光のもとに潜む影37
「あのお嬢さん、いったい誰なんだ? まさか親戚ってわけじゃないよな。どう見ても育ちのいい家の子だろ」アシロが冥市に小声で言った。「大丈夫なのか? 何かあったら俺たち、洒落にならないぞ」「平気だ。あいつはそんなに弱くない」「冥王か……地獄の主を追い払ってから、少しは頼りになったってことか」「前が頼りなさすぎただけだろ……。ほら、お前だって聞かないと冥王だって分からなかったじゃないか」「確かにな。どれだけ引きこもってるんだよ」「で、今回は何を売りに行くんだ?」「薬材だ。人間側の偉い奴が欲しがってる」「偉い奴ね……」「不満そうだな」「別に不満じゃない。ただ……あいつら、あんまり好きじゃないんだ」「そうか。でも、こっちは通貨が必要だ」「まあ……好きにしろよ」二人は沖縄へ転移した。
「……はぁ。なんでお前らなんだよ」目の前に立っていたのは比嘉だった。「知り合い?」「まあ、昔からの付き合いだ」「付き合いっていうか、悪友だろ。わざと相手の邪魔するタイプの」「でも公の場じゃやらないよな?」「当たり前だ。そんなことしたら仕事の邪魔になる。お前、警察官だろ。で、薬材をそんなに集めてどうする?」比嘉は少し表情を曇らせた。「署長の娘が急に倒れてさ……痙攣まで起こした。医者に毎日薬を塗れって言われてるんだ。地獄の薬が効くって聞いたんで、ツテのある奴に頼んで紹介してもらった」「なるほどな。写真撮って持ち帰って確認したいんだが……」「医者に止められた。地獄の薬は光で分解されるらしい」「……撮れないのか」冥市が眉をひそめた。「待てよ。なんで人間の医者が、そんなこと知ってるんだ?」「言われてみれば……確かにおかしいな」「その医者に会えるか?」「もう帰った。今日は無理だ」「名前は?」「モルガナ」「……モル、って……」アシロの顔色が変わった。「背が高くて、痩せた女じゃないだろうな」「なんで分かる!?」「くそ……あいつ、何してるんだよ」「知ってるのか?」「魔女祭司だ。しかも本気で人間を殺そうとしてる、危険な奴だ」「じゃあ、なんで人間を助けて……」「次に会ったら絶対聞く」アシロは薬材を差し出した。「ほら、まずはこれを持っていけ」取引を終えると、二人はすぐ地獄へ戻った。
「冥市……嫌な予感がする」「俺もだ……あの姉貴、どうも腹の中が読めねえ。さっき、警察に“あいつが何人も殺した”って言わなくて正解だったな」「まだ目的が分からない。……俺は今すぐ、あいつに会いに行く」




