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第七章 悔恨

「俊介ー!飯の時間だぞー!」

「はーい、今行くからー!」

あの謝罪の日から2日後に俺は高校を自主退学した。あんなことがあってはもう学校に会わす顔などないし、俺も片岡と同じ環境で学校生活を送るのは嫌だった。

クラスメイトと亜稀菜に向けた手紙は先日家に訪れた先生に渡してもらうように伝えた。だが、手紙におかしな内容が含まれていないかを確認するため先生達が複数人で確認して大丈夫なら手元にわたるそうだ。

俺と片岡との間には示談が成立した事でこの事件は幕を閉じた。

今回の事で学校にも、親にも大きな迷惑をかけてしまったことは本当に申し訳ないと思っている。

今日は事件から1週間が経っていた。父親が珍しく焼肉をしてくれた。久々にこうやって親と会話したな、親と会話を楽しみながら飯を楽しむなんて最近なかったからとても楽しかった。いや、それ以上にようやく肩の荷がおりたと言うように俺は深い安らぎを味わった。

「俊介、久々に食う肉の味はどうだ?」

「マジで美味い。なんか、ずっと脳内で巣食ってた虫がようやく居なくなった感じ」

「なんだそれ笑」

「いや〜しかし、お前があんな事件を起こすなんて想像もしなかったぞ。お前に彼女が出来たって聞いて幸せそうだと思っていた矢先に起きたことだったから父さんびっくりだよ。笑」

「まあ、人生なんて何が起きるか誰も分からないからね。」

「マジで羨ましいって思ったからな〜。父さん高校生の時なんて部活中心で女の子と手を繋いで帰るなんてした事もなかったんだぞ?」

「そうなんだ笑」

「ああ、ただこれだけは絶対だ。もう二度と同じような事を繰り返さないことだな。」

「それは重々承知している」

「なら大丈夫だ」

1時間半くらい食事を楽しんだ後俺は部屋に戻った。

「俺が書いた手紙、ちゃんと亜稀菜の元に届いたかな。」

スマホは既に手元に戻っていたが俺は彼女には連絡をしなかった。事件から1週間しか経っていないので亜稀菜もまだ心の整理が出来ていないと判断したからだ。

今の状態では更に心に負担をかけさせるだけだ。

そう思っていた。


「亜稀菜!?」

俺はスマホを見て何度も見返した。彼女からメッセージが届いているのだ。しかも今までに見たこともないくらいの長文で!

「何かあったのか!?いや、もしかして手紙のことか?」

手紙は彼女の元へちゃんと届いていた。それに亜稀菜は返事を返してくれている!

俺は1文1文目を凝らしながらメッセージを読んだ。


『手紙読んだよ、ありがとう。

まさか手紙をくれるなんて思っていなくて、

先生からは君に連絡することは絶対にするなって反対されたけど、私もどうしてもあなたに伝えたい。

やっぱり俊介は素直で優しくてまっすぐだよ

私だったら手紙を残すことなんてしなかったと思う。自分のせいで大切な人に怖い思いをさせてしまったって思うと合わせる顔が無いもの、

だから俊介は人として強いよ。そして優しい。

確かに私は嘘をついた。本当はあの現場は怖かったし、私のせいで俊介が辛い思いをしていたのを知るのはとても苦しかった。

でもそれは俊介も同じだったと思う。不安だって私に対していつも沢山心配してくれて

私に嘘をついていたとしても、私の知る俊介はいつも笑顔で感情を素直に表現出来る、出会った時から変わらず素敵な人でした。

話している時間楽しかったよ。少しの間あなたの時間を独占出来たことも嬉しかったです。

たくさん振り回してしまってごめんね。

自分の気持ちを優先させるばかりにあなたの気持ちを蔑ろにしてしまっていた。

退学は苦しい判断だったと思うし、俊介のした事も私のした事も人からとても許されるものじゃないから。

俊介が前を向いて生きていく為にも私が邪魔する訳にはいかない。

新しい道で頑張ってね、応援しているよ。

好きになってくれてありがとう

また沢山話せることを願っている

電話も出来るといいね。


ありがとう、またね。』


「……っ!……ううっ……!」

俺の目からは涙が止まらなかった。俺が送った手紙にここまで真摯に返事をくれるなんて思っていなかった。亜稀菜の優しい言葉一つ一つが俺の涙腺を刺激して滝のような涙を流させた。

今までの辛かった出来事や感情が全て水に流れていくようだ。

「……亜稀菜っ……亜稀菜っ……!!」

彼女の優しさが俺の惨めな面を思い出させる。

俺は今までどうだった?彼女に何をしてきた?

悪い奴等に翻弄され、亜稀菜の事も疑うようになって、心配ばかりかけさせ、目の前で怖い思いも、辛い思いも沢山させてしまった。

素直になれず、自分の気持ちを押し付けてしまっていた……!

それでも亜稀菜は決して見捨てることなく、不満も口にせずっ……俺を信じてくれた……!俺の幸せを願ってっ……!

ずっとずっと……信じてくれていた……!

俺は震える手をなんとか動かし亜稀菜に返事をした。


「ありがとう、本当にありがとう……!俺はずっと心配ばかりかけさせ……辛い思いばかりかけさせてしまった……。ありがとう、ありがとう……。」

彼女はすぐに返事をくれた。

「私の方こそありがとう。」

「また出会えたらいっぱい話そう……?」

「うん、絶対さようならなんて言わないから!

だからまたね。」


彼女はただひたすらに幸せを願ってくれている。

ダメだ!今のままでは駄目だ!二度と同じような事を繰り返さない為にもっ……、亜稀菜の笑顔をまた沢山見られるように……俺は変わらなければ…!

成長しなければ……!

亜稀菜がくれた素直な自分、幸せを願う言葉を大切にしてっ……前へ、進まなければ!!

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