婚約者の不安
今回も短めです!いつも読んでくださってありがとうございます!感謝感激雨あられです!
俺には、美しくて優しい婚約者がいる。だが、ついこの間、仲良くしていたのに突き放された。彼女は旅に出たいと言った。俺たちの未来のために、と。いくら彼女の言葉でも、理解できなかった。どうして旅に出ることが俺たちの未来へと繋がるんだ?そんな疑問を感じながらも、彼女が用意してくれた道を歩むために俺も自分の気持ちに蓋をした。そんな日の後に婚約者ーーミハナが、王城に戻ると聞いた。俺はミハナが王城に戻った日の学園の授業が終わってすぐに王城に向かった。
「一の姫殿下、ご無沙汰しています」
「ゲイル、よく来て下さいましたね。ゆっくりしてください」
俺がそう言って微笑むと、彼女は一瞬切なそうな顔をするが、そんなことはなかったかのように俺に微笑みを返す。そういう強い態度に、やはり彼女は王族なのだな、と思う。すでに部屋にいたルーサム殿下と侍女頭のルーリンには退室してもらい、婚約者だけで水入らずの時を過ごす。その間、ミハナは森になった部屋に滝と小川を作った。その後は、水をかけあって、小さな頃に戻ったような感覚を楽しんだ。そして、疲れて寝転がったミハナを同じように寝転がりながら可愛いなと見ていると、彼女がふと頭上に咲いている朝露のようなものの着いた青い花を摘んで俺に渡した。彼女が俺をイメージして作ってくれたと知って、俺は思わずミハナを抱きしめた。照れた彼女をからかい、触れるだけの口付けをすると、少ししてから彼女は寝てしまった。……無防備だな。こんなに可愛い寝顔を、他の男に見せていないかヒヤヒヤする。全体的に色素の薄いミハナは眠っているとより一層儚く見えて、風が少し吹いただけで消えてしまうのではないか、という下らないことまで考えてしまう。そこで俺は馬鹿なことを思い付き、寝ている彼女の頬を両手で包み込む。
「あなたをこの世に引き留めるためです。ご容赦下さい」
そう言って口付けると、彼女が小さな声でう、と呻いたが、起きる様子はない。それを良いことに、俺は
「これくらいは、お許しください」
と言ってもう一度口付ける。いつもは片側だけ後ろに撫で付けている自分の銀色の髪がサラリ、と頬に影を落とす。唇を離した時、初めて、彼女の背に何かの動物たちが寄り添っているのが見えた。水でできているそれらは、一等星ーーシリウスと同じ青白く光る瞳を俺に向けている。水でできているということは、ミハナが作り出したのだろう。この間の子馬以外にも動物が増えている。子狼に犬、小鳥。どれも、ミハナを守るように寄り添って、俺が彼女を守りきれるのか詮索しているように見える。作った人間への忠誠心はあるのか。そんな彼らに、俺は大丈夫だというように頷く。すると、彼らはそれで良い、と言うように俺から視線を反らし、ミハナに視線をずらした。
「まったく、変わったナイトがいますね。ナイトなら俺だけで十分でしょう」
俺は少し乱れたミハナの浅く波打つストレートに近い長いプラチナブロンドを撫でながらそう言う。本人には自分が美しいという自覚がないから困る。驕ったところがないのもこの人の長所だが。俺はため息をつく。本当に、困った婚約者だ。
読んでくださってありがとうございました!面白かったら、評価・リアクション・感想をお願いします!
先日、星マークの評価の平均が3つになっているのを拝見しました。強欲なたぬきなので、できるだけ評価を上げたいです。至らなかった点をお気軽に感想などでお伝えください。全ての方にお楽しみいただけるよう、できるかぎりの修正を致します。どうか、鈴のたぬきのわがままをお聞き下さい。




