地獄通信1 人間として最後まで生きる16
翌日の放課後、アシロは学校を出ると、その足で音楽部の部室へ向かった。ソファの向かいに腰掛けていたのは、音楽部部長の中村由紀子だった。
アシロは警察に情報を伏せるよう要請していたため、教師や校長、そして楓たちを除いて、美智子が由紀子をダークピエロだと名指しした事実を知る者はいなかった。彼はその件について問いただすために来ていた。「音楽部の中で、ダークサーカスについて知っている人はいますか?」「音楽とサーカスは関係ないでしょう?」由紀子はそう返し、少し間を置いてから続けた。「それより、お金の件はどうなりました?」「募金を集めることは考えていますが、今すぐは難しいです」「それじゃ、もう間に合わない!」由紀子は思わず声を荒げた。「……すみません。取り乱しました」
「由紀子が突然、『もう間に合わない』って叫んだよな」「どう考えても、何か裏がある」「放っておくわけにはいかないな」そうして、アシロと結衣は由紀子の家へ向かった。玄関に近づいた瞬間、家の中から荒い怒鳴り声が響いてきた。「このクソ女、さっさと金を出せ!」「もう……そんなお金、うちにはない!」「ユイ姉……」「……うん、行こう」アシロは幻術を使い、結衣の姿を警官のものへと変えた。二人はそのまま家の中へ踏み込む。「動くな、警察だ!」男が振り返った瞬間、アシロは距離を詰め、床に押さえつけた。「警察呼んだのか、この女!」抵抗する男を制しながら、アシロは地下警察へ連絡を入れ、応援を要請した。
その後の取り調べで、ようやく事情が明らかになった。由紀子の両親はギャンブルにのめり込み、家はすでに破産状態にあった。男はその借金の取り立てに来たのだという。「病気だって話も、嘘だろ」男はそう吐き捨てた。「だがな……五百万だ。どう考えても、今すぐ返せる額じゃない」「……なるほどな」「じゃあ、五百万を肩代わりしても、問題は解決しないってことか」「結局、由紀子本人と向き合って話すしかなさそうだな」




