私とルーサムと 1
転生してから初めての父母との面会は終わり、晩餐はゲイルさまと共に採ることになり、ゲイルさまは聖女の宮に泊まることが決定した。
「聖女の宮には初めて泊まるな」
ゲイルさまはなぜかうきうきしている。そんなに楽しみなのかしら。
「ゲイルさま、とても楽しそうですわね」
「そ、そうか?それにしても、私が婚約者であることを忘れていたと聞いたときは、ショックだった」
「も、申し訳ございませんでした…」
「それにしても、ミハナ、今日はなんだか変だよ?朝から色々なことを忘れて」
「申し訳ございません…。最近、物忘れが多くて」
自分でもありえないと思っているが、とっさに出た言い訳を、ゲイルさまは「ふうぅーん」と言って信じてくれた。今日1日一緒に過ごしていて分かった。ゲイルさまは、優しくて理想的な婚約者であることを。でも、この国では聖女には婚約者こそいるものの、ほとんどが…というか今のところ歴代の聖女全員が20歳になる頃に婚約を解消し、独身を貫く。婚約解消された男の方はどうするかと言うと、他の王家の娘と結婚し、聖女とは違い幸せな日々を過ごすのである。そう考えると、聖女とは本っ当に理不尽な役職だわ。ま、どうせ私には関係のない話だわ。私は婚約解消なんてしないもの。ゲイルさまが婚約者でよかったよかった。
「そういえば、これから近い時期に、私が参加しなければならない行事はございまして?」
「う~ん。あるにはあるんだけど…」
「ど?」
「裏路地のならず者たちに悪さをしないように説く集会だから、正直言って出なくてもいいよ」
ふむ!出よう!ならず者とはいえ、支持を得れれば嬉しいところ!
「出ます、出ます!ぜひとも出させてください!」
「本当か?時間の無駄だぞ?」
「出るって言ったら出るんです!」
こうしてゲイルさまにこじつけまくり、ようやく承諾を得た私は、意気揚々と1週間後の集会に出発した。護衛はやっぱりゲイルさま。だが、ルンルンな私を迎えたのは、衝撃の人物と取り巻きだった。