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第一王女の実力

 「聖女さま……じゃなくて、姫様!お久しぶり?でもないけど、えっと、会えて良かったです~!わたし、姫様の侍女頭に任命されたんです!」

部屋の壁際の文机で荷ほどきもせずに本を読んでいた私の部屋に、突如出現したのが私の聖女の宮にいた頃の侍女・ルーリンだ。どうやら私の侍女頭に任命されたらしい。澄んだ黒い瞳を感動の涙に潤ませている。私の膝の上で昼寝をしていたレイランが不機嫌そうに鼻を鳴らす。うん、気持ちは分かるよ。静かに読書してるところにバタバタうるさい人が来るんだもんね。つーかシクセル、護衛の役目はどうした。

「殿下、申し訳ありません!その人悪人の気配がしなかったのでお通ししました!」

部屋の外からシクセルの声。よし、後で魔法でぶち殺す。悪人じゃなかったら通して良いわけじゃないの理解してくれ。まずは主人に確認取れや。まあ、シクセルへの不満はさておき。

「ルーリン、来てくれて嬉しいわ。早速で悪いんだけど、荷ほどきを手伝ってくれないかしら」

私は社交辞令ではない笑顔でルーリンの指示をする。ルーリンが瞳を輝かせて頷いたので読書に戻る。レイランも昼寝に戻る。なんか作り主とくっついていると成長が速くなるらしいので、とりあえず一番最初に作ったレイランとくっついている、という状況だ。

「姫様、その小さな馬はなんでしょうか?姫様がお作りに?」

ルーリンに耳元で囁かれ、思わずビクゥッと反応してしまう。寝ているレイランに気を使ってのことだと分かっているけど君、ご主人様にもうちょっと気を使おうな!?まあ良い。質問に答えよう、私。

「ええ。学園での療養中に暇で作ってみたの」

私も声を潜めながら答える。頭の上にびちょっと小鳥の糞が落とされた気配がしたが、水の小鳥がしたものはただの水なので気にしない。そう。気にしたら私の負け。小鳥の勝ち。

「じゃあ、あの水の泡がつついても弾けないのもそういう仕組みなんですね……すごいです!姫様!そのお年でそんなに高度な魔法をお使いになる方を、わたしは見たことがございません!」

「あら、ありがとう」

いくらいきなり旅に出たいとか言う破天荒で馬鹿頭の王女様でも褒められたら喜ぶよ。そこまで根性腐ってないさ、この国の元聖女さまは。

「それと、その、姫様の魔法を見たいんです。まだ、見たことがないので」

ものすごく言いにくそうなルーリンの口から発せられたのは、予想外の言葉。

「え?なぜ?」

私は思わず呆けた声で訊いてしまう。なんで、私なんかの魔法を見たいの?面白いことないと思う。

「どうせ、面白くないと思うわよ?」

私は首を傾げる。でも、ルーリンはぶんぶんと首を振る。それこそ、もげちゃうんじゃないかってくらい。

「いいえ、そんなことはないと思います!だって、こんなにすごいことを成されているのですから!」

「そ、そうなの?だ、だったら見せてあげる!」

私は褒めちぎられて照れてしまい、自分でも分かるくらいのツンデレ発言をしてしまった。でも、どうせやるんだったら今後も役に立つ何かを作ろう。そうだ、部屋を中にいる人にだけにしか見えない森に変えてしまうのはどうだろう。部屋の外から見たらただの部屋だけど、中に入ったら森が見える、とか。よし、やってみよう。

「見ててね。ふう……」

私は深呼吸をして、合掌する。そして、(てのひら)を外向きにして腕を半円を描くように動かす。その動きに合わせて、部屋に緑色に光る魔方陣が広がり始めた。額に汗が浮かんでくるのを感じる。ルーリンがほう、と感嘆の声をあげるのが聞こえる。だめ、気を散らすな。集中するの、私!失敗したら、どうなるのか分からないんだから。私は視界の色が透明から深い青紫色に変わっていくのを感じた。魔法のゼニフィリアス先生が、この世にまだ存在しない自分が作り出した高度な魔法を使う時には瞳の色が変化するのだと言っていたが、自分の視界の色まで変わるとは思わなかった。ゼニフィリアス先生はしっかり細部まで教えてくれる先生のはずなので、先生ご自身がやったことがないのでは、と思う。視線を下に向けると、魔方陣の上から短い草が生えてくるのが見えた。その後に、小さな花が生えてくる。何本も、何本も。

きれいだな。

どこか、他人事のように、心の中でそう呟く。そう思っている間にも、木が生えてきている。日本にしかない、特別な植物ってないかな。あっ。あった。桜の木。私は桜の中でも特に好きなしだれ桜を咲かせる。なにこれ前世で夢見た理想の部屋!次に私は窓際に滝を作り、そこから部屋を横断するように小川を作る。最後に普段の私の瞳と同じ色のローズマリーを咲かせて、ふう、と息を吐き出す。完成だぁ……!

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