織り手の誕生8
実は、かつての魔王エグリスも、長老と同じ懸念を抱いていた。だからこそ、彼女はラノックを後戻りのできない道へ追いやったことに、ずっと憤慨していた。
人間は本来、魔族の魂に耐えられない。たとえ肉体が崩壊しなくても、長い浸食の過程で徐々に人間らしさを失っていく。しかし、彼女の魂から生まれた宝石は、ラノックを選んだ。まるで魔王の責務を背負わせるかのように。
だが、エグリスは知らなかった。ラノックが黒い光に呑み込まれなかったのは、彼女が残した呪いのおかげだということを。その呪いの本質は、呪われた者を奴隷へと変えるものであった。黒い光に完全に呑み込まれれば、「奴隷」になることすら叶わなくなる。こうして、呪いは彼の怪物化を抑える枷となり、同時に救済の手段となった。しかし、まさにこの呪いこそが、ラノックを攫った怪物たちを引き寄せる原因となったのだ。彼らはラノックの力を羨み、呪いの影響で「彼を傍らに置かねばならない」という感情を抱かざるを得なかった。そして今のところ、ラノックはそのことにまったく気づいていない。
参考文献
Rowling, J.K. (2005) Harry Potter and the Half-Blood Prince(=『ハリー・ポッターと混血の王子』).
Campbell, J. (1968) The Hero with a Thousand Faces(=『千の顔をもつ英雄』).
Tolkien, J.R.R. (1954) The Lord of the Rings(=『指輪物語』).
Durkheim, E. (1995) The Elementary Forms of Religious Life(=『宗教生活の原始形態』).
Braudel, F. (1984) Civilization and Capitalism, 15th–18th Century(=『文明と資本主義、15–18世紀』).
Hegel, G. W. F. (1807) Phänomenologie des Geistes(=『精神現象学』).
Foucault, M. (1975) Surveiller et punir: Naissance de la prison(=『監獄の誕生――監視と処罰』).
Heidegger, M. (1927) Sein und Zeit(=『存在と時間』).
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