表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/34

第一王女の母

 私は今、不思議な景色を見ている。目の前に大きな透明なシャボン玉みたいなものがあって、その中に風が包む大輪の花があった。私がそれを触ろうとすると、シャボン玉は私を拒絶するように弾いて……。

 「ミハナ」

私は穏やかな女性の声で目が覚めた。それは昨日、私が救った大切な人の声。

「お、かあさま……!」

私が驚きながらも甘えるように抱き着くと、彼女は私を抱き締め返してくれる。でも、その行為に今までなかった違和感を感じ、私は考え込んだ。そうだ、お母様は、片腕を失ったんだ。

「お母様、あの、腕、大丈夫ですか?」

私が顔を上げて尋ねると、お母様は朗らかな笑みを浮かべた。

「ええ、大丈夫よ。あなたのお陰。ローサムはあまり役に立っていなかったみたいね、ふふっ」

こんな軽口、長年連れ添ったお母様だからこそ言えるんだろうな。だって、軽口の内容国王を侮辱する内容だもん。

「でも、私がもっと賢ければ、私が倒れてお母様の治療をできないなどということにはならないはずです」

私はずっと思っていたことを口にした。聞いた人は私が自虐ではなく謙遜していると思うだろう。でも、実際は自虐だ。私の技術が足りないばかりに、お母様の身を危険に晒したのだから。

「いいえ、そんなことは無いわ。あなたがいたから、わたしは左腕を失うだけで済んだのよ。下手をすれば、わたしが失うのは片腕だけに留まらなかったかもしれないのよ」

その言葉に、私はハッとする。そうだ。私が魔法を使わなければ、今こうしてお母様と話すことができなかったかもしれないのだ。

「私は……、誇っても良いのですか?未熟な魔法をお母様に使ってしまったことを……」

「ええ、もちろん。他の人が何と言おうが、そのことはわたしが保証するわ」

私はお母様の無くなった腕を見る。そして、口を開く。

「では、お母様のことを救ったご褒美に、何があったのかを教えてもらってもよろしいでしょうか?」

我ながらなんと無欲なお願いだと思った。でも、訊かずにはいられない。そう思いながらお母様の方を見ると、彼女は優しい瞳で頷いてくれた。


○○○


 わたしとローサムは、少し遅れて部屋を出てしまってね。だから、急いでいたの。でも、途中で……3階で、わたしの左腕目掛けて大きな剣が飛んできて、わたしの左腕を切り落としたの。ローサムがいたのになぜ?って思うでしょう。でもね、彼がわたしを庇えないくらいの速さだった。それに彼はキーサムを抱いていたから、咄嗟に我が子を守ったのよ。わたしでも同じことをするわ。それでね、わたしはローサムに横抱きにされて、あの部屋にーー大広間に入ったわ。そこで、気を失ったの。それで、治療されている途中でわたしは目を覚ました。そこで、あなたがわたしに血を与えていると知って、驚いてもう一度気絶してしまったのよね。我ながら情けないわ。それで、起きたら病室のベッドに運ばれてて、隣であなたが眠ってた。何かにうなされていたから、起こしたの。


〇〇〇


 「そうだったのですね。犯人はまだ分からないのですか?」

「ええ、残念ながら。あなたたちも気をつけるのよ」

急に厳しい表情になったお母様に、私はあの時を思い出して身震いした。光の森の魔獣たちに襲われて、背中に一生消えない傷を負ったこと。

 読んでくださってありがとうございました!面白かったら、評価・リアクション・感想をお願いします!


先日、星マークの評価の平均が3つになっているのを拝見しました。強欲なたぬきなので、できるだけ評価を上げたいです。至らなかった点をお気軽に感想などでお伝えください。全ての方にお楽しみいただけるよう、できるかぎりの修正を致します。どうか、鈴のたぬきのわがままをお聞き下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ