地獄通信1 人間として最後まで生きる21
2019年、恵子は病院のベッドに横たわっていた。70歳という年齢は衰弱しているように見えた。息子のフォトジャーナリスト、工藤恒一が傍らで見守っていた。「ちょっと話があるんだ」「何だ?」「さっき言ってた『地獄通信』、今でも結構人気があるんだよ」「本当か…」恵子の視線は遠い過去を見つめるように、遠くを見つめた。「記事にしちゃってもいいかな」「芸能人のことを書いてほしい」柔らかくも、毅然とした口調だった。「犯罪、都市伝説、スキャンダル、芸能人…何でも書きます」「地獄通信はダメ」恵子は首を横に振った。「地獄少女たちに迷惑がかかる。あの時、迷惑をかけたくなくて地獄通信をやめたんだ」少し間を置いて、声を落とした。「それに…せめて人として、最期までまともな人生を送りたい」恒一はしばらく黙り、それからいつものジャーナリストらしい笑みを浮かべた。「じゃあ、地獄少女たちが迎えに来たら、匿名で事実を公表するよ。そうすれば誰にも迷惑をかけないからね」「待って――」恵子が言い終わる前に、恒一は既に背を向けて部屋を出て行った。「何か飲み物を買ってくる」ドアが閉まった瞬間、恵子は胸に鋭い痛みを感じた。思わず胸に手を当てた。再び顔を上げると、病棟に二人の人影が立っていた。一人は物静かな少年、もう一人は長い髪をなびかせた女性だった。「なるほど……」恵子は静かに言った。「私を連れ去りに来たのね」「その前に」少年、アシロはいつものように落ち着いた声で言った。「まずは地獄へ連れて行って裁きを受けさせなければならない」「私はもう年を取ったのに、あなたはまだこんなに若い。さっきの女性は?」恵子は女性を見た。「私の姉よ」 「ブリクタ。今の大天使は――アシスっていうんだ」「そうなの……」恵子は優しく微笑んだ。「家族が見つかったの?それは……素晴らしい」息を呑んだ。病棟のドアが開いた。「お母さん、僕は帰る――」恒一は言葉に詰まった。ベッドサイドに駆け寄り、恵子をぎゅっと抱きしめ、抑えきれないほど泣いた。




