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エピローグ 素直、その先に

あの事件から2週間が経とうとしていた。

あんなに辛く、苦しかった日々が消え失せ、長い夢を見ていたかのような感覚が残った。

俺のやったことは俺と過去に面識があった連中など中学が同じだった人達には広く知られてしまっていた。

他の高校でも話題になっている、暫くは外に出られないだろう。

一通のメッセージが来ていた。堀田だ。

「俊介?お前退学になったん?」

「今更かよ、自主退学って形でやめた」

「そうなんだ、亜稀菜とは今連絡とってるの?」

「いや、ちょっと控えてる。あんなことがあって亜稀菜自身も怖かっただろうし、辛いと思うから。」

「そうか、亜稀菜もお前に対して酷いことしてしまったって言ってたぞ?」

「そうなんだ……」

亜稀菜、手紙の返事をくれた日から暫く連絡は取っていなかったが、今は元気にしているだろうか。

いや、亜稀菜は辛いことがあっても最後には前を向いて立ち上がれると信じている。

きっと大丈夫だ。

「お前これからどうするんだ?」

「俺はいずれ高校卒業資格を取るためにも別の高校に編入するよ。」

「ただそれまでに時間が大量にあるからその使い道を考えている最中」

「そうなんだ。まあ頑張れ」


俺に残ったのは有り余るほどの時間だった。今まで学校で過ごした時間、亜稀菜と一緒にいた時間、辛く苦しい思いをした時間、全てが空白になったのだ。

隣の部屋からギターの音がする、父親だった。

俺の父は5年近くエレキギターをやっているが腕前はいつまでも初心者レベルだった。

「ギター……」

俺は父親の元へ本能のままに足を運ばせた。

「ねえ父さん、ギター貸してよ。上手くなりたい!」

「えっ!?お前がギターか?急にどうした?」

「暇すぎる!だからその時間を埋める何かが欲しいんだ!」

「そうなのか、じゃあわかった。こっちへ来なさい。」

2時間ほどギターの基礎を父親から学んだ。父親と何かをするなんて小学生以来だった。

ギターの演奏は自分が思っていた以上に難しく、指も痛くなったがそれ以上に学ぶことがとても楽しい。

今まで学校があって出来なかったことを今こうやって楽しむ、この幸せに気づけたのがとても嬉しかった。

「俊介、難しくないか?」

「難しい、けど新しい知識と技能を頭の中に入れていく楽しさの方が何倍も勝る。」

「それなら良かった!きっとお前の腕前は上達していくさ」

「そうだな!」

その日からずっとエレキギターに夢中になっていた。ここまで難しい事は今まで全く続けられなかったのに、今では死ぬまで続けられそうな気がしてならない。毎日が楽しい!本気でそう思えるようになった。


次の日の夜、若林からメッセージが来ていた。

「おーい俊介!お前飯行かないか?」

「いやごめん、俺暫く外出られないんだよ。」

「あ〜やっぱりあの件でか?」

「そうだよ」

「そういえば、お前の元カノと今話しているのか?」

「いや、連絡は控えている」

「話してあげなよ〜寂しがっているかもよ?それにあの事件に関してもあの子何か責任感じてるっぽいって堀田も言ってたから」

「そうか、わかった。」

俺は亜稀菜に連絡しようか迷ったが、勇気をだして連絡した。自分の明るい姿を見られる方が彼女も嬉しいかもしれないと思った。

「亜稀菜、元気にしてる?俺は今結構自分の人生を謳歌して楽しんでいるよ!」

「元気だよ、良かったね」

前より少し暗めな雰囲気を帯びた文だ。きっとまだあの時のことで気持ちが落ち着いていないのだろう。

「俺さ?ギター始めたんだよ!結構難しいけど楽しいからどんどん上手くなってくよ!」

「そうなんだ笑、良かったね。きっと上手くなれるよ。」

「応援してくれよ?」

「うん笑。頑張れ〜」

少しだけ元気を取り戻してくれたと感じた。だがやっぱりまだ時間が必要だ、俺も亜稀菜も。

彼女は変わらず俺の幸せを願ってくれている。それなら俺に出来ることはその期待に応えて日々を充実させていくことだ。

そんな日々がしばらく続いたある日、俺はベッドに横になって今までの事を振り返っていた。

亜稀菜と出会った時から今に至るまで。


今まで俺は人に幸せを求めていた。亜稀菜に対していつも愛情を要求してきた。

それで都合が合わなかったり、期待に応えられなかったりすると途端に落ち込んだりしてとても幸せとは言えなかった。

もちろん亜稀菜と過ごす時間はとても幸せだった。だが今俺が感じている幸せとは少し違う…。

自分で見つける幸せと……人にもらう幸せ、

そういえば、俺は趣味を見つけた時からまるで人が変わったように情緒が安定していた。

自分が楽しめるものを見つけられて、それに没頭するうちに楽しみと幸せを感じられるようになった。

前みたいに人を妬むことも、恨むことも、悲しむことももうない。残ったのは純粋に人生を楽しむ気持ちとこれからの希望……。


「ああ……そうか……!そういうことだったんだ…!やっと気づいたよ!」

俺は今まで気が付かなかった本当に大切なことに気づいた。

亜稀菜は俺に、自分の意思を大切にすること、自分の力で幸せを見つけることを教えてくれたんだ!

自分の意思に従ったことで俺が本当にやりたくて、大切なものに出会えた。

自分の力で幸せを見つけられたことで人に依存することの無い、自分の人生を誇らしく感じられるような生き方を手に入れられた。

そして何よりこれらに気づけたのは俺が自分を客観的に見れたからだ。客観的に見て自分の誇れるもの、良い所、悪いところ、足りない部分を見つけられるようになった。


俺の良い所は、思ったことを隠さずにしっかり言う、感情を表現出来る!自分の意思を大切に出来る!


悪い所は、負の感情を溜め込みすぎたり、弱い部分を見せるのを躊躇ったりするところだ。


今の俺に足りないのは、人を愛することだ。

嫉妬で狂って、思い通りにならなくて自分の要求をぶつけてばかりでは自分も相手も傷つけるばかりだ!

自分を大切にして、相手の意思も尊重できるようになって、初めて人を愛することが出来るようになるんだ!


そして、これらに気づけたのは間違いない!

亜稀菜が素直に生きることの大切さを俺に教えてくれた事が大きい。

素直なのはただ嘘をつかずに本音を言うことだけではない。

自分を客観的に見て、良い所も悪い所も受け入れる。

相手を尊重して良い所も悪い所も理解して受け入れる。


亜稀菜は俺に「素直」に生きることの大切さを教え、

その先の「受容」の大切さに気づかせてくれた。

素直の先は「受容」だった。


「亜稀菜……本当にありがとう……!俺はこれから見違えるくらいに、幸せになってみせる!

素直という言葉を胸に……強く生きていく…!」


自分を受け入れ、他者を尊重出来るような自分を

これからつくっていく。

素直になれるその日まで……

皆さん初めまして、SHUNです。

この度は僕の初めて執筆した小説「素直になれるその日まで」をご愛読いただき誠にありがとうごさいます。


亜稀菜が好きな故に徐々に心を壊していきながらも、最後には前を向いて生きていこうと決意した俊介、

俊介が辛い思いをしていることに気づかず、俊介を深く傷つけてしまったことを後悔するも反省し彼の幸せを願った亜稀菜。

この2人には互いの良い部分と悪い部分をしっかりと見つめ、自分に何が足りなかったかを深く理解して成長出来るような関係を築いていってくれることを作者の僕は願います。

素直の最上級は「受容」、人は誰しも自分の悪い所ばかりを考え、良い所を蔑ろにしようとする傾向があります。

悪い部分を見てしまう気持ちは分かりますが、良い所を見つけられずにいては人は一向に成長することは出来ず、自分を大切にすることも出来ません。

自分と他人の良い所悪い所を知って理解する素直さ、

知った上でその全てを受け入れる。

こうして人は本当の意味で強くなれるのだと考えています。

受け入れるためにはその基となる素直さがないと出来ません。


俊介には亜稀菜に貰った素直な自分を大切に、今後の人生を華のある、辛いことがない充実した幸せな人生を送って欲しいと思います。

亜稀菜には、過去のトラウマから立ち直り嫌なことにもめげない強い心を持って、自分を信じてあげられるような人になってくれることを願います。


最後までご愛読ありがとうございました!!

またいつかの新作をご期待くださいm(_ _)m!

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