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ラノックの思い出5
ラノックの今の仕事は、サキュバスの長ブリセラの家事を手伝うことだった。「サキュバス? あのサキュバスか?」「ああ、あのサキュバスだ。だが、サキュバスのところで働くのは困るんじゃないか……やめておくか?」「いや、やってみるよ」「無理するなよ。もう恋人ができてもおかしくない年なんだからな」「分かってるって……」ラノックは顔を赤らめ、視線をそらした。「からかうなよ……」「いや、事実を言っただけだ」
二人は顔を見合わせて笑った。だがラノックの胸の中には、少しだけ不安もあった。サキュバスの長ブリセラは、この町でも有名な存在だったからだ。美しく、そして危険だとも噂されている。そんな相手の家で働くことになるとは、ラノック自身もまだ実感がわかなかった。それでも彼は、小さく息を吸い込むと、決意したようにうなずいた。




