その3:帰ってきた! フェルさんカレー疑獄事件の巻
さて、ちょっとした柗本保羽の何かのアイディアやら、思いつきやら、時事ネタやらなどなど、銀河連合日本のお話をベースにしたショートストーリー集です。
作者・柗本保羽の不定期思いつきメモみたいな感覚でお読みいただければ幸いです。
文章としては大体5,000字前後ですね。雑談感覚でお楽しみ下さい。
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かの「フェルさんカレー疑獄事件」の、その裏に隠された謎が明かされる!!
って、んな大層なことではないのですが、TNE等々、その後の展開の設定も含めたお話でございます(笑
お楽しみ下さい。
二〇一云年。ある日の日本。
永田町国会議事堂の予算委員会……なのだが、まあ毎度のこって、ティ連関係の議決案件はティ連連合議員がティ連本部に現状の日本の意思として色々な案件を連合全体の問題として提起するので流石にこればかりは政局でどうのこうのなんて事はできないワケであるので、様々な案件もすんなり進むのではあるが……ってか、進まないとティ連各国から日本の議会がアホ扱いされるだけなので、体裁だけでも真面目にやっとかないと、と考える野党の議員もいるワケで……
……誰かとは言わないけど、『フェルさんが決める「ダメダコリャ議員」トップ3』という、内緒のメモ帳もあって、『コんな議員さんがいますデスよ~』とマリヘイル議長に逐次チクってたりするわけで、マリヘイルのおばさんも、『エエエエエエエ!』ナニコレみたいなティ連人から見たら信じられない議員もいたりする。発達過程文明は奥が深いと、そんな事も思ってたりって……奥が深いと思わすなよと……
え? それ誰かって? あ、いやフェルさんが言うには、なんかやたら憲法クイズばかり出して、外国に亡命するとか言って、挙句の果てに自衛官から『ティ連の敵』とまで名指しで怒鳴られた『コの人国会にナにしに来てるんだろ?』というのがいるらしいのだが、まあそんな人だったり。
その他なんかコンクリート会社の労働組合と仲が良い女性議員だったりとか、そんなのとか……
っと、それはそれで、とりあえず連合がらみの事案は、まあ体裁だけでもちゃんとできるだけマシというところもあって、そこは今の所問題なさげではあるのだが……かなわんのが、あいも変わらずの日本国の国内問題。野党は恙無く次の政権をとばかりに、何か与党を攻撃出来る材料がないかと週刊誌に朝晴新聞を読んで毎日お勉強して……ってその光景も異常なのだが、実際は野党議員とマスコミの、所謂ティ連でいうところの『マスコミ禁止法』ブッチギリ行為を地でいってたりもするもんだからコレ困ったもんだったりするわけで……
* *
「……◯月×日の朝晴新聞に出ていた、ヤルバーン自治区の飲食店区画割り当ての件ですが、報道機関に掲載された記事、これ重大な事が書いてあります……内閣府が、この飲食会社、ポポイチカレーにですね、優先的にヤルバーン区の店舗区画を取得できるよう、要請していたと書いてありますが、この区画の取得方法はご存知の通り、入札で行われるはずなのですけど、この記事に掲載されている文書が実在するならこれ、立派な官製談合ですよ! で、これね? やっぱり内閣府でこういった記事がでる根拠としては、当然……」
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今、国会の予算委員会で行われているのは、またあの『外食会社土地取得あっせん疑惑事件』がらみの件なのであった! ってか、世間巷ではもうええやんみたいな。そんな感じなのだが、なんか朝晴がスクープとかで、内閣府があのカレー屋の土地を優先的に取得できるようにしたってくれと要請してた文書が見つかりますたとか、そんな報道してるもんだから、またややこしい話になってたりするわけでございまして……
で、ポポイチさんところの話なもんだから、絶対フェルが絡んでるだろとか、そんな話。
どういうわけか、必死に政府を追及してるのは、日本共産連盟の若手議員。目がイッテるというネットで話題の議員である。
「(なあなあフェル……もしかしたらあの件じゃないのか? マリへイル議長が連合議長特権で、あの土地をポポイチさんに割り当てろって来てた……)」
『(多分それの事デスね~……でも、なんで朝晴サンがあの親書の事を知ってるデスかね~……)』
と、閣僚席で耳打ち話をする柏木とフェルさん大臣。
そう、実はこの朝晴の記事の話、実はホラ話というわけでもないのである。
いつもフェイクニュース……というわけではないが、ティ連がマスコミ禁止法を制定した根本的理由行為を空気を吸うがごとく普通にやってのける技を持つ朝晴新聞の、まあとりあえずのスクープ記事という事なのではあるが……
実のところこの話には、そこに至るきちんとした裏話があって、連合憲章に記載されている『ティエルクマスカ連合議長の特権行為』というのがあって、連合議長は連合全体で有益な事由に関しては、連合の財産を連合資産管理委員会にかけ、一定期間内で特に異議がなければ、自治体の決定決済の案件でも取り消して議長特権で決める事ができる規定があるのである。
で、実は連合内でポポイチカレーが大変に人気であって、更にポポイチカレーがレシピの一部を連合のハイクァーン食料造成データに製法を寄贈したのである。で、その事が連合に大変評価され、代わりにかの自治区の割当区画を『お礼』という感じでポポイチさんに割り当ててあげるという、そういう段取りで事を進めるという感じで、連合本部を通じてイゼイラ国内で話が進んでいた案件なのであったのだが……
それがどういうわけか、『もうポポイチが取得するような内容が、官製談合で決まっていた』という事になってしまっていたのであったりする。で、世にポポイチカレーが、企業の命ともいえるレシピの寄贈を連合へ行ったことなど一切知らされていない。
ポポイチカレーは自社のホームページでサラリと公表して、ネット等では大いに話題になったのではあるが、所謂大手マスコミでは一切この事を報道で流さなかった。
ここで所謂『齟齬』が発生する。
ティ連の場合、カレーは地球人が思っているよりも相当に重要な食文化となってしまっているのである。なぜなら、この時より何年かの後に制定される『国際連合相互主権連携理事会・UNMSCC』にインドが常任理事国としてヤルバーン州(フェルサン)から推薦が出るほどの案件な訳であるからして、そりゃ重要なんですよと、そういう感じなのである。
でも、日本では『たかがカレー』である。
ティ連のハイクァーン造成データにレシピを寄贈したと言っても、『それがどうした』という感じである。で、ポポイチさんも日本ではそこらへんのカレーチェーン店である。以上終わり、みたいな。
……とすると、あるファクターを報道が世に知らせなければ、当然齟齬が発生する。
ティ連の視点で見れば……
『おいしいカレーは、発達過程文明の文化の極み。所謂ヤルマルティアの作った、当の発祥国、インディア国の国民ですら、自国のカレーを差し置いて「うまい!」と言わしめる「聖食」ともいえるもの』
という認識。だが、日本の視点では……
『おかわりが100グラム単位でできて、辛さが選べるカレー屋さん。オススメは海の幸カレー』
程度の認識でしかない。なので、もし朝晴が、彼らの入手したという証拠に基づいて報道しているとほざくのであれば、この違いを認識して、正確に報道しないと一方的に日本視点の報道だけでコレを世に知らしめてしまえば受け止める方は当然……官製談合の如き状況に見えてしまうわけである。
これを知らずにやっているというのであれば、『朝晴は相当な無能』ということになるが、まー、そんなワケはなく、当然知っててやってるに決まっているわけであるからして、
「えー、まあ当然そうなりますと、フェイクニュースとまでは言いませんが……あのですね、明確にイゼイラ共和国やその他の加盟国殆どが法で制定している、所謂『マスコミ禁止法』に抵触する報道を元に、共産連盟さんはご質問なさっているわけでありまして、この件につきましては私の方からも連合本部に問い合わせて対応したく思いますので、少々のお時間をいただければと……」
柏木ティ連連合議員様が、日共連の質問にそう答えると、民生党やその他の野党も一緒くたになってヤジをを飛ばしまくる。
「なんだそれは! 脅迫じゃないか!」
とか、そんなトコロ。
フェルさんはおすまし顔ながらも、心の中では顔芸で、
(ブー、ベ~、ビロビロビロブ~~~)
とかやってるのだが、こんなのをそりゃリアルで顔芸しようものならエライことになるので、心の中でやっている……議員会館ではテレビみながらリアルでやってたり……ゲホゲホゲホ。
なぜにこの連中も「脅迫」なんて言葉が出てくるのかと……つまるところ、ティ連の『マスコミ禁止法』がどういうものか理解してやってるというワケ。つまりそういった切り取り報道やってるのを、まあ、理解して、こういうことやってるという話でもある。
物事というものは、その表面でスッタモンダやってる事、そしてその解決が『正しいことであり正義』であるか? といえば、決してそういうわけではない。実はそこに至るまでの経緯というものが、色々なところで根が一つになって、くっついていて、別のことを解決するために、全く関係のないのように見える別の事由が、実は事の本丸であったり……とか、そういうものだったりするのである……ある意味ガーグ的であるともいえないこともないのがつらいところ。
では、朝晴や野党の、所謂『本丸』とは一体どこかという事だが……
「あの連合憲章の、加盟国法除外規定だな。マスコミ禁止法規制除外の延長を狙ってやがるなこりゃ、ズズズ……」
お昼の休憩時間。国会食堂でラーメンすする柏木連合議員。
『ナルホドでス。結局本丸はそこデスか。モグモグハフハフ』
フェルさん、カツカレーなんぞをおいしく喫飯中。
「うん、今年度末で……いや、正確にはイゼイラとの時差もあるからもう少し先だけど、その時に俺が連合憲章の特別免除規定の継続か終了かを通告しなきゃいけないからな」
『確かソウでしたね。あの規定って、基本加盟国の法制が連合憲章と整合性取れるようにする為の予備期間の意味合いも持っていますから、あまり長々と継続申請するのも他の加盟国に対して印象悪くするだけですからネ』
そう、ティ連連合憲章の連合法特別免除規定。要するに連合憲章と整合性が取れない加盟国の法において、社会的に重要な法制を、連合憲章と整合性が取れる加盟国国内法に制定し直すまでの間、連合憲章の適用を免除される規定である。
日本の場合、この免除規定の中で現在ティ連憲章と根本的に整合性がとれない法制として、数ある中の一つにこのマスコミ関係の法律がある。
日本政府は現在の方針として、放送法諸々の、大きく『報道』というものに括りをかけて日本国内初の『報道法』として制定する方向で進行している。
日本では『報道の自由』のもとに、事実上報道に関する、規制行為を含む大きな法律というものは存在しない。
まあ確かに『放送法』『著作権法』『少年法』『独禁法』といった報道行為にも関わる個別の法は存在するが、マスコミ関連で問題が発生した場合、『報道行為そのもの』というものに関する法がないため、ティ連の所謂『マスコミ禁止法』と整合性がとれないのである。
二藤部政権は、そこで現行の営利企業としてのマスコミも現状の状態で存続可能なように、かつ、連合のマスコミ禁止法との整合性をとれるよう、以下の方針を制定する旨、連合に通達する予定であった。
1:営利を目的とした『記者』を、正確な専門知識を求め、報道の中立性を担保できるように、第三者機関運営による国家資格制にすること。つまり、報道記者資格免許一種・二種を制定し、一種免許を所持する記者は、官邸などの重要な国家機関や公共施設での取材を許可されるなどの、差別化を図る。この資格を有するマスコミ関係者は、営利目的での報道を行うことができる。と同時に、資格付与の規定に違反したものは資格の剥奪。及び刑事訴追等もありえる。
2:営利を目的としない取材活動は別途申告することで、ボランティアとして政府重要施設や地方自治体の取材活動が可能。
3:インターネットや、ティ連の量子通信網の今後の普及も鑑み、放送施設の利用も基本自由化する。即ち、有限資源である放送ネットワークは、オークション制にする。
といったことを連合に申請する方向性になっているのだが、まあ当然『報道の自由』なるものを標榜するマスコミ関係業界団体は、この方向性に現状強く反対している。
要は利権に、イデオロギーである。この二つが入り混じっているから始末が悪い。でも、連合はこの三つの法制化で、ティ連内の各国家に営利マスコミさんも『自由に取材活動していいよ』と仰ってくれているワケなので、いいじゃんと思うのだが、特に1:の規定の場合、この手の業界には、所謂『自称・ジャーナリスト』の類もたくさんいるわけであるからして、この手のアホ記者連中が全員失業してしまう可能性があるわけである。ま、コレ以上の話は云々というところで、そんな話という次第。
……と、いうことで……
ある時、ネットのつぶやきで、日本立志会の例の議員が、この二藤部政権の方針を『だがちょっとまってほしい』と批判した某新聞社の事を『死ね』と揶揄したもんだから、これまた懲罰動議だとかなんとかで、ネットにテレビは大荒れに荒れまくり。なんか役職解任させられたりとか……
『フゥ、ご馳走サマです』
「うん、じゃあフェル、今からあの先生のところに?」
『ハイです。慰めに行ってくるデスよ』
「いやフェル、慰めにじゃなくて、応援しにだろ? はは」
『ウフフ、そこは色々あるデス。んじゃ、行ってきまスね』
「はい、行ってらっしゃい」
フェルさん、今からその例の議員さんと会談であったりする。その姿を脳内再生するのも面白い。
後に、この騒動は、柏木の元カノであった『竹村玲奈』即ち『週刊時事』の桐山せつなのスクープ記事によって収束を迎える。
野党議員と、朝晴新聞と、某平行世界でも有名になっている労働組合との金銭による癒着が発覚してしまったからである……勿論この情報を玲奈にリークしたのは、言わずもがな例の議員。その玲奈の記事に信憑性をもたせたのも、フェルとヤルバーンのシステムが……というヴェルデオの協力もあっての事とか、そんなことは内緒の話……
ま、世の中、お天道様は見ていらっしゃるのである。
その後、この金銭癒着事件は世に知れ渡るか……と思えば、話題になったのはネット空間だけの話。
現在の日本には、報道しない自由もあるからという話。
だが、ティ連全体にはしっかりと伝わってしまっており、二藤部政権の『報道法』も恐らく進んでいくだろう。そこでその報道法の内容で、また与野党スッタモンダとやるのである。ま、そういうものであろう。
でも、まだまだ燻りそうなお話では在る。フェルさんもココまで来たらもう楽しんでいたり……
連合加盟後の日本ではありますが、まだまだそんな世の中でもあるのが、発達過程文明故だったりなかったり……
ということで、『帰ってきた! フェルさんカレー疑獄事件の巻』
おしまい。