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銀河連合日本  作者: 柗本保羽
銀河連合日本・ショートストーリー(たま~に更新)
115/119

その5:出張TNE 正月銀連特撮まんがまつ……発達過程文明大演習大会の巻

読者皆様方、令和二年、新年あけましておめでとうございます。

 ということで、恒例のショートストーリーですが、此度はショートではありません。本編並みの長さがありまして、まあ色々ネタ満載で今後に続くお話なんかも色々と……


 ではでは、本年も皆様にとって良いお年となるよう祈願しまして、本作をお楽しみください。


柗本保羽



 さて、のっけからいきなりアメリカ合衆国の何処かの街。

 高速道路の高架下、どっちかというとスラムっぽいそんな場所。

 そこには米国独特の、所謂あかぬけた一般人連中が飲みに来るような雰囲気ではないバーが近くにあったり。そんなバーの駐車場には大型トラックがたくさん停車させてある。

 まあ所謂普通の米国にあるような、そんな下町の風景、そして夜……


 そこにいきなり不自然な放電現象が発生する……

 ビキビキ、ビシバシと自然現象にしてはありえないような状況……周囲にあるゴミが宙を舞い、駐車場を遮る金網には更に異常な稲光が迸る。

 それはドスの利いたベースと金属音が等間隔で響くBGMが似合いそうな、そんな状況。


 そして、しばし後……


 放電現象は最高潮に達し、なんと! そこには球形の空間転移現象が発生した!

 刹那、まるで時空が真円に切り取られ、熱を帯びたその場所に、膝を付いた状態から立ち上がる素っ裸の男性。その姿、筋肉マッチョな立派な肉体……んでもってどこかで見たような容姿……

 その姿、二〇〇三年から二〇一一年までカリフォルニア州の知事をやってた御仁であった!


 ……で、この御仁、赤外線を通したような視界から見えるシステム画面的な風景を察するに、なんとアンドロイドのようで、素っ裸で隣接のバーに入店すると、店内にいる無頼漢へ冷静沈着にケンカを売って、店の中で暴れまわって他人様の服を強奪し、更には店の店主が持ってたウィンチェスターM1887のソードオフ(銃身・銃床切り詰め型)ショットガンを頂戴し、バイクまでも拝借して何処かに走り去っていった……


    *    *


 さてさて、所変わってここは何処かのショッピングセンターにあるゲームコーナー。

 でも二〇二云年のこの世界にあっては、並ぶゲーム機はちとレトロ感漂うものばかり。かの一世を風靡したトップガンの映画を元ネタにした大型筐体のゲームや、今ではもうゲームコーナーではあまり見ることのなくなったアップライト型筺体のテレビゲーム機などなど。そもそも今の日本のご時世、中空に高解像度映像を投影できるモニターが主流の世界において、ブラウン管式モニター自体がティ連の発達過程文明の重要調査対象科学技術に指定されているような昨今、正味今の日本人にも懐かしさ漂うその情景に、悪友とつるむ悪ガキがゲームに興じていた。

 だが、そこに悪友が悪ガキへ、警官がお前を探している、といったようなことを告げ口し、悪ガキは一目散にその場から逃げ去る。

 その悪ガキを追う警察官。狩人のような鋭い目つきで殺意に満ちたその視線は、着実に悪ガキを追い詰めていく……悪ガキが逃げるその先、今度はなんと! あの知事型アンドロイドが悪ガキを見つけ、花の箱に入ったウィンチェスターを構え、前方へ腰だめで発射態勢をとる。

 警官は悪ガキへ銃を発砲。だが、アンドロイドはその悪ガキをかばい、銃弾を背中で受けるも、悪ガキを隣の部屋へ放り込み、安全を確保すると、平然とその身を翻し、ウィンチェスターを数発発砲する! 

 ウィンチェスターはショットガン故に、まあこの展開ならその警官には柔らかい金属特有の銃痕がいくつか残って仰け反って……


 ではなくて……なんと、警官の前方で銃弾は光を放って弾け飛び、警官は左腕を盾にして颯爽とポーズ決めて立っていた。

 で、その警官は、鷹のような鋭い目つきの姿から、白銀の流体金属に変化して、3DCGのモーフィングの如きアクションで次に姿を変えるは……


 何と! ヤルバーン州軍大佐、『シャルリ・サンドゥーラ』であった! ……なんか颯爽としたBGMでも欲しいところ。


『ふぅ、元知事さんもなかなかやるねェ。って、このゼルルームのシミュレータープログラム、だぁれが作ったんだい? ホント体感係数が異常に高いじゃないかい……気にいったよっ!』


 ……つまるところ『あの映画の』ワンシーンになんでシャルリ姐がいらっしゃるのかというと、もうおわかりの通り、ここはかの大森会長率いるOGHが誇る、例の大型ゼルシミュレーター施設であった。

 で、まぁここでは日がな毎日いろんな環境シミュレーションが、VMC技術を駆使して物質的にリアルなバーチャル空間実験が行われている次第なワケであったりする。

 実は先日、ウクライナからの依頼で、かのチェルノーブル原子力発電所も、かの福島原発のごとく廃炉できないか、可能であれば協力をお願いしたいと、ウクライナ大統領から日本とヤルバーン州に依頼があり、彼の国でもあの惨劇に終止符を打とうとヤルバーン州が地球環境のために動いてくれている次第。その時、所謂ヴァルメで大規模なチェルノーブル原発の現状調査を行って、このVMC施設にチェルノーブル原発自体をVMCシミュレートして再現し、徹底的に調査して近い日に件のパウル艦長がかつて率いていた工作艦隊がまた、廃炉作業を行ってくれるという次第。

 ここはウクライナだけではなく、日本とヤルバーン州の友好国である東欧近隣国も全面協力するということで、そんな使い方も積極的にされているこのOGHの施設で……

 一体全体シャルリさんは何をやってらっしゃるかと言うと……

 

 連合防衛総省は、来るべきヂラールとの大規模戦闘となるであろう『惑星ゼスタール奪還作戦』への準備段階として、ティ連各国に演習訓練の強化を打診、命令した。

 で、もちろんその命を下したのは、我らが防衛総省長官である柏木真人閣下だが、彼が命を出した時、付け加えたのが、


【VMC訓練を活用する場合、ヂラール戦だけの戦闘データでは、実際のところデータがまだまだ少ないため、それ以外の汎ゆる歴史的、フィクション的ケースを想定して訓練すること】


 としたわけである。つまり、ヂラール戦のみでいえば大規模な戦闘を行ってはいるが、戦況のパターンとしてはまだまだデータが足りない。つまりヂラールの全容をカバーできる内容ではないというのが実際のところである。なので柏木は、


「なんでもいいから、多様な戦闘状況がシミュレートできるデータをVMCデータに叩き込んで訓練してくれ」


 とお達ししたわけである。

 そこでその命が日本で知られた時、幸か不幸か、その命令を最初に承ったのがシャルリ大佐と楽しいヤル研の仲間達……

 訓練強化月間するなら、どうせなら楽しんでやろうって話になって、OGHのゼルシステムを司るトーラル型システムに、シャルリの大好きな地球産SF作品コレクションや、ヤル研の所有するヲタクネタ……貴重な現代から過去におけるフィクション設定の作品データを片っ端からブチ込んで、トーラルシステムに体感係数最大で『仮定戦闘状況データ』として再現させていたりするのである……ぶっちゃけ、『下手したらえらい目に合うフィクションデータ再現戦闘実験』であったりする。


『んじゃこっちからいくよっ!』


 シャルリはカキョカキョと左腕を実体剣に変形させ、右手にデザートイーグル50AEを造成して知事型アンドロイドに斬りかかる! が、アンドロイドはすかさずシャルリの左腕を掴んで攻撃を躱す。

 だがシャルリは右の手に持つデザートイーグルを知事型の顔面めがけて数発発射。知事型はサングラスを吹き飛ばし、表皮の有機細胞をもめくれあげさせ、中の金属骨格の頭蓋を露出させる!

 知事型はシャルリの首根っこを掴み上げ、そのまま壁へめがけてぶん投げた!

 ドゴォンという音にコンクリート製の壁をぶち抜いて吹き飛ぶシャル姐。


『うわぁぁあああっ! あいててて……ひょぉーー、すごいねぇ知事さんハ……あのエイガのデータをトーラルが戦力分析すると、こんなアグレッサーになるってかい』


 すると、何処から聞こえるオペレータ音声。


『なんかハイクァーンで、この知事さんのアンドロイドを量産した方が、ヂラールに対抗できそうな気もしますが』


 月丘和輝であった。別室のオペレーションルームで、このVMCバトルを見物しているという次第。


『そうだねぇ……でもアタシもチキューのみなさんに600万ドルのフリュなんてあざなを頂いた軍人だかんね。フィクションとはいえ、地球製のアホタレ人工知能が作ったアンドロイドには負けられないわさ』


 そんな事言いながら、知事型が繰り出す攻撃に射撃を躱しながら肉弾戦を繰り広げるシャル姐。

 本編ならここは、液体金属製のアレに知事型は苦戦するところだが、相手がシャルリとなれば性質は同じだ。知事型も善戦している。

 知事型はよくサイボーグなんて喩えられるけど、実際は完全なアンドロイドである。サイボーグなのはシャルリの方だ。彼女は左腕と、右足と、右目を機械化している。その他は生身なわけで、その点でいえば、完全機械の知事型に比べれば当然パワーは落ちるのだが……そこは偉大なるティエルクマスカの科学力。


 シャルリの左腕の実体剣攻撃を知事型は持ち前の反射速度と頑丈さで躱すが、


『そらっ! スキありだよっ!』


 シャルリは右足を、かの魚釣島事件で見せた、粒子トーチ状の光の刃を放出させると、ムエタイ戦士の如き華麗なシャルリの得意技である蹴りの攻撃で、知事型の左腕を肩から溶断する。が、知事型も残った右腕で、シャルリの左足を掴み抑え、ぶん投げて地面に叩きつける!

 

『ぶはぁっ! なんの、まだまだっ!』


 シャルリは右足でケリを入れて左足を引き剥がし、距離を置くとすぐさま倒立で起き上がり、まるでナントカ聖拳の盲目の拳士の如く、華麗な足技で粒子ブレードと化している右足を扇風機の如くぶん回して……


『とぉうりゃぁっ!』

 

 知事型の首を跳ね飛ばした! ……知事型は赤い目を点灯させながら消灯し、首から下はズドンと倒れ崩れ落ちる……

 すると、オペレーター室の月丘が、


『はい、状況終了です。お見事でした!』


 VMCルームは、ボコボコのショッピングセンターから、ティ連の一般的な控室風なデザインの部屋に仮想造成を変形させる。そのテーブルにはハイクァーンで出来た冷たい飲み物が置いてある。

 シャルリはそれを取ってクイと飲むと、


『ぷはー、いやぁ~ まいっちゃうよぉ。でも実際あんな感じの強さなんだろうねぇ、あの作品は。もしチキューにあたしたちが来なかったら、あんなのに支配されてる星になってたのかな?』

『さあ? それはどうでしょうかね。みなさんが地球に来なかったらと仮定して、あーいうのが完成するのは……そうですねぇ、一〇年前当時でも、まだまだ先だと言われていましたから。ハードが出来てもソフトのほうがまだまだといったところですか』

『なるほどねぇ……』とシャルリが一息入れると、『んじゃ次はカズキの番だよ~』

『え? 私ですか? 私はそんな予定ないですよ』

『あ? 何いってんだい、ここまで来てこの訓練、見学だけで済むと思ってるのかい? 強制だよ強制、キシシシ』

『え? な、うわ、何するんですか! どわ!』


 音声のむこうで、月丘がなにか特危隊員に強制連行されているような……何か『あ、プリちゃん、謀ったな!』とか小さく聞こえる。

 シャルリが口笛吹いてVMCルームから出ると、次に部屋へ叩き込まれるはカズキサン。


『カズキサンも最近は特危の定期訓練怠けてるんですから、ここでちゃぁ~んと特訓しとかないと、また出向で駆り出されたとき、困りますよっ』

「え? プリちゃんそんな……特危出向確定が前提ですか!」

『あんな大活躍したら次もコキ使われるにきまってるじゃないですか! ということでお仕事お仕事ですっ』


 その言葉のあと、VMCルームの風景は、かの作品の絶望的な未来世界の風景に変わる。

 そこいらじゅうに、Tナンバーの骸骨型アンドロイドがプラズマライフルぶっぱなして、人類軍を圧倒している構図。


『なっ! よりによってコレですか! もう!』


 月丘はその身にすぐさま銀ピカコマンドローダーをPVMCGで装着して、殺されかけていた人類軍を救う。

 ここでもトーラルシステムのシミュレーション演出演算はすごいもので、月丘のその姿を見る人類軍兵士は、一体何者かという眼差しで彼を見て感謝の言葉を言う。

 だが数で圧倒するはアンドロイド軍団。流石の月丘もVTOL航空機型無人兵器のブラスター攻撃に吹っ飛ばされる。


『どぉわああああ! って、こんなシミュレーターキャラに感謝されても嬉しくもなんともないですよ!』

『てれびげーむと思ってやればいいんですよ~、ニヒヒヒ』

『プリちゃん、あのね……ってうおっ……だーーー』


 またも現れた量産型知事型アンドロイドに首根っこ捕まれ投げ飛ばされる月丘銀ピカコマンドローダー。

 だが、投げ飛ばされた月丘をナイスキャッチで受け止める、小さきヒロインが登場!


『ツキオカ生体。状況は同じ現場で活動する同僚として、あまり肯定できるものではない。反省せよ』

『あ、シビアさん、助かりましたぁ』


 助っ人でVMCルームに入ってきてくれたシビア・ルーラ調査合議体。しつこく月丘に襲いかかる知事型の鉄拳を仁王立ちになって体で受け止める。

 知事型の鉄拳は、シビアを貫くが……シビア先生は、どちらかと言うとその体の性質は液体金属型のアレに近い。なので知事型の鉄腕を両手でむんずと掴むと、そのまま引っこ抜き、小さい体からは想像できないパワーで彼奴を投げ飛ばす! そしてそのままゼル端子を打ち込むと、知事型は配線まみれになってそのままシビアの軍門に下る。


『今、このアンドロイドのプログラムを書き換えた』


 ゼル端子をまとった知事型は、人類軍のいち戦力と化す。これがゼスタール兵最大の強みだ。


『いやはや、流石ですね……プリちゃ~ん、見てましたか~、もうこっちのもんですよ~』

『ア~、シビアチャン、そんなチート技使ったらカズキサンのためにならないですよっ』

『プリ子生体の意見に肯定はできるが、この状況だとツキオカ生体の活動時間はおよそ一〇分だ。現状だとそれ以上に訓練にならない。従って我々が補佐したほうがまだマシである』

『あ、シビアさん、そこまで言わなくてもいいじゃないですかぁ』


 ……まぁ月丘先生。頑張って訓練していただきたい……


    *    *


 で、このOGHの訓練施設、とにかくだだっぴろいわけで、東京ドーム十個以上はある巨大施設である。その維持費だけでも普通は巨額の費用がかかるものなのだが、そこはヤルバーン州と共同運営という形をとっているので、ハイクァーン工学のおかげで言うほど維持費はかかっていない。

 それに今や東京を代表する人気観光施設の一つでもあるので、稼働するゼルシミュレーターの内、いくつかは一般開放用の娯楽施設として稼働している。

 最近は国内や欧米のエンタメ産業も、自社の著作物をOGHに本施設のソフトとして提供しているケースもあって、いろんな映画やアニメのゼルシミュレート体感プレイができる施設として大人気だ。

 で、そこはOGHの大森会長のアレであるからして、常時稼働のサバイバルゲームコーナーもある。所謂、あのナチスドイツVSアメリカ軍の体感プレイができる施設という次第。


 で、あとの施設は官公庁や企業に貸し出すシミュレーション実験施設として、所謂『産業貢献』として稼働している。先のチェルノーブル原発内の再現シミュレーションも、こちらの区画で行われた。

 そんな中、防衛省が事実上買い上げている、とある訓練VMC施設区画で現在この超絶リアルな訓練は行われているワケだが、他のみなさんもこの柏木が決めた妙な訓練に付き合わされているわけで……って存外楽しんでたりするという意見も無きにしもあらずではあるが……


「うぉッ! なっ! って早っ!! これはちょっとやりすぎなんじゃないのか!」

「なに! 私の攻撃を避けただと!」

「ここはこいつでっ、くらえ!」


 ガキョンと白と青と赤のトリコロールカラーな大型機動兵器が、ライフル型ビーム粒子砲を敵に向けて発砲! それを難なく交わし、飛び蹴りを食らわしてくる『赤い色の量産型機動兵器』


「……の性能差が決定的な戦力の差でないことを教えてやる!」

「じゃかましい! このクソマザコン野郎、ブチ落としてやるから覚悟しやがれ!」

「なんだと! この白い機体、以前のパイロットではないのか!?」

「ってさ、おい、こんな戦闘中でなんで敵と会話が成立してるんだよっ!」

「ええいっ! 何をわけのわからんことを、沈めっ!」


 大体どういうシチュエーションか理解できる状況。

 今、訓練プログラムを受けているのは、多川信次特将補。対峙するは仮面の少佐。

 多川将補、今彼は引きこもりメカヲタクの代わりをやらされているという次第。でも会話がこんなのだから、トーラル演算もそれに呼応して会話を返してくる……なんか仮面の少佐はマザコンとか言われてブチギレているようである。


 ということで多川閣下は、愛妻のシエサンに、『ダーリンハ、今回ノ訓練デ、機動兵器ノ機動戦闘形態デ戦ウ訓練ヲシタホウガイイ』と言われての訓練と相成った。

 で、機動兵器の、機動戦闘形態でのアグレッサーで、多川クラスのパイロットに対抗できる最適な奴は誰だ? となれば、あの仮面のマザコンしかいないわけで……


「しょ、少佐! 武器が違います! あの武器は自分は見ていません!」

「当たらなければどうと言うことはない! 援護しろ!」

「ぬかしやがったな、まずはテメーだ!」


 緑の一般兵な量産型を粒子ビーム兵器で吹き飛ばす多川。だが、赤いのが放つドラムマガジン式マシンガンを受けて仰け反る。


「ってな、オイ。そのマシンガンって、設定が一二〇ミリとか言ってんだろ。それって一〇式の主砲と同じ口径だぞ。そんなのを護衛艦の主砲ばりにバカスカぶっ放しやがって!」


 そんなこと言ってると、粒子ビーム兵器の残弾がゼロになる。


「チッ、他に武器はないのか!」


 とそういうと、例の強襲揚陸艦は、イガイガの付いたハンマーを射出してきた。


「あのなぁ! こんなのでどうやって……って、このアニメはこんな変な武器が売りだったっけ」


 多川将補閣下は、これまでいくつもの戦闘に特危自衛隊の先鋒として、奇しくも常に最前線で戦って驚異の戦果経歴を持つ、『日本最初の集団的自衛権行使男』の異名を持つ御仁である。

 で、機動兵器の機動形態での戦闘は、確かにシエのような手練のパイロットに比べると腕は劣るが、決してどうしようもない腕というわけではない。彼もSMS式操縦であれば、十分トップレベルの戦闘はこなせるのではあるが、バディが機動形態戦闘でのトップエースであるシエだ。そこはもし万が一、何かあった場合の事も考えて、多川も機動戦闘で戦える状態にしておかないといけないわけで、まあそういった理由もあっての訓練なわけである。

 だが、かのアニメを再現したトーラルシステムのゼルシミュレータだが……そこはこのシステムの為せる技、アニメのあのシーンが全て実写のような映像に変換されるわけなもんだから、かの仮面の少佐もリアルなお姿。流石にアゴは割れてないようだが、なかなかにその面立ちはハリウッド映画スターの如き感じ。でもCVはあの方が再現されている。


「ち、ちょっと止めてくれ、ストップストップ!」


 すると、オペレーションルームからの声。


『どうしましたか? 多川さん、もう降参ですか?』

「いや沢渡さん、いくら元ネタ通りとはいえ、この武器はネ?」

『そこを何とかするのがシンシエコンビで680番の多川さんでしょう』

「いやでも機動兵器でこんなフレイルの化け物ぶん回すって……」

『旭龍でもテイルアタックあるじゃないですかぁ。そういうのもあるんですよ? ヂラールは普通に肉弾戦挑んでくるでしょう。しかも高速高機動で』

「はいはいわかりましたぁ……こうなったらこのハンマーをあのマザコン野郎にブチ込んでやる」


 この多川が今乗っている、件の白きチート兵器だが、操縦方法は旭光Ⅱや旭龍で使われる半自動オペレーション操縦システムであるSMS方式である……もしこういった搭乗式の人型ロボット兵器ができるとすれば、どう考えてもこのSMS操縦方式でないとコントロールできない。要するにロボット兵器をモチーフにしたテレビゲームを、あのコントローラーで操るのと同じ理屈である。それ以外では、シエの得意な操縦方法である、搭乗者の動きをダイレクトに伝える『マスタースレイブ式』しかない。

 シエは元々体術の達人なので、マスタースレイブ式をお気に入りとしているが、多川はシエほど格闘技に精通しているわけではないので、SMS式であの仮面の少佐に、このフレイルの化け物を打ち込まなきゃいかんわけで……

 多川さん、今、緑の量産型をもう一機、フレイルでぺしゃんこにしてやった。

 まあ彼も今後の事もあるので、訓練、頑張っていただきたい……


    *    *


 ということで、こんな感じで各々ヤル研が徹夜で狂喜しながら考えたプログラムをこなす日々が続く。

 此度は強化月間ということで、この柏木長官閣下がお達しした訓練を重点的に消化していくという段取りである。

 で、何も超リアルな体感係数一二〇%の訓練で遊んでいるわけではなく、これも実際いろんなケースが想定されての話も含んでのことでもあるのだ。

 例えば、先のシャルリや月丘の場合、ヂラール戦では知的生命体同士が戦うような、距離を開けての戦闘よりも、圧倒的に近接戦闘の状態に陥ることが多いと、統計的に出ている。実際サルカス戦や、グロウム帝国戦でもそうだった。

 これはやはり敵が基本『半知生体であり、猛獣のような性格も持つ』という感じで、それ自身が肉弾兵器として突貫することを目的として作られているところもあると考えられるわけで、会敵する度に次々と新種が現れるヂラールにおいて、此度の知事型のような、圧倒的な耐久力を持つ存在の登場も十分考えられるわけで、そういったところの想定もあっての話であったりするわけである。


 多川の場合は先の通り、純粋な機動戦闘の強化訓練。

 特危の他のメンバーも、各々色々想定して訓練をこなしている。


 例えば、多川の愛妻、シエ将補の場合は、逆に巡航戦闘が苦手なわけであるからして、某、中東の王国で傭兵稼業をやらされてる男の物語をモチーフにした、戦闘機でのドッグファイト訓練をやらされていた。

 バディに垂井や尾崎が付いている。乗機はこれまた古い戦闘機で、『チャンスボートF-8クルセイダー』

 向かってくる敵機はソビエト連邦の誇る戦闘機『ミコヤン・グレビッチMig-21フィッシュベッド』

 シエさんもチキュウ製フィブニー式戦闘機の操縦方法は一通りマスターしている。だがやっぱり酸素マスク付けて、Gのかかる音速の世界は、垂井や尾崎に比べてまだまだである。だが、そこは無敵のシエサン。その操縦技術も訓練するごとに磨きがかかっていき……


『シエ将補、今回の訓練では、敵のミグのどれかに小川が乗っています。その小川を見極めて落とせば勝ちということで』

『了解シタ、タルイ。ダケド、発達過程文明デ戦争スルノモ、大概大変ナ話ダナァ』

『はは、まあヴァズラーみたいな兵器と違って、こういう戦闘機みたいな兵器は体力勝負ですからね。メゲましたか? 将補』

『ナニ、心配ハイラン。丁度興モ乗ッテキタトコロダ』


 酸素マスク付けて籠もった会話。まあここは普通ならタックネームで呼び合って、フォネティックコード付けるところだが、そこまで細かい事はいいっこなし。


『タリホー、反政府軍のミグを確認した』


 尾崎が眼下のミグを目視で確認。


『コピー、デハ、モウ一戦付キアッテモラウゾ。ダーリンモ機動戦闘訓練頑張ッテルッテ話ダカラナ』


    *    *


 ということで、またまた別のゼルシミュレータ。

 今度のシチュエーションは……


『ついに再会したな、宿命の環が閉じる(棒)コーパー』


 なんと、あの惑星戦争の映画で登場する人気の悪役、暗黒卿閣下であった……でもなんとなく背が低くて、かの独特のボイスチェンジャーみたいな声も少々トーンが高い。でもって台詞を話す言葉もなんとなく素人。それに登場する時の足さばきも素人俳優のものではなく……

 で、卿の対峙する方。西洋の下っ端修道士のような格好。だがそのシルエット的に、どことなくスタイリッシュで、背が高い。

 でもって、頭にかぶるフードをハラリと取ると……なんと、ネメア・ハモル戦闘合議体のお姉さまであった!


『あ~、ネメア、ちゃんと次の台詞を言わなきゃあ、コーパー』


 そのボイスチェンジャーな声、一体どなた様なのかという話だが、


『メル、これから、この想定された架空の戦場で、我々とお前が訓練するのに、何故にこの渡された台詞を話す必要があるのか、我々は理解できない。説明せよ』


 なんと、卿の役をやってたのは、メルフェリア団長で殿下様だった! って、これでなんとなくミニマムな卿の姿が納得できた。かの作品では、卿より、本物の卿の称号を持つ偉大な英国俳優の方が背が低いのだが、こちらの訓練では逆転している。

 で、今のメルフェリアが、なんで暗黒卿の役をやってるかというと……なんと、ハイラ王国で、この偉大なる作品、4から6話が上演されたという話。


 実は最近ハイラでは、地球の映画文化が大流行だそうな。

 ティ連文化が浸透しつつあるハイラ王国に、なぜ地球の映画かという話になるのだが、まあいってみればハイラ人の科学文明に対する理解度の問題である。

 実はハイラ人に娯楽施設として、今のOGH施設のようなものの簡易版を作ってやらせたところ、人気が全然出なかったという話で、それ以前にメチャクチャビビられて、引かれたらしい。

 まあ考えてみれば当たり前の話で、ハイラ人にのっけからゼルシミュレーター施設を娯楽で提供するなんてのは、それこそ神代の魔法レベルの話である。そりゃ引かれて当然だ。

 そういうこともあって日本の経済産業省がハイラ人に対する娯楽文化として、まずは『映画』はどうかとティ連側に提唱して、ネズミの会社にも協力してもらって、日本でも大ヒットとなった、かの惑星戦争の映画を上映したところ、ハイラでも押すな押すなの大ヒットとなったのだった。

 街の路地では、子供達が赤色や青色に塗った棒きれでチャンバラやったりと、そんな情景がそこいらで見られるようになった。

 それを皮切りに今度はアニメ映画を上映したところ、絵が動くという技術にこれまた大ヒットとなって、ハイラ王国の娯楽文化に革命を起こしているのが現状であったりする。

 で……そんな映画に感化されたのがメルちゃんであり、彼女は、例の暗黒卿の大ファンという話。

 自分の装備する『黒漆甲機』の元ネタが、暗黒卿の容姿の元ネタと聞いてこれまたびっくり。

 で、今回の柏木長官の訓練指令に、ヤル研が作ったこの作品のゼルシミュレーションを選んだという次第。

 現在、このOGH施設と、ハイラ王国の施設はゼル通信で繋がっており、こういう次元空間を超えた遠距離バトルもできるといった次第なのが、ティ連科学のすごいところ。


『んじゃ、いくからねネメア、コーパー』


 ビシュンと赤い光の剣を伸ばし、素人俳優ではない、歴戦の戦士の構えを見せるメルフェリア卿。


『了解。メルとこのように訓練できることは我々としても高く評価するところである。互いの善戦を期待する』


 ネメアは青く輝く刀身を伸ばし、片手で構える。


『ねーねー、おぺれーたーさん! あの不思議な力の設定はあるの? コーパー』

『はい、一応いれてますけど』

『りょーかい、コーパー……んじゃ、始めるよっ!』


 メルが得意のハイラ剣術で飛び上がり、上空からネメアめがけて斬りかかる! 流石はプロのアクションである。

 ネメアはすかさずその斬撃をセイバー握る片腕一本で受け止め躱し、剣術よりも、蹴りの一撃を食らわせてくる。

 こんなネメアの蹴りをまともに喰らえば、先の知事型アンドロイド並みのパワーで吹っ飛ばされるのは必至なので、そこはこのシミュレーションの設定を存分に使わせてもらうメル。


『!? こ、これは……』

『へへ~、これが暗黒面の……』


 不思議な力設定を発動し、ネメアの蹴りを抑え込むメル。ほとんど反則である。

 だがネメアは臆することなく、『フム』という感じで、何と、自身のホロシステムを使って、分身をかまし、メルに襲いかかる。

 

『うわ、そんなのアリ!? コーパー』


 これはチートルールではなく、ネメアの地の能力。

 いやはや、善戦するメルフェリア卿。かの映画と違って、そこらじゅう飛び跳ね、空中を舞う凄まじいバトルが展開されたり。


『これが本物のネメアだぁ! コーパー』

『くっ、なぜ我々を見極めることが出来たのだ?』

『フォー……じゃなかった、気だよ、気!』

『むぅ……』


 メルの意外な強さに驚くネメア。

 二人共、なかなかに有意義な訓練ができそうな感じである。頑張っていただきたい。


    *    *


 その他、他の特危やヤルバーン州軍の主要人員も同様にこのような訓練プログラムを各ゼルシミュレーターでこなしているわけで……

 大見や樫本ら特危自衛隊陸上科の面々も、此度のヂラール戦以上のフィクション的なモチーフは何かないかという事で色々漁ってみたところ、やはり、かの完全生命体と宇宙海兵の戦いが適当だろうと、『今度は戦争だ!』といった感じで、かの惑星での宇宙海兵部隊を完全に現在の特危自衛隊に置き換えて、あの惑星を奪還する作戦をシミュレーションしていたりする。

 で、やはりこの戦いで苦労するのは、かの生物の強酸性の体液であり、パーソナルシールドのようなものがあればいいのだが、これがないとまずあの戦いには勝てないだろうと推察されたり。

 だけど、なんか例の怪異星生物にとっつかまったら、卵を植え付けられたり、バカな隊員が地球人レベルで常識な『映画ネタでやめといたほうがいい行為』第一位に認定されるぐらいの『卵を覗き込む』ということやって、顔に幼生へばりつかせて喚いてたり……

 防衛省内でもエリートとして知られる特危自衛隊員だが、大見一佐は……


(こいつらって、実は斜め上なところでアホなんじゃなかろうか)


 と、そんな風にも思ってもみたり……


 で、リアッサ一佐率いるコマンドトルーパー部隊は、やっぱりコレでしょという感じで、かの『むせる』作品の闘技場設定で訓練をば……

 やはり、なかなか死なない性質を持った男は、チート設定以外の何物でもないだろうと。

 コバヤシマル訓練並に不可能設定だとかナントカ言ってリアッサ姐はボヤいていました。


    *    *


 さて、最後に……

 此度最大級のゼルシミュレート演算をもって臨む訓練は、先に登場したUSSTCのコバヤシマル設定訓練以上の訓練シミュレーションになるかもしれない極難易度設定訓練プログラム。

 しかも今後のティ連航宙艦隊にとって、きわめて重要な訓練になるであろうプログラムであった。

 それは……


 もし、CGでタイトルでも出すなら、【怪獣王☓人型攻撃艦サーミッサ】ってなところでバーンとご登場願いたいところ。


 そう、パウル艦長率いる人型攻撃艦、防衛省自衛隊艦種呼称、特人型護衛艦『フリンゼ・サーミッサ』対、某怪獣王であった!


 って、この怪獣王、数ある作品で、この怪獣王のライバルとされる『メカ怪獣王』が、心臓を破壊するアンカー使ったり、絶対零度のエネルギー兵器使ったりとなかなかにいいところまで追い詰めるのだが、肝心なところで大人の事情の因果が入り、実質負けちゃうという難儀な設定。

 挙げ句にこの物語の創造主の大先輩が創った作品では、体中から熱線出して都市一つ壊滅させるぐらいのパワーなんぞを身に付けてたり……

 アニメになって、もうどうしようもない存在になって、ナニすんのみたいな……えーかげんにせーよと。


 だがパウル艦長、そんな設定の史上最強のチート生物を如何に撃滅するか。そしてこの生物をトーラルはどう演算してやらかすか。

 腕を組むサーミッサ級。地上から数十メートルをホバリングのような状態で、東京都市部上空を浮かんでいる。

 パウル艦長も鼻息荒く、


『さぁ、かかってきなさぁあい!』


 ってな感じで笹穂耳ピコピコさせて操艦相成る次第。


 というわけで、此度の設定、サーミッサ級は、全高一五〇メートル。なので怪獣王の設定も、一〇〇メートル級の設定。

 それでもサーミッサの方がまだまだ大きいが、こやつは大きさが問題ではないわけであるからして……


『提督、特殊生物から熱源反応!』

『よっし、あの攻撃ね、前方事象可変シールド展開! 一度受けてみるわ!』


 対象生物の口部から吐き出される高温熱線。背中のヒレが稲光り、豪快にサーミッサめがけて発射される。

 サーミッサは腕くんだ状態で、敵の熱線をモロに受ける。

 半円状のエネルギー波動が艦体前方に展開。だが、その熱線のエネルギー量は半端ないようで、


『艦外部温度、一二〇〇パレルに上昇! ものすごい熱量ですね!』

『ほへ? あのカイジューって、こんな熱線設定なわけ? トーラルもナニ考えてるのかしら?』

『提督、こりゃこのまま受け続けるのも困りものですよ』

『わかったわ、アーム部主砲展開。調子に乗らすな!』

『了解。アーム部斥力砲最大出力で展開。発射用意……発射!』


 サーミッサのアーム部主砲が唸りを上げる。

 三連装斥力・粒子兼用砲の斥力砲モードで、実体弾を音速の何十倍もの速度で打ち出し、特殊生物の体にメリ込ませる。


『全弾命中、命中!』

『まあこの距離からじゃ、目をつむってても当たるわ』

『対象、健在。ダメージを与えてはいますが、致命傷になってはいません』

『なるほど、トーラルもそう演算しますか。斥力砲の直撃でもそういうことなわけね』


 この怪獣王との対決シチュエーションも、かのヂラール戦を考えれば、あながち荒唐無稽な話とは言えない。なんせあのメドゥーサのような四〇メートル級のリバイタ型に、かのモンスターフラワーである。

 実際の話、あんな特撮まがいの戦闘が連発して、挙げ句にコロニークラスの要塞型の登場となれば、もう究極だ。さしものあの怪獣王も、こいつには勝てるわけ無いだろう。

 そうなると今、パウルが戦っているこの『想定』もあながち眉唾ではないわけであるからして……


 っと、そんな事考えてると、サーミッサ級の背後に三本の稲光のごとくエネルギー攻撃が命中する!


『うわぁぁっ! 一体ナニ!?』

『これは……トーラルが敵対対象を一体追加したようです!』

『はぁ!? トーラルはナニ考えてんのよ。でぇ、追加されたのってナニよ』

『はい、現在戦闘中の特殊生物をアルケと呼称します。そして特殊生物ベルクとなるのは……』


 なんと、三本首の黄金怪獣であった! 

 

『あら! これって、お互い敵対同士のヤツじゃない。チキューの言葉で言う「ばとるろわいやる」っての?』

『みたいですね、提督』

『フフフフ、面白いじゃぁないの。トーラルもなめてくれたものね。よぅし、相手になってあげるわ……サーミッサ、艦体質量を地上戦モードに設定。着地用意! あの“生物アルケ”には肉弾戦を挑んでやるわ。金色はアルケを狙ってくるから、その攻撃を利用して。アルケがこちらか向こうか、どちらを優先するかによって、狙う敵を変えるから、よく観察してね!』

『了解! 面白くなってきましたね提督』

『そゆこと。んじゃいくわよ!』


 スドン! と轟音轟かせて着地するサーミッサ級。腕組を外し、ガキョンと構えるマニピュレータ部掌部指先から発生させるは、粒子エネルギートーチ。所謂、粒子ビームサーベルだ。

 重量感凄まじく怪獣王の間合いへ瞬足で踏み込み、サーベルの一撃を加えると、雄叫びを上げ怒った怪獣王は、テイルアタックの一撃を加えてくる。

 即座にアーム部主砲の上部をシールド代わりにそいつを受け止めたスキを狙って、黄金怪獣が独特の音色を持つ発射音でエネルギー攻撃を放つ!


 多分、この状況をカメラに撮っていれば、年末満員御礼の超大作映画を撮れること間違いなしである。

 そんな状況の壮絶訓練。パウル艦長は勝てるのか!? あとはこの記録を見る人々の想像にお任せしたい……


 ということで、パウル艦長にも頑張ってもらいたいものである……


    *    *

 

 で、諸氏みなさん、来たるべき日に備えてそんな訓練期間を消化する中、このOGHのゼルシミュレーター施設では、他の案件もこの施設の機能をもって、連合日本とヤルバーン州共同案件としておこなわれていたりする。

 それはまだ、柏木や、安保調査委員会でもごく一部の人間しか知らない極秘の計画。

 まあここまで言えばおわかりの通り、所謂兵器開発の計画。言ってみれば新造艦の開発計画であるが、この施設では設計と、完成予想のシミュレーションを適時行っているのであった。

 御存知の通り、ここでは実物大のシミュレーションモックアップが作れるわけなので、ここで完全な設計検証が済めば、あとはヤルバーン州の君島重工が所有するドックで、実物を建艦できるという次第。

 もし同型艦を量産したければ、ここで造ってもいいが、今はゼスタールが(勝手に)建設した、とてつもなく巨大な月面プラントに外部委託すれば、ハイクァーンドックで作るよりも一気に早い期間で数を揃えられる。


 と、そういう状況を想定しての、所謂新型艦設計建艦の計画を日ヤ共同で進めているのであった。

 これは日ヤに限らず、米国、EU(LNIF)、ロシアもそうであり、中国(CJSCA)もまだ具体的な状況ではないが、ゼスタールと折衝中である。

 このすべてが、ゼスタールの安全保障協力との引き換えと、対ヂラールという地球の安全保障のための技術習得が目的なのであって、本格的に地球世界も全世界規模でオーバーテクノロジーを共有する時代に入ったといっていいわけである。

 従って柏木の出したお達しである、あの一見ふざけたような訓練も、必ず身になると、そう考えての指令であり、そこには政治面でナヨ閣下やフェルさん大臣にニーラ教授、ヴェルデオ達も動いてくれているというところであった。


 さて、そんな感じでこの日ヤ共同で建艦されている新造宇宙艦艇。なんと! どうやらフリンゼ・サーミッサ級に、ヤシャ級と続く、第三の人型攻撃艦……いや、公式では航宙機動駆逐艦に分類される攻撃艦とは違い、その全高、なんと三〇〇メートル以上はあろうか。

 主砲も相当大型のものを積んでいる。

 建艦中のモックデータには、ヤル研のアフ……優秀な高等技術者に研究者の殆どが集い……ってか、多分こいつらが主体となって創ったのが丸わかりのその人型艦艇のシルエット……

 海上自衛隊では、船の名前をひらがなで艦尾に明記するルールがあるが、特危の航宙艦艇もそれにならって、航宙艦すべてにひらがなで名称が表記されている。

 今では日本のアイドル艦ともなっている『宇宙空母カグヤ』も、艦尾に『かぐや』と書かれているし、『ふそう』や、『やましろ』も同様。

 サーミッサ級の二番艦である『さくら型』も特危に配属が移管されて、胸部に『さくら』と表記されている。

 そんなところで同様に、建艦中のこの人型艦艇の胸部に目を移すと、東○特撮の伊福部さんなBGMが似合いそうな、そんなイメージでやはり艦名がすでに表記されていた……


 その名は……






【やまと】






……おしまい。





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― 新着の感想 ―
[良い点] 遅れましたが、明けましておめでとうございます。是非とも、魔界転生や機神兵団もやって欲しいと思ってしまった。後是非ともマップスも…。 [気になる点] 個人的には某国教騎士団の零号解放とかやっ…
[良い点] 新年明けましておめでとうございます。オリンピック年度の2020年。本年もよろしくお願いします。 [一言] 遂に来るか【やまと】登場と活躍が超楽しみです。
[一言] 久しぶりにこの作品を読んでやっぱこの作品最高だ!!と思いました。 全話見返すか真剣に書籍買おうか迷っております。
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