「同志首席、如何でしたか?」

「うん……なかなかに面白い男ではあったが、普通の人間でもあったな」

「はぁ……」

「あれは政治家というよりは、商人ビジネスマンだ」

「ええ、まぁ彼の経歴的に見ても、そういう感じではありますが……」

「うむ、あの好奇心の旺盛さはそんなところだろうな。そして……」

「……」

「彼は相当な人脈を持っていると見た……初めて会った私を相手に、あそこまでふてぶてしく振る舞えるという人間もなかななかおらんだろう」

「はぁ……」

「はははは、まるで私は気のいい大人たーれんのような感じだった。フフフ」


 今さっきの事を思い出し、吹き出す張。


「さて、あの男……私の言葉をどう受け取るかな?」

「うまく動いてくれますかね?」

「彼が噂通りの切れる男ならな……しかし、あの肝の座り方……いや、ちがうな……何と言えばいいかわからんが、あの男独特な、妙な感じは警戒せんといかんと思う」

「妙な感じですか……」

「ああ、なんでも国家安全部の話では、あのフェルフェリアという女性外星人と妙に親しいという話だ。他には女巫の外星人や、半机械獣人とかな……まるで古くからの友人のような感じで付き合っているという話だそうだよ」


 やはり張も柏木に何かを感じ取っているようである。

 しかし、うまい言葉が出てこない。日本のスタッフなら誰でも知っている柏木の字……『突撃バカ@銀河級』という言葉が……




 ………………………………




 さて、また場所は戻って北京飯店。

 諸氏みなさん。明日の全体会議のための打ち合わせも終わり、各々部屋に戻って準備したり、体を休めたり。

 忙しいのは、大見や久留米、シエにシャルリといった警護の方々。各交代で休憩を取りつつ仕事に就く。

 フェルさんは、相も変わらず柏木の部屋で彼と一緒。自分の部屋があるのに、彼の部屋がいいらしい。

 しかし今回ばかりは国際会議の真っただ中で、部屋を一緒にというわけにもいかないので、さすがのフェルもそこのところは自覚がある。

 シエも、いつものちょっかい出しモードは封印。彼女も仕事には忠実だ。そのあたりのTPOはわきまえている……と思う。


「あ、そうだ。フェル、お土産」

『エ! お土産? ナニナニ? なんでスか?』


 キラリンな目をするフェル。

 

「はいこれ、ムフフフ……」


 例の店で買ってきた小箱をポンと渡す。


『こ、これはっ!……あの会社の最新ケータイげーむ機ではないですかっっ!』


 日本のゲーム大好きなフェルさん的にも、目をつけていたマシンではあった。

 そのうち買おうと思っていた矢先に、なぜか旦那がプレゼントしてくれる。意外に思いつつも、嬉しそうに箱を開けて、封を解くフェルさん……


『ウワァ~~…………って、アレレ? ナンデスかコリは……なんかパミ通で読んだのと違いますネ、これ……』


 後ろのタッチパッドがないし~、画面がなぜか人造人間OSだし~……

 コレジャナイ感満タンな顔になるフェル。

 ゲーム機を、人差し指と親指でつまむようにして、プラプラさせる。


「ハハハ、ごめんな、フェル。それあの携帯ゲーム機とは違うんだよ」

『エェエェゑ江ヱェ……騙したデすねっ! マサトサン!』

「いやいや、気づかないかいフェル。そんなマシン、日本で売ったらどうなると思う?」

『エ? あ……そういえば確かに……こんなのニホンで売ったら『チョサクケン法』という法律に違反して、捕まってしまうデス……ヤルバーンも、ハイクァーン造成の関連で、そのあたりをニホン政府と調整しましたものね』

「ああ、そうだね」

『じゃあ……ダメじゃないですカ! こんなの売ったら……チャイナ国政府に文句を言わないと』

「それがわかれば上等だよフェル。そこんとこを分かってほしくてフェルにそれを買ってきたんだ」


 柏木はフェルに話す。

 この国では、それが普通に行われているんだと。

 国家間の決まり事を、国民のレベルで遵守しようという意識がない。政府はそれを取り締まろうとはするが、作る側も役人に賄賂を渡し、お目こぼしをしてもらう。しかもそんな事を13億人の規模でやるもんだから、外国が文句を言っても効き目がないし、守らない人間の規模が大きすぎて取り締まれもしないと。

 おまけに、軍部のような国家規模でも、これと同じことを兵器レベルでやる。

 ロシアの戦闘機はパクるわ、ロケット技術はパクるわ……

 ロシアは、完全にキレた事もあるぐらいだ。ロシアがキレるぐらいだから、相当なものである。

 おまけにそうやってパクって出来た代物を堂々と胸を張って『国産の成果』と断固として言い切って、外国に売る。

 それだけではない。この国では、海外からの外資企業も、完全な独立した外資企業での経営ができない。必ず中国企業と合弁でやって、中国人の労働者と経営者を入れなければダメで、撤退しようとすると、なぜか法を盾に、そして圧力がかかり、撤退できなくなると……そして、技術が盗まれてしまう。


 柏木はフェルに、ティエルクマスカもトーラル技術の歴史で似たようなところはあるが、ティエルクマスカの場合は、別に盗んだ技術というわけではないし、相手の権利を遵守する概念がきちんとある。

 彼らから見れば稚拙な、地球や日本の技術を学ばせてもらう代わりに、その代価、例えばティエルクマスカ原器のような対等以上の対価をきちんと渡すという倫理感、道徳心があるから立派なのだが、残念なことにこの国ではそこんところが希薄だと話す。


「……フェル、それが今現在の、この国の本質なんだよ……実は昔はそうでもなかったんだけどね。技術を教えてやれば、感謝もしたし、それによる利益も日本にあった。しかし……ある時を境に、中国が資本主義の経済システムを取り入れて、経済的に発展し始めてから、こんな風になってしまったんだなぁ、これが……」


 そう、かの改革開放政策である。


『ナルホドです……でも、私たちの調査では、この国にも……今回は行けそうにないですけど……バンリノリョウジョウとかいうチキュウ最大の遺跡とかを作った独自の文明を持つ国なのでショ? どうしてそんな事するのですカ?』

「まぁ……どういえばいいのかな? それがこの国の人達の普通の意識なんだよね……無論、最近の若者の間では、そういうのも分かってきているという話だけど、まだまだだね」


 特に、この国が、資本主義のシステムを取り入れたとはいえ、やはり根本的に共産主義国だから、資本主義国のような価値権利意識が希薄なためだとも話した。

 価値の平等を謳った共産国家では、著作権や特許の概念は生まれないし、育たない。


『ナルホドです……では、迂闊にこの国にハイクァーン技術や、ゼル技術を渡そうものなら……』

「ああ、フェルは『向こうの世界』で、もうそれを体験してきたよな……」

『ハイです……なるほど……あの世界での出来事の背景には、こういう理由があったでスか……』

「そう……まぁフェル達は一極集中外交主義があるからね。そこんとこは問題ないんだろうけど、こういうところも注意しておいてくれよ、明日の会議ではさ」

『ハイです……でも……』

「ん?」

『チゃんとしたのがホシイですヨっ!』


 SUNY VIDAをピラピラさせ、コレジャナイフェイスに、残念フェイスが合わさったような顔をして訴えるフェルさん。

 ダンナの意外なプレゼントだっただけに、余計に残念感が増す。


「ハハハハ! わかりましたデス。お詫びに日本へ帰ったらプレゼントさせて頂きますヨ。『ちゃんとした』のを」

『ウフフフ、なら許してあげまス。ありがとデス』


 ニッコリ笑うフェル。嬉しそう。

 しかし……13億もの国民を擁する国相手に『あの世界』な事が起こるのは、確かに御免こうむりたいと思うフェルだった……




 ………………………………




 アジア信用共同主権会議 全体会議当日。

 再び日本勢とヤルバーン勢は北京国家会議センターへ赴く。

 会議開始直前まで各国代表やスタッフは、各々ロビー活動に勤しんでいる。

 巨大な円卓に、オブザーバーも含めた参加国の名札が建てられ、代表は会議開始を待つ。

 その間にも、各々お目当ての国の代表と会話し、何か話し合っている姿があちこちで見られる。


 日本の左横にはヤルバーン自治区代表団が座る事になった。これは事前にヤルバーン側のたっての希望で、日本の横に席を設けてほしいという事でそうなった。でなければ出席しないとまで言ってこうなった形だ。国名票には『YALBIARN-IZEILA・T.G.R.U』と明記されている。

 実はこの英語表記、まだ世界各国共通のスペルが決まっていない。なので外務省の提出したものを使っているのだ。


 右横には米国代表。

 米国からは今回、ハリソン大統領に近いトーマス・デュラン国務長官がやってきていた。


「おはようござます総理大臣閣下。お話は大統領から全て伺っておりますので……」

「よろしくお願いします、デュラン長官」


 二藤部とデュランは握手。

 数ヶ月前、ヤルバーンが日本に来た直後、彼ら国務省とは色々あったがそれも昔の話だ。二人は色々と会議の方針で話し合ったりしている。

 デュランはヴェルデオやニルファ、フェルとも握手。私達はあなた方を支持するので心配要らないと一言二言会話をしたり。

 しかし、米国の支持は有難いが、いかんせんオブザーバーだ。議決権がない。コレに関しては日本と同じ立場である。


 すると……昨日フェルと話していた正式参加国のインド外務大臣が、フェルのところにやってきた。

 なんでも昨日の件について少し話がしたいという。


 席を離れて、インド外相と話をするフェル。外相の話を聞き、なぜか表情が明るくなるフェル。軽くティエルクマスカ敬礼をして礼を言っている模様。

 その外相も胸に手を当てて、軽く頭をたれて礼をすると、自分の席に戻っていった。

 その様子を見た柏木は、代表席の後ろにあるスタッフ席から歩み出て……


「フェル、さっきのは昨日のインド外相さんだよな。どうしたの?」

『ウフフ、ナイショでス。マサトサン。後で教えるデスヨ』

「え? なんで?」

『コッカキミツですよ、ウフフ……でも、インディア国サンは、これでヤルバーンや日本のお味方でス』


 口に手を当ててクスクス笑うフェル。

 向こうでヴェルデオやニルファも、二人の様子を見て、クスクス笑う。

 

(ははぁ~……なるほどね)


 その内容を大体察した柏木大臣。手をピラピラ振って、ハイハイという感じで、笑って自分の席に戻る。


「よぉ先生。フェルフェリアさん、何やってたんだ? インドのと……」


 その様子を見ていた三島が訝しがって尋ねる。


「はは、インドっていったら何です? 三島先生」


 三島は少し考えて、おぉおぉという感じで頷いて笑う。


「アレか? 原材料の輸出入で話つけたとか」

「そんなところじゃないですか? ははは」

「そんなに人気なのかよ、アレ」

「なんか、私が向こうへ行ったときも、ティエルクマスカの食文化を変えそうな勢いでしたよ」

「へーー」


 そんな話をする三島と柏木。

 しかし……よくよく考えたら日本勢の顔ぶれも相当なものである……なんせ総理大臣に閣僚が二人も出席しているわけでわるからして……


 ……そして会議が始まる。

 最後に登場するのは、今会議の主催国、中華人民共和国 国家主席 張徳懐。

 張は、中国の隣席に座る、ロシア連邦外務大臣と握手を交わす。それをこれみよがしなマスコミカメラのフラッシュが覆う。二人して、カメラ目線でポーズをとったり。


 オブザーバー席には異星人ヴェルデオ達がいるというのに、この会議ではロシアと中国との親睦の方が大事なようである。

 二藤部とデュランは目線で首を傾げ合う。


 その後、開会宣言の後、議題を提示し、各国代表がそれについて意見を表明する。

 そう、意見の表明だ。討議ではない。

 なんせある種のデキレース会議であるからして、討議というもの自体がハナから起こるわけがなく、各国意見表明の出し合いという感じである。


 まずは、経済状態について。

 いわゆる途上国は、経済協力を要請したり、外国企業の誘致を要請したり、比較的豊かな国は、金銭借款の表明や、技術協力の表明など、おおむねそんなところ。まぁ普通の光景である。

 中国は、途上国に金銭的支援を表明して存在感を見せようとする。

 日本にも意見を求められるが、二藤部はODAの強化程度に話を留める。

 無論、この議題で、ヤルバーン側に意見を求められることはなかった。

 今回、ヤルバーンは、中国が提示した各種議題の内、『ヤルバーンの国際的な処遇について』という議題以外は討議しないとあらかじめ通達しているので、その時までは出番がない。

 しかしフェルは、彼女達には関係のないこれら議題も、調査の一環として、記録していた。


 そんな感じで、各種議題を消化していく……そして安全保障に関する議題に話が入る。


「現在、世界は欧米が主体となった安全保障の枠内にあるが、昨今頻発するテロなどは、そもそもそれら欧米的価値観が我々アジア各国の価値観と相違するところから来ている、という理由があげられる。従って、このアジアは、アジア各国の価値観をもって、アジア各国の連携で対応することが本来望ましいのであって、その点の各国連携について確認をしたい」


 このように張が話す。

 つまるところ中国の言う、『中国安全保障圏』を拡大した意見だ。

 張は、以前より、西側の『北大西洋条約機構』ロシアの『独立国家共同体』に対抗して、『アジア安全保障機構』の設立を提唱していた。つまり、中国主導のアジア版NATOだ。

 米国が警戒していたのは、このあたりの事なのである。


 そこで出ててくるのは、日本とヤルバーンに対する意見である……

 主催国代表の張が話す……


「……そこで日本国代表の二藤部総理大臣閣下にお尋ねしたいが、貴国は現状アジア各国の安全保障に対して、如何様な意見をお持ちですか?」


 アジア各国などと言ってはいるが、要は中国と、しいえて言えば、韓国の安全保障についてだ。


「我が国は、戦後より現在、そしてこれからもアジアの各国との積極的な平和外交によって、わが国のアジアにおける責任ある義務を全うしていく所存であります。それはこれまでも、そして今後も変わりがありません」


 二藤部はそう答える。まぁ、無難な回答だ。

 但し、これはヤルバーンが来る前までの話なら、この回答で済むのだが、今回は勝手が違う。


 張は続けて質問する。


「しかし現在、貴国は特殊な状況にあります。それは貴国自身が最もよく理解されていると思いますが、その特殊な状況を鑑みた場合の回答にしては、いささか不十分と思われますが?」

「その点は、よく理解しております張主席閣下。従いましてこの度、我が国は、貴国、そして本会議にお集まりの皆様が、その『特殊な事情』とお考えになられている当事者の方々を、『我が国が』お誘いしまして、この度、この場にお連れ致しました……」


 張は、二藤部が『我が国が連れてきた』という言葉に少しムっとする。

 なぜなら、彼らにしてみれば中国が招待したという事になっているからである。

 しかし、二藤部の話は間違ってはいない。なぜなら、彼らと直接話ができるのは日本だけだからだ。


「その『特殊な事情』の方々に、現在討議されているアジア圏の安全保障について、意見を頂きたいと私は考えます。よろしいですか? 主席閣下」

「はい……わかりました」


 張も、二藤部にこういわれては、了承するしかない。


「では、各国代表のみなさんにご紹介いたします。こちらがティエルクマスカ銀河共和連合・イゼイラ星間共和国・都市型探査艦ヤルバーン自治体代表の方々です」


 二藤部は起立して、拍手をする。米国も同じく二藤部に続いた。

 オブザーバー各国は、それに倣う。なんせこの会議では、言ってみれば晒し者で来ているのがオブザーバー参加国だ。これみよがしなスタンディングオベーションで、ヴェルデオ達に拍手する。


 もちろん正式参加国のみなさんも起立して拍手だ。彼らも中国のいう『主権』を認めている訳ではない。正式参加国には、イスラエル・ベトナム・インドといった、中国には本来煮え湯を飲まされている国々や、トルコといった、中立的な国、アラブ首長国のような、宗教的に、今や相容れない国もある。

 言ってみれば『対欧米』という点だけで、とりあえず参加しているだけの国もあるのだ。


 拍手に応え、ヴェルデオやフェル、ニルファも起立してティエルクマスカ敬礼をし、にこやかに左に右に頭を垂れる。 

 参加国も、やっと今会議の本当の意味での主賓登場に、やれやれな表情だったりする。


 張も、一番最後に立ち上がり拍手。なんとなく煮え切らない様子。

 ロシア外相も中国に付き合う。まぁ今会議の二大巨頭なわけであるからして、これも仕方ない。


 二藤部は、少し後ろを向いて、スタッフ席で控える柏木にウィンクして合図を送る。

 柏木と三島も、軽く頷く。


 柏木は、PVMCGの通信機能をONにして、さりげなく口に当て、小さく呟く……


「(ではみなさん、このデキレースに、キッツイの一発お見舞いしてやって下さい)」


 柏木は、この中国の中国による中国のためのデキレース会議に少々イラついていたので、思わずそんな言葉を漏らす

 ヴェルデオら三人は柏木の方をチラと振り向き、ニコっとわらって、軽く頷く。どうも彼らも柏木と同じような感じみたいである。


 しばしのスタンディングオベーションが終わると、全員着席。まずはヴェルデオがマイクを取る。

 ヴェルデオは、眼前空中に、VMCモニターを起ち上げると、会場が「おお~」っとどよめく。

 みんな生VMCモニターを見るのは初めてだからだ。張もロシア外相と指を指して、何か話していた。


『本カイギ出席の、惑星地球世界における地域国家各国のミナサマ。私が只今、ニトベ総理大臣カッカよりご紹介に預かりました、ヤルバーン自治体代表団の一人でございます、ティエルクマスカ銀河共和連合全権大使、ヴェルデオ・バウルーサ・ヴェマでございます……サテ、先ほどのチャン国家主席カッカのお話についてですが、大使としての私の意見を申し述べさせていただくなら、我々は現在国交を持つ日本国以外の国家との『主権』に関する交渉は致しておりません、そして、今後の日本以外の地域国家に対する『内政干渉』もしくは、それに準じる行為も、一切行うつもりはございませんので、何卒各国代表の方々におかれましては、ご心配無きようお願い申し上げまス。これは我々がこの地球に到着して以降、何ら方針に変更はございません……では、わがヤルバーン自治体の本国内政判断を担当する、フェルフェリア・ヤーマ・ナァカァラ“ティエルクマスカ連合議会探査母艦派遣議員”より、その点の詳細をご説明させて頂きます……』


 この言葉に、会場は騒然となる。

 張も、思わず中腰になって、そのヴェルデオの言葉を聞く……

 『フェルフェリア ティエルクマスカ連合議会派遣議員』というその言葉。

 今や世界で有名な、ヤルバーン調査局のホエホエ局長フェルさんが……まさかそんな役職だったとは……と……


 さすがにこの言葉は効いたようだ……まさか、こんな見た目の若い女性フリュのフェルが、ティエルクマスカ連合からの派遣議員だとは誰も想像つかないだろう。

 そうなると……場合によってはヴェルデオより立場が上ではないかと……各国代表も、それぐらいの事はわかる。

 連合議会議員というのだから、連合本部に一番近い人物が、今、この会議に出席しているという事だ……


 張はこの事態に焦る。

 当然それは、この会議の内容が、ダイレクトにティエルクマスカ連合本部に伝わってしまう事に対してである……  

 彼は二藤部に視線を送る。

 しかし二藤部は視線を合わさない……ってか、隣のデュランとにこやかに話をしていた……他のオブザーバー参加国の代表も、席を立って二藤部の元に寄って来て、何か話をする。


(米国は……この事を知っていたのか?……チッ)


 張は思わず舌打ちをしてしまう。


『……ミナサマ、只今、ヴェルデオ大使よりご紹介に預かりました、ティエルクマスカ連合議会より派遣されました、フェルフェリア・ヤーマ・ナァカァラでございまス……』


 フェルは堂々とした態度で一礼すると、現在の日本との外交状況と、ティエルクマスカおよびイゼイラの日本との外交方針を今まで通りの経緯を踏まえて話す。

 その内容は、おおむね二藤部が記者会見で話した通りの内容のものだ。そしてその根幹が『竹取物語』のティエルクマスカ的事情によるものだと。従って、それに関する日本以外との外交は、連合として当面何らアクションを起こすつもりはなく、各国代表の……というよりか、中国・ロシア・韓国の懸念は当たらないということを話した。


 ……各国は、フェルが連合本部直轄の人物というだけでも騒然としている。

 しかし、柏木の作戦はこれで終わらない……


 フェルは少しニヤッと笑みを浮かべ、次の人物を紹介する。


『各国代表のミナサマ……我がヤルバーン自治体は、合議代表制自治体でゴざいまス。従いまして、もう一人の代表、コチラ……ティエルクマスカ連合加盟国の一つで、ご存じ私達の母国より、先日のウチュウ船カグヤにて新たに着任された、イゼイラ星間共和国 対地球特使であらせられます……ニルファ・ダァント・リデラ“イゼイラ星間共和国議長代理”から、イゼイラ星間共和国議長より、皆様へのご挨拶のお言葉を頂いてきておりますので、ご紹介させていただきます……ちなみに、ニルファ議長代理は、お名前からも分かる通り、イゼイラ星間共和国議長で国家元首であらせられる“サイヴァル・ダァント・シーズ”閣下の奥方サマであらせられます……では、ニルファ議長代理閣下、よろしくお願い申しあげます……』


 フェルは、膝を折ってティエルクマスカ敬礼。ヴェルデオも同じく。

 ニルファはノリノリで、堂々とした態度。フェル達を見下ろすように頷くと、会場全体を見渡し、敬礼をする。

 その圧倒的な威圧感に、思わず会場の代表も、着席のまま、ポっとした顔で、頭を垂れてしまう。


 米国国務長官デュランも、さすがにこれは聞いていないと二藤部に手を横に挙げて問いただしている感じ。

 二藤部も必死で笑いをこらえながら、メモ帳に、スラスラと英語で事の詳細を書いて、彼に渡していた。

 それを読むデュラン……ハァハァと頷く……要はお芝居だと。そして、小声で彼女がサイヴァルの奥さんであるのは事実だと説明していた。つまりファーストレディだと。

 デュランもそこは流石に驚く。

 後ろに控えるスタッフを呼んで、何かを指示していた……つまり大統領へ連絡に行け、という感じだろう。


 議場はもう騒然だった……これにはさすがの張も、椅子からずり落ちそうになった。

 議長代理という役職だけならまだわかるが……その人物がイゼイラのファーストレディとなれば話は違ってくる。

 議場の各国代表は「どういうことだ?」というような感じで隣に座る代表と話したり。

 アラブ系の代表は、特に身振り手振りのジェスチャーが目立つ。


 張は落ち着きを取り戻すと、日本側の席へ目を向け……その後ろのスタッフ席へと目を移す。


(やはり……あの男か……)


 彼は柏木を凝視する。

 すると、その柏木も、腕を組んで膝を組み、張に視線を合わせる。

 視線が合うと、組んだ腕や足をおろし、不敵な笑みを浮かべて軽く会釈。だが、背筋は伸ばしたまま。


 張も柏木のその態度で、これを仕組んだのは彼だと確信した。

 彼も思わず笑みを漏らし、首を横に軽く振る……


 隣のロシア外相も、張へ話しかけ、何かを聞いている。そして張は柏木を指さして、外相と何かを話しているようだ……


 ……中国人というのは、古来より面子を重要視する。

 何があっても、何を先においても面子が大事なのだ。

 例えば、男と会うときに呑む煙草は、そこらへんの安物紙巻煙草だが、女と会うときに呑む煙草は、ヨーロッパの高級煙草といった具合に例えられることがある。これは議論においても同じだ。

 できることできないことに関わらず、とにかく人前では大きく出る。

 しかしこれには続きがあり、彼らは徹底的に、完膚なきまでに面子、つまり状況を叩き潰されると……『その話は無かったことにする』という特性がある。必死にその話は無かったことにしようと躍起になるのだ。

 しかしこの状況……会議という場で晒されてしまっている情況では『無かったこと』にはもうできない……


 議場が騒然とする中、ニルファはサイヴァルから預かったこの会議へのメッセージを読む。


『会議各国代表のミナサマ。私はイゼイラ星間共和国議長代理のニルファ・ダァント・リデラでございます……まだ在ニホン国ヤルバーン自治体へ着任したばかりの身でございます故、今後、色々とニホン国や、その環境を取り巻くこの星の国際情勢などを色々見聞させて頂きたく思う所存にございます……』


 そういうと、ニルファは眼前にポっとVMCモニターを造成して、サイヴァルから預かった原稿を読む。

 実はこの原稿は本物で、サイヴァルがニルファを議長代理に指名した際「その会議でこれを読んでほしい」と託されたものだ。

 その原稿の内容。要約すると……


『我々ティエルクマスカ連合、及びイゼイラ星間共和国は、我が国の明確な総意と国策をもって、この度5千万光年もの彼方にある惑星地球の、日本国との国交を、連合各国議員総意の元に結ぶことを決定した。わが国のこれら方針は、地球世界各国になんら不利益をもたらすものではなく、また、各国の内政に干渉するような内容のものではない。従って地球世界各国の代表におかれては、かような憂いを抱く必要はなく、今後の日本国と我が国との交流の推移を長い目で見守っていただきたい」


 というようなことが書かれてあった。

 これは、現在の日本とヤルバーンの関係も勘定に入れて解釈すると、解釈のしようでは……


『日本との関係を邪魔したら知らないよ』


 と言われているようなものである。


 ニルファは一通り役目をこなすと、敬礼して着席する。

 会場は、唖然茫然……しばしの沈黙が議場を包む。


「なぁ先生、あれって……何かに似てねーか?」


 三島も腕を組んでニヤニヤしつつ、事の推移を見守っている。


「え? 何です? 三島先生」

「ほれ、月曜日夜八時の時代劇……」

「明るいナントカですか? んじゃ、さしずめ中国は悪代官というところで?」

「何言ってんだよ、そんな事言ったら失礼じゃねーか」

「あ、これは失言でした。申し訳ないです」


 柏木は、中国に来る前、結果が決まっている無茶ぶりな要求をするような奴には、ケチョンケチョンのミソカスに言って、帰ればいいと言った。

 そして、この会議で、それを見事にやってみせた。

 無論、彼はケンカをしに来たわけではないからして、直接的にそんなことを彼自身が言いはしないが、ヤルバーン勢に頼んで、会議参加国の想像や妄想をかきたてるようなニュアンスをてんこ盛りにした状況を、この会議の場に作ってやった。

 あとは各国がどう理解するか? という事である。


 このニルファの最後の一言で会議は決してしまった……後が続かない。

 その後、各国はヤルバーンに、地球世界の貧富格差の解決のための、『ハイクァーン技術提供』などを申し入れるが、それも討議できるようなものではなく、各国原稿を棒読みするに留めるような感じで終わってしまう。


 そして、その後、会議参加国のみの、宣言採択の話し合いが行われる。

 宣言には、いわゆるそれまでの地球世界におけるアジア各国の経済格差是正なども盛り込まれてはいるが、やはり大きなものは……


1)アジア世界の安全保障は、アジア世界で担保することを目標とする。


2)各国の抱える処々の主権問題は、対話による平和的な解決を行う。


 といった感じで、言ってみれば元々の、中国のシナリオ通りな言葉がツラツラと続くわけだが、その中の安全保障に関する項目の『特別付帯事項』という形で……


3)ヤルバーン自治体には、今後の地球世界における諸問題解決のために、その科学技術的協力を引き続き求める。


4)日本国は、ヤルバーン自治体との二国間事案を早期に解決させ、後の交渉を国際社会に委ねることを要求する。


5)今後、世界に大きな状況変化が起こった場合、日本国はヤルバーン自治体との交渉を、国際社会と共に行うことを要求する。


6)ヤルバーン自治体には、地球世界の一員として今後も活動する事を望む場合、地球世界各国における政府級人員の、ヤルバーン自治体への受け入れを検討するように求める。


 という感じで落ち着いたようだ。

 白木達が当初予想した……


○地球世界の国際関係に混乱をきたす日本とヤルバーン―ティ連との交渉、国交の停止。

○ヤルバーン乗務員の日本への入国規制。

○ヤルバーン関連資料公開と、公開監査のための国連調査団の受け入れ。


 という項目に若干触るところはあるが、それでもかなり当初のシミュレーションにくらべれば、その内容を変化させる事ができた。


 これには、日本とヤルバーンだけではなく、会議中、もちろん意見表明に参加していた米国のデュラン国務長官の援護射撃や、インド外務大臣の援護射撃などもあっての話である。

 更には、フェルやニルファの登場と発言で、言ってみれば様子伺いで参加していた正式参加国各国の中でも、ベトナムやイスラエル、トルコ、モンゴル、タイが、日本とヤルバーン擁護に回ったのも大きかった。

 これらの国々も、ヤルバーン―イゼイラと日本の関係の深さを考慮した場合。米国同様にその状況をそれまでの世界状況の延長線で利用したいと思うのは当然の話だろう。従って、彼らは彼らの国益を考えてヤルバーンや日本を擁護する方針に回ったのだ。自国の国益を考えれば当然の事である。


 韓国は……相も変わらずだったのが印象的であった……





 ……そして、会議は閉会する。

 張は、二藤部やヴェルデオ、そして柏木に不敵な笑みを残して、足早に議場を去って行った。


 彼らの元に歩み寄る柏木。


「お疲れ様でしたみなさん」


 軽く拍手しながらねぎらう柏木。


「ハハハ、なかなかに見てて爽快だったですな、なぁ総理」

「ええ、三島先生もアッチの代表席に座りたかったんじゃないですか?」

「本当だぜ。あんな見事な抑え込み、まぁそうそう見た事ねーな、俺も」


 三島の言葉に同意する柏木。


「ええ、打ち合わせ以上の出来栄えでしたね。大使とフェルとニルファさんの連携が抜群でした」


 するとニルファは頬を染めて……


『アア……デモ、フリンゼや、ファーダ・ヴェルデオを見下ろすような態度を……演技とはいえお恥ずかしいし、申し訳なく……どう致しましょウ……』


 頬に手を当ててオロオロするニルファ。


「いやいやいや、ニルファさんのあの態度、あれが効果テキメンでしたよ、ね、総理」

「ええ、なんせ私に話が振られなくなりましたから助かりましたよ、ははは」

「なんだい総理。そこですかい、ハハハ」


 みなさん、ひと段落。そしてその話の中にデュラン長官も混ざってきた。


「お見事でした二藤部閣下、そしてみなさん」

「いえ、デュラン長官も、かような意見表明感謝いたします」

「いえ、私も今回は大統領の意向に沿ったまでですので、何もしておりません。お気になさらずに……では私も急ぎこの件を報告しますので、また件の貿易交渉の際にでも」


 そう言って、デュランも足早に去って行った。

 デュランを見送ると、柏木は……


「あ、あれ? フェルは?」

「お? そういや、フェルフェリアさん……いねーな、どこ行ったんだろ」


 キョロキョロ議場を見渡す諸氏。


『ア、あそこでス』


 ヴェルデオが指さす方向……

 フェルさん、円卓に座って、インド外相と二国間貿易会談を行っているようである……

 思わずみんな吹き出してしまう。

  

「ハハハ! 大使、近いうちに【印ヤ カレースパイス貿易協定】を結ばされるかもしれませんよ」


 柏木がどうするんだ? とヴェルデオに冗談めかしに問う。


『フ~む、これはファーダ・サイヴァルとも協議しないといけない重要な協定になりそうでス』

「えぇ? 重要な協定ですか?」

『食材程度なら、オカネで解決できますのでね。フムフム。アメリカ国のキンユウカワセ協定に引き続いて、ニホン政府とも協議させて頂きたいですな。今後のジギョウ拡大も念頭に入れないト』


 ありゃりゃという感じの二藤部達……まぁいいか、みたいな……





 ……その後、即日で帰国する柏木達。

 帰りは見送りもなく、質素なものである。付き従うはマスコミのみ。

 しかし、フェルとニルファの一件は相当にインパクトが強かったようで、会議を取材に来ていた記者のほとんどが日本とヤルバーン勢を追う。


「二藤部総理! 二藤部総理! フェルフェリアさんが連合の議員で、ニルファさんが議長代理だということ、政府は把握していたのですか!」


 そんな言葉が空港に響く。

 二藤部が少し足を止め……


「え~、その件につきましては、日本国とヤルバーン自治体双方の協議の後、正式に記者会見を行いまして、発表させて頂きます」


 しかしそんな回答で納得する記者ではない。それでも食らいつく輩には、シエとシャルリが歩み出て、シエの殺視線と、シャルリの超テク義眼を光らせたニィ~という笑顔で記者達を抑え込む。

 最高の護衛官である。





 ……んで、例の如く、また困った事態が起こりそうになったが……





『モ、もー絶対ぜったいゼーッタイ、ヒコーキには乗りませんからねッ!』


 北京首都国際空港、VIP用ロビーの、どっかの柱にPVMCGで鎖を造成して、自分ごと縛りつけるフェルサン。


『モー乗らないもンネー、これなら強制連行は無理ですヨーだ』

「い、いや、フェル、どーやって帰るんだよ、それ……」

『ヴァルメ呼んで、転送で帰るデス。フフン』

「そっかー、残念だなぁ~ いやさぁ、フェル、昨日は言い忘れてたけどさぁ……政府専用機って、日本の皇帝陛下もお乗りになるんだよねぇ……そっかぁ~……フェルは皇帝陛下様もお乗りになる飛行機に乗れないってのかぁ~……」

『ほ、ほェ?……』

「いやぁ~……残念だなぁ~……皇帝陛下、この事お聞きになったら、さぞかしお悲しみになられるだろうなぁ……精死病の資料や、ナヨクァラグヤ帝と日本との関係なんかの研究に、『 重 大 な 』支障が出るだろうなぁ~」

『エ、エ、エ……それはダメですよ……』

「フェルが政府専用機に乗りさえすれば、万事解決、もう言うことなしなんだけどなぁ~~……」


 そこへシエが調子に乗って……


『ウム、トナレバ、カシワギモ大臣ヲ解任サレ、選挙モナクナルカモナ……スルト、ダ、私ガ落チ込ンダカシワギヲナグサメテ……』

『あ、シエ、私もその仲間に入れておくれよ、ニヒヒヒヒヒ』


 シャルリもフェルで遊んでみる。


『エ、エ、エ、エ、エ、エ…………モ、もう、わかりましたよッ、乗ればいいんでしょ乗ればっ!、イイですよ乗りますヨ、乗って見せますヨッ、怖くなんかないモン。あ~んな、た、たかだかフィブニー効果で飛ぶ乗り物なんて、私にかかれば……ブツブツブツブツ……』


 フェルサン、鎖を解いて、胸張って政府専用機へ……でも腕と足を“なんば歩き”のようにして歩く……やっぱり相当怖いらしい……


 そんな感じで、北京―中国を後にする柏木達。


 ただ……気になるのは昨日、張の話したあの言葉。少し帰国してからゆっくり考えてみようかと思う柏木。

 窓から見えるPM2.5な黄色い北京の霧を眺めながら、そんな事を思ったりする……


 しかし……その横には、また悲鳴と、ガクブルで柏木にずっとしがみついて離れないフェルサンの姿があった……




 ………………………………




 ……北京から帰国した柏木は、間をおかずに新見や白木を加えて会談内容を報告する。

 まぁ、全体会議に関しては、日本側スタッフも新見達にはリアルタイムで伝えていたので、報告の必要もない。要するに『柏木とヴェルデオ大使達が、会議をブっ壊してきた』という話である。

 恐らく今後、あの会議の構成国がどうなるかも不透明だ。なんせ中国様の意向に靡かなかった国が結構出たというのが大きい。

 中国的には、中華マネーを撒いておけば大丈夫ぐらいに思っていたところがあったようだが、そんな単純な話ではないということも、中国政府は思い知っただろう。


「要するに、米国と同じというわけですね」


 二藤部達の報告を聞いた新見はそう話す。


「ええ、幸か不幸か……いや、一応は『幸』なのでしょうね……柏木先生の作戦で、あの会議から離反者を出すことには成功しました。結局、そういった国々は、米国と同じくヤルバーンとわが国の関係を、ヤルバーンが来る前の世界情勢と照らし合わせて『利用しよう』という方向性の国益を優先したのでしょう。まぁ……それがずっと続くというわけでもないのでしょうが……」


 二藤部は、ハリソンとの電話会談を思い出してそう話す。

 改めて新見の、ドノバンとの話と照らし合わせても、そういう感じなのだろうと。


「……あ、あと、フェルフェリアさんの功績も大きいですね。ははは」

「インドですか……まさかそんな方法があったとは……わからないものだな、白木君」

「ええ、はっはは……まぁ、言われてそうかと思いつくところですね、統括官」


 白木も頭をかいて「やられた」な表情。


「こりゃ、日本の飲食業もウカウカしてられねーな。なんせ向こうさんじゃ、一大ブームメントらしいからな」


 三島もそんな感じ。でもいいじゃねーかと。


「でも白木、助かったよ。お前たちのあのシミュレーション。バッチリハマってたわ」

「おう、話は聞いたが、やれやれだぜ……しかし最後の宣言採択だけどよ、ああいう形で軌道修正できて良かったぜ……」

「ああ、そういう事だな……」

「で、柏木、例のデータ流出の件も、向こうさんから?」

「おう、ま、なんとかだけどな……」


 しかし三島が突っ込む


「先生の三文芝居で難を切り抜けたぜ」

「まだ言いますか三島先生……」


 ……データ流出の件は、既に手は打ったと新見が話す。

 やはり、ヤルバーンのセキュリテイを通していないパソコンへのハッキングだったと。

 そのあたりはシエ局長が、任せてくれという話だという事。


「でよ、柏木……張主席とサシで話をしたという件だけどよ……」

「ああ、あれなぁ……」

「しっかし、お前もよくやるねぇ……まぁティエルクマスカ連合議長や、イゼイラ議長ともサシで話してるんだから、今更感はあるけどな」

「まぁオーちゃんもいてくれたしな、そこんところは心配してなかったけど……」


 すると新見が……


「あの『言いたいことは今まで通り言うぞ』『その言いたいことを現実にする手段もある』『でも戦争に勝ったことがない』という話ですか?……」

「はい……今でもずっと考えてるんですけど、何が言いたいのかサッパリで……」

「柏木さんとしても、全く何も考えがつかないと?」

「いえ、そういうわけではないんです……ただ……イマイチはっきり出てこないというか……久留米さんやオー、あ、いや、大見三佐が教えてくれた中国の政治体制とか……そんな話を聞くと余計にですね……」

「中国の政治体制? なんですか? それは……」

「あ、ええ……」


 柏木は、中国共産党内の、国家主席の権限や、なんやかんやという先の話の事を新見に語る。


「……なるほど……」

「新見さんは、何か思い当たるところ、ありますか? おそらく新見さんクラスの方なら……」


 ウンウンと頷く新見。確かに引っかかるところはあるが……とは話す。


「……私の方でもその話、一度精査してみましょう……」

「お願いします……」





 ……フェルも、丁度柏木達が官邸で報告を行っていた時、ヤルバーンシステムの前に座って、あるデータを見て、頭をひねっていた。

 それは、以前フェルがイゼイラへ帰還する前に……わんわん泣く前にガーグ・ネガティブコードシステムを使って出した結果だった……


「あのマサトサンのお話……この出力結果に近いデすね……」




 ……………………………………




 そんなこんなで、それ以降は特に何か世の中に動きがあるわけでもなく、数日が過ぎたが……

 これまた厄介な奴が日本にやってくるということで、日本中が警戒することになる。


 そう、いつものお客様……『台風』だ。


 今回やってくる台風は、前回ほどは強力ではないが、それでもやはり昨今の台風の特徴な、風雨が強烈なようである。

 この台風のコース、今回の予報では、沖縄からずっと北上し、九州を抜けて、韓国の方向へ向かうようだ……ヤルバーンの気象予測システムでも、同じような予測だ。


 九州は、前回台風でのダメージがまだ相当に残っており、今回の台風でまた大きな災害が出ると予測して、九州各自治体は、万全の態勢で台風の襲来に備える。

 ヤルバーンも今回は当初から予測される台風災害に協力する態勢を見せ、新設秘匿部隊『特危自衛隊』との連携で、万全の体制を取る。


 そこでやはり注目されたのが『宇宙空母カグヤ』だ。

 ネット民のせいで、一般ではもうこの名前が定着してしまった。

 マスコミも『宇宙貨客船・いわゆる宇宙空母カグヤは~』と言う始末……貨客船? ナニソレな感じである。

 で、そのカグヤも、前回長野県における災害救助活動の功績が評価され、今回もヤルバーン主導で秘密裏に特危自衛隊部隊を載せて、日本列島を南下。九州、日向灘ひゅうがなだ近海で待機することにした。


 そして、台風襲来。

 予想通りの被害が出るが、今回は事前策の徹底で、被害は各地域で出たものの、さほど混乱した状況にはならなかった。

 そして、台風の位置が少しズレて、東シナ海方向へ抜けてくれたのも幸いだった。

 ただ、やはり雨が多かったので、相応の水害、土砂災害は出たようで、メルヴェン隊に特危自衛隊も、その装備をフル活用して大活躍をした……





 だが…………





 台風が抜けた後、ある場所で重大な事態が発生していた……

 それは……






 尖閣諸島・魚釣島に……中国の『大型漁船』が、漂着していた……







◯参考文献

 海上自衛隊幕僚幹部学校

 防衛駐在官の見た中国 -中国共産党と人民解放軍-

(幹部学校主任研究開発官  山本 勝也) 

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