表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/34

第一王女の夕食会 2

 「お父様!?お母様!?」

しばらく唖然としていた私は、我に返って二人に駆け寄った。お父様の苦々しい表情を見る限り、何かあったのだろう。

「何があったので、………っ!」

すか、と続けようとした私の声は、お母様を覗き込んだことによって発せられることはなかった。お母様の左腕は……ちぎれていた。

「ミハナ、とにかく手伝ってくれ。来る途中でできるだけの人数に治療魔法を使いに来るように声をかけたが、多い方が良いだろう」

「えっ、手伝うって、治療をですか?」

私が驚いてお父様に問うと、彼は苦し気に頷いた。私は深呼吸をする。そして、弟や妹たちを魔法で部屋の外に放り出した。変に騒がれると、集中力を欠く。最後に私はお父様が担いでいたキーサムをラアナの腕に転移させた。

「さすがだ。仕事が早い」

お父様に褒められたのは嬉しかったけど、同時にあることを思った。どうせここで魔法を使うんだったら、レイランを置いてきた意味なくない?と。でも、今はとりあえずお母様に意識を集中させないと。ちぎれた腕からはどんどん血が流れ、それに比例してお母様の顔色もどんどん青白くなっていく。とりあえず止血。そう思った私は水泡を月光魔法で固め、テーブルクロスを引き裂いて巻き付けた物をお母様の腕に当てた。そして、今度はテーブルクロスを細く引き裂いてその布を紐の代わりにして腕と止血している物を密着させる。お父様はひたすらに治療魔法を使っている。でも、お母様の顔色は一向に良くならず、むしろ悪くなっていく。

「はあ……」

私は思わずため息をつく。ここで、お父様に魔法を見せないといけないんだ。まあ、私、魔法の腕あるらしいし、ワンチャン新しい魔法を使ったのを見た記憶消せるかな?そう思った私はお母様を取り囲むように新しい魔法陣を作る。それを見たお父様は目を見張った。

「ミハナ!?何をしているんだ!?新しい魔法なんて、何が起こるか分からない!リンネの身を危険に晒す気か!?今すぐやめろ!」

「大丈夫です、絶対に。今ここでできるだけの治療をします。なお、ここで見たことで私を旅に出さない、というのはお止めくださいね」

私はそう言いながら自分の血を魔法陣に注ぎ込む。魔法陣で調べたところ、お母様は私と同じ血液型だったから。他の人の血じゃなくて私の血が失われるならまだいい。貧血になるの、他の人だと自分のせいだと思って悲しいからね。

「ミハナ!?そんなことをしたら、お前が死ぬかもしれないんだぞ!?」

お父様に体を揺さぶられるが、もう始めてしまったことなのだから今更止められない。止めたらそれこそ何があるか分からないのだから。そう思った私は結界を張って、自分とお母様だけの空間にした。

「お母様、絶対にお助け致します。どうか、お気を確かに」

私が治療の手を止めずにそう言うと、お母様がう、と呻いて薄く目を開く。

「み、はな……?」

「はい、ミハナです、お母様」

弱々しいその声に、あの朗らかなお母様の面影は少しもない。そのことを密かに悲しみながら、私はお母様に血を与えていく。それに気付いたお母様が有り得ない、という表情をした。

「あなた、な、にを……」

「お母様に、私の血を移しています」

私がそう答えると、彼女は驚きのあまり気を失ってしまった。まあ、喋らない方が体力を温存できるし、良かったかも。私が血を注ぎ続けると、ある量を注ぎ終わったところで注ぐ血が止まった。

「ふう……」

私はため息をつく。それと同時に、視界が揺らいだ。

 読んでくださってありがとうございました!面白かったら、評価・リアクション・感想をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ