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ブリガンティアの思い出6
静寂の中、本来なら無人であるはずの場所から、突然声が響いた。「誰だ?」首長はわずかに身をこわばらせ、周囲を見回した。しかし、どこにも人影はない。「精霊だ」その声は柔らかく、流れる空気に溶け込むように漂っていた。「……何の用だ?」しばしの沈黙の後、精霊は静かに語り始めた。長年にわたる人間の破壊によって、精霊の住む自然は次第に失われている。森は焼かれ、水は濁り、大地は生命を失いつつある。このままでは、やがて精霊はこの世界を去らざるを得ないだろう。だからこそ、彼らは人間への報復を選んだ。農作物を枯らしたのは、我々だ。それは存亡を懸けた選択だった。もし首長が精霊との共存を拒むなら、彼らは力の限り人間をこの地から追い払うつもりだった。
静寂の中、首長はうつむき、しばし考え込んだ。遠くの荒野から風が吹き、乾いた荒野の匂いを運んでくる。「……わかった」彼はようやく口を開いた。「自然を回復させよう。君たちと共に生きる道を選ぶ」精霊との無意味な戦いは望んでいなかった。その力はすでに目の当たりにしている。本気になれば、人間の命を奪うことなど、彼らにとっては造作もないことだった。




