初授業は波乱の始まり 1
一時間目。私たち一年三組の生徒たちは、廊下を大行進中。行き先はどこかといえば。『魔法実習塔』なる、ミスティ学園に通う生徒全員が1日に一回は訪れるであろう場所。魔法実習塔は第一実習塔と第二実習塔、第三実習塔と別れている。一年生は基本の術を学ぶ第一実習塔で実習を行う。かくして。第一実習塔に到着した私たちは、魔法の教師、ゼニフィリアス・ミールズに迎えられた。なかなか良い人で、三組の生徒全員はすぐに打ち解けて話せるようになった。かくいう私も、ミールズ先生になついたうちの一人である。だって。しょうがなくない?
「アメリア嬢、君はたくさん質問ができて偉いね」
とか
「疑問があればあるほど世界は広がっていくんだ、君は同世代の令嬢のなかで一番広い世界を見ているよ」
とかいろいろ誉めてくれるんだもん!そんなことをジェニファーに言ったら、「確かに、良い先生だよね」と賛成された。こうして。「良い先生」ことミールズ先生の指導のもと、ついに魔法の実践の時間。みんなが楽しみにしていた瞬間だ。自分の属性が分かるのだから。属性を判明させる方法は簡単。全属性の基本魔法を一人ずつ試させ、発動した基本魔法の属性がその人の属性となる。だが、第一実習塔は全員同時に行うには少し狭すぎるので、中庭に移動した。先生が魔法で作った全属性の基本魔法の呪文一覧を見ながら、私はジェニファーと一緒に発動させることにした。まずは火。私は発動しなかったが、ジェニファーの方で火がついた。
「おお!すごいわね、ジェニファー!いきなり発動したじゃない!」
「あ、ありがとう……!」
ジェニファーはお礼を言いながらも、心ここにあらず、という雰囲気を纏っている。そんな感じのジェニファーと一緒に、水を試してみた。すると。手の上に丸い水の玉が現れた。
「わあぁ……!」
私が思わず感嘆の声を上げると、ジェニファーに祝福された。
「きれい……!アメリア、おめでとう!」
そう言ったジェニファーは、指を伸ばして水の玉をつつく。すると、水の玉は弾けてなくなってしまった。
「ア、アメリア、ごめん……!」
小さくなって謝るジェニファーに、私は微笑みを向ける。
「ううん、大丈夫よ。逆にありがとう」
「え……?」
不思議そうなジェニファーを横目に、私はふふんと笑い、もう一度水の玉を作り出す。
「ジェニファー、もう一回つついてみて」
「え?いいの?壊れちゃうよ?」
「いいの。やってみて」
ジェニファーは戸惑いつつも玉をつつく。すると、またも弾けてなくなるかと思われた水の玉は、弾けるどころかジェニファーの指をつつき返した。
「えっ?」
ジェニファーが間の抜けた声を出す。これが割れなかった理由。私が力を入れて膜を張ったのだ。そして、その膜を指の形に変えて、ジェニファーをつついた……というのがからくり。私がそう説明すると、ジェニファーは目を見張った。
「すごい!」
「ジェニファー、もうそろそろ次の属性のをやりましょう?」
すごい以外にも誉め言葉を並べられ、恥ずかしくなった私は苦笑を浮かべる。ジェニファーが頷いたのを確認して、また二人で試し始めた。ゲイルの属性・風属性と雪属性には二人とも当てはまらなかったが、次の草属性には二人揃って当てはまった。その次、希少で強力とされる光属性で、なんと私は当てはまった。その次、闇属性には二人とも当てはまらなかったので二人でほっとした。そしてその次、またもや希少で強力とされる月光属性に、またも私が当てはまった。その時点で、私ははたと気付いた。気付いてしまった。今のところの属性の数の最高記録はお父様が叩き出した3つ。だが、今日、この瞬間、最高記録が上書きされた。皆さん、お気付きだろう。私が、4つの属性に、目覚めてしまったことを。
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