第一王女の昼食
結局、昼食はレイランやマックス、サムソンも一緒に食べることになった。と言っても、庭園で遊び回るだけなんだけど。
「いただきます!」
みんなで手を合わせて和食を頂く。味噌汁の出汁の味が懐かしくて染みる。過労死する前は時間が無さすぎてカップ麺ばっかり食べてたから、余計に美味しい。もしかしなくても、カップ麺しか食べてなかったのも死んだのに関係あった……?
「久し振りの日本食、最高に美味しいです!ミハナ様って料理も上手いんですね」
笑真さんの感嘆の声に私は頬に熱が集まるのを感じる。
「そんなことないです。暇すぎて本を読んでいたら少し覚えた程度で……」
私が俯きながら言うと、笑真さんは「謙虚ですね」と言う。別に謙虚とかじゃなくて、前世で得た知識ってことを隠すためなんだって!そう思いながらも唐揚げとおにぎりが美味しい。ゲイルは未知の料理が気に入ったようでもう完食済みで、木陰で優雅に読書中だ。私たちの分よりもかなり多めに入れたのに、あの細身の体にどうやってあのスピードで入るのかが分からない。私がゲイルをじっと見つめているのが気になったのか、笑真さんが声をかけてきた。
「ミハナ様って、絶対にゲイルさんのこと好きですよね?」
「は、はい。好きも何も、幼い頃からの婚約者なので」
私がはにかみながら答えると、笑真さんは目を丸くして呟いた。
「さすが異世界。漫画でしか読んだことない展開だ」
めちゃくちゃ聞こえてる。でも確かに、私も転生してすぐにゲイルが婚約者だって知らされてもんのすごく驚いた覚えがある。あれももう3年前か。早いなあ。私がしみじみしていると、テーブルの上に静かに何かが乗った。サンとムーンだ。世界的に人気な電気ネズミが出てくる某アニメのサブタイトルから付けた名前だ。
「どうしたの?」
「ムーンが煩くないところに行きたいって。部屋に戻るよ、ご主人様」
私は別にご主人様って呼ぶようにした覚えはないんだけど、勝手にサンとムーンが学習したようでそう呼ばれている。
「分かった。流石にあんなのがいたら猫はキツいよね」
私は半ば諦めたような視線を遊び回るオオカミと犬に向ける。尚、レイランは不機嫌そうな顔で二頭を鑑賞中だ。
「どうしてあんなに煩くできるのか分からないわ」
ムーンは水でできた毛を逆立て、尻尾を二倍の太さに膨らませている。
「ムーン、落ち着いて。部屋に戻れば籠の中で二匹で寝れるよ」
サンの言葉にムーンは毛を寝かせ、私の部屋のバルコニーから続く階段を登っていった。
「本当に、ムーンってサンの前だと急に大人しくなって」
私がおにぎりを食べながらそう言うと(行儀が悪い。それでも王女か!)、笑真さんがクスッと笑った。
「ムーンは本当にサンのことが好きなんですね。魔法で造られた生き物なのに、こんなに感情が豊かなのは、きっとミハナ様の技術と優しさの賜物ですよ。あの子たちが自由に生きられるように、って、造るときに心の底で思ったんですよ、きっと」
笑真さんの言葉に、これまでに無いほど頬が真っ赤になった日だった。




