指輪
舞踏会、早く終わって欲しい。
ゲイルは賑わう王宮の大広間でそう思っていた。
これが終わったら、ミハナに婚約指輪を渡すのに…!早く渡したい。婚約指輪を渡して受け取ってもらえれば、この婚約は政略ではなく本人同士が認めた婚約者だ。そうなれば…一夜を過ごすこともできる。だが、ミハナも僕もまだ幼いので、一夜を過ごすなんてことは刺激が強すぎる。それに、一夜を過ごしてしまったらミハナは僕から離れられなくなる。そして、僕もミハナから離れられなくなる。二人にとって束縛が強いことだが、先日ローサム王に舞踏会の後で婚約指輪を渡せと命じられてしまっているから、渡すしかない。だが、ミハナに婚約指輪を渡すのが楽しみでもある。ミハナが大人になった時、婚約者同士でいられるか分からないけれど、できる分だけ、彼女と一緒にいたい。
ゲイルはぎゅっと拳を握りしめる。そこへ、妻のリンネと共に、正装をしたローサムが歩いてきた。
「ローサム国王。リンネ王妃」
「相変わらずの人気ぶりだな」
「ええ、本当に」
俺は陛下たちの目線の先を見て、びっくりした。同年代の令嬢たちがうっとりと俺を見つめている。最近はミハナしか見ていなかったから、こんな視線で見られているとは思わなかった。それに、
「見て、今日もゲイルさまは凛々しくていらっしゃるわ!」
「やあねえ、あなた。ゲイルさまにはお美しい聖女さまという婚約者がいらっしゃるのよ。悔しいけど、あきらめなくっちゃ」
という声まで聞こえてくる。その聖女さまーミハナは弟妹に囲まれてこちらに歩いてくる。
「ミハナさま。」
「ゲイル。相変わらずの人気ぶりね」
「あら、嫉妬しないの?」
ミハナが苦笑したのを見て、リンネさまがびっくり顔になる。
「嫉妬などしません。ゲイルはきっと、他の令嬢に興味を持たないでしょうから。ね、ゲイル!」
そんなかわいいことを言ってくるミハナを見て、俺は思わずミハナの肩を抱き寄せた。
「へっ!?」
「そうですよ。俺はミハナ様に夢中です。今の間の抜けた声とか、そういうところもかわいいです」
「………で、ですって、お母様」
ドキドキして真っ赤になっているミハナは、例えようもなくかわいくて、きれいだ。俺は、頭の中で花畑を歩いているような気分になりながら、ミハナをエスコートし始めた。
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