初授業は波乱の始まり 2
更新遅くなって申し訳ありません!
いぃやあぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~!!!!私は思わず心の中で絶叫する。私って、ほんとに聖女で第一王女なのか。こんなときなのに、そう感じてしまう。でも!!とにかく!!ヤバい。ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!今度こそ本気でヤバい。そう思った途端、景色が揺らぎ、私はあっけなく意識を手放した。
○○○
「……ょ様。女様。聖女様。」
誰かが何かを言っている。その声が心地よくて、私はもう一度眠りに落ちようとした。でも。
「ミハナ。起きて。俺が分かる?」
という声が聞こえ、今度はすぐに飛び起きた。だって、今の声は。ここにいるはずのない、大好きな人の声だったから。
「ゲイル……っ!!」
ついさっきまで発狂してたくせに、都合が良い。私の頭からは属性の数に関する記憶は消え、すぐ側にいたゲイルに抱きついた。
「どうしてここに?今は授業中じゃないの?」
「学園長が直々に教室にいらして、俺に見舞いに来るようにって伝えてくれた。そしたらこの様だ。本当に、心配かけるなぁ」
そう言ったゲイルの、慈しむような甘い視線に、私は再び失神しそうになる。だが、今回はなんとか意識を保ち、首をブンブン振る。
「ミハナ?」
「い、いえ、何でもありません。それより、私のこと本名で呼んじゃっていいんですか?」
さっきの耳に心地良い声の主だっているだろうし。いや、でもさっきの人は私のことを「聖女様」って呼んでたし、関係者?
「ああ、うん。ここにいるのは俺と学園長とリウレイ嬢だけだからね」
「ミハナ、大丈夫?いきなり倒れちゃったから、びっくりしたよ?びっくりさせないでよ」
私が左に顔を向けると、苦笑している学園長の隣にジェニファーが。あ、さっきの心地良い声の発信源って、学園長だったんだ。っていうか、私、ベッドに寝かされてる。周りの景色を見た感じでは、ここは女子寮の私とジェニファーの部屋らしい。
「聖女様。わたくしは、あなた様にお話があってこちらに参りました。お話ししても、よろしいでしょうか」
学園長がおもむろに切り出す。もう疑問形ではないことは、気のせいではないのかも。
「どうぞ。お話し下さいませ」
そう言いながら、私は学園長にベッドの前の椅子を勧める。学園長は美しい所作で椅子に座ってから、話し出した。
「聖女様、あなた様は、現国王陛下・ローサム王の出した最高記録を更新されました。そして、記録を更新できる者は、決まって王家の血筋を引く者。それゆえ、国王陛下の長女であらせられるあなた様が成したげたのでしょう」
待って。初耳だ。記録は誰でも更新できるものだと思っていた。ってことは、いずれ、私が王女っていうことが学園中の生徒全員にバレる。それはまずい。
「が、学園長!このことが知られれば、私が王女であることが生徒全員に知られてしまうのではないでしょうか!?」
「そうですね。確かに。では、知られてしまうのと引き換えに、何かあなた様に与えましょう」
えーっと、私が欲しいもの……何だろう。
「今は決めかねます、学園長」
結局決められず、学園長に煮え切らない答えを返してしまった。それを申し訳なく思って少し俯いていると、ゲイルに抱き締められた。
「大丈夫だ。ミハナは悪くない」
「へっ?」
もうヤダー!不意打ちしすぎ、ゲイル!!
「す、すみません、ゲイル。不意打ちが多すぎるのではありませんか!?」
「不意打ち?何のことだ?」
しかも無自覚!!??ゲイルってもしかしてド天然?私は放心状態で満面の笑顔になる。
「ぷっ、ぷぷぷっ!!」
ジェニファーはこらえきれないといった感じで笑いながら転げ回る。
「リウレイ嬢、はしたないですよ……ふふふっ!」
学園長も笑いだす。
「ちょっと、人が本気で婚約者のこと心配してるのに笑うってなに?」
ゲイルが二人をギロリと睨む。何だか寒い風が吹いてきた気がする。ゲイルの雪魔法が発動しちゃった……?私はゲイルの腕の中で試しに水泡を作ってみる。すると、本当に水泡が凍った。水泡……否、氷の塊のやり場に困った私は、光を点けることのできる光魔法を使って、氷の塊の中に光を点ける。そして、物を固めることができる月光魔法を使って、氷が溶けないようにし、草の蔓を使って作った輪っかを、その塊に着けて指輪にする。そして、それをゲイルに差し出した。
「ゲイル、これをどうぞ。粗末な物ですが」
「ん?おわっ!!ミハナが作ったのか?」
「は、はい。やっぱり、腕の部分が蔓だと嫌ですよね。処分します。すぐに作れる安物ですし……」
私が魔法を解こうとすると、ゲイルに首を振られた。いつの間にか腕が解かれている。
「もらう。ミハナが作った物はなんでも欲しい」
「ゲイル様は束縛が強い旦那になりそうっすね」
うん?どこかから声がする。
「エイビス、今は出てくるな、と言ったはずだ」
「えー、でもー、出てはいませんよ?す・が・た・は!!」
エイビス?誰?
「ゲイル、エイビス……さん?って誰ですか?」
「エイビスは俺の将来の側近だ。今は出てくるな、と言ったんだがな、こういう性質だ、盗み聞きと盗み見をしていたらしい……!」
彼はそう言いながら声のした方を睨む。
「こんちわ!!エイビス・ディゴリーでーす!よろしく!」
この世界には珍しいタイプだ。言うなれば、前世でいうクラスのお調子者男子って感じ。
「っていうかさ、聖女様ってうちの主には釣り合わないほど美人だよね~。身分もさ。結婚する時に降嫁ってことになるんでしょ?」
ひっ!!!い、今、そ、そそそそ、その話する!?多分私今顔面ゆでダコなんですけど!!
「ミハナ?どうしたの?熱でも出た?」
ゲイルが私の顔を覗き込んでくる。その距離の近さだけでもドキッとしているのに、次の瞬間起きたことに言葉を失った。しゃべることを物理的に封じられている。
「………っ!」
しゃべることを許された時、私は今起きたことが信じられなかった。そんな私にゲイルはニコッと笑い、
「治すための薬」
と言ってきた。いやいやいや、逆に熱が出る!
「「「え」」」
顔面ゆでダコどころか顔面マグマだ。周りのお三方も言葉を失っている。ようやく顔が離れた時、私は再び意識を手放した。
○○○
あー!もう!私は翌朝に目を覚ました。起き上がると、斜め右前にある文机でジェニファーが勉強をしているのが見えた。あ。ヤバい。今日の授業六時間中二時間しか出てない。
「ジェニファー、どうしましょう」
「あ、ミハナ、目覚めた?」
「ええ、そうなのだけれど……私、すごい量の授業すっぽかしたわよね」
「あ、う、うん。残念だったね……」
ジェニファーは申し訳なさそうな苦笑いをする。
「はあ……」
「で、でもね!昼休みには、自由に魔法を使っても良いんだって!」
わーお。おーまいぐんねす。昼休みに魔法を使うイコール私は王女ですって自供してるようなものじゃない?
そう思った私は、深い絶望のどん底に突き落とされた。
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「しゃべることを物理的に封じられている」のところ、分かりにくい表現だったと思いますので、感想などでお気軽にご質問ください。