第一王女の新居
題名決めるのが大変なのでこれからは第一王女の~で始まる題名にしようと思います!
白亜の宮殿が見えてからほどなくして、馬車は王宮に着いた。さっき悪態をついた御者に荷物の入ったトランクを持ってもらい、レイランを抱いて宮殿に入る。物心がつく前に離れた13年ぶりの王宮。自分の家のはずなのに、探検したいという冒険心が頭をもたげる。出迎えてくれたのは、王宮の執事・ハントさん。意外に筋肉質な腕は、御者から受け取ったトランクを軽々と持ち上げて私の5階の自室に運んでくれた。そして、私は自室の豪華さに驚く。聖女の宮の自室も十分広かったけれど、王宮の自室はあり得ない広さだ。それこそ、50メートル走ができるくらい。ベッドは大きく、衣装棚も巨大。さらにバルコニー付きときた。これが、普通の(?)王女の部屋なのか。うん!ほとんどを自作の動物たちに解放しよう!そんなことを考えていた時、重厚なクラシック調のドアがノックされた。
「一の姫様。新しい護衛をお連れしました。よろしければドアをお開けください」
声をかけてきたのはハントさん。護衛の方の紹介なら断る理由はない。私はドアに駆け寄り、出迎える準備をしてから「はい」と答える。すると、「失礼します」という声と共にドアが開き、凛々しい美貌のハントさんの後ろに精悍で爽やかな顔立ちの男性がいるのが見えた。
○○○
「ミハナ・ロイヤル第一王女殿下。ラクレル伯爵家が次男、シクセリアンと申します。僭越ながら、あなた様の護衛を務めさせていただきます。どうぞお気軽に、シクセルとお呼びください」
男性はシクセルというらしい。っていうか普通に原作に出てきたお人なんだが。そんな言葉は心の中に留めておき。
「よろしくお願いします、シクセル」
と言って社交辞令の笑みを浮かべる。自分以外の男性に笑いかける時は全部社交辞令にするようにゲイルに教育されたので、ここで生かしてみる。というか、この人もゲイルに勝てないっていうことよね。騎士の制服着てるもん。こんなに強そうなのに。やっぱりゲイルは異次元の強さなのかなあ。そんなことを考えていると。
「殿下の婚約者様はあのゲイル殿だと聞きました!今度是非再戦したく思います!ゲイル殿に勝つためにここまで鍛練を積んで来たのです!」
シクセルが爽やかな笑顔を浮かべながら剣帯に挿された剣に手を添える。というか、今の言葉は言外に『ゲイルを呼び寄せろ』って言ってるよね、完全に。仕えて二分で主人におねだりとか、普通だったら怒るけど。でも。ゲイルが剣術をしているのを見てみたいという欲が出てきてしまう。
「分かりました。頼んでおきます」
私はもう一度社交辞令の笑みを浮かべる。これ、自然に笑うより表情筋疲れるのよね。止めよっかな。
「ありがとうございます!それでは私は扉の外に控えておりますので、何か御用がございましたらお申し付け下さい!」
シクセルは私に爽やかで好印象な笑顔を向けてハントさんと共に部屋から出ていった。気が抜けた私は巨大なベッドにダイブする。
「ちょっと疲れたかも。荷ほどきは明日で良いよね」
そんなことを呟きながら水泡をたくさん作り出し、全てに月光魔法をかけた。部屋中にシャボン玉みたいなのがいっぱいできて、きれいだなあ、と幼子みたいな感想を抱く。すると、レイランが私のお腹に乗ってきた。そのうち乗って走れるかな、なんて呑気なことを考える。水の馬に乗って走るの、かっこいいし。そうだ。動物たち用のかご作ろ。そう思い立った私は草魔法で小さめのかごををベッドの天蓋や天井に吊るす。正面が開いているクッション入りの物だ。これが小鳥の分。次にベッドの脇にかなり大きめのかごを吊るす。これも小鳥の物と同じデザイン。これはレイランの物だ。最後に窓際にかなり大きいかごを吊るす。これはオオカミのサムソンと犬のマックスの物だ。成長を視野に入れて二匹が入ってもかなりスペースが余るようになっている。これで動物たちのくつろぎスペースの出来上がり。これでも部屋のスペースが有り余っているのだから、恐ろしいことだ。あ!そういえば、バルコニーからの景色ってどんな感じなんだろう。好奇心が頭をもたげると止まらない。私はベッドから起きあがり、バルコニーに向かう。鍵を開けて外に出ると、王宮の庭園が全て見えるようになっていた。中央には温室と噴水、右には鍛練場と騎士たちの宿舎、左にはきれいに手入れされた薔薇の低木の茂みと小さな池。東南の方角には指の関節一つくらいの大きさに見える聖女の宮。北西にはミスティ学園。こんなに眺めが良いのなら、国王夫妻の寝室になりそうなのに。でも、国王夫妻の寝室は8階らしいので、もっと眺めが良いのだろう。一階に応接間と図書館、会食室、二階に厨房と第二王女、ラアナと王太子、ロイサムの部屋。三階に第二王子、ルーサムと第三王女、マアナ、第四王女、リアナの部屋。四階に双子の第三王子、トーサムとチーサムと第五王女、セアナ、第四王子、マーサムの部屋。末っ子のキーサムの部屋は今度聖女の宮に引っ越すラアナの部屋をあてがわれる予定だ。そして5階を丸々もらっているのが私だ。6階、7階は使用人たちの部屋だ。私の新居、どれだけ充実してるの。たった数ヵ月しか過ごさないのに。新居のすごさに、私はしばし圧倒されていた。
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