第7話 『キャバ嬢と男の恋はヒビだらけ』
ここからはキャラがどんどん増えていきます。よろしく
どうでもいいコーナー
ゴエモンの名前は銀魂3巻のGОEMОNから来ています。
なんかかっこよかったんだよね
以上どうでもいいコーナーをだらっとお送りしました。
バサラ王国の奥に存在する大人の社交場「ドランク街」
多くの酒場、博打場、キャバクラにホストなどの大人の店が立ち並ぶ。
ネオンと酒ときれいな女が歩く人たちの目を引き、日夜大賑わいを見せている。
一本道の右と左に隙間なく店が立ち並ぶ形でその道の長さは2キロにまで達するといわれる。
バサラ王国は四角上の王国でその四角の一辺の長さはおよそ10キロ。
つまりこのドランク街は王国の約10分の1を占める大きな街なのである。
その町で一人の中年酔っ払いが時々道端に吐しゃ物を吐きながらもふらふらと幸せに歩く。
企業の打ち合わせだがなんだかはわからないが、スーツを着ているところを見ると営業マンだとわかる。
と、その酔っ払いと道を歩いていた一人の男が肩をぶつけた。
「あ、すいやへん」酔っ払いは回らない舌でがんばって誤る。そこで男も謝るのなら事はたいした事ですむのだが、どうやら男のほうは大変不機嫌だったらしく、去り行く酔っ払いの首根っこを掴む。
「おい、おっちゃん」
「へぇ?」酔っ払いは男の顔を見る。男の顔は険しく
「な、なんや兄ちゃん?」
「人にぶつかっておいてごめんですむと思ってんの?」
「は?いいじゃないか。怪我ないだろぉ?」
「それがあるんだよ」男はスーツを一枚脱ぐ。男の白いワイシャツには腹部にだけ赤いしみがついていた。それがだんだん広がっていき、白いシャツをさらに赤く染めていく。
「お前のせいで古傷が開いてしまったじゃねえかぁぁ!!」
「んなわけないだろ!?あんなちょっと当たったくらいで傷が開くなんてありえんぞ!」酔っ払いと男が口論をする。
道行く人は自分は他人だと言い聞かせ、二人の口論を止めことなく、足を早める。
「これは傷害事件だ!金払え!」男は酔っ払いの襟首をつかむ。
「知るか!そんな小さなショックで開く古傷なんて俺は知らん!」酔っ払いも負けじと男の襟首をつかむ。
「俺の古傷ちゃんはデリケートなんだよ!」
「ならば外歩くな!」
「一日に一回は散歩させねえとだめなんだよ!」
「犬の散歩じゃねえか!?それ!」
しばらく口論をした後、男がしびれを切らしたのか顔をしかめる。
「いいから金払えって言ってんだよ!」男が酔っ払いに拳を振り上げる。
「おおわ!?」
誰もが目をつぶったその瞬間、男の拳が上に上げられたまま何者かに掴まれる。
「あ?」男は後ろを振り返る。そこには自分より少し背の高い男が立っていた。
オレンジの髪、サングラスにタキシード。ホストと思われるその男は颯爽と現れ、男の手を掴んでいた。
「ル、ルパン……さん」男は声を震わせ、ホスト男の名前を出す。
「オルゴリてめぇ、まだそんなしょぼくせぇ仕事してんのか?ていうかてめぇ古傷なんてあったか?」ルパンはオリゴリの頭をつかみ、そのまま男を持ち上げる。
「ち、ちげえんですルパンさん!ちょっとドッキリしかけようかなみたいな……」
オリゴリが苦しそうに言い訳するとすそからケチャップの袋が出てくる。すでに破れている。酔っ払いとぶつかったときにそれが破れることによって服を赤く染めていたのだ。
「それにしちゃあ、金を脅し取るなんていい度胸じゃねえか」
「そ、それはぁ……」男がばたつくがルパンは離さない。
「これじゃあまるで当たり屋の仕事みてえだな?おい」ルパンはオリゴリを掴む力を強める。
「あぁぁ!」オリゴリが痛みで苦しむとルパンは男を投げ飛ばす。
「ガフっ!」オリゴリは背中から壁に直撃するとそのままのびてしまう。
ルパンはまだ驚きを隠せない酔っ払いに近づく。
「すまねえ。ここら辺の奴はガラ悪いから気をつけな」ルパンは酔っ払いの手にいくらか札束握らせる。
「あ!すみません……」酔っ払いは顔を輝かせる。
「いや、それじゃあな」ルパンは酔っ払いに背を向け、街の奥へと去っていった。
その様子を見ていたキャバ嬢たちがひそひそと話をしている。
「さすがね、ルパン様」化粧の濃いキャバ嬢はルパンの去り行く姿を見てつぶやく。
「えぇ、この王国で一番かっこよくて強くてやさしいし」
「あんな人と付き合いたいわぁー」
「無理無理。あんたには中年親父が一番よ」
「どういう意味よ!」
女達がキャーキャー騒いでいる中、ルパンは気にすることなく道を歩く。
◆
ドランク街を颯爽と歩き続けるルパン。道行く道でキャバ嬢や女性客がルパンの姿を見かけると目を釘付けにする。
電柱の影から見ている者、道端で目を輝かせている者、中にはルパンのそばに駆け寄り、ナンパをする者もいる。
「ねぇーん。あたしと遊ばない?」甘い声で顔に化粧を塗りたくったキャバ嬢はルパンを誘う。
「……いやいい」ルパンは女の誘惑を手を振り、払う。
「あら、そおん?」
「それよりこの男を知らんか?」ルパンはタキシードのすそから一枚の写真を取り出しキャバ嬢に見せる。
その写真は一人の男がぶすっとした表情でどこかの建物の机にひじをついて座っている様子が写っていた。
右目に包帯の眼帯、白いモジャ毛に整った顔をしているその男は青色の服を着こなしている。かなりのイケメンだ。
「しらないわ。何?あなたの彼氏ぃ?」キャバ嬢はいやらしそうに笑う。
「俺はホモじゃない。こんな奴と付き合うならスルメとでも結婚した方がましだ」ルパンは写真をしまうとまた歩き出す。
「ありがとよ。暇なときには来てやる」ルパンが手を上げ、一枚の名刺をぴっと出す。
「それ!私の!」キャバ嬢は驚いてルパンを見る。いつのまにか盗まれていたのだ。
「その時は名刺じゃなく、てめぇの……」ルパンがキャバ嬢のほうへ振り向き、名刺を持った手で銃の構えを取る。そしてとどめの一言。
「てめぇの心を盗んでやるよ」
キャバ嬢はその一言を聞くと、その場で倒れる。その表情は快楽に満ちている。
「か、かっこいい……」
「ふん……」ルパンは再度歩き出す。名刺をポケットにしまい、そのまま手をつっこんだままドランク街を行く。
◆
ドランク街の地下には常連しか通ることの出来ない秘密のキャバクラとホストがある。
その名も『セックス・オン・ザ・ビーチ』
ドランクのあらゆる店から飛び切りの美女、美男が集められその店に勤めている。
キャバクラにホストが合体した合体型経営店で中にはバー、カジノも設備されている。
常連しか行けないという状況の中でもドランク街一の売り上げを誇っているのだが反面白い粉を売っている設備があるなど黒いうわさも絶えない。
ルパンはその店の入り口にいた。派手とはいえない質素な飾りしかついていない普通のマンションの扉がそこにはあったが店の入り口であることは間違いないことはルパンとて充分に承知していた。
入り口に座る一人の浮浪者。みずぼらしい服を着て、下にうつむいているやせた男にルパンは近寄る。
「マスター。ルパン、ただいま戻りました」ルパンはその場で男に頭を下げる。
「おう」マスターと呼ばれた男はぼろぼろのポケットからある機械を出す。
コンビニのレジで商品のバーコードを読み取るあの機械だ。
「一応確認するから」
「はい」ルパンはそれだけ言うと服の袖をまくる。ルパンの腕には小さい刺青が彫っており、マスターは機械をルパンの刺青に近づける。
ピッと聞いたことある音が鳴るとマスターは機械をしまう。
「いいぞ」
「では」ルパンはもう一度頭を下げ、扉を開ける。
「……ルパン」マスターは店に入ろうとするルパンに声をかける。
「何でしょうか?」
「今日は『あの方』が来るというのは聞いているな?」しわの入った目をマスターはルパンに向ける。
「えぇ。北半島中心王国『ソリティア』から直々に来られるんですよね。これはうまく行けば私達の店にとって多大なる利益になるでしょう」
「そうだ。しかし失敗すれば我々は打ち首間違いなしだ。くれぐれもミスのないように」マスターはそういうとフードをかぶり、顔を隠す。
「話は終わりだ。これ以上は怪しまれる」
「はっ」ルパンは扉の奥へと入っていく。
ルパンは店につながっている階段を下りていく。下はまったく何も見えない。まるで闇に飲まれていくかのようにルパンは降りていく。
あのマスターという男は実はこの店の店長で入り口で客の入場の許可をする役割だ。
あのみずぼらしい格好も通常の客を店には入れにくくするための工夫だ。浮浪者に近づいてでもあの微妙なところにある扉に触れるものは正体を知っている常連以外ありえないだろう。
ルパンの刺青も常連にしか彫る事の出来ないもの。あれで常連かどうかを見極めるのだ。人間に化けたマモノが入ってこさせないための対策のためでもある。
少しでも怪しかったら元勇者のマスターの強烈チョップが飛ぶ。
ルパンは長い階段を降り、一番下にある小さな部屋にたどり着く。
人間5人が入るのが限界というくらいの狭すぎる部屋の奥にはもう一つ扉が取り付けられており、ルパンは迷うことなく、扉を開ける。
一筋の光が暗い部屋に差し込む。ルパンが扉を徐々に開けると光は広がり店の全貌が見えてくる。
昼かと思える位輝く証明の数々、地下を好きなだけ使えるという特権を使った広い店にはあちこちに美しいキャバ嬢やホストが大勢の客の接客をこなしている。
「ルパン先輩!」一人のホストがルパンに気づく。
「えっ!ルパンが!?」「やっと帰ってきたか!」他のキャバ嬢とホストがルパンの存在に気づくとうれしそうな声を挙げる。
「よう、てめぇら久しぶりだな」ルパンはにっと笑う。
「元気にしてましたか?」最初に気づいた若いホストがルパンに近づく。
「あぁ、店の調子はどうだ?エルビン」
「絶好調ですよ!」エルビンというホストはルパンに店の様子を見せる。
「そうか。よかった」ルパンはエルビンの肩をたたくと奥のバーまで足を進めると回転式の椅子に座る。
カウンターには少し年をとったグラマーなマダムがおり、ルパンの姿を見かけると静かにカクテルを作り、ルパンに出す。
「……おかえり」マダムはルパンに無表情のまま声をかける。
「ただいま」ルパンはそう言うとほっとした表情を浮かべる。
「本当に久しぶりだ。マスターにスカウトされてからもう3年はたつか」ルパンはにぎわう店を見てつぶやく。
「あんたが急にいなくなってから皆光を失った夜の虫のように元気がなかったわ」
「すまないな。ギルドの借金に負われてやむなく……」
「それ以上は言わなくていいわよ」マダムはルパンの言葉をさえぎる。
「この街一のこの店で一番の成績を得ていたあなたが急に辞めるなんていうから私一晩中泣いちゃったんだからね」マダムは優しい声をかける。
「でもまた勤めることになった。よろしくな」ルパンがカクテルを飲む。優しいりんごのカクテルはルパンの硬い表情も崩す。
「まったくギルドの仕事とこの仕事を両方受け持つなんてたいした根性よね」
「今日はあの方が来るからガラの悪いめんどくさい客は追い出しておいたよな?」
「えぇ、でも……」
「でも?」
「一人だけ帰らない人がいて、困っているのよ」マダムは隣の和式の部屋を指差す。
「……あいつか?」
「えぇ」
「いないと思ったらここにいたのか……」
「ごめんね、とめられなくて。あの人常連中の常連だから何もいえないの」
「……しょうがねえよ。俺がやる」ルパンは立ち上がり、部屋の扉を開ける。
そこにはひとつのテーブルが置いてあり、色とりどりの食事と共に一人の男がたくさんの女に囲まれ酒をあおっている。
「よぉー!ルパン!」男はルパンに馴れ馴れしく声をかける。
白いモジャ毛に右目の包帯眼帯。ルパンの写真に写っていた男ゴエモンは顔を赤くし、すでに酒に酔いしれている。
「……ゴエモン」ルパンは顔に血管を浮かび上がらせ、揚々としているゴエモンの襟首をつかむ。
「な・ん・で・てめぇがここにいるんだ?」
「そりゃあ、久しぶりの酒と女に溺れているのさ」ゴエモンは女についでもらった酒をあおる。
「久しぶりの娯楽なんだこっちは。じゃますんなよ」
「てめぇがペプシに入っていたときは毎晩ここに来ていたにもかかわらずまだ来んのか!?」
「酒は小便たれれば消える。女の感触も時間がたてば忘れる。俺は忘れたくないからここに来ているんだよ」
「ペプシが借金で慌てている今もそうやっているのか?」ルパンの力が強くなる。現在ペプシはコカの不正な借金を抜けたとはいえ、まだ王国への税金や街を壊した慰謝料などまだ問題は山済みなのだ。
「仕事には休憩が必要だ。休憩があるから仕事が出来る」
「仕事ろくにしていないてめぇに言われたくないわ!しばらくペプシにお世話になるんだから少しは働け!」とその時ルパンはあるとこに気づく。
「それよりお前ジュエルとアモンは?」
「アモンはノベルに街の紹介をしてもらっている。ジュエルは……」ゴエモンは店を見渡すと一つの部屋を指差す。
「あそこで一杯やってる」
部屋の中では無数の男に囲まれた青い髪の少女ジュエルがいた。
いろいろな誘いを受けながらジュエルはどきまぎしながら対応していた。
「君どこから来たの?」一人のホストがちんまり座っているジュエルに声をかける。
「そ、それはですね……」ジュエルは初めてのホストに緊張しているようだ。
「君もルパンさんと同じ勇者でしょ?どんな魔法使えるの?」
「ええと……」
「かわいいね。付き合ってくれる?」
「はうう……」
全然会話についていけないジュエルはわたわたしている。
「……」ルパンはゴエモンに刀を向ける。
「こんな所に子供を連れてくるな」
「あいつはもう17だ。酒だって飲める」ゴエモンは気にすることなく、食事を進める。この世界では酒は15からは飲んでよいとされているのだ。
「大人の世界を教えているんだよ」
「……ちぃ」ルパンは舌打ちをするとゴエモンから手を離し、離れる。
「好きにしろ。だがな騒ぐのだけはやめてくれ」
「あ?」
「今日はある特別な客が来るのだ。邪魔はしないで欲しいんだ」
「誰だそれは?」
「それはな……」ルパンがゴエモンの部屋を出ようとしたとき、入り口から大声が上がる。
「スペシャルなお客様ご到着いたしましたぁぁーー!」エルビンが店中に響く大声で叫ぶ。
「来たな」ルパンはいりぐちへ急ぐ。
「何だ特別な客って?」ゴエモンは興味を持ち、ルパンと共にいりぐちへと向かう。
入り口には普通の客には無い異様なオーラーを見せる一人の客がいた。
ぴしっとした和服を着て、悠々と立つ黒髪の美女。背後には無数のボディーガードがいる。
ホスト達はその客に群がり、早速接客を始める。
「どうぞこちらへ」
「お飲み物は何を?」
「お手拭どうぞ」
次々とサービスを施すホストを見ながら、ゴエモンは女の客を見る。
無表情な彼女は席に座るとホスト達の接客にただ淡々と反応している。
お手拭をもらうと笑顔を振りまき、飲み物を上品に飲んでいた。
「ルパン」ゴエモンはその様子を見て,ルパンに声をかける。
「ん?」ルパンは接客の準備をしながらゴエモンを見る。
「あれは誰だ?」
「なんだ知らんのか?あのお方は今の人間世界を支える―――」
「政治家か?」ゴエモンが予想を立てる。
「違う。もっとえらい」
「大臣の一人か?」
「いや。もっとえらい」
「……ってお前これ以上えらくなるってことは……」ゴエモンが一筋の汗を流しながら女性を見る。
「そう」ルパンは飲み物を持ちながら共に女性を見る。
「あの方は現北半球の『大統領』でありまたの名を『女将軍』と名を持つ俺達人間のボス。グラディノ様だ」
「だ、大統領ぉぉぉ!?」ゴエモンはいきなりの大物に驚く。
グラディノはゴエモンとルパンに気づき、にっこりと笑う。
薄色の唇、銀色の目はくらくらしそうだ。
まさにその表情は気品漂うまさに王様の様な笑みであった……。
話の区切れがバラバラなんでみじかかったり長かったりします。
まぁ、気にしないでください。