第一王女の入浴
自室に戻った私は、ルーリンの手によって城の大浴場へと連れて行かれた。ルーリンによると
「ごゆっくりなさってください、お疲れでしょうから」
だそうだが、直訳すると
「汚いから風呂入れや」
だ。そりゃそうだ。昨日の夜からお風呂入ってないもん。久しぶりの大浴場、というか初めての王宮の大浴場に、私がワクワクを隠せずに浴室に入ると、衝撃の光景が目に入る。
「えっ?」
サ、サル。おでこに手ぬぐい乗っけた……サル。あれ?ここって、日本の露天風呂でしたか?私、転生した後に異世界転移しちゃった感じですか??
「お、おサルさん、こちら、人間用の大浴場となっておりますので、お引き取り願います」
サル相手に何を本気で言っているのだろうと思いつつ、私はサルに声をかける。すると、なぜか返事が返ってきた。
「ああ!どなたか来てくださるまでずっとお風呂にいようと思っていたんです!あの、助けてください!」
え?女性の声?良かった、タオル1枚体に巻いただけの格好で相手がオスザルだったらどうしようと思ったから。
「え、えっと、あの、人間の言葉が分かるメスザルさんですか?」
私が困惑しながらそう問うと、彼女(?)はブンブンと首を振る。
「いいえ、わたし、元々はサルじゃないんです。こんな、ザ・ニホンザルみたいなこと日常的にしてないです!」
えっ待って。この世界にニホンザルは存在しないはず。だからニホンザルという言葉を知っている人は私だけしかいないはず。まあとりあえずその考えは置いといて。
「じゃあ、何なんですか?」
「わたし、人間なんです!お風呂に入っていたらいきなりここのお風呂に瞬間移動していて、サルの姿に……!」
人間なのだとしたら、何人なのか探りを入れよう。
「でしたら、あなたの国の特徴を教えてくださいませ。場合によってはあなたを元いた場所に戻すことができるかもしれない」
「!は、はい!わ、わたしの国は『ニホン』といって、黒髪の人や茶色の髪の人が多い、和風の国なんです!大陸にある国じゃなくて、島国です!」
待て待て待て。日本人ですかあなた。通りで言葉が通じるわけだ。
「分かりました。ニホン、ですか……初めて聞きました。今度、父に相談してみます。あなたのお名前は?」
私が尋ねると、彼女はこう答えた。
「は、はい!鈴木笑真と言います!あ、あの、失礼でなければ、あなたのお名前もお伺いしてもいいですか?こんなおっきいお風呂に入るくらいだから、きっとご令嬢ですよね……?」
「ええ。この国、ラルク王国が第一王女、ミハナ・ロイヤルと申します。ここは私の家、王宮です」
私が微笑んで言うと、笑真さんはビクゥッと震えた。
「えっえっえっ、お、おおおお、王女様だったんですか!?確かに顔面偏差値高い」
笑真さんの言葉を聞いて、私は真っ赤になる。だってこ、この人、私のこと顔面偏差値高いって言った!魔法特化型の残念平凡女子なのに!いやでも、ここで否定しちゃうとマナー的にどうかと思うのでお礼だけ!
「ありがとうございます、笑真さま」
私はそう言うとシャワーの方に向かった。相手が女性なら、裸でも大丈夫!そう思った私は頭をガショガショ洗いながら話し出す。
「笑真さまは、おいくつですの?」
「え、えっと、15歳、です」
私より年上だった!私、お姉ちゃんとかいないからお姉ちゃんの役目してもらおうかな。
「私は13です。妹と弟、合わせて10人」
私が苦笑してそう言うと、笑真さんは目を見開いた
「ええっ!?とても大人っぽい雰囲気だからてっきり年上だと思ってました!」
「ええー、そんなことありませんよー」
私はそう言って流す。さっきから、この人の言っていることが他の国の言語なのか、と疑ってしまうくらいおかしい。顔面偏差値高いとか、大人っぽいとか。そうしているうちに、体を洗い終わる。よーし、ようやくお風呂だー!こんなおっきいお風呂入ったことないからワクワク。私がそんなことを思いながら浴槽に入ると、笑真さんの体が輝き出した。
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