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第一王女の父君

 笑真(えま)さんがこちらの世界に転移してから数時間。私の部屋の森や家具を見てはしゃぎ回った彼女は現在私のベッドの上で熟睡中。お腹の上にはサムソンを乗せている。あの、人にあまり懐かない孤高の一匹狼(実物)のサムソンが。出会って数時間の笑真さんに、心を許して挙げ句の果てにはお腹の上でぐっすりなんだよ!?感動と寂しさが混ざり合った複雑な感情の今日この頃です(一日目だけどね!)。そして今、私は馬鹿丁寧な字で馬鹿丁寧な文章の手紙を書いている。宛先はお父様。笑真さんについて相談したいが真っ昼間に国王で政務が忙しいお父様を呼び出すわけにもいかないし、謹慎中の私が出向くわけにもいかない。となれば、手紙を出して夜来てもらうしかない。ということで、今頑張って書き慣れていないこの世界の字の羅列を書いている。

「はあ、疲れたぁ……」

私が思わずそう溢すと、近くに控えていたルーリンが苦笑して侍女に指示を出す。

「姫様に紅茶と茶菓子をお願い」

指示を出された侍女が頷くのを見てから、ルーリンは私の手紙を読み出した。そして時々「あら」やら「まあ」といった声を出しながら読み進めていき、読み終わる頃には温かい笑みを浮かべていた。

「幼い頃とは比べ物にならないほど、字がお綺麗になりましたね。文章構造もご丁寧になられました。こちらのお手紙でしたら、国王陛下にお出ししても問題ございません。侍女に届けさせますか?」

「ええ、お願い。それと、謹慎が解けたら乗馬の練習を始められるように手配してくれる?」

私がルーリンにそう言うと、彼女は面食らった後、思わずといった感じで思いっ切り噴き出した。

「何よ。何か面白いことでも言った?私」

私が訝しげに問うと、ルーリンは微笑を浮かべた。

「いえ、次から次へと、よく思い付くものだなあと思いまして」

実は私が乗馬を習いたいのには理由がある。レイランに乗って旅をしたいからだ。ついでに狼のサムソンにも乗れればなあ、なんて考えている。

「別に、こんなのしたいことをしてるだけよ。思い立ったら即行動。それで人生は完璧よ!」

私がそう答えると、ルーリンは「ご謙遜を」と言う。いや、謙遜じゃない。そう思いながらも場の空気を壊したくないので私は曖昧に笑っておいた。ここは濁しておいた方が、絶対に良い。

 その日の夜。私の手紙を読んだであろうお父様が、丁度湯浴み後の着替えを終えた私の部屋にやって来た。笑真さんには私が作り出した滝のカーテンうぃ挟んだベッド側に待機してもらっている。

「ミハナ、異世界からの客人がいると聞いたが、本当か?」

「はい。エマ・スズキ様というお方で、年の頃は15。発見当初は彼女の国固有の種類の猿の姿で、発見場所は、その、湯殿です」

私がもじもじしながらそう答えると、お父様はその大きな手で私の頭を撫でてくれた。

「大儀だった。異界の客人を保護したのは賢い判断だ。どれ、客人に挨拶をさせてくれ。一国の王として」

「くすぐったいです、お父様」

私はそう言いながら指をパチンと鳴らし、静かに流れていた滝のカーテンを消し去る。笑真さんに事前に滝が無くなるかもしれない、と言っておいて良かった。これがもしいきなりだったら素敵な笑真さんに嫌われたかもしれない。そうなったら普通に泣く。滝のカーテンを消した先には、私のベッドに膝にサムソンを乗せて座っていた笑真さんは慌てて立ち上がり、お父様に頭を下げた。

「エ、エマ・スズキと申します!娘さんには、お世話になっています!」

そんな笑真さんにお父様はゆっくりと歩み寄り、右手を差し出して穏やかな笑みを浮かべた。

「スズキ殿、よろしく頼むよ。さて、君の今後の生活だが、部屋を準備するまで少々時間がかかるかもしれない。その間、ミハナの部屋で過ごしてもらおうと考えているが、それで良いかい?」

笑真さんは慌ててお父様の手を取り「はい!」と元気よく答えた。良かった。この案出したの実は私だから、断られたら私のこと嫌いなのかもとか思ってショック受ける羽目にならずに済んだ。私が心密かにホッとしていると、ふとお父様がこちらを向いて、こんなことを言った。

「ミハナ、スズキ殿に城の案内を頼めるか?無論、謹慎が解けてからだが」

私がパッと顔を輝かせたのを見て、お父様が釘を刺すようにそう言ったので、がっかりした。まあ、それもそうだろう。謹慎中の間抜けな王女を異国の人間と一緒に城の中をぶらぶら歩かせるわけにはいかないもんね。

「はい。分かりました。エマ様、私の謹慎のせいで城の案内が遅くなりますが、よろしいですか?もし不満なら他の者に案内させますが」

私がそう言うと、笑真さんは首をぶんぶん振った。

「お、王女様とが良いです!あ、王女様は他にもいっぱいいらっしゃりますよね?ミハナ様とが良いです!他の方には慣れていないので」

「はい。喜んで」

私たちが微笑み合うと、お父様は頷いて「おやすみ」と言い残し、部屋から出ていった。その背中は頼もしいものに戻っていた。

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