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大わらわの初の朝

 校舎に入り、一階の掲示板に貼り出されているクラス分けの表を見て、自分の名前を探す。なぜか周りが私を指差して何やらこそこそ話しているが、気にしなくて良いだろう、多分!考えを切り捨てた私は、次の思考に入る。えーっと、一組…ちがう。二組…ちがう。三組…ちがう…と思ったらあった!私はまだ自分の名前を見つけられていないジェニファーの名前を探すのを手伝う。すると。

 なんと、私と同じ三組の表にジェニファーの名前が書いてあった。ジェニファーも見つけたらしく、嬉しそうな顔をしている。

「アメリア、同じクラスだね!」

「ええ、嬉しいわ!」

ジェニファーと二人で喜びを噛みしめ合い、二人で二回にある一年三組の教室に向かう。

「うわ…教室、広いなぁ……」

「そうかなぁ?」

伯爵令嬢であるジェニファーは教室が巨大だと思っているが、王女である私にとってはそうでもない。なぜなら、もう結界の張り直しの時だけしか帰らないであろう私の暮らしていた聖女の宮の自室は、80畳ほどの広さ。対して、この教室は60畳ほど。そして、寮の部屋は一人につき20畳ほどだ。80畳の広さに慣れてしまった私は、その広さを普通だと思っていたが。それは、完全なる王族特有の思い込みだったわけだ。よし、うん。この教室で広いと言うんだったら、伯爵家の部屋は、きっと30畳ほどだろう。

 勝手な予想を立てた私は、黒板に書かれた席順の通りに座る。なんと、四方を令息方に囲まれているという、前世で最も嫌いだった席の並び。そして、着席したジェニファーは二つ前の席。私がジェニファーに話しかけようと思って席を立つと、四方の令息のうちの一人が立ち上がって私の前に立ちふさがった。えっと、たしか、マシフィック侯爵家の次男、マイズ・マシフィック。

「あの、そこをどいてくださらない?」

「ご令嬢、お名前と爵位を教えていただきたく思います」

「はぁ?アメリア・マンチェスター伯爵令嬢でございますわ?」

そう言いながら私は『偽名だけどね』と思い、心の中で苦笑する。

「マンチェスター伯爵家……確か王家持ちの伯爵家でしたね。でも、あなたのようなお年のご令嬢はいらっしゃりませんでしたが」

ちょっとお父様、国王でしょ!?そこ偽装しといてよ~!?

「そ、それは見間違いではないでしょうか、マイズ・マシフィック侯爵令息?」

「そうですか?では、本題に入りましょう。あなた…アメリア・マンチェスター伯爵令嬢に、ぜひわたし、マイズ・マシフィック侯爵令息と婚約していただきたく存じます」

恭しく礼をとるマイズは、本気のようだ。

「へっ?む、むむむむ、無理です!」

私が慌てて断ると、マイズに不思議そうな顔をされる。

「なぜですか?わたしとの婚約が成れば、あなたの爵位は上がる。爵位が下がるわけではありません。悪いことは何もないと存じますが」

だって私にはゲイルっていう婚約者がいるんだもんっ!なんて言ったら、公爵家の嫡男であるゲイルは有名人だろうから、秒で正体がバレる!ここは適当に誤魔化そう。

「え、えと、私、今は婚約する気持ちにはなれないので……!」

「そうですか……残念です。ではまたの機会に申し込ませていただきます」

諦めてくれなかったー!!なんで!?なんで!?私のどこがそんなに良かったの~!?

「あ、あの、何ゆえそれほど私に執着を…?私の方が爵位が低いですし……。」

「あなたのそのお美しさだ。まあ、いわゆる一目惚れ、というやつですね」

へ?この人、なに言ってるの?私がきれい?

「あの、マイズ・マシフィック侯爵令息。アメリアが困っているのでもうそろそろお止めになっては?」

おお!ここでジェニファーからの助け船!ほんっとに助かる~!持つべきものは良き友達!

「ほんっとに助かるよ~、ジェニファーありがと~!」

私はジェニファーにこそっと耳打ちする。うん、と頷かれ、マイズの方を向いてみると、悔しそうな顔をして礼をとり、離れていった。だが、その後。

「わたしと婚約していただきたい」

「まずは友達からでも」

「家族に紹介したい」

等々。男爵令息から侯爵令息まで、たくさんの令息に求婚され、毎回ジェニファーに守ってもらった。聖女ともあろうものが、情けない……!結局、先生が来て、止めてもらった。

「私は、マリア・ファーン公爵令嬢、副校長です。学園長の妹です。もう令嬢っていうにはおばさんではありますが」

先生のその言葉に、どっと笑いが起きた。凛とした雰囲気を纏っているが、面白くて良い人だと、聖女たちからお告げをされた。よし、信用しよう。そう思った私は、一人席を立つ。

「マンチェスター伯爵令嬢。どうなさいましたか?」

「アメリア、と呼んでもらって結構ですわ、マリア先生。先程は、絡まれているところを助けていただいて、ありがとうございました」

「いいえ。教師として、当然のことをしたまでです。そんなことをする令息が他にもたくさんいそうです。他にもいたら、わたくしが全員切り捨てますわ」

おお!頼もしい!こうして、登校初日の朝は、頼もしい味方を得たことで幕を閉じた。


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