― おまけ 異星人さんの夏休み ―
夏のお約束ネタです。どうぞ。
夏である。
ここんところの地球温暖化とやらもあるのかどうかわからないが、そこのところは『環境左翼』のフカシともいわれていたり、ホントのところは地球寒冷化だったりと、まぁよくわからんところではあるが……
暑 い !
これは紛れもない事実である。
ここ何年もそんな感じ。
かつての日本は……少なくとも柏木先生の知る日本では……
春夏秋冬、春には春一番で吹っ飛ばされて穏やかな気温になり、桜が満開。その下で酒をかっくらってドンチャン騒ぎ。
夏にはビールをビアガーデンでかっくらってジンギスカンな日々を送り……
秋には少々過去の思い出にふけってセンチになって、新作ゲーム発売の目白押し。酒食らってコントローラ握って貫徹三昧の日々を送り……
冬にはクリスマスでお正月な感じで酒かっくらって、ガスガン役に立たねーので、電動ガン主流のサバゲーな日々を送る。
とまぁそういうところだった訳であるが、昨今の日本。何か『春・夏・南米・冬のようなもの』という感じで、何か変。
秋がない。春も一瞬。台風と日がな毎日戦って、ゲリラ豪雨戦線の襲撃を受ける。
そういう感じがしないわけではない。
何にせよ……暑い……暑いのである……
………………
『マハトヒャン……やっぱりわらしは日本の夏は苦手でしゅ……』
近所のコンビニにアイスを買いに行って、ヘロヘロになり帰宅するフェルさん。
『タ、確かに……これはダメだぜぇ……あたいも降参だよぉ……』
フェルに付き添って、やっぱりヘロヘロなリビリィさん。
『ソそそ……そうです……これで黒色な変異種のイゼイラ人なら、死んでると思いますぅ……』
同じく真っ白なポルさん。この中で一番マシ。
『なんだいなんだい情けないねぇ……こんなのあたしの国じゃ普通の気温だわさぁ』
一人ピンピンしてるのは、600万ドル獣人フリュなシャルリ少佐……最近日本政府から日ヤ協定に基づいて、身体障害者手帳を貰ったらしい……彼女の事を身体障害者と呼んでいいのだろうか? 健常者よりスゴイのに……
件の博物展の仕事がひと通り終わって、あとは観光庁と文科省、他、各担当省庁スタッフに任せ、お盆休みをとった柏木。
その柏木の休みめがけて、リビリィとポル、シャルリが彼の家へ遊びに来ていた。
やはり日本の夏に慣れようと、スーツの空調切って根性試ししていたようである。
どうも聞くところでは、イゼイラにも「夏」に相当する季節があるにはあるが、日本のような夏の場所がないらしい。
よくよく考えれば当たり前の話で、彼らは人工大陸といった極めて優れた環境に住んでいる。フェルに至っては、旧大地のてっぺんに城を構えているのであって、暑い時期でも涼しく快適なのだ。
なので、日本の夏のような暑さが、極めて苦手らしい。
帰宅早々、柏木ん家のクーラーの前へ陣取って、フニャフニャになりつつ、買ってきた『バリバリ君』を舐め倒すフェル達……なんとも見方によってはいじらしいお姿である。
「はは、しかし意外だったな。フェル達イゼイラ人がそんなに暑さに弱かったなんて」
『違いますでスマサトンサン。ニホンの暑さが異常なのデス』
『ソうだぜケラー……まるで鉄板の上で蒸し焼きにされてるみたいダ』
『リビリィの言うとおりでス。これが話に聞く“ひーとあいらんど”という現象ですカ?』
ポル、なかなかに博識。
確かにヒートアイランドの暑さは、普通の暑さとは質が違う。
昨今、外国人が日本を訪れる際、サウジアラビアの人間に、日本のほうが暑いといわれる始末だ。そういうことである。
遊びに来たヤルバーンイゼイラ勢、シャルリ少佐以外はみんなフニャァ〜状態。
「そこまで暑いんなら、明日、海水浴にでも行こうか? みんな誘ってさ」
『カイスイヨク?』
フェルはポっと小さくVMCモニターを浮かばせて、その言葉をチラチラと検索。
目的の言葉を見つけ、ピコンとフニャァ~モードを解除する。
『海洋へ泳ぎに行くですカ!』
「ああ、そうだよ」
『行くデス行くでス!』
急に元気になるフェルさん。
『海洋水泳かぁ……いいなぁ、アタイも付き合うぜ、久しぶりだなぁ』とリビリィ
『ソうですね、私も子供の頃行ったっきりでス。コノ暑さに対処するにはいいでしょう』とポル。
『ハハハ、“ウミ”って奴かい、そいつはいいさね。アタシも乗らせてもらうよ』
みんな大賛成な様子。
「じゃぁ、みんな誘って行きますか」
『ソうですね、シエやリアッサ、ヤルバーンの希望者を集めますネ』
「ああ、頼むよ。俺は白木に大見、麗子さんや……あ、そうだ、もしかしたらあそこを使わせてもらえるかもしれないから、大森会長にも連絡してみるか……」
という感じで、安保委員会の仲間で揃って海へ行こうという事になる。
フェルさんが声かけたのは……
『海洋水泳カ……フム……イイナ。クククク、水着ヲ着ルノモ久シブリダ……』とシエ。何か企んでいる様子。
『ウミトイウ奴カ、了解シタ。シエノオ守リモイルダロウ、ハハハ』とリアッサ。
『ウ~み! う~み! 海洋デスか! もちろん行きますよぉ~……こないだ買ったネコサン水着のロールアウトデスネ!』とニーラ博士。
『ははは、地球の海洋を泳ぐのもいいですね、パーミラ人の凄さをお見せしましょウ』と本職種族のジェルデア。
『こないだのキノサキには行けなかったからな、今回は付き合うゼ』とゼルエ。
『海洋水泳デすか、もう何十年ぶりでしょウ。お付き合いしますヨ』とニルファ。
ヘルゼンとオルカスは、言わずもがなで決定。
ヴェルデオとジェグリ副司令は二藤部や三島、他政治家に招かれて『ゴルフ』とかいうスポーツを教えてもらうために、参加できなかった。
ニーラの祖父、ジルマは「年寄りはヤルバーンでのんびりする」といういことでパス。
ティラス艦長とニヨッタ船長……今はカグヤ副長……と、ホムス君はカグヤ周遊イベントで忙しくて来れないとの事。
柏木の方は……
先の通り、二藤部や三島はかくの如き理由でパス。
新見は残念なことにヨーロッパ旅行……という名目の調査旅行で不在。
春日は私用で、これまた不在。
「でよ、白木、そういうことなんで……行く?」
『あたりめーだろ!! お前、あまり深く考えてないだろ……』
「は? なにそれ」
『ハァ……あのな……ヤルバーンフリュさんの水着姿が拝めるんだぞお前! スクープもんだぞスクープ!』
「あっ! そうか!」
『お前の鈍さもそこまで行ったら犯罪だぞ……写真とって玲奈さんに送ってやれよ、ぶははは、貸し作れるぞ……それをネタにだな、週刊時事をプロパガンダの拠点にして……』
「い、いや、怒られるだろそれ……あ、でもそのアイディアはアリだな……」
で、大見にも……
「……ってな訳だけど、どうよ」
『おう、そうだな、家族サービスにもいいか、了解だ柏木』
「久留米さんや、加藤さんにも声かけといてよ」
『わかった。でも加藤海将は無理だろ』
「なんでさ」
『お孫さんが来るんだぞ……』
「あ、そっか、そういうことね……多川さんは……あ、カグヤか……」
『お前のせいで「自分は海上自衛隊航空隊へ転属になりました多川です」って、イヤミ言ってたぞ……』
「はは……は……そ、そうっすか……」
麗子にも……
「ってなわけで、白木から連絡行っていると思うんだけど……」
『行くに決まってるでござんしょ。さて、水着いいの捜さなきゃ……で、どちらでお遊びになるので?』
「ええ、大森会長に話つけてるんですが」
『ああ、ではあそこですわね。はいはいわかりました』
「え? 知ってるんですか?」
『ええ、一度行ったことありますわよ。社員の慰安旅行で一度利用させて頂きましたもの』
「なるほど。ではそういうことで」
そして大森に連絡……
「ということで会長、そんなところです」
『了解了解、柏木先生、んじゃその人数で手配しておくわな』
「もちろん会長もいらっしゃるんですよね?」
『おうよ、一応オーナーだからなぁ、わはは』
「で、田中さんは?」
『行くに決まっていますと仰っておりました』
「そうですか……で、例のお相手さんは……」
『一緒だそうだよ、なんだかよく知らんが、知らん間にうまく話がまとまったらしい』
「そうなんですか!」
んでもって……まぁ無理とは思うけど……と思いつつ……
「ってな事なんですが、護衛名目で無理っすか? 山本さん」
『いやぁ~、4人全員はなぁ……警察ってのは、休みシフト制なんだよなぁ……』
「そうですか……」
『んじゃさ……どうせ向こうの部長サン、来るんでしょ?』
「ええ」
『長谷部を連れて行ってやってくださいよ』
「ああ、なるほどね」
『あの二人、なかなかデートも出来てないみたいだしな』
「了解です。ではそういうことで」
……という感じで話をつける柏木とフェル。
今回のレクリェーションは、結構な大所帯になりそうである。
ヤルバーン側参加者は……
フェル・シエ・リビリィ・ポル・ヘルゼン・オルカス・リアッサ・シャルリ・ニーラ・ジェルデア・ニルファ・田中さんの彼氏さん。
それとニルファ以外の、精死病から生還した他のイゼイラ人患者さんも、リハビリ目的でお誘いをかけていた。
日本人側参加者は……
柏木・白木・大見・美里・美加・麗子・大森・田中さん・久留米・長谷部……結局、多川も参加する事になった。ティラスが気を利かせてくれたそうだ。
全員、朝にヤルバーン治外法権区集合で出発。そんな感じ。
……ってな訳で、その日の夜。
『マサトサンマサトサン』
「ん?」
頬染めて柏木に話すフェル。
『エットですね……水着、どれがいいか見てくださいデス……』
「ああ、そうか、はいはい、いいですよ」
柏木とフェルは、もうお互いの全てを知った仲である。今更水着ぐらいどうってことはない。
先日は、大阪でフェルに押し倒されて、相当なマーキング行為を受けたので、今更である。
何やらPVMCGに色々と水着のパターンを入力したようで、寝室でピッカリと水着を装着して、部屋を出てくる……しかし、柏木は地球人的文化、倫理感の関係上、ある種の水着に関して致命的な欠陥があることを忘れていた……
『どうデすかっ! マサトサン♪』
ぴろりんと出てきたのは、ビキニ姿のフェルサン……
向こうを向いた状態から、振り向く柏木
「どれどれ……ブーーーーーーーー」
持った湯呑みをブーと吹いた。
『キャァーー 何ですかマサトサン! 汚いでスぅ』
「い、いや、フェル……ゲホゲホ……そりは……マズイかと……」
『どうしてデすかっ!? カワイイじゃないですかぁ~』
ビキニ姿のフェルサン……確かに可愛いし綺麗。ナイズバディで、Bカップなバストも可愛らしいが……フェル達イゼイラ人フリュは、前の……下に生えてる風切羽のようなカラフルな羽が……細く、人類で言うへそのあたりまで伸びているのだ……
しかもイゼイラ人フリュには、お尻にチョコンと尾羽根が生えている。
その部分のみ、水着に穴が開いて、ピロンと出ているのだ……
ちなみに、イゼイラ人デルンはそういう感じではなく、普通の人類のような体である。尾羽根も退化して生えていない。
そこは動物界にもある、雄と雌の極端な容姿の違いというところか、そういう感じ。
まぁ、尾羽根はいいとしよう。バニーガールという前例が地球にもある。それはいい。
しかし……前の風切羽は、地球人的にはマズイ……完全に、いわゆる……「ハ◯毛」である……
「フ……フェルサン……その前の羽根……そ、それでいいんっすか?」
『ハイ? そうでスよ、それが何か……この水着の色と、このハネのこんとらすとが、可愛いんじゃないでスか……マサトサン、ちゃぁ~んとイゼイラのセンスを勉強しなきゃ……イゼイラに何をしに行ったのですかっ?」
説教を食らってしまう柏木先生……
フェルサンは、前の風切羽を、チロチロいじって整えていたり……
『コンナ感じカナァ……』
手を腰に当てて、ポーズを取るフェルさん
『ウフフ、どうですか? マサトサン』
「い、いや……は、はは……そうですか……ま、まぁ……イゼイラ人さんがそれでいいならいいんですけど……いや、やっぱマズイような……」
まさか件の理由を地球人的に説くわけにもいかない……そんな事をしたらイゼイラ人の美的感覚を冒涜してしてしまうことになる……
ウ~ンと考えた挙句、フェルサンがどうしても
『びきにがいいです! びきにがいいでスぅ!』
と、柏木への鳥類的アピールのために頑として主張するので、100歩譲って、お腹のあたりを布地で隠せる『モノキニ』タイプの水着なんかどぉ~お? これ、地球で流行ってるんだよぉ~ などと、なんとかフェルの嗜好を誘導することに成功し、モノキニ水着を着せることに成功した……なんでこんなことで労力使うんだと思う柏木。
……但し、尾羽を出すことは絶対譲れないらしい……尾羽を出す穴がないと、フリュ用水着とは言えないと仰るので、そこは妥協した……
……しかし……はっきりいって、モノキニ水着の方が、シエに負けないくらい別の意味でエロいのではないかと思ったりする……
………………………………
というわけで当日。
ヤルバーン日本治外法権区に集合した皆の衆。
「みんな集まったかな?」
大森が点呼を取る。
アロハシャツに、麦わら帽子。完全に海水浴モード。
「多川さんが来ていませんが……」
「ああ、柏木さん、多川一佐なら、あとで例の機体で目的地に来るって言っていましたよ」
昨日連絡があったと言う久留米。
「XFAVで来るんですか!?」
「ええ、なんでも技本へ返還するついでということだそうですが」
ああ、なるほどと思う。あの機体は一応技本所属だ。いつまでもカグヤに置いておいたら、研究に支障が出るということなのだろう。
ついでというのがなんともだが……探知偽装もかけてくるというので、まぁいいか……と思う。
「ではみんな揃ったところで……」
改めてと大森。
全員転送装置に入り、ある場所へひとっとびで向かう。
そこは……瀬戸内海某所にある法人所有の島、通称『OGH島』と呼ばれるOGH所有福利厚生用保養施設のある島であった。
大森に相談したのは、ここを借りれるかも? と思ったからだ。
柏木はヤルバーンが来るずっと前、件のサバイバルゲームSNSのオフバトルを大森の紹介で、この島でやったことがある。なので知っていたのである。
普段は無人島だが、申し込めば備え付けの完全無人売店……つまり太陽電池で稼働している自動販売機等々のシャッターのカギを預かり、更には別荘風の宿泊施設も利用することができる。
この無人島、実はOGH以外の契約他社にも貸し出すことがある。それはこの島の立地が豊かで、砂浜だけではなく、磯地もあるので、他社の慰安旅行施設としても人気があるためだ。
磯では子供たちに生き物を観察させて夏休みの自由研究をさせることもできるし、そこで採取した海産物を食べたりできるからだ。
そんな感じで、今回は日帰り旅行なので、宿泊施設までは使用しない。
ヤルバーン側も、飲食諸々不自由しないように、野外活動用ハイクァーン造成器を持ち込んでくれていた。
ということで、みなさん着替え。
男衆は簡単なものだ。下着代わりに海パンはいてるので、その場で脱げばいいだけ。
それにしもやっぱり長谷部さんのような警察官と、自衛隊組のみなさんはガタイがいい。全員マッチョである。大見も大したもんだ。
白木は、実は胸毛が濃い。柏木もサバゲーで鍛えているので、それなりの体格。しかし最近ちょっとお腹が出てきたかなと思ったりする。
大森会長は水着にTシャツ姿。何やらゴソゴソと用意している模様。
ゼルエはやっぱり獣人タイプである。まるでファンタジー作品にでも出てきそうな体躯。コキコキと首を鳴らしている。
ジェルデアは、体格的には細見な優男系であるが、背中にヒレの名残のようなものがあり、流石両棲種という感じである。
……そして女性陣のご登場。
向こうの方にあるペンション区画で着替えていたようだ。
「おお~!」と白木。
「おお~!」と大見。
「おお~!」と久留米。
「(おお~!)」と職業的に心の中で思う長谷部。
「おお~!」と大森。
『オオ~!』と田中さんの彼氏さん。
『オオ~!』とジェルデア。
『オオ~!』とゼルエ。
『オオ~!』と精死病復活元患者さんA。
「…………はぁ……良かった……」と柏木大臣。
ある種の女性のみなさんのBGMは、ピロリンな感じ。
ピロリン部門のみなさんは……
フェルさんは柏木の説得が功を奏したモノキニ姿。男性陣にも好評。
リビリィさんは、ワンピース系のスポーツ水着っぽい感じ。しかし食い込みがちょっとキツイ。競泳選手っぽい感じがちょっとそそる。
ポルさんもモノキニタイプ。ビキニにしようかと思ったそうだが、地球の風俗を調べると、ビキニはまずいと事前調査で把握していたそう。さすがは博識調査員。どっかの優秀なホエホエ科学者とは少し違う。
ヘルゼンさんもモノキニタイプ。理由はポルに相談したらそういうことなのでそんな感じ。でもお腹の生地がちょっと細い。誰かにアピールしているよう。
オルカスさんはワンピースタイプ。落ち着いたシックな色調が大人な感じ。
ニルファ婦人……彼女もワンピースタイプだが、肩ヒモのないセクシー型。これは意外だった……ロングな髪形と良く似合う。
ニーラ博士は、事前告知通り、腰にフリフリの付いたネコさんキャラのワンピースをロールアウト。
日本の様式美に則り、浮き輪と水中眼鏡と、シュノーケルを装備。
美里さんは、年齢相応。ビキニ姿だが、娘もいるので、Tシャツなんぞを着ていたり……典型的なお母さん姿。しかし巨乳なので、水に浸かったら透けて見えるところがダンナ的にはポイント高し。
紫外線対策で、デッカイ麦わら帽子を着用。
で、期待の少女、美加ちゃんは……お約束のスクール水着。
といっても旧式ではなく新式の方。胸に名札などは付けていない。これはこれで良いデザインではある。まぁ行ってみりゃスポーツ水着だ。健全で結構な事である。
最近は、ニーラと仲良くなって、一緒にペンションから出てきた。
精死病生還者さんBもワンピースタイプのようだ。
……で、お次はトランペットな深夜番組のBGMが良く似合う皆様。
シャルリ姉さんは、完全ビキニタイプ。しかも、サイボーグな御御足の方のみハイレグという左右非対称なカスタム水着。カイラス人フリュは、デルンにアピールできる場所は地肌なので、その毛並と地肌と、サイボーグな体がミックスされて、別の意味でエロい。しかも筋肉質。これにはデルン衆は驚いた……でも柏木先生はその水着の中まで知っている……
田中さんも真っ白なビキニタイプ。スーパーハイスペック秘書は、ここでもクオリティが高い。
彼氏さんがドキドキのようである。
髪をファサっとかき上げていたり。
麗子お嬢様はモノキニタイプ……お腹の部分に何か真っ赤な南洋の花がレースであしらわれているのような感じの水着……見るからに高級そうである……
デッカイこれ見よがしなサングラスをつけ、日傘をさしてご登場。
リアッサ姉さんもビキニタイプ。バストの水着が一枚の布を巻いたような感じの物。サングラスかけていて、パリコレのスレンダーモデルのよう……これが微乳と良く似合う。なかなかにオシャレ……この水着の中も、柏木先生は知っている……
そしてシエ姉さん……
全フリュ陣営中、唯一のツイストスリングショット水着でご登場。
マイクロスリングショットでないのが唯一の救い。
胸部をクロスにした真っ白な布地に、ハイレグ感あるパンツ。腰骨の部分は、二本のヒモで結んでいたり……エロさ爆発。
「おお~……シエさん……やっぱ期待を裏切らねーな……」と白木。
「あの人……何するにしても……エロさがついてまわるなぁ……」と大見。演習の時を想ふ。
「俺は……何かイヤ~な感じがするぞ……」と柏木。
「脳内で退避勧告ですか? ははは」と久留米。
シエにリアッサ、ダストール人お二人は、とにかく水着もさることながら、体側面に映えるきれいにそろったエナメル的な緑色の鱗模様が美しい。
刺青のようにも見えるが、それは何か、Mハチジュウナントカ星雲からやってきた光の宇宙人のようでもあり、その素肌と、水着が妙にマッチする。
シエのスリングショット水着にしても、ハイレグで腰がヒモなのだが、地球人がコレを着れば「いやらしさ満点」ではあるが、シエ達が着ると、エロくはあるがイヤらしさがない。その点はやはり「美しい」という言葉でくくれるからすごいもんである。
「でよ柏木……あのイゼイラ人のみなさんも……ある意味すげーな……」とこれまた白木。
「ああ、まさかああいう攻撃で来るとは予想外だった……さすが鳥類進化型か……」と大見。
イゼイラ人フリュのお尻。
水着に穴あいて、尾羽をピコピコさせている……
「だろ? あれでもまだマシなんだぜ……あれがビキニだったら……お前ら吹っ飛ぶぞ」と大臣。
「ビキニだったらどう……あ、そうか! そういうことですか……」と久留米。
白木に大見、久留米は頷いて納得。なぜなら、イゼイラ人の医学資料で、男女の違いを知っているからである。
「そうかそうか、やはり柏木大臣の夜間研究の成果は素晴らしいですな」と白木。
「オマエ……自分からバラしてどーすんだよ」と大見。
「うるせーよ、フェルなんかビキニ主張して譲らなかったんだからな。モノキニにさせるのどんだけ苦労したと思ってんだよ」と柏木。
すると久留米が……
「えっ! まさかイゼイラ人女性は、あの……いや、あれでビキニ着るんですか!?」
「ええ、抵抗ないそうなんですよ……ってか、それが普通のファッション感覚らしくて……」
ほぉ~……っとスケベ男性陣、妙に感心。
さすが文化の違いだと納得する。
「あらあら、スケベ男性陣が異星人女性を見て、討議中でございますか?」
麗子が色気ムンムンでやってきた。白木の隣に内股で座る。
「どうせイゼさんのお尻みて、羽の討議なんかしてたでしょ~~いや~らし~」
美里がおばさん根性丸出しで話す。
「むはは、まぁな……で、麗子は泳がねーのか?」
白木はそういうところ屈託がない。素直に肯定。
「少しお肌を焼いてからね。あとでおつきあいくださいな、崇雄」
「はいはい」
白木と麗子、似た者同士とは言えない。むしろ性格的には正反対に近いが、この二人はメチャクチャ仲がいい。
それをみて、笑ってしまう柏木。
「それはそうとさ白木、お前ら二人、いつ結婚するんだよ」
「ん? 俺達か?」
「おう」
「いや、麗子と二人で決めてることがあんだよ」
「そうでございますわ。その時が来たらすぐにでも」
何か二人の決め事があるそうな。
大見も関心あるらしく……
「なんだそりゃ?」
「ん? 麗子が30になったら式あげるんだ。そういうこと」
「そうなのか!」
驚く大見。そして柏木。
付き合い長いが、初めて聞くからだ。
白木の話では、麗子もイツツジグループのご令嬢ということで、何かと独身の方が商売上話が通りやすい事もあるのだという。で、「30歳」ぐらいが「ご婦人」として適当だろうと。そういう麗子のポリシーに付き合ってやっているという。
「まぁ、そのあたりがギリギリね」
美里が既婚者の経験で話す。
「何が? 美里ちゃん」
「出産よ。あまり歳食っちゃうと妊娠苦労するわよ」
その辺はなるようになれだと話す白木と麗子……そのあたりは二人の問題なので、外野がどうこう言う話ではない。
「そういや、お前こそひと段落着いたら式だろ」
白木が柏木に話す。
「なんだけどね……まぁ選挙終わってからだなぁ……」
「んー、やっぱそうなるか……」
などなど、太陽の下、パラソルの中でそんな人生観を話してみたり。みんなそんな年齢である。
……そんな話をしていると……
柏木の背中にムニュっとした心地よい弾力と、首に綺麗な刺青が入ったような手が巻き付いてくる……
その弾力に覚えがある柏木。退避勧告が間に合わなかったようだ。
『カ・シ・ワ・ギ・ダ・イ・ジ・ン』
「どぉうわ! シエさん!」
『ワタシノミズギ、ミテクレタ?』
「なにを猫なで声出してるんですか! って、またくっついて!」
そのサマを見て、他のみなさん全員……
「さて、空襲警報発令だな……」と久留米
「ええ、あと数秒で、水色のノドンが着弾します。退避しないと」と大見
「あら、ノドンなんてかわいそうでございましょ? せめてトマホークぐらいにしてさしあげないと」と麗子
「ってか、シエちゃん……わかってやってるっしょ」と美里
『ン? ナンノコトダミサト。ワタシハダイジント、ダストール流ノ親睦ヲ深メテイルダケダゾ』とシエ。胸部の圧迫に、左右へのスライドが加わっている様子。
「あ……トマホークが飛んできたぞ……退避だな……」と白木。
全員、大臣を見捨てて退避する……
数秒後、砂嵐をあげて飛んで来る水色の人型巡航ミサイル。
『シィィィィィィィィエェェェェェェェェ!!』
まぁ二人ともわかってやっているとはいえ、スリングショット水着はいかんともしがたい。
なぜか柏木の悲鳴が木霊する。
……ということで、あとは諸氏のご想像にお任せしたい……
……………………
そんなこんなで、みなさん海を楽しんでいるご様子。
シエとフェルの、バターになりそうな追いかけっこに巻き込まれ、もみくちゃにされている柏木。
まぁいいレクリェーションではある。
とそんなところへ……
「あ、あの~……柏木様?」
「どえっ! ブハ……って、あ、田中さん!」
『ヘ、あ、ケラー・タナカ』
『ン? タナカカ、ドウシタ?』
両の手のひらを組み合って振り向くフェルとシエ。
「あ、これはフェルフェリア様にシエ様も、何かお取込み中のようで、また後ほどでも……」
「いえいえ、全然取り込んでないです。助かったぐらいで……で、何です?」
田中さんはポっと頬を染めて……
「あ、あの……ご紹介したい人が……」
田中の横を見ると、例のイゼイラ人デルンが立っていた。少し頭をポリポリかいている。
田中は、そのイゼイラ人デルンを紹介する。もちろんお付き合いさせてもらっているから、よろしくお願いしますという感じ。
ヤルバーン関連での責任者である柏木には報告をしておこうと思ったのだろう。
準備運動を終えたフェルとシエも、落ち着いて彼女ら二人の話を聞いてやる。
『アナタは、科学局主任の、ケラー・ザッシュ・ハント・サーヴェルですね』
『ハイ、フェル局長』
『ソウですか……オメデタイ事です。仲良くネ。タナカサンも』
「はい、ありがとうございます」
ぺこりと礼をする田中。
柏木もニッコリ笑って頷く。
『シカシ、タナカ……』
「はい、なんでしょうシエ様」
『オマエノ両親ノ方ハ、アレカラ問題ナイノカ?』
その話に「!!」となるフェルと柏木。
柏木とフェルがシエの腕をむんずとつかんで少し後ずさりして連行する。
「ち、ちょっと待っててください田中さん」
手を前後に振る柏木。「??」となる田中さん。
『オ、オヨヨヨ? ナニヲスルノダ二人トモ』
「(ちょ……シエさん! 今の話どういう事ですか!?)」
『(ソ、そうですシエ! なぜ貴方がケラー・タナカのオイエの事情を知ってるデスか!)』
『(エ? イ、イヤ……ナンノ事ダ?)』
フェルは、以前大森から相談されたことをかいつまんで説明した。
『(……ナルホド、ソンナ事ガアッタノカ……イヤ、私ハ上官トシテ、ザッシュノ相談ヲ聞イテヤッタダケダッタノダガ……)』
「(そ、そうだったんですか!)」
『(デ、シエ、その相談をお聞きして、どうしたのです?)』
『(ウ、ウム、ナニカ相手ノ家ノ事情デ、悩ンデイルトカデナ……私モロッショ家デ、ソノ手ノ話ハ経験ガナイワケデモナイノデ、相談ニノッテヤッタノダガ……)』
シエの話では、田中さんとザッシュが、真摯に意を決して、田中家当主にその関係を二人して話したそうである。
でもって、無下に大反対はされなかったものの、そのデルン、いや、男の身なりを説明できるきちんとした立場の者を連れてこいと言われたそうだ。
で、シエに相談したところ、シエがザッシュを不憫に思い、「私が行ってやる」といって、田中家に乗り込んだらしい。
で、コワモテボディガードのたくさんいる田中家に、シエさんがあの調子で、モデルウォークでザッシュととともに談判に行ったそうな。
田中家のみなさんは、まさか今や飛ぶ鳥を落とす勢いで、かのテロ事件を一発で解決した天下のキャプテン・ウィッチが来るとは思っていなかったみたいで、大慌てになったそうである。
しかし、シエが、正座して、三つ指ついて、田中家当主に二人の仲を許してやってほしいと話すと、田中家当主は、いたくその真摯な態度に感動し、おまけにシエの事を大変気に入ったようで、このような大物を連れて、しかも三つ指突かせて頼めるような人物を連れてくる男なら大丈夫だということで、無事お許しが出たという話。
それに、田中家の名前が、五千万光年の宇宙まで轟くなら、万々歳だと、シエをいたく歓待してくれたそうだ。
「(そ……それは……ナイスですね! シエさん……)」
『(マ、マサカ私たちがいない間にそんな展開になってたとハ……シエ、見直しましたよ……なので、さっきの不埒な行動は許してあげマス)』
『ソ、ソウカ? イヤ、ソンナ大シタ事ハシテイナイノダガナ……』
すこし照れるシエ。しかし大手柄だ。
ということで、二人にお祝いを言う柏木とフェル。
自分たちが大森から相談を受けていたことは、もうこれでナシにした。そうなれば、そんなことはもうどうでもいい話になる。
……そして大森にも報告。
お昼のバーベキューの準備をしていた大森。ニルファとオルカスもお手伝い。
大森はバーベキューの串を持ったままキョトンとして柏木達の話を聞く。
「そ、そうだったのか!」
「ええ、シエさんが話を付けてくれたそうなんですよ」
『ソウイウ経緯で、あの時のオハナシは解決したそうですよ、ケラー』
大森は、ハァ~と肩の荷が下りたような感じで
「そうでしたか……いや、ワシも話に行かないとと思っていたんだが……いやぁシエさん、ありがとうございます。私も肩の荷が下りました」
『イヤ、ナンノ。タイシタコトハシテイナイ。シカシ、オオモリガ、タナカノ叔父ダッタトハナ、ソレハハジメテ知ッタゾ』
「いやいや、そうなんですよ。それで以前、この二人に相談してましてな……なるほど、彼氏の方も貴方に相談してらっしゃったのですか……確かにそれは心強い」
大森は、田中家の家柄で、文武両道な者なら気に入ってもらえるという事を話した。
で、シエの取った態度が気に入ってもらえたのだろうと。
ダストール人は、会話は淡泊だが、感情を態度で表す。
確かにシエの話し言葉は、日本人的には武を嗜んだような、そんなところがあるのでそれが気に入られたのだろうと大森は話す。そして三つ指突いたのは正解だったと。
『ソコマデイワレルト、少シ恥ズカシイナ……』
スリングショット水着で、腕を後ろに組んで少しモジモジするシエ。
『ウフフ、シエもそんな態度をするのですね』と横で聞くニルファ。
『ソんなシエ局長。初めて見ましたヨ、フフフ』と同じくオルカス。
『二人トモ……アマリ突ッコマンデクレ、私ノイメージトイウモノモアル』
そんな水着来て、どの口が言うかと思う柏木。少し苦笑い。
と話をしていると、フィフィと大きな音がする。
そして、甲高い音を鳴らして……空中に大きな影が浮かび上がった。
対探知偽装……つまり、光学迷彩を解いた音だ。
空を見上げる柏木達。
「あ、XFAVだ。多川さんだな」
その通り。XFAV-01 通称日本版ヴァズラーだ。
XFAVは人型にゆっくり変形し、浜辺に着陸。膝を折るようにしてコクピットを下げる。
ヴァズラータイプは海水に浸かっても大丈夫。そんなヤワではない。
コクピットが開くと、多川がパイロットスーツで飛び降りた。バシャンと波打ち際に着地し、ジャバジャバと波の中をヘルメット担いでやってくる。
「お~い、みんなやってるかぁ~」
手を振る多川。
「ははは、多川さん、豪快な登場だな」
そう柏木が言うと、シエが……
『ア、タガワダ!……』
何か嬉しそうに呟いて、多川に駆け寄っていくシエ。
「え!? シエさん……」
『エ! シエ……モシカシテ……』
多川が……
「よう、お嬢! 元気か!?……って、すごい水着だな……目のやり場に困るぞ」
『ソウイイツツ、ジロジロ見テイルデハナイカ、スケベナ奴メ、フフフフ』
何か話が弾んでいるようである。
「……まぁ、多川さんとシエさんはバディ同士だかららな、ははは……あ、知ってるかフェル。多川さん、あれで独身なんだぜ」
『そうなのデスか!……フムフム……なるほどなるほど……どんな関係なのでしょうねぇ、ウフフフ……クククク……ソウですねぇ……あ、そうだマサトサン』
悪戯顔になるフェル。
「ん? 何?」
『オ耳を拝借デス』
「ほいほい」
『…………モニョモニョ……』
「ははは、それで逆襲ってか? 今までの」
『ハイです。ソレで私たちに平和を取り戻すでス。ムフフフ……』
「ほどほどにな。そこんところはどうかわかんねーんだから、ハハハ」
………………………………
『ネェネェ、ミカチャン、これは何という生物なの?』
ニーラがPVMCGでとある生物をプカプカ浮かせて美加に尋ねる。
水中眼鏡とシュノーケルは付けたまま。PVMCGな浮き輪は消していた。
「ああ、それは“雲丹”っていう生き物だよ」
『スごい形ですねぇ……まるでチキュウの“キライ”みたい』
「アハハ、確かに似てるね。でもお寿司のネタになるぐらいのおいしい生き物なんだよ」
『ヘ、そうなの? 私もオスシは大好きダヨ。どうやて食べるの?』
「ちょっと貸してみて」
美加は、雲丹のトゲをシャカシャカとそこらの石で砕いて、うまい具合にパカっと割る。
中にいっぱい詰まった卵巣を指ですくって……
「これ、食べてごらんよ」
『コレを? う~む、お腹壊さないかなぁ……』
ニーラは、PVMCGでウニをサーチ。判定はポジティブ、つまりイゼイラ人が食べてもOK。
彼女は、それを口にパクリと入れてみる……
『♪♬☆♬♪~~!!』
「おいしいでしょ~」
『メチャクチャオイシイね! ウミの味がします! これはデータに取らないと!』
「ああ、そうか、ハイクァーンがあるもんね。んじゃ……5匹ぐらい取って、お昼に食べようよ。おいしい食べ方おしえてあげるからさ」
『そうですネ!』
ニーラ博士と美加は磯遊びに夢中である。
ニーラは、この日本の『磯』という場所が楽しくてたまらないらしい。なんせ見たこともない生き物がたくさんいるからである。
『ヨォ、ケラー・クルメ! これはなんつー生き物なんだい?』
「ああリビリィさん。それは“ヤドカリ”ですよ」
『ケラー、ではこれはなんですか?』
「ポルさんのそれは、シッタカとかシリタカとかいわれる、そういう名前の磯物ですな」
さすが陸自レンジャー出身の久留米、食えるものは良く知っている。
リビリィにポル、そして久留米も磯遊びである。
「こっちのヤドカリは食べてもあまりおいしくはない……ってか、一般ではあまり食べませんな。しかし、こっちのシッタカはメチャクチャうまいです」
『でも、おんなじ形だゼ』
「ええ、同じ形ですが……」
久留米はヤドカリという生物の習性を説明する。
『なるほど! なので“宿を借る”でヤドカリですカ』
感心するポル。
「そそ、なので、こっちはハズレ感が大きいんですよ、ハハ」
『でもよケラー、こんなちっちぇえのどうやって食うんだよ』
「なるほど、では……ハイクァーンもあるし、20個ほど捕りましょうか、あとで食べさせてあげますよ」
『よっしゃ、んじゃ集めるとすっか』
さて、沖では獣人コンビとリアッサさんが、何かと格闘していた。
海中で会話可能な水中マスクをゼルクォートで造成させ、戦闘中。
ゼルエの方は……
『ぬぅおっ! なんじゃこりゃ、コイツなかなかに凶暴だぞ!』
『こっちもさね! ぐぅおっ! 引きが強いよ! このシャルリ様と力比べなんざいい度胸してるよっ! 受けて立ってやろうじゃないかい! リアッサ!出てきたらひと突きでね!』
『ヨシ、マカセロ! 1・2・3で引ケ!』
『あいよっ1・2・3!』
『食ラエッ!』
……で、浜辺に帰還する三人。
「お、お三方……その獲物は……」
柏木が目を剥いて驚く。
『おうコイツはなかなか容姿と同じで、しぶとい奴だったぜ……』
ゼルエが捕ってきたのは……タコだった……しかしでかい……
「え? タコじゃねーかい」
と白木。
『ニホン人はコイツが好きなんだろ? ちょっくらどんなもんか食ってみたくてな……しっかし気持ちわりー生物だなこりゃ。なかなかに死にそうだったぜ……』
「い、いやゼルエさん、死にそうって……」
白木がタコ如きでと言いたそうだったが、柏木が否定する。
「いや、白木。タコって罠とかで捕るのが主流だから、あまり実感ないけどな、こいつを突きで捕るのって大変なんだぜ」
「そうなのか」
「ああ、大きい奴になったら、水中マスク塞がれて、死亡事故も発生するぐらいなんだよ……タコって水中じゃ、危険動物なんだぜ……しかしこんな大きな水ダコって、結構な値段で売れるぞ……」
すると今度はシャルリとリアッサが……
『デハカシワギ、コイツハドウナノダ? 結構大変ダッタゾ』
「そうだねぇ……コイツは凶暴だったよぉ~』
そういって、ドンと出すは……ウツボだった……
「どぉわっ! こんなの捕ったんですかっ!」
思わず後ずさる柏木。
「こりゃすげーや……って食えるんか? こんなの……」
棒でツンツン突く白木。すると麗子が……
「何を言っていますの? 崇雄。ウツボはとってもおいしいのですわよ」
「え? そうなの?」
すると美里も
「ええ、そうよ白木さん。ウツボは干物にしてあぶって食べたらおいしいんだから」
「中国では高級食材ですわね。日本では、タタキに煮つけ、ゼラチンが多いから、煮凝りなんかも女性のお肌に良くってよ」
ほ~ と感心する皆の衆。
「でも、危険ですよぉ、あんまり無茶しないでくださいよ三人とも……」
『なんのこれしき、な、リアッサ、シャルリ』
『ウム、コンナモノ、惑星バストウーラノ……』
地球の生物と、宇宙の化け物生物と同列に扱われてはと思う柏木。
この方々は普通ではないと改めて感心……というか呆れる……
「で……もうそろそろお昼なんですが……何か二人程足りないような……」
『ソウイエバ、ジェルデアガイナイナ……ン?……シエモミアタランガ……』
周りを見渡す。
「多川さん、シエさん知りません?」
「ああ、お嬢ならさっき何か捕ってきてやるって沖へ出て行ったぞ。泳いで」
『泳いデって……モー、シエハ、みんなに心配かけてぇ』
しかしシエなら心配なかろうと思うみなさん。というか心配という概念自体がそもそもわかない。
「い、いや、みなさん何をそんなに余裕ナンデスカ……」
……といってる傍からシエが帰ってきた……
スリングショットな水着が濡れ濡れで、エロさが更に向上している。
「シエさん、どこ行ってたんですか……って、うわぁぁぁぁぁぁ!」と柏木。
「げぇぇぇぇぇ! すげっ!」と白木。
「こ、これは……流石というかなんとうか……って、マズイだろこれは……」と大見。
「さすがシエさんというか……って、どこまで泳いでいたのですか……そんな水着で……」と麗子。
シエが、尾っぽをもって引きずってきたもの……シュモク鮫であった……
『コンナノヲツカマエテキタガ……クエルカ?』
「い、いやシエさん……あなたどこまで無敵なんですか! って、ちょっとこりゃまずいですね……」
柏木は心配する。
撞木鮫は、鮫としては珍しく、群れで行動するので、一匹いれば、最低十数匹、多くて百匹単位で周辺にいるからだ。
おまけに撞木鮫はバカで凶暴ときているからタチが悪い。日本でも以前、海水浴場沖で、大量に発見されて問題になったことがあった。
多川が……
「んじゃ、XFAVの警戒装置入れておこうか……サメの群れ程度を感知するのは簡単だろ」
とXFAVに走って行った。
ある意味シエはお手柄ともいえる。知らずに襲われたらたまったもんではない。
しかし、撞木鮫、これも高級食材ではある。みんな大好きな『フカヒレ』では、コイツのヒレが一番良いとされているのだ。
「あと……ジェルデアさんは!?」
そういえば、海についてから急にいなくなった。
みんなキョロキョロと探すが……
『ア、いたいた……ケラー・ジェルデア、あそこだぜ』
リビリィが沖を指さす。
「え? どこどこ」
『あそこだよケラー』
柏木は目を細めてリビリィの示す方向を見る……
とんでもない沖の方で、ピョ~ンと跳ねる……人型の何か……
「あ、あれ?……あれは……」
『ケラー・ジェルデアだよ』
「え? あ、あんな沖まで……大丈夫か?』
するとゼルエが
『アんなの、パーミラ人にすりゃ、散歩みたいな距離だぜ、カシワギのダンナ』
大したことはないから心配するなと言う。
まぁ確かにパーミラ人は両棲種だという話だし、溺れるという心配は100パーセントないわけではあるからして……
双眼鏡で沖の方を見る。
ジェルデアが何か嬉しそうに水面に出たり入ったりしていた。
……しばらくすると、ジェルデアが戻って来るが……何やらPVMCGで造成した水中スクーターみたいなもので獲物を引っ張ってきたようだ……
『スみませ~んみなさん、ちょっと手伝ってくださイ!』
なんだなんだと集まる皆の衆。
すると……
「うわっ……すごいですわね!」
口を手に当てて驚く麗子様。
「ありゃ、本当だ……主婦の憧れね……」
美里も同じくそんな感じ。
「ジェルデアさん、こ……これを捕まえてきたんですか?」
柏木も目を丸くして尋ねる。
『エエ、以前てれびで見たこのオサカナが、みなさんに大変喜ばれると聞きましたので……』
「いやジェルデアさん……ってか、こんなの早々簡単に“仕留められる”ってものじゃないでしょう?」
『エ? そんな大したものではなかったですヨ、ダイジン』
日本のみなさん、みんな「ジェルデアさんすげー」と唖然。
こりゃ漁協に言ったらスカウト確定だと。
さて、ジェルデアが獲ってきた獲物……なんとクロマグロであった。
まずそこがスゴイ。
瀬戸内海にクロマグロは回遊してこないわけではないが、その数は本当に少ない。
なので、瀬戸内海では『マグロは捕れない』とするのが一般的な認識なのだが、昨今の温暖化の海流変化か何かの影響で、瀬戸内海でもボチボチとマグロが上がるらしい。
……ということで、ヤルバーンの強者なみなさんが獲った獲物。
これは流石に全部食っちまうというわけにはいかないので、色々とお土産にした。
シエさんのサメは、ヤルバーンに資料として持ち帰ることに。
さすがに一匹のみフカヒレ取っても仕方ないので、そんな感じ。
ゼルエのタコは、大森がブツギリ刺身と、ゆでタコにしておいしく頂いた。
ブツ切り刺身は、口に吸盤がくっついて、それが面白いと何か妙に異星人さんには好評だったり。
リアッサとシャルリのウツボは、これもヤルバーンに持ち帰って、海洋生物資料とすることにした。
ジェルデアのマグロは、自衛隊組が総出で解体ショー。みんなでおいしく頂いた。
無論、日本人勢力はトロの取り合い。
頭は兜焼き……といきたいところだが、どうも異星人さんは、兜焼きを気持ち悪いらしく、それはパスということで。
その他、ハイクァーンで増量させた美加と久留米達の取ってきた採れたて生ウニと、シッタカを潮水で茹でて、身を取り出したものの磯物丼。これが大好評であった……
『ミツオサン、はい、ア~ン』
ヘルゼンが必殺のア~ン攻撃。
「おいおいヘルゼン……恥ずかしいよ……」
長谷部君。周りをキョロ見。でもパクリと……
それを横目で見る柏木。
「ははは、長谷部さんもまんざらではないようで」
『ウフフ、そうですねマサトサン……あ、ホラ、あっちも……』
“あっち”をみる柏木。
『タガワ、ア~ン♪』
「おいおい、お嬢! 俺かぁ?」
『イイカラ食エ。ア~ン』
「はいはい……」
思わず「プーーー」と笑いをこらえる柏木とフェル。
どういう関係かは知らないが、笑ってしまう。
柏木は多川に(ご愁傷様、今後ともシエさんを思い知ってください)と心の中で合掌する。
そんな事を思っていると、横からオルカスが……
『あらあら、シエもセルメントが合うデルンを見つけたみたいですね』
「あ、オルカスさん……セルメント? なんですそれは……」
『エエ、ダストール語で、ニホン語に訳せば“挙動感応”とでも訳せばいいのかしら』
「はぁ、それは?……」
オルカスが言うには、シエ達ダストール人は、言葉より相手の態度で好感度が上下するらしく、自分の態度にうまく呼応するような態度で応じてくれる相手とくっつきたがる習性のようなものがあるらしい。
フェルが……
『ダカらマサトサン、貴方のあのシエに襲撃された時の態度が、シエを呼ぶのでス』
「そ、そうなのか……って、俺のせいか!」
『そうでス』
気をつけないとダメですよっと、指を振るフェル。
横でオルカスが笑っている。
「そんなの知らないよぉ~……言ってくれよフェル~……」
オルカスとフェルが言うには、多川は今、XFAVのバディとしてお互い搭乗している。その際のコンビネーションで、とても相性がいい。その関係で、シエがこんな風になってしまたのではないかと。
以前、フェルがシエ達ダストール人が求愛行動をするとき、ダストールの歌劇や詩のようなものを引用して求愛したり、燃え上がるようなラブロマンスに一発だったりと聞いたことがあったが、ダストール人デルンがフリュに求愛するときのイメージが大体頭の中にポっと浮かんだ……
もしかしたらオペラみたいなのか? と……それはそれでハズイ行為だと思ったり……
しかしとオルカスは警告する。
『でも、ケラー・カシワギ、安心したらダメですよ……まだ貴方もターゲットである事には変わりないですから……レクリェーションの』
「マ、マジっすか……ってレクリェーションって何ですかそれ!」
フェルも笑いながら
『デすよ、マサトサン、気を抜いたら食べられちゃいます……なので、早くシエにケラー・タガワを食べさせないと、マズイのでス』
「食べさせるって……おいおいおい、ははは……」
と、そんな感じで、バーベキューパーティを満喫するみなさん。
他、今日は色々と異星人さんの面白い面を見れた……
………………
『モゴモギュモグモゴ……ぷはぁ~~……やぱりダメですぅ……』
「フェル、泳げるんだろ?」
『ハイです。もちろんですヨ……ですけどぉ……』
お昼の後、フェルと柏木。少し沖に出て、水泳なんぞ。
柏木がダイブして、底にある貝を捕る。
フェルも真似してダイブしようとするが、どうしてもできない。
お尻の尾羽をピコピコさせて、プカ~と浮かび上がってくる。
『私達イゼイラ人は、水の中へ潜るのが苦手なのデス』
「へ? なんで?」
『沈めないのデスよ……』
「沈めないって……」柏木はちょいと考えて……「あぁあぁ、そうかそうか……なるほどね……」
と思う。
イゼイラ人は、鳥のような種から進化した種族。なので非常に体重が軽い。
その主な理由は、彼女達イゼイラ人の骨の中は空洞なのである。いわゆる鳥類に見られる『含気骨』のようなものがその名残としてある……つまり、体に浮き輪を抱えているようなものなのだ。
では、なぜニーラ博士が浮き輪を持っているかというと……あれは日本の様式美に則っているだけなので、他意はない。
「はは、なるほどね……んじゃ無理して深く潜ったらマズイよな」
『デス。気圧の関係で、無理やり深く潜っちゃうと、骨にヒビが入っちゃいますです』
なので、イゼイラ人が水中に潜る場合は、PVMCGの水中用環境装置が欠かせないのだという。
これが、パーミラ人から供与された、イゼイラ人向けの水中技術なのだそうだ。
まぁしかし、今日はレクリェーションなので、フェルは水面をラッコみたいにプカプカ浮かんで楽しむ。思わず鼻歌が出たりする。
その横で柏木が家で食べようと思う貝類を捕ってきてはフェルに渡している。
そんな感じで、みんなの楽しい時間は過ぎていく……
………………
すると、浜の方で多川が「お~い!」と手を振っている。
何か物凄く慌てているようだ。
様子がおかしいと思った柏木とフェルは、急いで浜へ戻る。
「ハァハァ……どうしたんですか? 多川さん」
『ケラー・タガワ、如何いたしましタか?』
「柏木さん、大変だ……今、九州地方が雨続きなの知ってるだろ?」
「ええ」
「……大規模な土砂災害が起きたらしい」
「えっ!……」
するとシエが走ってきて……
『カシワギ、メルヴェンニ救援要請ガキタ。相当大キナ災害ノヨウダ。只事デハナイゾ』
柏木は、チッと舌打ちをして
「わかりました。パーティはこれでお開きですね……白木ぃ!」
白木を大きく手招きして呼ぶ。
「おう!」
「官邸は?」
「危機対策本部を設置したらしい。大見と久留米さんに長谷部さん、あと……あの、あれだ、田中さんの彼氏さんも転送で戻った。ヴェルデオ大使とジェグリ副司令もヤルバーンへ戻ったそうだ」
「了解だ」
多川は……
「お嬢、俺たちはあのXFAVで今から状況偵察に行こう」
『了解ダ、タガワ……カシワギ、場合ニヨッテハ、機動形態デ救出活動ニ参加スルゾ』
「はい、お願いします。ではそれで」
多川とシエはお互い頷いて、水着のままXFAVに走る。
柏木はPVMCGでワンセグテレビを造成して、ニュース速報を見る。
「……こりゃ……ちょっと洒落になんねーな……」
『ヒドイです……』
フェルも口に手を当てて戦慄する。
「フェル、俺たちも戻ろう。俺は官邸にこのまま直行するから、フェルはヤルバーンでメルヴェンの指揮をとってくれ」
『ハイです』
柏木はシャワーをササッと浴び、潮を落とすとPVMCGでスーツ姿に変身。
『ケラー! 俺たちもヤルバーンへ戻るぜ。必要があれば出っ張るぞ』
『必要なら、防衛総省のあたし達にまかせな』
ゼルエとシャルリも戦闘服になっていた。
「たのみます」
『では私モ戻りますネ』
「ああ、フェル頼むよ」
フェルにゼルエ、シャルリ、オルカス、ヘルゼン、リビリィにポルが緊急転送でヤルバーンへ戻って行った。
『じゃぁミカチャン、私も戻るね』
「うん、ニーラちゃんも頑張ってね」
『マタ、ヤルバーンに遊びに来てネ』
ニーラもバイバイして、浮き輪をつけたまま転送でヤルバーンに戻って行った。
『デハ、私達モヤルバーンへモドルゾ、カシワギ』
リアッサとジェルデアがやってきて話す。
するとニルファが……
『いえ、お二人はカグヤへ行きなさい』
『ナニ? カグヤヘカ?』
『ハイ。向こうも手が足りないでしょウ。リアッサはヴァズラーを扱えますよね』
『アア、モチロンダ』
『では、ソれでシエ達をお手伝いなさい』
『ナルホド、了解シタ』
『ジェルデアは艦長や副長の補佐を』
『了解です奥様』
ニルファはそういうと柏木の方を向き
『これでよろしいですね、ダイジン』
「はい、結構ですニルファさん」
そしてリアッサとジェルデアはカグヤへ転送される。
「よし……じゃぁ俺も官邸へ直行するか」
「柏木君、がんばれよ、後片付けはワシらがやっておくから」
「はは、すみません。んじゃ、お願いします」
麗子も
「では大臣様、今日は楽しかったですわ」
「ええ、ま、こういうお開きも我々ならではですね」
「ええ、こういう時こその安保委員会です。がんばってくださいましね」
「はい」
「で、崇雄……」
「ん? なんだ?」
白木にチューする麗子
「ウフフ、頑張ってくださいね。旦那様」
「おいおい、どういう風の吹きまわしだ? ぶはは、了解だ……んじゃ、元気百倍。柏木大臣閣下、いこうか」
「おう……ではみなさん、また……」
転送される柏木と白木。
後に残るは大森と田中さん。美里に美加、そして元精死病患者さんお二人と、ニルファ。
『デハ、ケラー・オオモリと仰りましたか、私達で後片付けをしましょうカ』
「そうですな、ニルファ奥様」
しかしと腕を組む麗子
「みんな好き放題食い散らかして……これは一仕事ですわよ、ウフフ」
「仕方ありませんわ麗子様、これも皆様のお手伝いですよ」
田中さん、さすがスーパー秘書。
もうすでに三分の一の片付けを終えていた。
「はいはい、では私もお手伝いしますわよ」
残った者みんなで後片付け。
唐突の事件だが、災害は彼らの都合など考えてはくれない。
しかしみんなが思うことは……
「柏木君の大臣職、意外に合ってるのかもなぁ……」
皿を洗いつつ話す大森。
「ですわね、意外というかなんというか……彼はあんな星の下にうまれてきたんでしょうね、ウフフ」
麗子も机を片付ける。
「でもぉ、ただ突撃ナントカ的結果論な気もしますけどぉ~」
そんな大層なものかなと話す美里。
で、片付けも終わり、残ったみなさんも、名残を惜しみつつ転送で帰っていく。
光と共に、OGH島から消えていくみなさん。
後に残るは夕日と浜辺にとってかえす波の音のみ……
異星人達みなさんの、短い夏の休日。
波打ち際には誰の物かは分からないが、綺麗な水色の、大きめな羽髪が一つ、打ち上げられていた……




