第8話 『男ならまずはドンペリタワー』
どうでもいいコーナー
ジュエルのモデルはあるゲームのあるキャラクターから来ています。
ちょっとそのゲームはあれなんで言えません。
は?エロげー?何言ってるんだね!んなわけないだろ(汗)!
汗?知らんわ(汗)!廊下にたってなさい(汗汗)!
少し取り乱しましたが以上どうでもいいコーナーをどろっとお送りしました(汗)。
前回までのあらすじ
バサラ王国にある大人の楽園ドランク街。酒とカジノに美女美男、あらゆる娯楽を集めに集めたその町に北半球の女性将軍大統領『グラディノ』が訪れる。
偶然グラディノが訪れた店「セックス・オン・ザ・ビーチ」で飲んでいたゴエモンと店員でありホストであるルパンは思いがけない大物の登場に驚く。
グラディノの訪れた目的とは?ゴエモンとルパンはグラディノの心を盗むことは出来るのだろうか?
二人の勇者の必死なる接客が始まる!?
「……しょ……しょ……将軍かよォォォォォーーーーー!!?」銀魂より
セックス・オン・ザ・ビーチでは異様な空気が渦を巻いていた。その異様な渦は大きな席を一人で占拠している一人の女性から発せられている。
気持ちよく飲んでいた若者や中年客はその女性の美貌に酒をほおりなげ、キャバ嬢はその女性に男の視線を取られ悔しそうにしている。
黒い長髪、薄化粧を施しているその女性『グラディノ』は足を席の下に上品に下ろす。店を一回り見ると吸い込まれそうな視線をホスト達に浴びせる。
それと同時に一人のホストがグラディノの目の前にメニューを広げる。バサラ特産の酒や他地域の酒などがメニューのほとんどを占めており、写真のグラスはどれも光沢が光っている。見ているだけでものどが鳴りそうだ。
「な、何にいたしましょうか……?」とホストが恐る恐るグラディノに聞く。するとグラディノは興味なさそうにメニューを受け取り読み流す。値段は一切見ていないであろうその灰色の美しい瞳にホストは惚れ惚れする。
「おススメは?」とグラディノは言うとメニューを閉じ、ホストに投げると後ろに腰掛ける。
「え?」グラディノを囲むホスト達はあっけにとられた顔をする。
「おススメよ。聞こえないの?」グラディノはため息をつき、長髪を指でいじり始める。
嫌な気分を察知したのかホストはメニューを広げ、あらゆる酒の説明をする。
「このお酒はさっぱりしており、前菜代わりとして……」
「これは肉料理と共に……」
「こちらは……」
「そんな一気に言われたらわかんないわよ。もうこれでいいわ」グランディノはぶすっとした表情をすると適当にメニューの一番最初にあるお酒を選ぶ。ロマネ・コンティという高級なお酒だ。
さすがは将軍、とホスト達は感心しながら大声で注文をする。もちろんサービスつきだ。
「ロマネタワーはいりまーーーす!」
「ありがとうございましたぁーーーー!」ホスト全員がグラディノに頭を下げる。
グラディノは満足そうに微笑むとお手拭で手を拭く。
席から離れたところにいるゴエモンはグラディノ登場の状況まだを飲み込めていないようだった。
「な、何で将軍がここにいんの!?」とゴエモンはルパンを見る。
ルパンは冷静な顔でタワーの準備を進めている。
「ルパン!どういうことだ!?」
「調査だよ」とルパンはロマネ・コンティを腕に携え、答える。
「調査ァ?」
「ギルドの現状調査だ」グラディノの様子を見るルパン。
「自らギルドの状況や税金をちゃんと納めているかとかの事を調べにきたんだろう」
「でも、ここギルドじゃねえだろ」ゴエモンは首をかしげる。
「さしずめ調査の帰りといったところだろうな。だがここで将軍に傷一つでもつけたら切腹もんだな」ルパンはそういうとゴエモンの姿を見る。
「だからお前みたいな者がいると困るんだよ」
「大丈夫だよ。着替えればいいだろ?」ゴエモンは店員専用の試着室に入ろうとする。
「いや格好じゃなくて行動のことを言ってるんだが……」
「大丈ブイ」ゴエモンは席で酔っ払って倒れているジュエルを引っ張る。
「おらジュエル、仕事だ」「ほぇ?」ジュエルはまだ回らない舌で答える。
「おい!ゴエモンてめぇ働く気か!?」とルパンは顔をしかめる。
「当然。いままでタダ飲みしてきたからな。そのお礼だってしたいし、金をうまく行けばがっぽり何だろ?」ゴエモンはにっと笑い、試着室にジュエルと入る。
「ギルドの結果が知りたいわけじゃないんだな……」ルパンはあきれ、ため息をつくとグラディノの席へと向かう。―――とルパンは歩きをとめた。
「ってあいつ今までタダ飲みしてたのかよ!!?」
試着室ではゴエモンが痛がるジュエルの頭を掴みながら引っ張り一つの部屋に放る。
「いたっ!」壁に頭をぶつけ、意識が朦朧としていたジュエルは一気に目を覚ます。酔いもすでに覚めているようだ。
「師匠!?何するんですか!?」
「これに着替えろ」とゴエモンは服をジュエルに投げ渡す。
「へ?」ジュエルは渡された服を見る。色とりどりのコスプレ服が手の中で不気味に光っているように見えた。
「将軍がご来店したらしい。接客でもしとけ。うまくいけば金ががっぽりだぞ」ゴエモンも干されているホスト服を手に持ちを一つの部屋に入る。
「しょ、将軍ってあの将軍ですか!?」
「そう、あの将軍」カーテン越しにゴエモンが答える。
「どうしてそんなことに……」
「話はこうだ」ゴエモンは経緯を話す。ギルドの調査の事の事や自分のタダ飲みの事など一つ余らす事なく着替えながら話す。
「―――ってつまりそれ師匠の勘定の為じゃないですか!」ジュエルは服を選びながらつっこむ。服はウサ耳やメイド服などどれもきわどい物ばかりで選ぶのに時間が掛かっている。
「そうだ、ここで働いてタダ飲み借金をうやむやにする」ゴエモンが着替え終わり、部屋から出る。
「最低じゃないですか!」ジュエルも何とか自分の大きな胸をメイド服に入れると出てきた。
「ほれ、行くぞ。ルパンの為だと思えばいいだろ?」
「もう師匠ったら―――」ジュエルは靴をはき、顔を挙げるとゴエモンの格好を見る。
ボロボロの旅服とは違うぴしっとしたホスト服に身を包んだゴエモンは見事なイケメンになっていた。
やる気のあるような無いような顔は相変わらずだが、人目見ると目が離せないくらいだ。
「……師匠?」ジュエルは急なイケメン登場に顔を赤くしながらゴエモンに聞く。
「師匠だよ。どうかした?」とゴエモンは答えるとジュエルの頭を掴む。
「まったくメイド服かよ。ここはウサ耳がよいと思うんだがな」
「だって……これしかマシなのが無かったんですよ……」ジュエルはうつむく。
「馬鹿だな。客より美しかったら客が不満に思うだろ。ここはエロそうなウサ耳に……」と語るゴエモンの顔にジュエルの拳が当たる。
「それ師匠の趣味じゃないですか!」
「いや俺の趣味はどちらかというと危ない水着……」鼻血を出すゴエモンを無視しジュエルは試着室から出る。
「どっちでも嫌です!」ジュエルは部屋から出るとぶつぶつ愚痴をつぶやき始める。
「もーやっぱり師匠はかっこよくなっても師匠だった!!」―――とジュエルは言っていたが不意に足を止める。ゴエモンの言葉を思い出したからだ。
『客より美しかったら不満に思うだろ』
「……美しい?私が?」今までそんなこと言われたことの無いジュエルは自分の体を見る。
「……師匠が?私……に?」とジュエルは言うと顔を赤くする。
「いやいや!お世辞に決まってる!師匠だもの!」ジュエルはゴエモンを見る。ゴエモンは不満顔でグラディノの席へと向かっている。
「……だよね……?」ジュエルはその思いを断ち切るようにゴエモンの後を追いかける。
タワーの準備を巧みにこなすルパンはゴエモンの姿を見て驚く。
「見違えたな。3年前みたいだ」
「どうも」とゴエモンはまんざらでもない様子。
「働くんだったらじっとでもしておけ」とルパンはゴエモンを手で払い仕事を命じる。
「おいおいルパンお前な、自分のギルドはどうだったか知りたくは無いのか?」ゴエモンはにやりと笑う。
「……なんだ、てめぇも結局気になってたのか」
「当然だろ。任せとけ。聞いてくる」とゴエモンはグラディノに近づく。
グラディノはホストの接客を暇そうに聞いていた。
世界の事やマモノの問題など仕事の話は抜きにし、ホストたちはグラディノにファッションや手相など娯楽話などを持ちかけている。
しかし、グラディノはどれも面白くなさそうにため息をつきながら話に付き合っているようだった。
「グラディノさんだな」とそこへホスト姿の男ゴエモンが現れ、グラディノの隣へ座る。
「そうよ。それくらい見て分かるでしょう?貴方は?」グラディノはイケメンゴエモンの登場にも何の驚きもせずメニューをぱらぱら開いている。
「ただのホストですが何か?」ゴエモンはグラディノの酒を注ぐ。
「まだ、お代わりなんて言ってないわよ」とグラディノはゴエモンをにらんだ。
「それは失礼。仕事のほうはどうなんだ」とゴエモンは質問を続ける。
「仕事ね……」グラディノは積まれていくタワーを見ながら考え始める。
「マモノの事とか大変なんだろ。ここでゆっくり体と心を休めていくといいぜ」
「本当に?どうやって休ませてくれるのかしら?」
「申す事ならば何でも」ゴエモンはグラディノの肩に手を回そうとするが、グラディノはゴエモンの手をはたく。
「それならもっと別のことで、私を楽しませて見せなさい」と妖艶な笑みを見せるグラディノ。
「ほう」さすがのゴエモンもくらっときてしまった。が話の入り口を見つけることが出来たのは間違いない。
さすが遊び人だな。と遠くで見ていたルパンは感心する。
気の強く、位の高い女はわざわざ敬語を使うよりも馴れ馴れしく話しかけたほうがよい。そのほうがかしこまった日常からはなれることが出来、心を休める事ができるのだ。
無礼かと思うくらいがちょうどいい。
グラディノは今友達と話している感覚だろう。悩みを軽く話せる状況をゴエモンは作ったのだ。
「ならば後で、一緒にのみに行かないか?静かでロマンテックな店知ってるからよ」ゴエモンは誘惑を続ける。
「そうね、でもごめんなさい私仕事があるから」
「仕事ばっかりじゃいざマモノがきたときに困るんじゃないのか?」
「その為にあなた達勇者がいるんでしょう、白獅子さん」グラディノはゴエモンをじっと見つめた。
「……なんだばれてたか。さすがは将軍様だな」ゴエモンはまいったと頭をかく。
「当然でしょ。数ある勇者の中でも貴方はかなりの実力派、依頼料の高さは不評が多いけどね」
「それは照れるぜ」ゴエモンは後半の言葉は聞かないふりをした。
「3年前位からぷっつりと姿を消したといってたけどまさかこんな所で会えるだなんて思わなかったわ。ホストに転職したの?」
「いや、臨時で入ってるんだ。今はペプシというギルドでお世話になっている」
「ペプシ……ね」グラディノは急に顔を曇らせる。
「調査はすでに終わってんだろ。どうだった俺のギルドは?」
「うーん。正直言って最低ね」
「え、マジで?」
「えぇ、まず外観が戦争でも起こったの?って言いたくなるくらいボロボロだし、ギルドに入っても誰もいなかったわよ。用心されていないという事で適当に低評価つけといたわ」
「……」ゴエモンはルパンをにらむ。ノベルとアモンはどうしたぁー!?といっている顔だ。
ルパンもそれに気づき、ジェスチャーでゴエモンに推測を語る。
<知るかぁー!たぶんノベルの野郎今日調査がある事忘れてアモンとゆっくり町の案内でもしているんだろうよ!>とルパンは複雑なジェスチャーをこなし、さらに近くで接客をしていたジュエルにジェスチャーで言伝を伝えた。
<ジュエルゥ!とにかく話がやばいほうに傾いてきているからシャンパンタワーでもシャンパンシャワーでも何でもいいから持って来い!>
親父に絡まれていたメイド姿のジュエルはそのジェスチャーに目を疑う。
<い、いいんですか?そんなに無駄遣いして>
<いいから持って来い!将軍の機嫌を損ねるのだけは回避しなければならんぞぉ!>とこれはゴエモンだ。
するとジュエルはうなづくと店の奥へと入っていった。
「何してるの?」とそこへグラディノはゴエモンの奇妙なジェスチャーの動きに目を細める。
「え!いや、何でもねえよ……」
「あんな誰もいないギルドに入るなんて白獅子も猫に退化したのかしら」とグラディノは執拗にゴエモンを攻める。
「あれぇ?いつもいるのになぁ……おかしいねえ」ゴエモンは汗を流しながらグラディノから目をそらす。
「ギルドの義務は街の平和を守る事。こんなことじゃいつ潰れてもおかしないわよ」
「そ、そりゃあ厳しい……な」ゴエモンのあせりはさらに高まる。調査で低評価をつけたれたギルドはどれも悲惨な道をたどっている。
ルパンとノベルが困るのはもちろん、ゴエモンとジュエル、アモンも居場所を失ってしまう。
「それにこの街のギルドはどれも警備がなってないわ。近頃コカとかいうギルドも不正依頼料の問題で潰れたそうね」
「そ、そうなんすか……」
「街をマモノから保護する壁もかなりぼろいしマモノが襲ってきたらどうするの?」とグラディノはきつい目をゴエモンに向ける。
(し、しまったぁぁー!仕事の話をしてしまったばかりに地雷を踏んじまったぞ!ギルドの事なんて聞かなけりゃよかった!)ゴエモンはジュエルの戻りを待つ。
(何してんだあの馬鹿ジュエル!早く戻って来いぃ!シャワーを将軍に浴びせるんだぁ!将軍酔わせてテイクアウト作戦だぁー!)
―――とここで危機を察したルパンはグラディノの前にロマネタワーを持ってきた。
「はいはいお嬢様!タワーをお持ちしました!」ルパンはタワーの上からロマネ・コンティを注ぎいれる。上から下へ、酒がタワーで踊るように降りていく姿は何とも芸術的であった。
「おぉー。なかなか美しいわね」グラディノは素晴らしい光景に感嘆の声を漏らす。
(よし!このまま酔わせるんだ!)とルパンはジェスチャーをゴエモンに向ける。
(さすがは百戦錬磨のホストだ!よし!このまま逆転さよならホームランきめたるで!)とゴエモンはルパンに親指を立てるとグラディノをタワーに近づかせる。
「さ、さぁグラディノ。好きなだけ飲みなさいな!」
「そう?じゃあこっちを」グラディノはちょうどタワー真ん中のグラスを取る。
「え?ちょっとそこは……」ゴエモンは止めるがグラディノは何のためらいも無くスポッとグラスを引き抜き一口飲む。
するといきなり真ん中を失ったタワーはぐらつきだした。
ただでさえ急いで作ったというのにそんな中大黒柱を失ったタワーはゴエモンとグラディノのほうへ傾く。
「あーあ……」ゴエモンはあっけに取られ固まる。
(おいぃぃぃ!アウトぉーーー!!)ルパンはタワーの駆け寄り倒れるタワーを支える。他のホストもタワーを支えはじめる。
タワーはグラスをカタカタと音を鳴らしながらも次第に揺れを止めた。
「ゴエモン!早く酔わせろ!あきらめたらそこで試合終了だぞ!」ルパンがゴエモンに叫ぶ。
「……何やってるの?」グラディノはホストたちの不思議な体勢に戸惑う。
「あれはだな……カバディだ」ゴエモンは何とかごまかそうと苦しい言い訳をする。
「カバディ?何でまた」
「だって飲むだけじゃつまらないだろ?だから余興として……」とゴエモンは話すとルパンたちに(カバディしろ!)と目線を送る。
ルパンとホストの皆さんはしょうがないとカバディをしているまねをした。
「カバディカバディカバディカバディ……」
「あら本当だわ」ルールをあまり知らないグラディノは一応納得する。
ゴエモンは助かったと汗を拭いた。
―――と突如店内にサイレンが鳴り出した。
大音量に店内の客は突然のサイレンに騒ぎ出す。
「な、何だ!?」ゴエモンは周りを見渡す。
「ゲッ!」カバディをしていたルパンはそのサイレンに焦りを見せる。
「何この音?」その点グラディノはあまり気にせず酒を飲み続けている。
「おいゴエモン!」とルパンはゴエモンを呼ぶ。
「何だよ!?このサイレン」とゴエモンはタワーで踏ん張っているルパンに聞く。
「やべえぞ!これはマモノ侵入のサイレンだ!」
「マモノだと!なぜにこんなときに限って!?」ゴエモンはグラディノのきつい説教をを思い出す。
『壁がボロボロだしマモノが襲ってきたらどうするのよ』
「……」ゴエモンはサイレンを気にしながらも平然と飲んでいるグラディノを見た。
マモノが侵入。これは勇者ギルドがある王国では一大事だ。壁をちゃんと保護していないという事で責任はすべてギルドにふりかかる。
つまりこのマモノ侵入が将軍に知られたりなんかしたら……。
(か、完璧に……)ゴエモンとルパンは顔をしかめ、心の声を重ねる。
(俺達のギルドは終わりだぁぁぁぁぁぁ!!!)
「おい!どうするんだよ!?」ゴエモンはあせあせと足踏みをする。
「落ち着け!幸い将軍は事態に気づいていない!俺がマモノを片付けてくるからてめぇは将軍の相手をしていろ」とルパンはタワーを他のホストに任せ、外に出て行く。
「そ、そうだよな!マモノってもここらへんちっこいスライムしかいねえからな。すぐにルパンが片付けてくれるだろう……」とゴエモンはグラディノのところに状況を説明しようと向かう。
「白獅子、この音は?」タワーのグラスを次々と飲みながらグラディノはサイレンの鳴る天井を指差す。
「こ、この音はあれだよ……あれ……誕生日おめでとうみたいな」とゴエモンの苦しい言い訳パート2。
「誕生日?だれか客が誕生日なの?」
「そう!それで店員全員で祝ってんだよ!」
「でも、客皆どっかいったみたいだけど」グラディノが席を見渡す。すでにグラディノ以外の客は店員の指示で避難をしている。
グラディノのボディーガードも情けなく、逃げ出したようだ。
「……」ゴエモンはこれ以上はごまかしきれないと黙秘した。
「白獅子?」グラディノはゴエモンの青い顔を見る。
「皆外にでも会場を移したのかしら?」
「そ、そうかもしれんな……」ゴエモンの顔はどんどん青から白へ変わっていく。
このままでは自分は燃え尽きてしまう。そうゴエモンは感じた。
しかしグラディノはそんなこと気にせずゴエモンの手を引っ張る。
「私達もいきましょうよ。人の成長を共に祝うのは常識よ。それにまだ飲みたり無いわ」
ロマネ・タワーはすでにグラディノによって飲み干され、ホストたちも疲れて床に倒れていた。
「そ、外か!?外はだめだ!」ゴエモンはグラディノの前に立つ。
「なんで?」
「そ、それは……」ゴエモンが苦しいいわけを考える。
が、そこでジュエルがやっと山盛りのシャンパンを担ぎながら戻ってきた。
「師匠大変ですよ!さっき街の人から聞いたんですけど巨大なマモノが王国に入ったって―――」
「!」ゴエモンが近く似合った灰皿をジュエルに投げる。灰皿は円を描き、ジュエルの頭に直撃する。
「ぶっ!?」とジュエルは一声あげ、のびてしまった。
「……なんかあの子マモノがどうとか言ってなかったかしら」
「ちがうちがう!ゴジラが上陸したって言ってたんだよ!」ゴエモンはだらだらと流れ出る汗をふき取りながらグラディノを入り口へと近づけさせないようにがんばる。
「ゴジラ?それはもっとすごいわね。見てみたいわ」
「いや、ゴジラって言ってもプラモデル的な大きさらしいぜ!ベイビーなんだよ!ビル一つ壊せない青二才だってよ!」ゴエモンは身振り手振りでグラディノに伝えるが、彼女の心は変わらない。
「それもそれでかわいいんじゃない?」
「いや、でも……」
―――とゴエモンがどうしようもないと天を仰いだとき、店内の天井から轟音が鳴り響いた。
轟音と共に天井が巨大な何かに突き抜けられ、それは乱暴に店内に足を踏み入れた。
「!」ゴエモンとホスト、グラディノは壊れた天井を見上げる。
天井を壊した犯人、それはやはりジュエルの言っていたマモノだった。
足から全身にかけて覆われたうろこと凶暴な顔、ぎざぎざの尾ひれ、その姿はまるで……
(本当にゴジラきたぁぁぁ!!)ゴエモンは来て欲しくない突然の来客に固まる。
「あらマモノじゃない。何でこんな所にいるのよ」さすが将軍と言わせる位肝の座ったグラディノはゴジラを見ても驚かない。が、その代わりゴエモンにきつい目を向けた。
「ま、察しはつくわ。白獅子、これは壁のボロさが招いた事よ。どうしてくれの?」
「そ、それは……」ゴエモンが地面に倒れているジュエルを見る。ジュエルは倒れたふりをして知らん振りを決め付けていた。
<おいぃー!ルパンはどうしたぁー!?>ジェスチャーでゴエモンはジュエルに言葉を伝える。
<知りませんよ!けどルパンさんさっきマモノが現れたところとは正反対のところに走っていきましたのは見ましたよ!>とジュエルは倒れたままジェスチャーをする。
(しまった!あいつが方向音痴なの忘れてた!)ゴエモンは悔しそうにマモノをにらむ。
(お前も何タイミング悪く来てんだ!)
ゴジラのマモノはしばらくゴエモンとグラディノを見つめていたが、うなり声を上げ、襲い掛かってきた。
巨大な腕がゴエモンに迫る。
「ちぃ、しょうがない!ここはマモノ殲滅に専念しましょう!」グラディノは腰から小刀を出し、構える。
ゴエモンも木刀を構え、グラディノの前に立つ。
「ちげえ」ゴエモンがつぶやく。
「へ?」とグラディノがゴエモンのほうを見る。
「こいつは……マモノじゃねえ!」ゴエモンが迫るマモノの腕を木刀で払う。腕は吹き飛ばされ、マモノは体勢を崩した。
グラディノは呆れ顔でゴエモンを見る。
「何言ってるのよ!コイツはどう見てもマモノじゃ……」とグラディノが叫ぶと同時にゴエモンが跳び上がる。
「!」上を見上げるグラディノ。
ゴエモンはマモノより高いところまで跳び上がり、顔に手を当てると右目の布眼帯をはずした。
ゴエモンの右目に眠る魔王の右目が開放され、月の光に鈍く光った。
「こいつはな……ただの!」ゴエモンは右目を手で覆うと一本のテニスラケットを右目から引きずり出す。
「ガラの悪い酔っ払いだぁぁぁ!!」
ゴエモンは木刀をしまい、両手でラケットを持つとマモノに向けて振りかざした。
マモノも負けじと拳を握り、ゴエモンに向かって殴りかかる。
「処刑道具 反発する遊具!」
ゴエモンはマモノの拳にラケットを叩き込み、そのまま振り抜いた。
マモノの拳は後ろに吹き飛び、本体が大きく姿勢を崩した。
するとゴエモンはマモノの腕に飛び乗り、顔面へと肩を伝って走り出す。
「ごあああああ!」マモノは体を這いずり回るゴエモンをはねようと口から高音の火を吐いた。
火は一直線にゴエモンへと向かう。
「うおおおおお!」しかしゴエモンは避けることなく、火の中へと飛び込み、一気に駆け抜けた。
そしてマモノの顔へとたどり着いたゴエモン。ラケットを肩に担ぎマモノをにらむ。
「お客様ぁ、当店での酒乱行為は禁止されております」ゴエモンがラケットを横に構える。
「なので……」
あせってマモノが振り落とそうとするがゴエモンのラケットが目の前まで迫っていた。
「店から出て行け!このやろぉーが!!」
ラケットがマモノの顔面に直撃し、マモノはふき飛ばされる。
宙に浮くマモノはそのまま町のマモノ対策壁に頭からぶつかり、地面にたたきつけられる。
「ごっ……」マモノは一声うなるがすぐに気絶した。
ゴエモンは地面に降り立ち、グラディノのほうを振り返り、
「これで、静かになったな。飲みなおすか?」と一言。
グラディノはしばらくの間考えていたが、笑みを見せ、さらにため息をついた。
「もういいわ。充分に楽しんだ。勘定よ」
「お客さん一名お帰りになりまーす!」ゴエモンが大声を上げる。
すると店内で倒れているジュエルがそれに気づき、立ち上がって同じく声を張り上げる。
「ありがとうございましたぁーーー!!」
◆◆◆
翌日のペプシではゴエモンとジュエル、ルパンが店のマスターと話をしていた。
「それでだね。店の修理代200万とロマネ・タワー代50万、マモノがぶつかった衝撃で壊れた壁の修理代500万、その他諸々で1000万」ペプシの机で座るマスターは向こう側に座る3人に請求書を差し出す。
「これ、お願いね」
「ふざけんじゃねえ!」普段の服装に戻ったゴエモンは請求書を受け取るや否や机に叩きつけた。
「なんで町の修理代俺達が払わないといけないんだよ!」
「だって犯人君達でしょ?」とマスターはゴエモンをにらむ。
「でも将軍を喜ばすための犠牲だと思えば軽いもんだろ!」
「どこが軽いんだよ!」とこれはルパンがつっこむ。その後ルパンはマスターに頭を下げた。
「マスター店ぶっ壊したのはお詫びします。でも王国の危機を救ったのは確かなとこなんですよ。どうにかなりませんか?」
「そういわれてもねえ」マスターは請求書を見る。
「この請求書回したの将軍様なんだよね」
「は?」ゴエモンも請求書を見た。たしかに一番下にグラディノと署名されている。
「……」ゴエモンの体が怒りで震える。
「町の崩壊はギルドの責任、だそうだ」とマスター。
「あのクソ女ぁ!昨日あんな事やそんな事までしてやったのにこれはねえだろぉー!!」
「師匠そんな言い方やめてくださいよ……」とジュエルはゴエモンを軽くどついた。
そのあと3人はしばらく責任の押し付け合いをしていたが、マスターが去った後は3人ともため息をついていた。
「……これで借金はさらに上乗せか……」ルパンは机に立ち上がり壁に請求書を突き刺した。
「ルパンさん……借金って一体いくらなんですか?」ジュエルも立ち上がってルパンに聞く。
「一億」とルパンは平然と答える。
「……」「……」「……」3人はそれを確認すると再びため息をついた。
「こりゃあ宝くじ当たらん限り無理だな」とあきらめムード全開のゴエモンは机に顔をうずめる。
「仕事するしかないですね」と依頼板を見るジュエルはゴエモンとは違い、仕事する気満々だ。
「そうだな」ルパンもジュエルの考えに賛成のようだ。
「仕事ねえ。めんど」ゴエモンだけは頑として宝くじかギャンブルだけを考えている。
「まったく、あいつが来なけりゃあ何も無かったのによ」
「将軍さんの疲れを癒せたからよかったじゃないですか」ジュエルは窓から空を見上げた。
空ではグラディノの乗っている飛行船が優雅に飛んでいる。
調査を終えたため、今から北半球中心都市ソリティアに帰るのだろう。
帰ればまた仕事の数々、ジュエルの言うことも一理ある。
「ふん、稼ぎのねえ仕事何ざ、もうたくさんだ」ゴエモンは椅子に腰を深くかける。
「お金より大切な物もありますよ」ジュエルはそう言いゴエモンの顔をうかがう。
「ったくよぉ」とゴエモン不満そうにつぶやくが、なぜかその顔がうれしそうな表情をしている所にジュエルとルパンは不覚にも笑ってしまった。
◆◆◆
その頃、飛行船の中ではグラディノと秘書と思われる男が通路を歩きながら話をしていた。
「どうでしたかバサラの調査のほうは?」男秘書は手をこすり合わせながらグラディノに聞く。
和服を上品に着こなし、通路を優雅に歩いていたグラディノはその言葉で顔を曇らせる。
「そうね、最低なギルドばっかりだったわ」
「それは大変な事ですね!今すぐバサラ王国については緊急会議を開きましょう」秘書はポケットから携帯を取り出すが、グラディノはそれを止めた。
「いいわよ。会議なんて必要無いわ」
「え……しかしギルドは最低だと……」
「たしかにギルドは最低……でもあの王国はたぶん大丈夫だわ」グラディノは飛行船の窓からバサラ王国を眺めた。
「最高の勇者がいるから」とグラディノは言うと、胸元から調査票を出す。
そこからペプシ調査票を抜き取るとペンを手に取った。
100点中10点と書かれている点数の欄をグラディノは塗りつぶすと新たに点数を書き入れる。
『100点中100点』
最高得点だ。一流のギルドでも取るのは難しい。
「楽しませてくれたお礼よ。白獅子」とグラディノは調査票にキスをし、怪しく、しかしうれしそうに笑った。
「さーて仕事しますか」グラディノは通路を行くスピードを上げる。
しかし、そんなグラディノの前に一人の女性が立ちふさがった。
グラディノに似ている和服を着けたその女性はグラディノに一礼をする。
そのときに大きくはだけた服の間から豊かな胸がちらと見え、男の秘書は顔を赤らめた。
秘書が視線を落とすと女が足には足袋に下駄を履いているのが見えた。
グラディノとは違い、肌を露出している部分が多く、なんとも危なっかしい服装だ。
「お久しぶりです。将軍様」女性は頭を上げ、無表情の顔を向ける。
「ソウゴちゃん」グラディノは女性の名を口にした。
「なんでまたソウゴちゃんがここにいるの?ソリティアで警護をしているはずだけど……」
「緊急に将軍様のお迎えを命じられたのです」ソウゴと名乗る女性は腰にかけられた長刀を見せる。
「飛行中にマモノに襲われたら一大事ですから」
「わざわざありがとうね」
「どうやらバサラ王国では随分楽しまれたようで」
「そうね。楽しめはしたかしら」とグラディノは微笑む。
「白獅子……旦那の様子はどうでしたか?」
「ここから見てたんでしょう。元気にしてるわよ」
「……そうですか。それはよかった」とソウゴは長刀に手をかけ、少し刀身を抜くと磨かれたように美しく剣が輝く。
「ならばまだ私達『審戦組』も旦那をしょっ引くことは出来ますね」
「どうかしら?白獅子は貴方達と追いかけごっこしてた以前よりは数段も強くなってるわ」
「……それは楽しみですね……」ソウゴは剣をしまう。だがその目つきは狩人を思わせる鋭さを帯びていた。
「ま、今は会わない方がいいんじゃない?」グラディノはソウゴのそばを通り過ぎ、仕事場へと急ぐ。
「……実った果実は熟すまで待て……ということですか」ソウゴはグラディノとは正反対の道を行く。
そしてソウゴがその先の階段を上がると飛行船の上部までたどり着く。
飛行船の上は強く揺れており、普通じゃ立っているのもやっとだ。
ソウゴの赤色の長髪も強風にさらわれる様になびいている。
だがソウゴは自然な足取りで飛行船の真ん中まで歩みを進め、雲に覆われた空を見上げる。
すると突然雲の中から一匹の怪鳥が出てきた。
黒く鋭い口ばしを持った巨大な体、『ヘルコンドリル』だ。
怪鳥はソウゴの姿を見ると待ってましたとばかり食いつこうとソウゴに迫り来る。
しかしソウゴは気づいていないように剣の鞘を持ったまま立ち止まる。
「ごきゃああああ!」奇怪な声を響かせヘルコンドリルの口ばしがソウゴに刺さろうと迫る。
「ふう」するとソウゴは息を吐きながらゆっくり剣を抜き、一振り。
たったそれだけ。
あと少し、あと少しで自慢の口ばしで貫いてやる!と喜びの表情を浮かべるヘルコンドリル。
―――が、その時ヘルコンドリルは気づいた。
自分の口ばしが『無い』事に。
「ぎゃあ?」ヘルコンドリルがまさかと見直すが、口ばしは唇の根元からすっぱりと消えていた。
「ぎゃああ!?」
突撃を中止し、くちばしを捜すヘルコンドリル。
と、そこで飛行船の上に自分の口ばしが転がっていることに気がついた。
平然と立っているこの女にやられたのか?とヘルコンドリルはソウゴをにらむ。
ソウゴはヘルコンドリルの怒りを感じ取るとふっと息を吐き、彼を見た。
「ぎゃあああああ!」ヘルコンドリルは怒りの突撃を再開しようとする。
が、体は動かなかった。
翼も切られていたのだ。いや、翼と口ばしだけではない。
足、腹、首。全ての部位が切られていた。あのソウゴの一太刀でだ。
「……あ……ぁ……」ヘルコンドリルはうなり声にもならない声を上げるとばらばらになり、強風に飛ばされながら空へと消えていった。
ソウゴは無表情のまま剣を素早くふり、血を落とすと鞘へしまう。
と、ここでソウゴの腰にかけられているマイクから野太い男の声が発する。
「どーだソウゴ、終わったか?」
「えぇ。任務完了です」ソウゴはマイクを手に取り、話しかける。
「そうか、ご苦労だった」
「コンドウさん」ソウゴは男の名を呼ぶ。
「ん?どうしたソウゴ」コンドウと呼ばれた男はマイクのスイッチを切らずにつけたままにした。
「さっき将軍様から聞かされたんですけど、白獅子がバサラ王国にいるらしいです」
「何!?白獅子がか?」
「はい」ソウゴは階段を降り、通路の壁にもたれた。
「そりゃあいい情報だな」コンドウの声が少し高くなる。
「旦那とは決着つけたかったんですよね?」
「あぁ。奴を捕まえれば俺達『審戦組』は一段と有名になるからな」
「じゃあ、いつかは旦那を捕まえるということで……」
「わかった。考えてはおこうな」コンドウがマイクの電源を切る。
ソウゴはマイクをしまうと小さくなるバサラ王国を見て、
「どこまで甘く熟すか……ですね……」とつぶやく。
そして和服をひるがえし、履いていた下駄をカランコロンと鳴らしながら通路の奥へと消えていった……。
続く。
借金返済したらギルドの仲間増やさないとな……。
今のところ5人増やす予定だけどそしたらギルド10人か。
麦わら一味より多いな……。どうしよう。
減らしたいけどかなり重要人物なんでどうしようか悩んでます。