その1:フェルさんカレー疑獄事件の巻
さて、ちょっとした柗本保羽の何かのアイディアやら、思いつきやら、時事ネタやらなどなど、銀河連合日本のお話をベースにしたショートストーリー集です。
作者・柗本保羽の不定期思いつきメモみたいな感覚でお読みいただければ幸いです。
文章としては大体5,000字前後ですね。雑談感覚でお楽しみ下さい。
西暦二〇一云年のとある国会の風景。
世は二藤部政権率いる日本政府と、政権与党の自由保守党主導による政治体制が、かの日本国銀河連合加盟解散総選挙以降、安定して政権運営されていた。
とはいえ、この時の政権は連立与党であるからして、その他連立を組む『公正党』なんかもオマケでついてくると、そんなところ。
ヤルバーン飛来事件より以前。米百俵で一世を風靡した劇場型総理大臣の登場があってので、その総理大臣の政権が終わって祭りの後、第一次二藤部政権の時、二藤部も鳴かず飛ばすの時期もあり、その後に続く三島政権も、残念なことに当時末期状態の自保党にあって、野党の重箱の隅をつつくような、まあ見てて真っ当な政治をやってるとはいいがたい混乱の中、自保党は下野して、民生党の唱えた『二大政党制』だかなんだかで、日本も一時期は所謂リベラル思想に政治を任せてみようと、大いなる誤った選択……いや、その後で思い知るには逆に良い政権選択だったかもしれない事もやらかしたりして、国民全体が病んでいた時期もあったりしたわけで……民生党の恐るべき『頭の中身だけ宇宙人』やら『原発吹き飛ばした壮絶なマヌケ』に、『ドジョウかアナゴかぐらいの程度』な、もう妙な首相が続いたあとの、やっとこさ『普通』の政治を取り返した第二次二藤部政権。やれやれと思っていた矢先の『ヤルバーン飛来事件』と、そんなこんなでまあなんといいますか、スッタモンダやっての現在があるわけで、もうそれは流石にみんな想像だにしなかった日本国の銀河連合加盟。そこで登場した、もう日本の憲政史上みんなで吹っ飛んだ『衆議院議員フェルさん』の登場。
……というわけでそんな感じでそんな経緯で、『一巻から五巻、真にもって宜しくお願い申し上げます♡』という創造主のご意見もありーのという、そんなところで……
時は二〇一云年の現代。
そんなセンセーショナルな政治をやっていたこの日本でも、ヤルバーン関係や、銀河連合加盟関係だけが政治の全てではないわけで、国会ではその他、所謂『諸々』という問題もスッタモンダと討議されているわけであったりします。
で、そこはやっぱり『与党』と『野党』
とりあえず連合日本の関係諸問題では、銀河連合加盟諸国から選出される連合議員が裁定する結果の都合上、与党野党も根回しでなんとか意志を一つにしなけりゃならんところもあるわけで、それはそれで今のところ問題ないのであったりするワケだが、かなわないのはそれ以外のところ。
基本『野党』は政権を『与党』から奪回するためにあの手この手を使って与党を攻めて、国民の支持を得ようと頑張るのが常道なわけであるのだが……
現在、圧倒的多数を占める与党『自由保守党』に相対する野党というのが、これ『民生党』。
その名前からわかるとおり、基本自保党は『保守』と呼ばれるイデオロギー集団である。世間一般にいう『右派』『右翼』と呼ばれるイデオロギー集団も、まあ大体この『保守系』のカテゴリーに当てはまると見て良い。
で、対する『革新』と呼ばれるのが『日本共産連盟』に見られる極端な『左派』『左翼』と呼ばれるイデオロギー集団。で、なぜかこの日本国公安警察に破防法調査対象扱いされてマークされている、一種の公式のテロ組織である『日本共産連盟』が、『リベラル』などという正反対の呼称で呼ばれたりして、なんとなく『左巻き』=『平和主義者』という決定的に誤った認識が、世に知られている。
……ちなみに、この『右翼』『左翼』という言葉、語源は何かというと、かいつまんで言えば、遡ることフランス革命後のフランス議会で、マリーアントワネット等々の貴族連中をどう処遇しようかという話になった時に、
「まあまあ、もう革命は終わったし、貴族も我が国の歴史の一部で、権威にもなるから、国家で貴族を管理して生かしてやろう。殺すまでのことはないだろう」
という提案をしたのが、所謂『保守』で、議会の中央から『右側』に座っていたので『右翼』と称されていたわけで、それとは逆に、
「貴族共の圧政が原因で、我々は革命を起こしたんじゃないか! 貴族を生かしておく道理などない! 皆殺しだ!」
と提案して、貴族を片っ端からギロチンにかけたのが『革新』で、議会の中央向かって『左側』に座っていたので『左翼』
と、こんだけの話なのである。別に右翼が権威的で凶暴なんて根拠はなんにもないのだ。
ちなみに、こういう経緯もあって、よく誤解されているのが、フランスという国は所謂純粋な資本主義国家ではない。資本主義風味の『社会主義国家』と認識したほうが正しい。
例えば資本家の間でよく言われていることで、
『フランスで起業するやつはアホ』
という格言がある。
それぐらい社会主義国並にフランスでは労働者の権利が保証優遇され、とてもではないが個人が普通に思い立って決起し、起業できる環境の国家ではないのである。
なので、フランスの場合、所謂大手企業は、その株式の幾分かを国家が所有している企業が多く、このフランス革命で革新系が実権を握った影響もあっての歴史的経緯で、西側諸国のフランスというイメージがある国ではあるが、そんな変わった政治体制を持った国であるという事実もこれ豆知識というヤツである。
という事もあって、むしろ本来『リベラル』と呼ばれるべきは上記の通り穏便にすませようとした『保守』の方であり、過激なのは『革新』のほうなのである。
それがなぜか『革新』の方が、平和主義者的イメージで見られるという、そんな風になったのが現代。これは日本に限らず、世界中でそんな感じであったりする。
まあ、アナーキズムとか色々経緯があっての話なので、そこは複雑なのだが……
で、日本共産連盟はまあいい。日共連は、これはこれで案外突く所付いてくる国会質問をしてきたりもする。
だが困ったのが民生党だ。
最近、かつてグラビアアイドルだった女性党員が、党首になったのはいいのだが、これが日本人か中国人かわからないオバハンで、そんなのがまがりなりにも日本国の政党党首をやってるわけなので大問題になったりしているわけで、そんな所謂『普通の恙無い日本的な政治』というものも、これ日本国が銀河連合に加盟後も、平和にやってたりするのであったりする……
『マサトサンマサトサン』
「ほいほい」
『アノ、民生党のオバチャンですけど、タイワン国の国籍を持ってるかもしれないという話ではなかったデスか?』
「日本はね、台湾、つまり『中華民国』を国家として認めていないんだよ。なので、日本政府の公式な主観では、あのオバチャンは『中国人』なんだよね」
『ア、そうか……』
とそんな話をしているのはフェルと柏木。この頃の柏木真人はティ連連合議員で、フェルさんはティ連統括担当大臣の頃だ……
で、今のフェルさん。ちょっとお悩み中……
『ハァ~……なぜこんな事になるデスかね~……』
「あんなの別にどうでもいじゃんかよ……民生と共連の連中も、くっだらないことに時間費やすヒマがあったら、他になにかすることあんだろ」
自宅のソファー、隣同士で座るフェルさんと柏木。フェルはちょっと甘えて、柏木の肩に頭をもたれかからせてたり。姫ちゃんはもうおねむの時間である。
さて、いつも明るいフェルさんが、なぜにこんなお悩み中かというと、昨今、マスコミが取り立てて騒いで、民生・共連・生活などなど野党が二藤部政権叩きに利用しているある問題があっての話。
それは……
【フェルフェリア大臣・外食会社土地取得あっせん疑惑事件】
であった! バーン! とか、そんなところ。
『ってか、なーーんデワタクシが、ポポイチさんところのカレーが「おいしい!」って話をしただけで、私の部下が私に「忖度」して、日本治外法権区の区画を優先的に取得する話がポポイチさんところへヤルバーン監査局からいくことになるですか!』
「そりゃフェル、ポポイチさんところの社長さんと親しいだろー。あれがあってのでは、まー……突っ込まれたりもするわな」
『それはカレー学会の同志として親しくてアタリマエですッ! そんな忖度云々の卑しい不正義な間柄ではないですよっ!』
「それはわかってるよぅ。ま、俺も何とかしてみるから、フェルはいつもどおり普通にやってればいいさ。別に悪いことしてるわけじゃないんだし」
そう、定期的にヤルバーン州が募集する外食産業用の営業区画入札へ、フェルの大好きなカレーチェーン店『ポポイチカレー』が入札に参加したところ、この会社が落札し、なぜか入札最低価格が流出したという怪文書が流れて、ヤルバーン監査局がフェルに忖度してポポイチが不正に落札した。つまり監査局がフェルと結託して落札工作したという事に、ななってしまっているのであった! フェルさん政治生命の危機である! ……
* *
『イヤ、でぇすぅかぁらぁ……私はポポイチさんのカレーがおいしいって学会で言っただけの話ですっ! それのなぁにぃが悪いのですかっ!』
「そのような……なんですか? そのカレー学会で、ヤルバーン州の監査局局長、オルカス局長がいる前で、そんな話をすれば、当然オルカス局長は、貴女に対して忖度するのわかってるじゃないですか! それを見越して、貴女か、ポポイチの社長はあの場所でそんな話をしたのではないですか? 我々民生党は、ヤルバーン監査局局長のオルカス・フィア・ハドゥーン局長の参考人招致を要求します。連合憲章315条に則っての処理を要請します」
ある日の国会某の予算委員会。予算決めなきゃなんない場所で、こんな話がされてたり。
たまたま入札で、合法的に区画を落札したポポイチカレーもいい迷惑である。
民生や共連のフェルさん追求は続くが……これなかなかうまい具合にいかない。
なぜなら、マスコミがあまり取り上げないからである。どうも、ネット民のフェルさんファンが徹底的に調査し、ヤルバーン調査局もヴェルデオの命で動員され、ヤルバーンシステムを使用して調査を行ったところ、どうやらその怪文書の出本はポポイチの労働組合からのようで、ポポイチ社長の区画取得要望書を不正に入手し、内容を改ざんしたものではないかという疑いが持たれていた。
実のところ、そのポポイチ労組はヤルバーンやティ連へのカレー調理技術輸出関連で意見が別れ、最近組合が分裂し、各々の『組織叩き』に互いが暗躍しているということで、フェルはどうもそのあおりを食らったという話もなきにしもあらずらしい……
「いや、ですから……なんですか? それって別に構わないじゃないですか」
と、『日本立志会の最終兵器』の異名を取る委員がフェルやポポイチカレーを擁護する。
「いやそれの何が悪いのですか? それだけポポイチさんところのカレー調理技術が素晴らしくて、ティエルクマスカや、イゼイラの方々が大きな関心を持っているって事じゃないですか。ホント民生はアホですかね、アホ。こんなくだらない話で連合日本のSIS対策の話とか、米国のエンタープライズ計画における、ティ連技術の貸与の話とか、もっと連合安保関係の大事な議論を……え? あ、アホはまずい? すみません議長。あの、聡明なる議長のお叱りは理解いたしております。ハイ、アホはダメ? なら、詐欺は? ……」
……とまあフェルさん日本の国会や委員会で、初めてそんな妙な戦略、戦術の洗礼を受けたお話。
恙無い日常。そんな委員会でフェルさん大臣はドヤ顔で呟く。
『それでもポポイチカレーサンがお外で食べるカレーで一番おいしいのデス! それは譲れません』
いや、論点違うだろと……
ということで、こんな程度の話が国会で議論になる……毎度のこって、平和な日々の日本であった。
その1:フェルさんカレー疑獄事件の巻、おしまい。
お粗末。