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第一王女の弟君2号

 更新遅くなってすみません!

 ロイサムの電撃訪問からさほど時間をかけずに、今度は二番目の弟ーールーサムがやって来た。こちらは比較的交流が多いので、安心できる。

「一の姉上さま!会いたかったです!王宮にお移りになったと聞いて、居てもたってもいられず、いきなり来てしまって申し訳ありません!」

「良いのよ、歓迎するわ。ほら、この子も喜んでる」

私は満面の笑みを向ける。満足から来るものではなく、単純に嬉しさからくるものだ。ルーサムは無邪気な笑顔を浮かべて私の腕の中で尻尾を振っているサムソンの頭を撫でる。

「すごい!一の姉上さまがお作りになったのですか?この森もすごいです!」

「ありがとう。そういえば、みんな元気?今日の夕食の時間に顔を合わせるだろうけど、少し心配で」

私はサムソンのひんやりとした背中を撫でながら家族が元気か尋ねる。すると、満面の笑みと共に良い答えが返ってきた。

「はい、みんな元気ですよ。ついでに言うと、酒場の人間たちも元気です」

彼の言う酒場の人間たちとは、現在9歳のルーサムが幼い頃から通っている酒場の常連客のことだ。あ、ルーサムは飲酒してないからね?陽気な雰囲気を楽しみに行ってるだけだから!

「良かった。今日の夕食が楽しみね」

私はそう言って微笑む。転生した時は驚いたけど、割と楽しいものね。そんなことを考えていると、不意にルーサムの目が輝いた。

「一の姉上さま、魔法を見せていただけますか?ほら、僕たち兄弟の中で魔法が使えるのって、姉上さまだけだから」

そういえばそうだ。彼の3つ上のラアナも来年には使えるようになるが、今すぐ見たいというのがルーサムの本心なのだろう。

「ふふん、王子殿下、わたしは先ほど姫様がこの森を作るのを拝見しましたのよ!」

会話に押し入ってきたルーリンが胸を張って自慢気にそう言うと、ルーサムは「ルーリンだけずるい!」と言って不貞腐れる。そんな空気を和らげるために、私はニコリと笑う。

「もちろん良いわ。何かしてほしいことはある?」

私がサムソンを下ろしてルーサムの手を握ると、可愛らしい笑顔が広がる。

「だったら、一の姉上さまの花を咲かせてほしいです!」

「わ、私の花?」

何、私の花って!?

「一の姉上さまのような、きれいな花です。それをゲイル兄様に差し上げたら大層お喜びになるでしょうね!」

そういうこと!?それならできるけど……それって、新種の花を作るってことよね?現代日本では新種の花を見つけただけで大騒ぎなのに、それを一瞬で作り出せるなんて、魔法って結構チートだな。っていうかこの子、今私のようなきれいな花って言った?まあ、きっと、イチノアネウエサマっていうきれいな人がいるっていうオチでしょ?家族は美形だけど、私が美人とか、あり得ないし。

「分かったわ。やってみる」

私はそう言いながらゆっくりと掌を上にして右手を森の地面へと向ける。すると、芽が生えて、成長していく。何これ、私の魔法って万能ですか?植物を成長させられるなんて。咲いた花は紫色の可愛らしい薔薇の花だ。ついでにキラキラとした宝石のような光を纏わせ、もう一種類作ろうと考える。今度はゲイルをイメージする。さっきと同じ過程を経て咲いたのは深い青色の、朝露のような雫を纏った百合のような花。これもきれい、なんだけど。これ、前の私がベッドから落ちかけた時のゲイルの水も滴る良い男要素かなり入ってるよね!?無意識にやっちゃうとか、自分の乙女思考に引く。そ、そそそそ、そんな考えはさておき。名前を付けなきゃ駄目だよね?悩んだ末に、私は紫の方をアメジストローズ、青の方をサファイアレインと名付けた。アメジストローズは薔薇のような見た目とその色に対して。サファイアレインはその色と雨のような雫のついている美しさに対して。私は自分の作った花たちを愛でる。すると、ルーサムの存在を無視していたことに気付いた。なんて言うんだろう、花の美しさがドジな私の注意を広範囲にしてくれたっていうか!でも、ルーサムの前ではしっかりした姉でいないと!まあ、今の一瞬でしっかりした姉像は消え去ったかもだけど。

「ルーサム、どうかしら。あなたのイメージ通りに……って、あら?」

私はルーサムの方を向いて目を見開く。その瞳は潤んでいて、私を見つめていた。えっ?思い上がりすぎかもしれないけど、まさか、私に無視されたのが悲しすぎて泣いた?えっ?私、弟泣かせちゃった?突然のことに私はおろおろするが、ルーサムが目を擦ったので今度はあわわとなる。そんなことしたら目が腫れちゃう!そう思った私は冷えた水泡をそっと彼の目元に当てて冷やす。

「ねえ、泣かないで。何か不満があったのなら言ってちょうだい?」

私はしゃがんでルーサムと視線を合わせる。すると、ルーサムはもっと泣き出してしまった。ええっ!?なんで?私の存在自体が嫌なの!?私がショックを受けていると、ルーサムが口を開いた。

「ちが、うんで、す。なんというか、その、い、一の姉、上さまが、可愛すぎて」

うん?い、今、なんつったこの子。私の弟、泣いてついに頭おかしくなったか?いやいや、これでも一国の王子なんだし、頭の出来が悪いわけないんだよね。っていうことは、これが本心だったりする?します??

「ねえ、ルーサム。泣いた原因は私、ってこと?」

困惑しているのを隠しながら私が問うと、ルーサムはこくりと頷く。それに対して今度は別のショックを受ける。でも、ルーサムが気を使ってフォローしてくれる。

「でも、それは一の姉上さまが可愛すぎるからという理由であって、決して姉上さまの言動が気に入らなかったわけではありません!それにその花、とてもきれいですし!」

やや熱の入ったフォローに、私は押され気味だ。ていうかこの子、さっきから私のこと可愛い可愛い連呼してるけど、シスコンなのかな!?

「王子殿下、もうそろそろおやめ下さいませ。姫様が可愛すぎるのは大いに同意できますが、その姫様がお困りですゆえ」

隣からの助け船は、これまたおかしい。ルーサム、洗脳の魔法でも使えるのかな?そろそろほんとに頭がおかしくなってくる。なんで私って、こんなに察しが悪いの?これでも第一王女なんですけど。魔法特化型のアホってこと?それって悲しい。

「ルーリン、多分一の姉上さまの思考が変な所に行っちゃってる。何とかして」

「そんなことを言われても。何をすれば良いのか……」

ルーサムたちが小声で話しているのが聞こえる。それでも私がしょぼんとしていると、扉がノックされて、すぐに開いた。

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