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銀河連合日本  作者: 柗本保羽
本編
20/119

― 番外編 調査局報告書2 フェルさんのお正月 ―

1月1日 元旦


『ミなさま、アけましておめでとうございまス。本周期もよろしくお願い申しアげますでス』

「?……誰に話してるんだ?フェル」

『エ?……誰とイうわけではアりませんが、ニホンの新周期には、このようなご挨拶をするのでしょウ?』

「え、う、うん……」


 フェルは、正座し、三つ指突いて深くお辞儀をする。鏡に向かって。

 鏡とは、古来より、別の世界に繋がっていると言われているが、どうなのだろう?


『ナので、ニホンの方とお会いしても恥ずかしくないように、練習中なのデす……ミなさま、アけましておめでとうございまス。本周期もよろしくお願い申しアげますでス』

「しかし三つ指突いてっていうのも、えらい古風なんだけどなぁ」

『ソうなのですか?』

「さすがに今の日本でも、そこまでする人は少ないよ」


 ハハハと笑いながら、柏木も正座して、フェルに


「では、俺も……フェル、新周期あけましておめでとうございます。本周期もよろしくお願い申し上げます」

『ハイです、マサトサン。よろしくお願いいたしまス』


 お互いこうべを垂れあう。


「ではフェル、これを差し上げます」


 小さな小袋をもらうフェル


『?……コれはなんでしょウ』


 フェルはその袋の中身をポっと取り出す。

 日本円で5万円入っていた。


『コれはオカネじゃないですカ!……労働もしていないのニコレは受け取れません、コんなことしてはダメですよ、マサトサン。マサトサンの大事ナ オカネじゃないですカ、私ハ、ニホン政府より滞在中のオカネは受給シておりまス』


 妙にマジメで律儀なフェル。貨幣とは労働の対価、もしくは利益の配分という事を自分なりに研究し、理解しているようである。


「あ、いやいや、これは『お年玉』という新周期のニホンの習慣なんだよ」

『オトシダマ?……球体を落とすのデすか?』

「あ……いや……そういう意味じゃないんだけど……」


 フェルのベタな反応に苦笑いする柏木。


 お年玉の言葉の意味は、諸説あるが、一般的に多く知られているものとしては『年の賜り物』が変じて『お年玉』という言葉になったとも言われている。

 柏木は、そういう習慣が日本にあるという説明をした。


「まぁそれで、日本の習慣を知ってもらおうと、『お年玉』を差し上げたわけ」

『ソうなのですカ』

「そそ、ということで受け取ってください」

『ソういうことでしたら、ありがたく頂きまスです』


 フェルは正座したまま、右手を右胸に当てて、ティエルクマスカ式敬礼をした。


『デは、私もオトシダマデす』


 フェルはPVMCGを操作し、柏木のPVMCGと何かをリンクさせた。


「ん?」


 柏木は自分のPVMCGに何か送られてきたのを感じる。


『ワたくしのハイクァーン使用権を、局長権限で、マサトサンのゼルクォートに送信しましタ』

「え?そうなの?……確か、ハイクァーン使用権は、取引できないって聞いたけど」

『局長以上の局員は、ティエルクマスカ人以外の人に使ってもらうため、その権限である程度なら可能なのデす』


 すなわち、ヤルバーン招待客に配給された物と同じことを幹部局員はできるわけである。それ以上にフェルは連合議員でもある。


「はは、そうか、それはありがとうございます。有難く頂戴いたします」

『イエイエでス』


 柏木も正座して頭を下げる。


「ではフェル、初めてついでに一緒に初詣にでも行こうか」

『ハツモウデ?』

「うん、この国の創造主様に、この一周期のお願い事をしに行く行事なんだ』

『ソれは、この間くりすますの時に聞いた、シュウキョウの行事のようなものですカ?』

「まぁ、そんなところだね」

『ワかりました。興味がありまス。行きましょウ』


 フェルはそう言って微笑むと、外出の準備を始める。


「あ、ちょっと待った」

『ハイ?』


 柏木は、PVMCGを作動させて、フェルに何かのデータを送った。


「この間、PVMCGの服飾データを作ってみたんだけど、これ造成させて着てみてくれないかな?」

『ハ、はい……わかりましタ』


 フェルは寝室に入り、寝室の扉を閉める。

 少し「何だろう」という顔をしながら柏木にもらった部屋着を脱いで、PVMCG服飾データを再生させ、裸の状態からモードチェンジしてみる。ピカっとフェルの体が光ると、何やらフェル的には見たこともない服が体に再生された。


『ふワぁぁぁぁア!』


 と、宇宙共通なフリュの歓声が部屋から聞こえてくる。

 柏木はニヤニヤとフェルの感情を想像する。


『マサトサン、マサトサン!この服ハなんですカ!?』


 と驚きの声をあげながらフェルが寝室のドアを開けると……


 

 そこには『振袖姿』のフェルがいた。



 柏木は昔、美里の家に振袖着物がまだあると聞いた覚えがあったので、美里に連絡してその着物をPVMCGでスキャニングしてもらい、そのデータを送ってもらっていた。

 そこへ昔取った杵柄で、柏木がデザインした天の川と、フェルの母星の主星ボダールのデザインを織り込んで、フェル用の振袖着物をデザインしてデータ化した。

 フェル達イゼイラ人は、PVMCGの機能を使った服を普段から着ることが多いそうで、このような事が可能なのだ。


『マサトサン、こノ服はなんですカ!?ものすごくキレイです!』

「それは振袖着物っていう日本の民族衣装だよ。未婚の……まだミィアールしていない人しか着れない衣装で、まぁ、日本の正装の一つだね。履物もデータ化してるから、それを履いて初詣にいきましょうか」


 柏木はかんざし等も考えたが、いかんせんフェルの髪型がアレなもんなので、元々日本人的に派手っぽいフェルならそのままいけるだろうと踏んだが、バッチリその通りだった。


 フェルは少し恥ずかしそうにしながらも、嬉しそうに家を出る。

 柏木の服装は紋付き袴といきたいところだが、さすがにそんなもの持っていないし、PVMCGなデータも取っていないので、黒のダブルのスーツである。


 近所では『柏木さんちの、宇宙人フェルちゃん』と今では結構な有名人なので、案の定、今回もまた『振袖フェルちゃん』と有名になってしまう。

 近所の八百屋のオヤジからは『真人ちゃん、フェルちゃんの振袖とれるのいつなの?』とからかわれたり、女性SPからのジト目目線が痛かったり。


 しかし当のフェルは相も変わらず無敵なぐらい気にも留めていない様子。いつものように愛想良く、いつもの女子中学生やら女子高生やらの写真撮影に応じていた。


 最近はマスコミも嗅ぎつけてきたようだが、それに関してはSPがサッとダメ出しをして遠ざける。

 どういうわけか担当は芸能レポーターが多い。

 写真週刊誌なパパラッチも多いが、SPが頑張っているようで、後をつけてはカメラやデータを没収しているようだ。


 とはいえ、取材活動自体がダメなわけではない。日本国内の法なので、法的には全くかまわないのだが、異星人といえど一応私人なので個人情報保護の観点と、ヤルバーンの法に配慮しての事だ。


 そういう事なのであるが、別に違法ではないので投稿サイトなどでは結構フェル写真はアップされている。

 中には、素人から買い付けて雑誌に使うような週刊誌などもあるが、さすがにそこまでは手が回らないので、政府もそういう媒体には別の方法で圧力をかけているようである。


 しかし困ったことにそういう写真には少なからず柏木も写っているものもあり、世の熱狂的なフェルフリークは「あの野郎は誰だ」「ぶっ殺す」「柏木じゃねーのか?元TESの」という話に当然なるわけで……


 柏木ん家には最近問い合わせが多く、時には剃刀やら模造銃弾やら白い粉が届くこともあり、公安も大変だそうである。


 柏木は引っ越しも考えたが、フェルに


『ソんな事で逃げてはダメでス』


 とダメ出しをくらってしまったので、まぁとりあえず何とか政府の助けもあり、頑張っている。

 しかしフェルも、これはこれで結構根性据わったフリュである。まぁ、未開の惑星で得体の知れない化け物のような動物と渡り合ったりする事を考えれば、どうということもないのであろうが……


 そこで愛する柏木を困らせる連中を懲らしめるために、本気で怒ったフェルは、ヤルバーンの中央システムを使って、世界中のサーバーをハッキングして、柏木やフェルのデータを消してしまう事も提案したが、柏木に『それをやったら、ヤルバーンの立場が危うくなるからダメ』と言い、フェルをいさめた。

 でもまぁ柏木的にはちょっと嬉しかった。


 そんなこんなで近所の神社にお参りに行く。

 そりゃもう注目されまくりである。

 フェルは柏木に、地球で行動する時は素の姿で行動したいとはっきり言っているので、柏木もフェルの意見を尊重して、フードを着せるような事はしないようにしている。

 フェル的には、今後のヤルバーン乗務員の自由入国を踏まえての話でそうしたいそうだ。

 要は、日本人にもイゼイラ人に慣れてほしいという事もある。


 ただ、容姿がそういう感じなので、当面はこんな風になるのはフェル的にもわかっているので、それも調査の一つとある意味割り切っているところもある。





 柏木は神社の境内に行き、賽銭を賽銭箱に放り投げる。


『?……マサトサン?ナぜオカネをその箱に入れるのですカ?』

「ん?ん~これまた難しい質問だなぁ」


 賽銭とは元々お金を投げ入れる習慣ではなかった。

 元々は神から福を賜った感謝の気持ちとして、作物などを供えるという方法でこれをおこなっていたのだが、日本の貨幣経済の発達によって、かさばる供え物が、金銭に置き換わったといわれている。


 現在では、賽銭は寄付金の扱いになり、神社の収入になる。そして神社設備の保全、補修や、供え物の購入、従業員の人件費などに当てられる。ちなみに、神社は公益法人なので、これら賽銭には税金はかからない。

 こんなところをフェルに説明した。


『ナるほど、寄付ですカ。地球やニホン国では、信仰を維持するのにも、貨幣が必要なのですネ』


 サラリというフェル。しかしなかなかに重い言葉である。

 我々が自然に思っていることでも、異星人には異なる文化の研究対象なのである。


 改めてフェルに言われると、この世で一番金のいらなさそうな神様にすら金を払わなければ、お願い事も聞いてもらえなさそうになるというのだから、面白い話なのだろう。

 しかし、そういう文化なのだからそれはそれで「郷に入れば郷に従え」である。フェルも500円玉をぽいんと賽銭箱に放り投げる。


『サて、これでお願い事が出来るのですネ』

「そそ、まずこうやって……」


 柏木はカラカラと鈴を鳴らし、二回お辞儀。そしてお願い事をして、二回拍手を打ち、最後にお辞儀をする。

 お願い事というが、本来はお祈りといったほうがいい。

 五穀豊穣や天下泰平など、神様に公の利益がすこやかであるようにお祈りをするのが本来の姿でなのだが、柏木はフェルにそこんところはあまり堅苦しく考えなくていいと教える。


 フェルもカラカラと鈴を鳴らして、柏木に教えてもらったやり方でお祈り……というか、地球の、日本の創造主にお願い事をする。


『'&%()&%'%'%===~=!"$&』


 フェルは翻訳機を切って、何かブツブツと呟いていたようだ。

 日本の八百万の神々は、イゼイラ語もわかるのだろうか?


「何お願いしたの?」

『ナイショでス』


 フェルは悪戯少女のようにクスクス笑う。


『たダ、ティエルクマスカとニホン国が友好的に末永く続きますように……とイうのは、お願いしましタヨ』


 日本の神々も、えらい事を託されたものだと柏木は思う。

 日本列島一国を創世した神様が、銀河の10分の1もの領有域を持つ超々大国国民にお願いされたのだ。神々もどう思うだろうか?

 

『マサトサンはどんなお願いをしたのですカ?』

「ま、似たようなものかな?あとは俺もナイショ」

『ア、それはダメです』と、ぷっと膨れるフェル、そして『フリュはナイショでもいいですけド、デルンは教えなきゃダメなんですヨ』と、よくわからない理屈を垂れる。


 完全に初詣カップルモードであった。




「さて、次におみくじでも引こう」

『オミクジ?』

「まぁ……占いみたいなものだよ、イゼイラにはそういうのは無いの?」

『エぇ、アりますよ。ケド、こんなクジ引きみたいなのはナいですネ』


 そんなことを言いながら、くじを引く。

 柏木は小吉、フェルは大吉が出た……なんとなく神社側の作為的なものを感じるが、まぁそれもいい。


「おー、大吉がでましたな」

『ダイキチ?いいものなのですカ?』

「うん、一番いい結果だよ、俺は小吉。まぁ、ちょっと良い感じってなところかな?……そして、これをこの木の枝に結ぶと、ご利益があります」

『ドうしてそんなことをスるのですか?セっかく良い占いなのニ』


 境内の木におみくじの符を結びつけることは、「神との縁結び」というところから来ている。

 よく、凶事のみ結んで取り消しにすると言われることがあるが、これは間違いで、諸説あるが、凶事の場合は、利き腕と逆の指で結ぶ事で、凶事を乗り越えた事にすることができ、それを吉に転ずるという意味がある。なので、凶事な結果が出た場合はそうすると良いとされている。


「さて、これで初詣は終わり。じゃぁ、少し散歩でもして帰ろうか」

『ハイです』


 フェルと柏木は自宅マンションの近所をプラプラしながら散歩する。

 まぁ正月なので、どこの店も閉まっており、開いてる店といえばコンビニぐらいなものだ。


 最近は柏木の町内でも、フェルの存在を地域振興に勝手にしてしまうところも多く、【宇宙人と会える町】だのそんなキャッチフレーズでフェルの萌え絵を店に掲げたりして客を呼び込もうとまぁ色々考えているようで、区役所からもフェルをイメージキャラに使いたいという依頼もきている。これに関しては保留しているが、事実上もうほとんど街のゆるキャラ化してしまっているようでもあり、柏木もさすがに


「フェル、これはいくらなんでもマズイだろう」


 と話したこともあるが、フェルは


『別ニ構いませんヨ、怖がられたり、恐れられたりするよりよっぽどいいでス』


 とこれまた容認している始末。

 フェル的には、とにかく自分達を日本人に良く認識してもらうことが大事と思っているようで、そういうことは全く気にも留めていないらしい。




 柏木は、コンビニに入って、何か玩具のようなものを買ったようだ。

 フェルの視点から見ると、細長い樹脂製の袋に入ったもので、何か樹脂の膜と、樹脂製の棒の様な物が入った袋で、付属品として何かに巻きつけられた糸のようなものが入っていた。


『マサトサン、何を買ったデスか?』

「むふふ、お楽しみだよ」

『??』




 そして柏木は近所の河川敷にフェルを連れて行く。


「ほら、フェル、あれ」


 柏木は空を指差す


『!!……マサトサン!何か空にたくさん飛んでますネ!』

「凧っていう日本の新周期の遊びさ。ちなみに、8本足の軟体生物のほうではないからね」


 またフェルがベタな事を言いそうなので、あらかじめ予防線を張る柏木


『ヘーーー、どういう動力を使ってるんですカ?』

「イゼイラには、歴史的に似たような物は無いの?」

『は、ハイ、ないです』


 柏木はこの返答でも、また違和感を感じる。

 凧とは、人類が有史以来始めて『揚力』で物を飛行させる方法を発見した物だ。つまり航空機の飛行原理の原点でもある。

 これを知らないという事は、彼らイゼイラ人は、どうやって航空機の原理、つまり揚力と作用反作用の法則を発見したのだろう……と柏木は思う。それとも、あまりに昔の技術なので、単純にフェルが個人的に知らないだけなのだろうか?


 柏木はコンビニで買ったカイト型凧を組み立てて、それを揚げる原理をフェルに説明した。


『ナルホド、フィブニー効果で空に揚げる仕組みなのですネ』


 イゼイラの物理学用語で納得するフェル、航空力学は理解しているようである。凧をPVMCGでスキャニングしているようだ。


『デは、このタコを上に飛ばすためには、この糸を持つ対象アルケが、水平方向ベグルへ、タコを加速させてやる必要がありますね。そしてそれを安定して滞空させるためには、気流が保持できる位置まで、この糸を伸ばしてやらないと』

「ははは……ま、まぁそういうことですな、フェルサン」

『デモ、この状態では、制御に不安が残りますね。少し改良してみましょウ』

「は?……ななな、何をする気ですか?」


 フェルは、さすが連合議員で、調査局局長である。柏木のような芸術系大学出身とは頭の出来が違う。

 PVMCGで、カイト型の凧や糸巻きに、なにやら色々と付属品を着け始めた。

 すると、とても玩具に見えない凧を超えた、空を飛ぶ何か妙な物体が出来上がった。


(フェル……これはもう凧とはいえないのではないかと……)


 と柏木は思うが、フェルは熱中しているようなので、まぁやりたいようにさせればいいかと、フっと笑う。


『ヨシっ、デキましたっ!』

「い、いや……コレ、揚がるのか?」

『大丈夫デスっ、さて、挙げマスよっ』


 フンっと鼻息荒いフェル。しかし、振袖姿が走りにくいらしく、近くにあったトイレに入り、イゼイラ制服姿にモードチェンジして戻ってくる。


 そして……


『デは、しっかり持っていてくださいネーー!』


 河川敷には「なんだなんだ?」と、いつのまにやらギャラリーが集まってきている。

 柏木さんちの宇宙人フェルちゃんが、何かやらかすと聞いた人がぞろぞろ集まってきた。

 柏木は恥ずかしいやらで、その改良凧『フェルカイトMk-Ⅱ』を手に持って待機している。


『デハ、行きます』


 フェルは、ボディスーツのスイッチを押す。なにやらビキンと音を発し、何かの機能が発動した。

 そして合図とともに、フェルはダダダっと走り出す。

 すると、凧は青白い光をまといながら、ブワっと空へ揚がる。

 フェルの走る速度は尋常ではない。河川敷道路を走るバイクを簡単に追い抜き、障害物があれば、それを数メートルジャンプして飛び越え、数百メートル先まで一瞬で走り去ってしまう。


 それを見ていたギャラリーは、唖然呆然、柏木もポカーンと口をあけて見ていた。 

 しかし凧は見事な揚がりようで、大空高く、青白い光を発しながら、揚がっている。


 そしてフェルはゆっくり歩いて、元の場所まで糸を調整しながらドヤ顔で戻ってきた。


『フッフッフッフ、どうデすか?マサトサン、すごいでしょウ』

「あ……いや……は、はぁ、確かに……ハハハ……」

『コレだけではアリマセンよ』


 フェルは、なにやらコントローラー化している糸巻きを操作すると……


「おおっ!!こりゃすげぇ!!」


 まるで凧がラジコン飛行機のように、変幻自在に動き出す。

 しかもそれは、凧の飛行状態を超えない範囲で、上下左右半球範囲で変幻自在にフェルは動かしている。


 かつて昔、日本で流行った『Uコン飛行機』というホビーがあったが、それのスゴイ版のようだ。

 現在も、2本のラインを使って、変幻自在にカイトを飛ばすスポーツもあるが、そんなものではない。なんせ飛ばす糸の距離が違うし、難しい技術もいらない。


 周りのギャラリーからも「おおおー」と歓声と拍手が上がる。


「おとーさん、あれほしー」


 そんな子供の声が聞こえてくる。

 フェルはその子供を手招きして呼び、フェル製イゼイラ凧を遊ばしてやる。


 すると、河川敷に来ていた子供達の列がいつの間にかでき、フェルカイトを順番で遊ぶ姿が出来ていた。

 フェルも子供達に遊び方を教えているようである。


(これ……特許とって売り出したら、メッチャ売れるだろうなぁ……)


 そんなオッサン思考で邪な考えもついぞ浮かんでしまう。


 柏木は、フェルのその姿を河川敷に座って眺める。なんともほのぼのして良い風景だ。

 異星人と子供達とその親が立派に交流していた。


(ま、これなら心配要らないな、自由入国させても……)


 そんな風に思う柏木である。

 そして、子供達と戯れるフェルを見て、自分達の将来を重ねて観てしまったりもする。



 そんなこんなで、フェルの意外な機転で、妙に充実した正月を過ごした柏木とフェルであった。




 二〇一云年、正月。


 フェルの調査報告ファイルに、一つ日本の記述が増えた。





 読者皆様、新年明けましておめでとうございます。


 新年おめでとう編として、本番外編を掲載いたします。


 この番外編は、時系列的に-9-と、-10-の出来事の間のお話になりますので、その点御留意下さい。


 昨年は読者皆様におきましては、大変お世話になりました。

 本編7日以降に掲載予定である-10-とは別に、旅行先での正月模様を久しぶりに体感し、それを元ネタに急遽旅行先でノートPCを使い書き上げたものです。


 従いまして、慣れないノートでの執筆ですの今までの本編以上に誤字脱字が多いやも知れませんが、そこのところはどうかご容赦下さいww



 それでは皆様、本年も皆様にとって良いお年でありますようお祈りいたします。


 そして本作『銀河連合日本』共々、本年もよろしくお願い申し上げます。




 柗本保羽



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