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4、超能力者の定め

 国家戦力としての超能力者。それは各国が暗黙のうちに決めたことである。核兵器がそこで生活する者に大きな被害を与えるのに対し、元は生身の人間である超能力者は必要最低限の犠牲だけで勝利を収めることができるのだ。基本的にこうした実践には、戦闘に特化した能力を持つ者が起用されるのだが、元より戦闘能力のある者がほとんどあるゆえに、例外という形の者がほとんどいないのだが。

「今日は転校生を紹介します」

話題は変わる。学力の差こそあれど、転校生は珍しいことではない。高校生は自分がこの高校とは合わないと感じた場合、転校用の書類と転校試験の合格という二つの課題さえクリアしてしまえば、親も教師も教育委員会も一切無視して転校することができる。

針現実穂はりうつつ・みほです。よろしくお願いします」

ニコニコと笑みを絶やさずに自己紹介を目の前の少女が行う。実穂は来琥に一度視線を送ると、先ほどまで大衆に見せていた笑みとは全く別種の笑みを見せた。来琥は嫌な予感しかしなかった。まさか、自分について何かばれてしまっているのだろうか。超能力者としての存在がばれているなら別に問題はない。自分から公表はしてないが、特に隠しているわけでもない。問題は、五神斬に関することだ。

「じゃ、皆仲良くしてください」

そんな担任のテンプレートな言葉も半ば聞き流しながらも、来琥は情報の漏洩を一人気にし続けていた。


 実は来琥達との戦闘の後、連絡先だけを残して立ち去った。自身の目的の達成のために、人の手は借りたくはないのだろう。亜里去がその時に見た未来は、世間ではパニックを起こす可能性を秘めたものだった。

 映ったのは、五神斬を持つ者達がなりふり構わず一般人を殺していき、その阻止のために世界規模の戦争が起きているものだった。

 亜里去は一応その見えた未来を報告した。その報告を聞いた全員がそれぞれ違う表情をしていた。来琥は一人考え込み、カナは驚きに目を丸くし、実は表情を全く変えなかった。

 そもそも亜里去の未来予知の能力は与えられた情報を元に脳内で自動演算が行われ、起こりうる未来が構築され、それを脳内のイメージという形で視覚化するのである。

 来琥が一人の転校生との出会いを果たしている間、亜里去は一人川辺で風を浴びていた。技術革新によって自然が少なくなる中、残った自然は保護対象として汚染、埋め立て、伐採などが禁じられている。もっと早くにそうしていれば、子供たちが川で遊ぶことで空調機分のエネルギーを他に回すくらいの余裕もできていただろう。人類、特に中国や日本などのアジア諸国はそのエネルギー問題に疎すぎた。いや、対応を行うべきだとは分かっていても、対応策が見つからなかったのだ。そうこうしているうちに、技術ばかりが先にいき、自然の消失速度はそれに比例して加速していった。温暖化に関する事項は、一応の解決の形になったが、それを先頭きって行ったのはWUSUであった。ただ、WUSUにしても、温暖化によって起こる被害は防いだものの、地球そのものの温度上昇は止められなかった。人工オゾンを噴霧させたところで、地球上の各国の温度は絶賛上昇中。WUSU諸国も温暖化の助長を行ってしまったこともあるために、一概にアジア諸国を責めることもできないのだ。

「・・・・・・!!」

亜里去は背後に気配を感じた。普段ならば、来琥やカナのものであろうと考えるだろうが、今はそんな時間ではなかった。明らかに一般市民が普段放つような気配ではなく、亜里去に向けられている確かな気配だった。

 気配は二つ。そのうちの一つは、亜里去がよく知る気配だった。だが、もう一つは全く感じたことのない感覚だった。

「誰!!」

亜里去は鈴嵐を構えながら振り向く。そこにいたのは、木嶋相子、そして、面識のない一人の男だった。

「安心しろ、お前を仕留めるようなことはしない。ただ、大事な事を伝えに来たまでだ」

そう言われてから、亜里去は相子が戦闘態勢ではないことに気づいた。彼女がいつも仕込んでいる落穴式の地雷原発射装置も見当たらない。

「なら、さっさと用件言って立ち去ってくれない? こっちはプライベートな時間に乱入されていらいらしてるんだけど」

「まぁ、長い話だが、手短に言わせてもらおう」

明らかな苛立ちを見せながら退却を要請する亜里去に対し、男はいたって冷静に、むしろそんな亜里去を見て呆れているようにも見えた。

「俺の名前は終未帝しゅうま・みかど。三年前、五神斬生誕事件こあくまたちのよるにおいて、暗銃刀・刃薔薇を手にした男だ」


 もはや転校生の恒例行事となっている質問攻めも終わり、そのまま突入した何でもない授業が終わり、来琥達は帰路についた。校内外の清掃は毎晩専用のロボットが行う。

 この日、来琥の帰り道はいつもと違った。通った道という意味で違ったわけではなく、雰囲気的に違った、ということである。その理由は一つだった。今日転校してきた転校生、針現実穂が、来琥と奈美の二人と同じ方向だからだと二人についてきたのである。

「でもよかった。針現さんが話しかけやすくて」

「いやいやぁ。それと、実穂でいいよ」

「うん改めてよろしくね、実穂ちゃん」

「こちらこそ」

笑いながらも暖かな空気を醸し出していた女子二人が話している間、来琥は実穂に関しての情報が欲しかった。朝、来琥に見せた笑みは、恐らく何かを知っている顔だった。もし、この帰り道に割り込んできたのも、何かを企んで行ったものだとしたら。考えすぎと言われるかもしれない。少なくとも、奈美よりも来琥は家までの距離が長い。人に聞かれたくないような話をするならそこしかないだろう。

「じゃあ、私はここで。実穂ちゃん、ラッコ。また明日ね」

奈美は帰り道の間、笑みを絶やすことはなかった。元々、ほとんど笑っている彼女が、授業や行事と言った真剣な時以外に笑っていないことなどほとんどなかった。

「ああ」

「またね」

来琥と実穂はそれぞれが別れの言葉をかわした。

 奈美がいなくなると、やはり話題は来琥のことになった。だが、最初に話を切り出したのは来琥だった。

「針現、お前、俺のことを知っているのか?」

「ま、来琥君が隠したいと思うことは知っているかな」

人の悪い笑みだ、と来琥は思った。やはり、こちらの情報が漏れていう来琥の考えは間違いではなかったのだろう。

「たとえば、刃薔薇を持っていることとかね」

それを言われた時、来琥の中でただならぬものを感じた。もしかしたら自分は、彼女と出会うべきではなかったのではないのかと。

「私、実はWUSUから送り込まれたの」

「アメリカ人・・・・・・?」

「まさか。私は生粋のジャパニーズよ」

「目的はなんだ」

「あなたとそう変わらないわ」

「何・・・・・・?」

来琥はその言葉の意味を図りかねていた。来琥が今戦う理由としている、全ての五神斬の破壊。理由はもちろんあった。だが、その理由を与えた男は、来琥に対して、様々な条件とリスクを背負わせた。

「一年以内に起こるとされている、五神斬を持つ者の暴走。それを事前にとめるために、私は遥々WUSUの命を受けてきたの。私自身も、両鎚棒りょうついぼう・桜鎚を持ってね」

「もし間に合わなければ、お前も暴走する」

「その心配はいらないわ」

「何故だ」

「じきにわかるわ」

来琥の質問を上手いこと受け流すと、実穂は走り出し、角に来たところで形式的にか、手を振った。

「じゃーね、来琥君」

実穂はそう言うと、路地を曲がって姿を消した。


 来琥は実穂と別れた後、カナに連絡を取った。

「カナ、五神斬の一つ、桜鎚の所有者と接触した。WUSUに所属している」

『なるほどね。戦闘は?』

「いや。だが、後々戦闘になる可能性はある」

実穂の目的達成には、来琥や亜里去との戦闘は避けられない。WUSUにいる以上、もし公にばれれば世界規模で問題になる可能性がある。日本とWUSUの国際関係だけでなく、日本が非公認とはいえ、極悪な武具を五つも野放しにしていたということがばれるのだから。

「所有者の針現実穂に関する情報を集めてくれ」

『リョウカイ! まっかせといて!!』

威勢よく返された言葉と共に、通信は切れた。情報収集ならばカナの十八番だ。恐らく、こちらが望んだ情報を集めてきてくれるだろう。来琥はそれ以上誰に連絡することもなく家路についた。


「刃薔薇を手にした・・・・・・来琥が五神斬生誕事件こあくまたちのよるに関しての情報が何もないのは、そのせい・・・・・・」

「俺の目的はただ一つ。五神斬全てを破壊することだ!」

そこで亜里去は、その目的が来琥の目的と一致していることに気づいた。

「君は見たはずだ。五神斬が暴走する未来を」

五神斬のことをどこまで知っているのだろうか、この男は。ここまで五神斬のことを知っている者は、今までいなかった。もしかしたら、未来を見れる自分や驚異的な情報網を持つカナよりも上をいくかもしれない。

「五神斬の持つパワーを受け止めるには、それに見合うほどの器を持った人間が必要だ。例えば・・・・・・そう、超能力者のようにな。俺は超能力者じゃあない。だから明日未来琥に刃薔薇を渡した」

それにしても、よくも来琥がそんなもののために刃薔薇を受け取ったものだ。この男、元々来琥との関わりがあるようにはとても見えない。何か脅しをかけたのか、それとも。

「そして、実はここに来た理由はもう一つある」

亜里去は分かってしまった。彼らがここに来たもう一つの理由。

 ――何が「お前を仕留めるようなことはしない」よ!!

「目的の一部を達成させてもらう!!」

「お断り!」

亜里去は鈴嵐を振って辺りに暴風を巻き起こすと、二人に背を向けて走り出した。しかし、その進路に合計で三体のサポロイドが立ちふさがる。

「殺陣椿の下にいるだけあって、給料は万全ね!!」

亜里去は鈴嵐を振い、真空刃でサポロイドを攻撃すると、サポロイドがその真空刃をかわしながら接近してくる。

「褒めてるつもり?」

「ぜんっぜん!!」

至近距離にまで近づいたサポロイドに鈴嵐を直接叩きつける。鈴嵐に叩かれたサポロイドの一体が倒れると、引き続いてもう一体のサポロイドに鈴嵐を叩きつける。そのままもう一体のサポロイドの拳をすれ違いながらかわすと、すぐに振り返って背後から鈴嵐を振り上げて真空刃を起こす。真空刃はサポロイドの腹部を貫き、両断した。

「まだ私はミッションをクリアしてないのよ!!」

「知らないわよ、そんなの!!」

両断したサポロイドの爆発によって起きた黒煙の中から相子が現れ、拳を突き出してくる。亜里去はその拳を紙一重でかわして鈴嵐を叩きつける。追撃しようと腕を引き、再び振り抜く前に相子の拳が亜里去の左頬に食い込む。亜里去はそれによってふらついた体で一回転して鈴嵐を横薙ぎに振う。しかし、相子はそれに屈せず二連続で拳を突き出す。ふらついた亜里去に、再び相子の拳が突き刺さり、亜里去は地面に倒れた。相子がとどめをさそうと飛び上がったと同時に、相子の右方にあった川の水のうちの一部が蒸発し、その水蒸気がさらに火で熱せられて水蒸気爆発を起こした。その爆発は相子を叩き、攻撃は完全に中断された。

「おい、大丈夫か!!」

亜里去がその声が発せられた方角を見たとき、そこにいたのは実だった。

「実!!」

亜里去は立ち上がると暴風を巻き起こして相子と帝を足止めし、その場から走り去った。


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