地獄通信1 人間として最後まで生きる4
まず、楓たちは行動を開始した。記者に変装し、サングラスなどで身分を隠して、恵子の中学校に潜入した。作戦は順調に進み、教室で恵子の作品を発見した。破損した額縁を観察し、手形などの痕跡を採取したうえで、「地獄の」技術を駆使して分析した結果、結論は明白だった。美術部部長であった恵子の体験談は、事実であったのだ。
一方で、新たな展開も見えてきた。一夫のクラスメイトによれば、一夫と恵子は中学時代に恋人同士だったという。恵子は卓越した画力により名門高校へ無試験で進学したが、一夫は成績が平凡で進学できなかった。その日のこと、一夫が美術室に入るのを目撃し、後に恵子の作品が破損したと聞いた。しかし、アシロは違和感を覚えた。確かに一夫が美術室に入ったことは確認できたが、それだけでは作品を壊した証拠にはならなかった。真相を確認するため、アシロは再度恵子に事情を尋ねた。恵子は作品はすでに処分したと言いつつも、現場の写真をまだ保持していた。写真にはイーゼルと恵子の自画像が写っていたが、アシロはすぐに自画像に異変を発見した。オレンジジュースのような染みがついていたのだ。「まさか…!?」アシロは目を見開いた。「どうしたの?」美樹が声をかけるが、無視された。アシロはすぐに一夫のクラスメイトに協力を依頼し、恵子の中学時代のビデオ映像を入手した。映像によると、一雄はオレンジジュースを飲んでおらず、美術室にジュースを持ち込んだのは学校の警備員だけだった。真相は明白である。警備員が美術室を巡回中、誤ってジュースを作品にこぼし、慌てて拭こうとしたものの、完全に拭き取れず作品を損傷させてしまったのだ。一夫が行ったのは、イーゼルを接着剤で修理したに過ぎなかった。
「どうしてこんなことに…?裏切られたと思ったのに…」恵子は顔を覆い、声を震わせて泣いた。「恵子…」「あの声…まさか…」「一夫を呼んだの」「ごめんね、一夫…」「大丈夫、また仲直りしよう」「うん…」




