第一王女の夕食会 1
レイランを連れていくのを断念した私は、ルーリンとシクセルを連れて一階に向かう。五階から一階へは結構な階段の段数があるので、意外と大変だったりする。でも、豪華なレッドカーペットが敷き詰められた大理石の階段に、ガラスのような透明な宝石でできた手すりが新鮮で大変さは足にだけしか来ない。まあ、足に来ている時点で結構駄目か。
「ねえ、ルーリン。何で、兄弟の中で一番年寄りの私が一番登り降りが大変な階なのかしら」
私が思わず尋ねると、ルーリンが笑いだした。
「年寄りって、姫様。それならわたしの方がよっぽど年寄りですわ」
「まあ、それもそうだけど」
私はいまいち納得がいかない。最後に入ってきた新入りなんだから、部屋を与えられたことに感謝するべきなのかもしれないけど。そうこう言っていると、城の一階の大きな入り口の前のエントランスホールできょろきょろしている見覚えのある令嬢を見つけた。
「ジェニファー!どうしたの!?」
私がそう名前を呼びながら階段を駆け下りると、ジェニファーがハッとした表情で私の方を向いた。そして、ボッと顔を赤らめる。
「ミハナ!会えて良かった!というかその、ものすごく、きれい……!」
ジェニファーに手放しで誉められ、私もボボッと顔を赤らめる。もちろん、ルーリンの化粧のお陰で普段の顔がきれいになっているのはわかっていたけど、そこまで誉められるとすっぴんが誉められているかのような感覚に陥ってしまう。そんなはずないのに。
「あ、ありがとう。ところで、何でここに?」
私が不思議な思いでそう尋ねると、ジェニファーがにこりと笑う。
「何でって……。決まってるよ、そんなの。ねえ、どうして?どうして、旅に出ることにしたの?」
静かに、ゆっくりとされる質問に、私はジェニファーの目を見て言った。
「ごめんなさい。説明できないところがある。それでも、知りたいんだったら、教える。私は、ゲイルとの未来のために旅に出るの。私の未来には、あってはいけないことが起こる可能性が高いの。だから、その可能性を無くすために旅に出る。今言えるのはそれだけ」
私はそう言ってふにゃりと微笑む。するとジェニファーはうん、と頷いてバイバイ、と手を振った。私の着飾った様子から、何か用事があることを察してくれたのだろう。私も彼女にバイバイ、と手を振った。
○○○
食事室に着くと、まだ他の誰も到着していなかった。やっぱり王家の長子だから、早いのかな?足の速さと一緒で!なーんて。思い上がりは良くない。たまたま私が目覚めた時が丁度良かったっていうか少し早かっただけで、私が長女だということは関係ないだろう。私が退屈して垂らした少しの髪を指先でくるくるといじっていると、ドアが開く音がする。そちらを向くと、ハーフアップにした特徴的な波打つピンク色の髪が見えた。まだ5歳の我がラルク王国の第五王女、セアナだ。お母様の先祖にピンク色の髪の人がいて、先祖返りなのだ。私の姿を見つけた彼女は柔和な顔をパッと輝かせる。
「ミハナ姉様!良かった、わたし、一番最初に着くのも嫌だったし、最後に着くのも嫌だったんです!」
「セアナ。久しぶりね。ねえ、来たばかりで申し訳ないのだけれど、来る途中で他の誰かを見かけなかった?もう少しで集合時間なのよ」
私がセアナに尋ねると、彼女は首を振りながら私の隣に腰かける。
「いいえ。誰も見ませんでした。みんな、遅いですね。何かあったのでしょうか。それにしてもおきれいです、姉様!」
「そう?ありがとう」
そんな風にみんなが来ないのを二人で心配していると、もう一度ドアが開く音がした。
「一の姉上様!さっきぶりです!」
入ってきたのはルーサムだ。嬉しそうな顔で興奮して、誰も座っていない私の左隣の席に座る。その勢いに私が苦笑していると、続々と王家の人間が入ってきた。次女・ラアナに私がびしょぬれにした長男・ロイサム。三女のマアナに四女のリアナ、双子の三男のトーサムとチーサム、ラアナに抱かれた四男・マーサム。王家の面々が揃うなか、国王夫妻と末っ子のキーサムが姿を現さない。さすがにみんなが何かあったのか、と思い始めた時だった。ドアが蹴り開かれ、お母様を横抱きにし、キーサムを担いだお父様が入ってきた。
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