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アルシェナの思い出1
邪霊アルシェナ――それは精霊の祖先である。彼女が生まれた時代、この世界にはまだ人間は存在せず、大地には原始的な爬虫類が静かに生きているだけだった。太陽の光がゆらめく草原や岩場を、彼らは慎重に這い回り、時折鋭い目で周囲をうかがっていた。
アルシェナはそれらの生き物と意思を交わすことができ、ただ観察するだけではなく、ときには自らの興味で一部の生物の進化の行く先を変えることもあった。彼女が指先を翳すだけで、小さな爬虫類の体の形や行動が微妙に変わり、世界の均衡は彼女の気まぐれにほんの少しずつ影響を受けていったのである。




