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織り手の誕生104
ラノックは戦闘の最中、冷や汗が滲んでいるような錯覚に襲われていた――いや、実際に汗をかいているわけではない。ただ、それほどまでに神経が研ぎ澄まされていたのだ。彼は怪物の動きを観察し続ける。異様なまでに多い肢。だが、その数の多さゆえに、攻撃はどこか噛み合っていない。わずかな乱れ。ほんの一瞬の綻び。ラノックは賭けに出た。わざと鋏の力を緩める。案の定、怪物はすべての肢を同時に叩きつけてきた。力任せの一斉攻撃。だが、動きが集中した瞬間、そこに死角が生まれる。ラノックは身を翻し、迫る肢を紙一重でかわすと、「還風」を怪物の腹部へ叩き込んだ。確かな手応え。怪物の咆哮が轟く。初めて決定的な一撃が入った。肢の動きが急激に乱れ、統制を失っていく。その隙を逃すラノックではない。鋏を深く突き立てる。怪物は絶叫し、無数の肢が崩れ落ちる。やがて全身は崩壊するように砕け、塵となって空中へ散った。
推定総盗用率:およそ0%




