療養の日々と決断と1
あ~~~!暇だ~~!ゲイルも学園で授業を受けているし、話し相手もいないし。なんなら魔法でなんか作っちゃうか。
「うーん、馬……とか?いやいやいや、ペット感無さすぎ。猫?うん、猫だ。いやでも、犬も良いかも」
ぶつぶつ独り言を言う私。これが聖女で良いのかな。あ、どうせもう聖女じゃなくなるのか。だったら、好き放題にやり放題だったりして!
「うーんと、やっぱり馬作ろ」
私はそう言ってベッドに寝っ転びながら手から水を流れさせる。そして、それを徐々に子馬の形にしていく。ここから育つようにしたら面白いと思うんだ。聖女じゃなくなるんだったら、めそめそしてないでポジティブポジティブ、ポジティブシンキング!陽キャモード突入!そんなことを考えながら作った子馬は、中々の出来映えだった。まだただの馬の形をした水泡なので、月光魔法で弾けて飛び散ったりしないように固めていく。蹄の部分だけ特別に固く補強する。そして、光魔法を使って命を吹き込む。これは集中力が必要なので、30分くらいかけて完成させた。
「うわあ、きれい!」
「ホォ」
美しい子馬は、これまた美しい声で鳴く。今日はゲイルが見舞いに来てくれるのでその時に雪魔法を使って蹄を氷細工みたいにしてもらえないかな。水なので雪のような低温のものがあれば凍るだろう。あ、尻尾の毛とかきらきらさせたらどうかな?
そう思った私は子馬の尻尾の毛に光魔法を施す。
「良いねえ、きれいきれい!っていうか、性別どっちが良い?変えれるよ?」
「フゥ」
自分が作った生き物の言葉は分かるのか。雄、って言ってるのが分かった。私はもう一度光魔法を使う。ああ、早くゲイルが来ないかなあ。そうしたら装飾品とか作れるのに。今日何があったのかも聞きたいし。あー、暇。いっそのこと女子寮を動物園にしちゃう?うん、それが良い。我一応第一王女なり。それくらいの権力持ってるはず。
「よぉーし、頑張るぞ!」
そう言った私は枕を背中の下に置いて体を上げる。そして、犬作りに取りかかった。犬ができると、猫、インコ、オオカミ……とたくさん作り出した。我ながら良い出来栄えだと思う。思いたい。
「姫様、昼食のご準備が……って、ええ!?」
救護室に入ってきた寮の職員の人が、驚いていらっしゃる。まあ、当たり前だよね。休んでる王女に昼ご飯運んできたらニャーやらワンやらピーやらヒヒーンやら音がして動物園状態なんだもん。
「あの、姫様、これはどういう状況で?」
「ごめんなさい、暇だったので暇潰しをしていたら、動物園になってしまって」
私はあくまで無意識にたくさん作っちゃいましたよ、という風に話す。故意に動物園にしたなんて知られたらきっとぶちギレられるからね。
「その、とても言いにくいのですが……」
うん?職員さん、言葉に詰まってどうしたんだろう。
「はぁい?」
「その猫を下さいませんか?わたし、実は猫が大好きで」
「そ、そうなんですね」
食い気味にそう言ってくる職員さんに若干引きつつ、私は平静を装う。
「では、アクセサリーなど希望の物はありますか?可能な限り作りますよ?」
私がそう言って微笑みかけると、職員さんは躊躇いながら希望を言っていく。それを記憶すると、職員さんは頬を紅潮させて昼食を置いて去っていった。昼食を食べ終わった頃、額に汗をかいたゲイルがやって来た。少し来るのが速い気がする。そしてなぜか、勝手に女子寮に入ることを許されている。
「ミハナ、こんにちは。急いで来たよ」
汗を伴ったゲイルの「水も滴る良い男」の色気に当てられた私は枕から滑り落ち、ベッドからも滑り落ちるかと思われた時、ゲイルの力強い腕に支えられる。その仕草も色気を纏っていて、自分はこんな素敵な人に守られているんだなぁ、と思った。と共に、今までに起こらなかった気持ちがむくっと起き上がる。
「ゲイル。あなたには申し訳ないのですが、私、旅に出たいです」
私は、これまで折るべき旗を折る努力をしてこなかった。でも、この人に守られ続けたいから、暴走なんてして敵になりたくないから、私は旗を折りに行くよ。世界各地にある聖女暴走の、ううん、第一王女暴走の可能性がある旗を折らないと、あなたとの未来はきっと無いから。
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これからは、ミハナ暴走までのタイムリミットを表示しようと思います。
タイムリミット:3年