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光の森

 「ぎゃーわー!」

「ジェニファー顔乾かして!あと騒がないで!」

騒ぎながら森を走り回っている私たちは、傍から見れば大変滑稽だろう。だが、今はそんなことを気にしていられない。なにせ今は、魔獣に追われているのだから。こんなことになった理由は、つい数分前に遡る。


〇〇〇


 私とジェニファーはこそこそと寮の裏口へ向かっていた。寮母さんはもう起きているはずなので、細心の注意が必要だ。

「光の森、入っても大丈夫なのかな?」

「何言ってるの?自分で言ったくせに」

ジェニファーが怯えた顔をしたので、私はそう言ってずんずか進んでいく。

「それに今更でしょ?もうこんな所まで来てるんだから」

こんな所というのは、森に入って20メートルくらいの場所だ。泉への道は残り2キロくらい先へと迫っている。そして、泉の周辺は開けているため、私たちは魔獣の恰好の獲物だ。気をつけないとと気を引き締めるが、やっぱり上手くいかないもので。泉に着いてジェニファーが顔を洗い始めた直後、周りからぐるぐると唸り声がし。白狼の魔獣6頭に囲まれてしまった。


〇〇〇


 こうして、今に至る。ジェニファーは自分の火魔法で顔を乾かす。そして、私は全速力で走る。持ち前の足の速さは、まだ寝起きなので発揮できない。よって絶対絶命のピンチ。私は月光魔法と光魔法を組み合わせて結界を作ることに勤しむことになった。

「ジェニファー、もうちょっとこっち寄って!結界に入れない!」

結界には微調整が重要。それは中に入るものにも必要。故に少しはみ出していたジェニファーを引っ張り込む。そして、その状態を維持したまま走り出す。魔獣たちが追ってくるが、私は持ち前の足の速さを発揮して、かなりの距離を作りながら走る。

「なになに、ミハナってそんなに足速かったの!?」

こんな時なのに妙に危機感のないジェニファーが少し後ろで興奮した声でそう言う。きっと目が輝いているのだろう、声から分かる。

「足速いがどうのこうのはもう良いから!とにかく走ってー!」

私が注意すると、ジェニファーのキラキラしい気配が消える。ちょっとお調子者なだけで、基本は物分りのいい子なのだ。走っているうちに、森の出口が見えて来た。そこで気が緩んだのだろう。私は少し走る速度を落として結界を切ってしまった。その隙をついて、魔獣が襲いかかってくる。私は背中を引き裂かれた。


〇〇〇


 最悪な出来事の始まりの朝。目が覚めた俺は、左手の薬指に着けられたキラキラと輝くダイヤモンドの指輪を見、中指に着けられた光る氷の指輪を見る。どちらも、ミハナとの繋がりを感じられる大切な物だ。

「はあ……」

ミハナのきれいな横顔を思い出し、思わずため息をつく。思い出しただけでかわいい。

「執着しすぎるとそのうち突き放されちまうんじゃないっすかぁ?ため息ついて、挙句の果てに『思い出しただけでかわいい』なんて言っちゃって」

茶化すように言ってくるのは、側近候補のエイビスだ。つい先日ミハナに会わせたが、あまり良いことはなかった。俺はそう思いながらエイビスを睨む。

「お前は最近出過ぎたことを言うようになったな」

「あはは、ごめんなさい。でも、身分がどうのこうのって言うんでしたら、聖女様に嫌われますよぉ?」

もう一回ニヤニヤ笑っているエイビスの頭を、俺は雪魔法で凍らせる。黒目だけが焦ったように動く。

「それをどうにかしたいんだったら、木に頭でも打ち付けとけ」

今度は俺がニヤニヤと笑う番だ。いつも笑われているのでいい気分だ。だがそこで、邪魔が入った。

「リンルー様!開けて下さい!今すぐに来て下さい!」

必死そうな声が聞こえ、俺はドアを開けに行く。

「何だ?何があった?」

「せ、聖女様が、……ミ、ミハナ様が……!」

ミハナという名に、俺はビクッと反応する。

「ミハナに何かあったのか?」

できれば何もないと答えて欲しかった。だが、こんな時に限って何かあるというものだ。

「はい……光の森で、もう一人の令嬢と倒れているところを発見されました」

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