第6話 『人には必ず裏の顔がある』
今回はあっさり終わります。
だって書くもんないんだもん。
……すいませんねこんなんで俺
アモンはゴエモンの目を見て口を開く。
「その目は自分の父、先代魔王の右目ではないのか?」
公園の二人は互いを見つめあう。しかしアモンのその目には疑惑の色が浮かんでいる。
ブランコに腰掛けているゴエモンはアモンを見上げる。
「先代魔王の右目?何だそれは?」
「とぼけないでほしい」アモンは冷たく言い放す。
「5年前、自分の父先代魔王はアルゴン王国を滅ぼしたときに強き一人のニンゲンにあったらしい」アモンはジュエルに聞かせた勇者の武勇伝を語る。
「……」ゴエモンは黙って聞いている。
「父上は言った。あんな者がいるとは面白いと。弱いと思っていたニンゲンにも面白い者はいると。この地上占領の戦いはひまにはならなそうだとな」
アモンはブランコにまた腰を下ろす。
「父上は地底生活をしているときはいつもひまであった。あふれる強さを発散させることも出来ない。その強き勇者との……おぬしとの出会いは父上にとっては喜ばしい事だったのだ」
「ちょい待ち」ゴエモンはアモンの話をさえぎる。
「勝手なこと言ってんじゃねえよ。俺はただの一回の浮浪勇者だぜ。そんな大層な勇者様じゃねえよ。証拠でもあるのか?」
「ある、その右目だ」アモンはゴエモンの布眼帯を指差す。
「父上はその勇者に右目を傷つけられたらしい。そこで父上はその勇者に自分の右目を自分を楽しませた報酬として『与えた』といっていたのだ。その目は父上の唯一の武器『処刑道具』を封印していると聞いたことがある」アモンはゴエモンがその右目から出した処刑道具と名の付いた武器を見て、それを確信した。
一間置いた後ゴエモンはあきらめたように息をつく。
「……ばれちゃあしょうがねえか」
「!」アモンの目が大きく開く。
ゴエモンの性格がゆえにアモンは半信半疑だったがまさかゴエモンだとは思わなかったのだろう。
「あなたが……父上の認めた『伝説の勇者』……なんですか?」
ゴエモンは空を見上げる。その空には雲が楽しそうに散歩をしていた。
―――とゴエモンが重たい口を開く。
「確かに俺はお前の親父と戦った事がある。俺の出身はアルゴンだからな。なんか勝手にお前らが俺の国に来たからがむしゃらに戦ったぜ」ゴエモンが自分の過去を明かしていく。
「そうなんですか。会えてうれしいの」
「……じゃあ俺がその偉大なる勇者だとしよう。だからなんだ?」ゴエモンの目つきが急に険しくなる。
するとアモンはそのゴエモンの目を見てブランコの上で正座をする。
「おぬし、いやあなた様がその伝説の勇者だというならば……」
「処分するのか?」ゴエモンが木刀に手を伸ばす。
「いや、自分はニンゲンとの和解を求める身。あなた以上に素晴らしいニンゲンはいないでしょう」
するとアモンはその場で正座をし、腰を曲げ、手を添えて地面に頭をつける。いわゆる土下座だ。
「……は?」ゴエモンは目を丸くする。
「このアモン!一生あなたについていきますぞよ!」アモンは声を張り上げる。
「あなた様の仲間にしてくださいぃ!」
「は?」
「このアモン!あなた様のような強きニンゲンと会うのを求めておりました!共にマモノとニンゲンの戦いを止め、世界を救いましょう!」
ゴエモンは白い目でアモンを見続けた後、公園に響く大声で叫ぶ。
「はぁぁぁーーー!!?」
◆
「あ、お帰り」ノベルが帰ってきたゴエモンとアモンに声をかける。
「師匠!どこ行ってたんですか?」
「ちょっと仲間の杯を交わしてきたところなのだ。のっ?ゴエモン殿」
「あ、あぁ……」ゴエモンはげっそりした表情をしている。
「それよりノベル殿とルパン殿にはこれから仲良していくためにも言っておきたいことがあるのだ」
「?」ノベルとルパンが顔を見合わせる。
◆
「魔王の弟ぉ!?」アモンの告白を聞いてノベルが後ずさる。ルパンも驚くいてはいるようだが声までは出さない。
「だけど人間と仲良くしようとする和解派の優しいマモノなんですよ。ねえ?」ジュエルは必死に弁解する。
「そうなの……それは大変ね」状況を飲み込んだノベルは同情する。
「いつかマモノとニンゲンが仲良く暮らせるような世界を作る。それが自分の目標なのだ」
「私は応援しますよ!アモンさんのそういう世界作り!」ジュエルはアモンの近くによる。
「おいおいジュエル。親の敵はどうしたんだよ?」ゴエモンが付けに腰掛けながら、ジュエルを見る。
「……たしかにマモノは憎いです。憎いですけど」ジュエルは一瞬渋い顔をするがすぐにきりっと顔を治す。
「血で作れる世界より、みんなの笑顔で作られる世界のほうがいいじゃないですか!」
「……ったく俺達はどうやら厄介な荷物を背負ってしまったらしいな」ゴエモンはため息をつく。
「めちゃくちゃ大きな夢を持っているいあくつきの巨大な荷物。背負うのもやっとだな。しかも装備したら絶対にはずせない呪いつき。魔人の鎧よりめんどくさいぜ」
「それは失礼したの。だが……」アモンはゴエモンとジュエルを交互に見る。
「自分はおぬしらのようなきれいな勇者に会えてよかったと思っているぞよ」
「私もですよ!」ジュエルも立ち上がり、ゴエモンとアモンの顔を見渡す。
「二人のようなすごい人たちの仲間になれるなんて夢みたいです!」
「はぁーーーー」ゴエモンだけはため息を吐き続けている。
「しょうがねえ。お前ら背負ってしまった以上、そのくだらん目標に付き合うとするか」ゴエモンが立ち上がり、手を出す。
「約束だ。人間とマモノの共存を目指す。その決意、曲げることがないようにな」
アモンとジュエルがその手に自分の手を重ねる。
「約束だの」「約束です」
3人は手を上に挙げる。
そして3人は声をそろえ、誓いの決まり台詞を言った。
「ここに勇者の誓いを立てる!」
その様子をノベルとルパンは楽しそうに見ていた。
「あの3人、世界を相手取るつもりよ」
「あいつらなら出来そうな気がしてならんがな」ルパンは笑う。
「そうね」ノベルも笑みを見せる。
朝のギルドではいつも以上に騒がしい声が聞こえる。
その声は聞いているほうも楽しくなるような、そんな笑い声ばかり響いていたという……。
こうして3人の勇者の物語は動き出すのだった。
―――とゴエモンが急にノベルとルパンのほうを向き、思い出したように話しかける。
「ということでしばらくここでお世話になるからな。よろしくノベル、ルパン」ゴエモンがピッと片手を上にかざす。
ノベルとルパンはそれを聞き、一声叫ぶ。
「な、なんじゃそりゃああああ!?」
とまぁ、物語はどろっと始まったのである。
◆
月が輝く夜
その男は戦場に立っていた。
白い髪を血で染め、赤い目を月の光に負けないくらい光らせながら鎧をまとったその男は立っている。
男の周りには多くの死体。そして男の目の前には黒い影を漂わせながら立つ『何か』が立っていた。
姿は見えない。そこにいるのかどうかも男の目にはわからない。
その何かは影を揺らめかせながら低い声で出男に話しかける。
「その力、おもしろい……」
男の呼吸が速くなる。男の赤い目が血の涙が流す。
「!くっ……」急に男は右目の痛みに倒れる。
「苦しいか?我を楽しませてくれたお礼だ。受け取るがよい」
「ま、待ちやが……れ」男は痛みに耐えながら体を引きずる。
「貴様のような面白いニンゲンと会えて、我はうれしいぞ」それは笑みを見せると男から離れる。
「また我と会いたいというのならばもっと強くなるがよい。マモノとの競争に打ち勝て。我もまた貴様と会いたい」
「はぁ……!はぁ」男の意識が遠くなる。
「貴様、名はなんと言う?」それは男に聞く。
男は一呼吸置くと口を開く。
「……ゴエモン……」
「ゴエモン、か。よい名だ」それは煙のように消えていく。
「くるがよいゴエモンよ。我のところまで。この―――」それの姿が完全に消える。
「魔王のところまでな」
「……」ゴエモンの意識が消えようとする。すると目をつぶろうとするゴエモンの目に一人の死人が目に入った。
その死人は土色の服を上品に着こなし、優しいうすら笑いの表情を浮かべている。腹から血が大量に噴出し、そでに事切れている。
ゴエモンはその死人に声をかける。
「せ……先生……」
ゴエモンの意識はそこで途絶えた。
赤い涙ともう一方の目で普通の涙を流すゴエモン
だれもゴエモンに手は差し伸べない。誰もいないからだ。
自分は一人。そうわかったゴエモンは意識が飛んだ後も目から涙を流すのであった……。
続く。
ゴエモンの過去がどんどん明らかになっていきます。
皆さん!ついていけてますかぁー!?