初めての友達
「はあ、仲睦まじいのは良いことですが、大人数の前でいちゃつくのはやめたほうがよろしいかと思いますよ」
困ったような声が響き、私を抱きしめて表情筋が緩みまくっていたゲイルさまはすぐに知的な顔になる。
「学園長。大人数とは…ああ。申し訳ございません。早朝の気分のままでいました。すみません」
ゲイルさまに抱きしめられていて前が見えない私は、ゲイルさまに訊く。
「ゲイルさま、何があったのですか?」
「ああ、うん…いろんな人に俺たちの今の行動をガン見されてた」
ええっ!?
「そ、それは…今後の私の学園生活に影響するのでは…?」
「ふっ、そうかもしれないな。でも、慌ててるのもかわいい」
ゲイルさまの甘い笑みに、やっぱりドキドキしてしまう。今日の私の心臓は、とんでもなく忙しい。
「キャアアっ!!」
突然、悲鳴が響き渡った。ドキドキしていた私の関心は、悲鳴がした方に向く。そして、私はゲイルさまの腕を振りほどき、悲鳴がした方に走り出した。50メートルほどの短い距離を全力で走り、4秒ほどの速さで目的地に到着する。こんなに速く走れたことはない。そういえば、原作「ラルク王国王女は、姉に立ち向かう!」の世界で、ミハナはずいぶんと足が速く、主人公・ラアナが暴走したミハナを追おうとしても追い付けなかったほどである。
「何があったのですか!?」
私が慌てて言うと、そこにいた15歳くらいの女子と、私と同じくらいの女子と、8歳くらいの女の子にきょとんとされる。15歳くらいの女子と私と同じくらいの女子はミスティ学園のセーラー服と私服が混ざったような制服を着ているので、ミスティ学園の生徒だろう。
「お、お姉様、この子だれ?」
私と同じくらいの子が姉らしき15歳くらいの女子に言う。
「ちょっとジェニファー!本人が目の前にいるのに、そんなことを言うのは失礼でしょう!」
我に帰ったらしい15歳くらいの女子ー長いからこれからは姉と呼ぼうーは、私と同じくらいの子に注意する。と、そこへ。
「ミハナ!」
何もなかったようで面食らい、きょとんとしている私の名前を叫びながら、ゲイルさまが私を後ろから抱きしめた。
「いきなりいなくならないで!心配で大変だよ…!」
「ごめんなさい、ゲイルさま。悲鳴が聞こえたから、つい」
私が苦笑すると、姉が目を見開き、
「う、嘘…やっぱりさっきのは見間違いじゃなかったの…。リンルー様があんなことをするなんて…」
と、呟いた。私は思わずあんなことってどんなこと?と訊きそうになったが、口をつぐんだ。ちなみに、ゲイルさまはリンルー公爵家の嫡男で、私が入学するミスティ学園中等部の3年生だ。3年生は15歳なので、ここにいる姉と同学年かも。
「ゲイルさま、この方々は…?」
私が一応訊くと、ゲイルさまが、
「ん?あ、リウレイ伯爵家の令嬢たちだな。確か、次女はミハナと同い年だから、仲良くできるかもな」
と、答えてくれた。そして、ずいぶんと自然な仕草で私の頭を撫でる。それに嬉しくなりながら、私は答える。
「そうだったんですね。えっと、お名前を伺っても?」
「え、えっと、ジェニファー・リウレイと申します。こっちは姉のリオナと妹のミリルです…あ、あなたのお名前を伺っても?」
「あ、はい。ミハナ・ロイヤルと申します。お友達になったくださると嬉しい限りです!」
私が本名を言うと、ジェニファーは固まってしまった。ああ!?そういえば、本名は隠すようにお父様に何十回も言い聞かされてたんだった!本名を知られてしまうと相手が畏れを抱いてしまう、とかなんとか。ジェニファーがいい例だ。
「お、王女様ですの?」
「ジ、ジェニファー!今聞いたことはどうか忘れて!」
私が涙目で頼み込むと、ジェニファーはほどなく了承してくれた。ちなみに、私の偽名はアメリア・マンチェスター。マンチェスター家は王家持ちの伯爵家だ。ありふれた名前なので、聖女だとバレないだろう。
「ジェニファー、私のことはアメリアって呼んで!」
「ア、アメリア、よろしく……!」
「こちらこそ!ジェニファー、よろしくね!」
こうして、私の学園生活初めての友達ができた。そして結局、悲鳴の理由は分からなかった。
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