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旅立ち1
ラノックが地獄で目を覚ますと、視界にはただ闇が広がっていた。地獄には光が存在せず、頭上に浮かぶ星々だけが、かすかに世界を形作っている。「……そうか。俺は、殺されたのか……?」ラノックは自分の胸に視線を落とした。しかし、そこに血の跡はなかった。「ああ。お前は、もう完全に死んでいる」「……お前は誰だ?」「ブリガンティア」「神か?」「いや……私は精霊だ」「精霊……」――精霊とは、自然の中から生まれる存在。豊かな大地や命に満ちた場所に、ひそやかに現れる。木々の間に宿り、水より生まれ、風にささやき、光と溶け合う。その足跡は、世界のあらゆる場所に残されている。深く静まり返った森の夜。星明かりの中で、彼らのかすかな姿は揺らめく。この世界は、そうした目に見えぬ生命に満ちているのだ。
参考文献
Genette, G.(1972)Figures III(=『フィギュールIII』).
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